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コンプレックスをポジティブに変換するヘルスケアから切り拓く人生:180mg/dl 丸山亜由美(トリプル・リガーズ合同会社代表)

これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」。プログラムを終えたメンバーは、現在どんな活躍を見せているのでしょうか?

「180mg/dl」プロジェクトの丸山亜由美(トリプル・リガーズ合同会社代表)に100BANCHでの取り組みや現在の状況、展望などをお聞きしました。

丸山 亜由美  トリプル・リガーズ合同会社代表 国境や業界を横断するボーダレスなグラフィック・デザイナー。

北里大学 医療検査科を卒業。臨床検査技師の資格を取得した後、外資系製薬企業Rocheで3年間の社会人経験を経て、武蔵野美術大学 基礎デザイン科に学部生として入学、うち1年間はドイツのケルン国際デザイン大学に交換留学(トビタテ留学ジャパン優秀賞) 。東京都主催のビジネスコンテスト Tokyo Startup Gateway 2018、経産省主催のジャパン・ヘルスケア ビジネスコンテスト2019 アイデア部門にて優秀賞を受賞し、2019年3月に「アート&デザインからワクワクするヘルスケアをつくろう」というテーマでヘルスケアに特化したデザイン制作会社トリプル・リガーズを創業。

 

新幹線で隣の人に話しかけられ、動き出した人生

丸山:トリプル・リガーズでは、主にヘルスケアのモバイルアプリのデザインをやっています。なぜこのようなことをやっているのかというと、私の最初のキャリアが臨床検査技師だったことが背景にあります。

私はRocheという製薬会社で検査の機械を売る仕事を3年ぐらいしていました。ビギナーズラックもあってトップセールスを取ったこともありましたがある時、真剣にその後の人生を考えるきっかけがありました。営業先の新幹線で隣の席の人に声をかけられ「君の夢って何?」と聞かれたのです。「人生が2回あったら美大に行きたい」と答えたのですが「でもその夢って今の会社にいると叶わないことを、君は知っているんでしょ」と言われました。

そのとき、何かスイッチを押されたみたいに「このままじゃいけない」と思って会社を辞めることを決め、1年間、画塾に通ってデッサンを勉強し、26歳のとき武蔵野美術大学に入学し4年間学びました。そのうち1年間だけドイツのデザイン学校に交換留学をしていた際、ドイツでのホームステイ先のお母さんが建築家で1人でビジネスをやっている方でした。彼女に「あなたならできる、日本に帰っても頑張れ」と言ってもらい、日本でつくったのが今の会社です。現在、創業4年目ですが、私は大学に行くのがとても好きなので、今はデジタルハリウッド大学大学院にプログラミングを学びに行っています。会社半分、大学院半分という感じです。

 

「ヘルスケアアート」模索の場となった100BANCH

会社の事業とは別にヘルスケアをテーマにしたメディアアートの制作も実践している丸山。はじめたのは100BANCHに参加したことがきっかけだったそうです。

丸山:20歳のときに大学の健康診断で血糖値が高く、糖尿病と診断されてとてもショックを受けました。糖尿病は、不摂生や加齢からなる病気のイメージがあったからです。20歳で糖尿病だということがとてもコンプレックスとなりましたが、武蔵野美術大を卒業後、「このままネガティブな私ではいけない、生涯向き合っていかなきゃいけない病気をポジティブに思えるようになりたい」と思い100BANCHに応募し、血糖値、糖尿病をテーマにアートを作るようになりました。

血糖値をグラフィックアートとして表現しましたが、採血に抵抗がある方に参加してもらえないのが課題でしたね。そこで、最近は血糖値だけでなく、幅広く健康をテーマとした作品も作っています。デジタルハリウッドに入学して最初に作ったのは、指先から心臓の鼓動をセンシングできる「脈波」をお皿の模様として表現するプロジェクションマッピングのようなアートでした。

 

協力者と共に、アナログからデジタルへ

丸山:100BANCHで私がどれだけポンコツだったかを話したいのですが、プロジェクト名の「180mg/dl(ヒャクハチジュウミリグラムパーデシリットル」、とても言いにくいですよね(笑)。この値を超えると糖尿病だとされる数値なのですが、これをプロジェクト名にしたおかげでスタッフさんも読み慣れなくて、登壇の時はいつもプロジェクト名ではなく「まるちゃん」と呼ばれていました。プロジェクトや会社の名前は大事なんだと、振り返って反省しています。

100BANCHでは、糖尿病とそうでない人の境目がなくなるようなコミュニケーションデザインをしたり、血糖値、糖尿病のテーマに振り切って活動をしていました。最初はとてもアナログなことをやっていて、血糖値を測定したものを活版印刷しビジュアライズしたり、何を食べたらどのくらいの血糖値だったかをボードに貼ったりしていました。

そのような活動をしていると、一緒にやりたいと言ってくださる人がいたり、紹介でご縁ができたりしましたね。100BANCHの則武さんにご紹介いただいて、PHCという元々パナソニックのヘルスケア部門から独立した会社で血糖値を測るセンサーを作ってる会社のみなさんが一緒にやりたいと言ってくださったり、外部に協力してくださるエンジニアさんが現れたりして、アナログからデジタルに手法が変わっていきました。測定した数値から、絶えずオブジェクトが変化する、ヘルスケアのアート作品ができるようになったのです。私が最後に参加したナナナナ祭では、血糖値を24時間モニタリングできるキットを参加者の方に送り、アプリで通信し参加者の血糖値から一人一人のアートができる作品を作って、リモートで展覧会を開催したりしました。

 

自分を変える最初の一歩、100BANCH

丸山は、100BANCHに入居して良かったこととして「自分の病気をオープンにしたら暮らしやすくなった」と話します。

丸山:100BANCHに来る前は、自分の病気のことを他の人に言えませんでした。友だちと初めて一緒にご飯に行くときにも、本当はあまり食べられないのに病気のことを言えずに我慢して食べたり、何も言わずに残したりしていました。でも、100BANCHに来ると「何のプロジェクトやってるの?」という話から自分の病気のことを知ってもらえるので、オープンに話すことができるようになりましたね。それだけじゃなく、その相手が糖尿病や血糖値、広くは人の健康について考えるきっかけを作れるようになったのです。自分自身もポジティブになることができました。

以前は、食事制限や薬、注射が嫌で、間違った治療方法を選んでいたこともありましたが、100BANCHに入ってからは、目の前にいる人と同じ食事を一緒に食べたくて投薬に前向きになるなど、自分自身も変わったと思います。100BANCH入居当初は自信がなく、写真を撮ってもらっても、カメラマンさんの方を向かずに少し伏し目がちな写真でしたが、今は目の前の人をしっかり見て話をしたり、写真を撮ってもらえたりするように変われました。これから100BANCHに入る皆さんも自分を変えるきっかけの最初の一歩を100BANCHで生み出せるんじゃないかな、と思っています。

 

丸山さんの今回のお話の内容は、YouTubeでもご覧いただけます。

https://youtu.be/epd69el5qr4

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