• イベントレポート

Future Jungleとはなんですか? ──ナナナナ祭 2023ブラッシュアップ合宿

今年も7月に開催される「ナナナナ祭2023」。100年後の未来への大胆な実験を行う「ハレの場」づくりに向けて、参加プロジェクトメンバーはそれぞれの企画をスタートさせていますが、今回その企画をさらに進化させるための「ブラッシュアップ合宿」を実施しました。

普段の活動場所である渋谷を離れ、大阪や神山という非日常の環境に身を置き、身体感覚を徐々に研ぎ澄ませていきながら、数多くの経験とインサイトを得た合宿の様子をレポートします!

未来体験フェス「ナナナナ祭」 今年のテーマは「Future Jungle」

ナナナナ祭は100BANCHで活動するメンバーたちが日頃の成果をお披露目したり、社会実装への第一歩を踏み出すための「ハレの場」として、毎年7月に開催しているイベントです。これまでも100年後の未来を期待させるさまざまな思想や発明を紹介してきましたが、今年はそこにさらに「体験」をプラス。ようやくフェスティバル開放期となった2023年。抑圧された身体の祝祭性を爆発させるがごとく、来場者の皆様と共に遊びながら、未来を感じることができる混沌としたエンターテイメント空間を目指します。

そんな「ハレの場」をつくりあげていくにあたって100BANCHでは毎年、共通テーマを設定しています。今年のテーマは「Future Jungle」。ジャングルのように多様な種が生息する100BANCHを、森を歩くように体験できるナナナナ祭。100BANCHの混沌かつ美しい自然状態を、オールナイトで体験できるフェスティバルに向けた企画準備をスタートしています。

「Future Jungle」を自分なりに解釈するとどんな世界?「体験」とは具体的にどのような経験をつくっていくことなんだろう?100年後の未来をつくるために大切にすることとは?

パナソニックの本社がある大阪や、100BANCHのサテライトフィールドを置く徳島県神山町を巡りながら、個々のプロジェクトのブラッシュアップをしていくとともに、祭り全体としての一体感を醸成させるため、ナナナナ祭2023の参加メンバー総勢17人の3日間の合宿が始まりました。

100年先をつくる——先駆者に学ぶ

2018年にパナソニックの創業100周年を機に構想がスタートした100BANCH。普段は渋谷を拠点に、これからの時代を担う若い世代である100BANCHメンバーが、次の100年につながる新しい価値創造に日々取り組んでいます。

100年先をつくる――それがどういうことなのか、ヒントを得るためにやってきたのは、大阪にある「松下幸之助歴史館」です。電気の時代を夢見て23歳で起業した松下幸之助。その生涯や大切にしていた精神、創業以来の歩みについて、パナソニックミュージアムの恵崎政裕さんに、映像資料も交えてお話いただきました。

今でこそ100年以上続くグローバル企業にまで成長したパナソニックですが、創業時には幸之助自らが発明したランプを1万個つくり、無償で配布して性能の良さを伝えるなど、スタートアップ期ならではの熱量溢れる試行錯誤のエピソードに、100BANCHメンバーも聞き入っていた様子でした。

説明の後は歴史館の館内を見学。松下幸之助が生きた時代の中で、数々の困難を乗り越えてきたエピソードと、その過程で生み出してきたたくさんのプロダクトに触れながら、100年という「道」をつくってきた先駆者の人生観や経営観に思いを馳せました。

松下幸之助の生涯を辿る中、繰り返し登場する「豊かさ」という言葉。soma no baseの西来路は「松下幸之助の考えた、”豊かさ”の定義はどのようなものだったのか」と質問していました。物が十分になかった時代に創業した松下幸之助は、まずは物の豊かさを実現しながらも、物と心が豊かである “物心一如”の世界を目指していたそうです。メンバーたちもまた、この時代に応じた「豊かさ」を探している実践者たちです。先人たちの取り組みから、それぞれに大事なメッセージを受け取りながら、歴史館を後にしました。

100BANCHメンバーを案内してくれたパナソニックミュージアムの恵崎政裕さん

午後は、事前募集をして集まってくれたパナソニック社員も交えてグループワーク。ゲストとしてパナソニックホールディングス株式会社 執行役員 グループCTOで100BANCHのメンターも務めてくださっている小川 立夫さんと、パナソニックミュージアムの恵崎さんにも参加いただきました。

ランチは、歴史館見学にご一緒いただいたパナソニックの社員の皆さんと近隣のTOMO〜NI(トモーニ)へ。

ワークの中では、それぞれが歴史館見学の中で特に印象的だったものを紹介。Trash Lensのリーダー山本は「“新人教師でもアイロンをかけられたシャツを”という思いを責任者に伝えていたことが印象に残った。製品を世に送り出すとき、どのような思いでどういう人にどのように届けたいかを言語化することが、生産方法の工夫や売り方に良い影響をもたらす良い例であることを感じた」とコメントしました。

またSadamaranai Obakeのリーダー鴻戸 は松下幸之助がコピーライティングをしていたというエピソードを挙げ、「ものだけでなく、商品のキャッチコピーや広告のデザインにもこだわっていたところが印象的だった。デザインの大切さを垣間見れて嬉しかった」と話しました。

それらのインプットをもとに、自分たちが100年先をつくるときに大切にしたいことをディスカッション。ワークの最後には、小川さんと恵崎さんからもコメントをいただきました。小川さんは「創業当時の松下幸之助は23歳。100年前は松下幸之助も100BANCHのみなさんと同じ若者で、そこから今日までの100年をつくる企業になってきました。みなさんもぜひ100年先に挑戦し、さらに100年後の挑戦者を応援できるように時代をつないでいってほしいと思います」とメンバーにエールを贈りました。

恵崎さんからは「みなさんのような若い人たちが歴史館を訪れてどんな感想を持つのか常々知りたいと思っていましたが、幸之助の歴史や思想の深い部分までしっかり見てもらっていたことに驚きました。歴史館はその時の自分の置かれた状況によって受け取るものも違う。ぜひまた大阪に来るときには足を運んでください」とコメントしました。

その後、パナソニック構内を移動しながら、途中、松下幸之助の人間観・宇宙観を象徴する「根源の社」にも立ち寄り、参拝を行いました。そして一行はバスに乗り、徳島県・神山町へ向かいました。

歴史館見学の中で印象的だったものについて話すTrash Lensの山本

ゲストとして参加してくださった、パナソニックホールディングス株式会社 執行役員 グループCTOの小川 立夫さん

「根源の杜」を参拝するメンバー

言語にならないが、からだで感じられる体験「身体知」を感じる

合宿2日目は、神山町の森林豊かな大粟山山中にある神社の境内での「朝瞑想」と「森歩き歩行禅 」からスタート。メンバーにナナナナ祭の企画をブラッシュアップするときに生かしてほしい、言語にならないが、からだで感じられる体験「身体知」を感じてもらうための時間です。

この時間のガイドを務めるのは、今年のナナナナ祭のコンセプトデザイナーであり、KaMiNG SINGULARITYのリーダーでもある雨宮 優。「朝瞑想」は、神社の境内にそびえるご神木の前の空間を借りて地べたに腰を下ろし、ヘッドホンを装着して行います。

「息を吐くときには自分のすべてを自然に還していくイメージを。息を吸うときには自然から生きるエネルギーを受け取るイメージを描きながら呼吸を繰り返します」。呼吸のワークを終えた後は、ヘッドフォンを外して大地に寝そべります。「すべての体重を大地に委ねて。聞こえてくる音は、鳥の声、車の音と考えず、ただ音として聞こえるままを受け取ってみましょう」

雨宮の誘導のもと、100BANCHメンバーは、からだと自然が一体となる感覚を掴んでいきます。

「森歩き歩行禅 」では、一人ずつで森の中に入り、一歩一歩と歩みを進めながら、自分と森との対話を深めていきます。たまたま森の中で誰かに出会ったら「Future Jungleとはなんですか?」と互いに尋ね、それに答えてまた分かれて歩き始めます。舗装されていない山道をためらいもなく、ずんずん進んでいくメンバー。

山道を歩いていて、偶然出会ったのは180mg/dlのリーダーの丸山。Future Jungleを感じるために一旦山を下りて、同じ地点を目指して自然な山道と自動車用に舗装された人工の道を歩き比べてみたと言います。そんな丸山にとってのFuture Jungleは「未来の森に入るときも人間はちゃんとした靴を履いたり危険を避けるテクノロジーを捨てられないと思う」とのこと。「でも自然の山道のほうがたどり着いた達成感がある。アスファルトの道は『登らされている』感覚になった。この違いって何だろう?」と「歩行禅」で新たな問いにも遭遇したようです。

「身体知」を祭りの企画に組み込んでみる

午後は、神山町のコワーキングスペース神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックスに場所を移動し、ナナナナ祭のブラッシュアップワークショップを行いました。

はじめに、午前中のワークを通して感じた、「自分なりのFuture Jungle」を共有していきます。

NO WAVE SHAREROASTERの奥田にとってのFuture Jungleは「好きに歩ける場所」。「前の人が歩いている、歩きやすそうな道もあったけれども、なぜか自分は道にもなっていないようなところから山に入って頂上を目指したりしていて。そんな自分を俯瞰してみながら、自分ってそういうことあるよなーなんて思っていました」。

University of Universeのリーダー今村は「Future Jungleとは、人間の営み。神社の社殿の天井絵を見て、未来も人間が生きていたならずっと何かを表現し続けているんだろうなと思った」と振り返ります。

自分なりのFuture Jungleについてお互いにシェアした後は、いよいよナナナナ祭に向けて企画しているプログラムをブラッシュアップしていきます。メンバーが向き合ったのは、雨宮が作成した体験設計のためのワークシート。お客様と一緒に、どのように遊んで、どんな感情になってもらいたいか。具体的なシーンを想像しながら約1時間、個人ワークを実施し、企画に磨きをかけていきました。

その後は、大きなテーブルの上にワークシートをすべて並べ、企画案を共有。他のメンバーの企画内容に目を通しながら、感想や伝えたいメッセージをポストイットで残していきます。それぞれの角度からアイデアを足してみたり、「面白そう!」といったメッセージを送るなど、ワークシートがカラフルなポストイットでいっぱいになりました。もらったフィードバックによって自分の企画がブラッシュアップされるとともに、プロジェクト同士のコラボ企画が生まれる場面も。Assassin from Indiaのリーダー高野も「いいアイデアをもらったので、東京にいるプロジェクトメンバーにさっそくシェアした」と話していました。ワークシートが埋められなかったところは今後の宿題です。ナナナナ祭への気合いが満ち溢れた状態でこの日のワークは終了しました。

ワーク終了後は、みんなでBBQ!火起こしや大量の食材準備なども、この合宿中に自然と培われてきたチームワークによってメンバーと事務局スタッフで楽しく協力して行うことができました。

「自分の手」で米をつくる体験

合宿最終日のイベントは田植えです。100BANCHが神山町でお米づくりをさせていただくのも、今年で3年目。毎年、田んぼを貸していただき、田植え指導もしていただいている森西克典(かつすけ)さんに今年も協力していただきました。

まず、田んぼに均等に苗を植え付けていくために使う「定規」と呼ばれる農具づくりからスタート。なたで竹の節を取って表面を滑らかにしたり、電動ドリルで竹に穴をあけたり、植え付けの間隔の目印となる木片を切り出し、紐で固定していったり。都会の生活では経験できない作業にメンバーは試行錯誤しながらも興味津々。「やりたい!貸して!」とメンバーが交代しながら道具をつくっていきました。

道具の準備が整い、田んぼに入る前には、獅子舞生息可能都市のプロジェクトリーダー稲村が「神山の獅子舞」となり、田植えの舞を奉納。豊作を祈願しました。

そしていよいよ、田植え作業がスタート。広さ1aの田んぼに稲を植えていきました。つくった「定規」を使っても真っ直ぐに植え付けられずにガタガタになってしまうところもありましたが、互いに息を合わせながら少しずつコツをつかんでいきます。お昼過ぎには無事に田植えを終えることができました。

当日は小雨が降ったり止んだりの中での作業となりましたが、あるメンバーが即興で作詞作曲した「田植えソング」で作業しているメンバーを鼓舞。笑いが絶えない田植えでした。

Reiwa no Land Reformの森屋は「帰りのバスの窓から見えた田んぼは、おそらく機械で植えたものでとても美しくて、技術のありがたみを感じた。でも高度に効率化されていく社会だからこそ、獅子舞みたいな生身の音楽や踊りが、目を見張るような体験になるとも思った」と振り返ります。

LiAのリーダー滝川は「お米が育つ場所に素足で入って、苗と空間を共有している感じが面白かった。昔は、そうやって農と人が繋がっていたんだと思った。音を鳴らして、唄う人がいて、苗を植える人と配る人がいて、一体になって、役割が循環してバランスがとれて、自然そのもの。これもFuture Jungleかもしれない。なにより楽しかったし、みんなでやったからこその達成感があった」と語り、田植えの体験からもFuture Jungleがなんなのかという探究を深めていました。

メンバーに道具の使い方のコツを教える克典さん

豊作祈願をする獅子舞生息可能都市のプロジェクトリーダー稲村

いざ、ナナナナ祭2023へ

合宿初日には、探り探りだったメンバー同士もすっかり打ち解け合い、数々の「身体知」を得て、2泊3日の合宿は無事終了。今年のナナナナ祭で強化したい「体験」を通じて、「Future Jungle」というコンセプトを、身体性を全開にして感じた3日間となりました。

合宿を経て、メンバーの企画がどのように進化するのでしょうか?そして、ナナナナ祭という「ハレの場」を通して、メンバーたちがどのような変態を遂げていくのでしょうか?

今年の「ナナナナ祭2023」は7月7日から開催。そして今年は待望のオールナイトイベントも!

3日間の合宿で、さまざまなインプットに触発されエネルギーを増したナナナナ祭2023にぜひ足をお運びください!

 

ナナナナ祭2023詳細

今後、100BANCHでは「ナナナナ祭2023」に向けてさらに企画を進めていきます! 最新情報は特設ページおよびSNSでお知らせしていきます。ぜひチェック&フォローしてください!

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