EVENT REPORT

2021.12.17 Fri

靴から相手を想像する体験を
「Be in your shoes」が体験型展示会を開催!

  • #GARAGE Program

2021年11月27日(土)・28日(日)に「Be in your shoes」プロジェクトは体験型展示会「Be in your shoes -異なるあなたとつながる方法-」を開催し、60名を超える来場者が靴から相手を想像する体験をしました。

「Be in your shoes」とは、誰かと何かを共有するのに言葉だけが唯一の手段ではないという考えを起点に、 "put oneself in someone's shoes(=相手の立場に立って物事を見てみる)”ということわざから、新たなコミュニケーションの形を模索するプロジェクトです。

ここでは今回の展示会の様子から制作に至るまでの様々な学びと試行錯誤の一部をプロジェクトの柏原瑚子が紹介します!

現代社会において言葉は人々をつなぐ架け橋になっているでしょうか、それとも隔てる壁になっているでしょうか。私はその両方であると考えています。なぜなら、どんなに対話が成立しているように感じても、言葉は話し手と聞き手の解釈を完全に一致させるものではないからです。

 

誰かと何かを共有するのに一番有効な手段だと思っていた言葉がその役割を果たしきれていないと分かった時、それでもなお世界に言葉が存在する意味を私は考えていました。色んな活動や学びを通して分かったのは、言葉とは分かり合えないことを前提に相手がその言葉を通して何を伝えようとしているのかを想像し、互いに寄り添うためのものであるということでした。

 

そこで思い出したのが、”Put oneself in someone’s shoes”ということわざ。直訳すると「他者の靴を履く」となりますが、まるで目の前にいる相手の靴を履くようにその人がどこから来てどこへ向かっているのか、その言葉を通して何を伝えようとしているのか、それらを想像することができたら、社会はもう少しやさしい場所になる気がしています。

 

私たちはこのメッセージをただ言葉で伝えるのではなく、アートを介して人々に届けることでもう少し来場者の背中を強く押すことができるのではないかと思い、作品制作に取り掛かりました。

「Be in your shoes -異なるあなたとつながる方法-」の展示風景

 

今回の展示空間で最も意識したのは、来場者にパーソナルで内省的な時間を過ごしてもらえる場所にすることです。なので、美術館のように作品タイトルや説明書きを壁に貼り付けるのではなく、短い詩のように仕立てたイントロダクションを音声に変換し各々のタイミングで体験をスタートしてもらいました。

 

イントロダクションの音声を聞く様子

 

音声を聞き終えると来場者は靴を脱ぎ、町でインタビューした色んな人たちの「これまで」と「これから」にまつわる言葉の展示空間に進みます。

 

言葉から靴の持ち主を想像する来場者

 

この空間では、一歩踏み込んで話しかけないと分からない誰かの「今日」が展示されています。来場者はそこに書かれた言葉から相手を想像します。さらに、町を行き交う靴の様子を大きなスクリーンで投影することにより、普段見ている目の高さからではなく地上10cmの視点から世界を見ている空間を演出しました。

 

町を行き交う靴の動画を投影

 

最後に、その場で感じたことや今日どこから来てどこへ向かっているのかをハガキに書いてもらい、一年後にそれぞれの元へ郵送します。

 

一年前の自分が感じたことや考えたことが今日の自分のそれらとは違うように、それを見返す行為が他者(一年前の自分)の靴を履くことである気がするのです。

 

来場者が書いたハガキ

 

今回の展示会は2日間と短期的なものですが、自分が書いた言葉を一年後に受け取るアクションがあることで、その間の一年間がハガキの意味付けをするパフォーマンス作品と言えるのではないかと思います。

ディスカッションの様子

 

来場者がハガキを書き終えた後、自由にお話ができるブースを準備しました。ここでは靴や多様性、社会のやさしさについて色んな人の考えを聞くことができました。

 

《来場者の感想》

 

「天井から吊るされた人の、別の日の別の靴を履いている時の言葉はどんなものだろうね」

 

「毎日たくさんの人に出会うけれど、その人にはその人の人生があって。自分が受ける印象はその人の人生のたったの一瞬でしかないんだと、もっと人に優しくなろうと思いました」

 

「上を向いて歩こう!はよく聞くけど下を見ることでわかることもたくさんあると感じた。人に寄り添う気持ちを大切にしたい」

 

「渋谷で8000足もの靴があるってナレーションで、なぜだか人の気配、生きている感じが伝わってきて、靴の数だけひとりじゃないよと言われている気分になりました」

 

「誰かが僕の靴を本当に履けたとして、果たしてその人は僕と全く同じ世界を見ることができるのかな。誰かのことを理解するなんて本当はできないのかもしれないよね」

 

来場者が思いをつづったハガキ

この展示会を通して学んだのは、「伝える」ことは決して一方通行ではないということでした。

 

展示会を行う前は、靴を通して私が考える社会のやさしさや多様性についてたくさんの人に伝えたいと思っていました。けれども、伝わったか、伝わっていないか、分かったか、分かっていないかというのはどんなにお話をしても分かり得ないですし、そこが一番重要なのではないのかもしれないと思いました。

 

私がこのテーマについて考えて来た時間が長ければ長いほど、きっと相手にとっても同じくらい時間が必要で。さらには、相手のどんな解釈も私が伝えたい内容と同じくらい大事なものなのです。

 

ですから、まず100BANCHまで来て作品を体験してもらえたことが私にとってはかけがえのない財産であると感じました。そして、私自身がこれからも伝え続けることが重要である気がしています。メッセージを伝え続ける人として、表現形態や技術、知識を培い、今後も自分が思う最適な方法で「異なるあなたとつながる方法」をみなさんと深めていきたいです。

 

 

WRITER

Be in your shoes

柏原瑚子

1998年生まれ、東京都出身。上智大学国際教養学部にて美術史・哲学/宗教を専攻。ヴェネチア大学ではパフォーミングアーツ・ライブアーツを学ぶ。イタリア滞在中、観測史上2番目となる水害を経験したことや、何も持たない豊かさ・物を大切にする欧州文化の中で、自然と人間の関係性や人生の豊かさについて考え始める。

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