渋谷×紙活字。活版印刷の次の100 年の可能性を発信していく。
Papertype × Shibuya
渋谷×紙活字。活版印刷の次の100 年の可能性を発信していく。
(Virtual Fashion Show Invitation Card .)
今回、バーチャルファッションショーを開催した背景には、歴史的感染症のパンデミックにより「表現活動」の幅が狭まっていることに対する危機感があった。
私たちがオンラインを使ったプログラムを実施することで、アートやエンタテインメント、ものづくりなどの表現をする方々、またそれらを楽しむ方々の世界に少しでも貢献ができるかもしれない。そう考えている時に2020年7月に開催されたパリのオンラインファッションウィークを観たことで確信に変わった。
そこには、ランウェイを歩くモデルだけがファッションの世界ではない、ダンサーや役者、グラフィックデザインとプロダクトの間に関わる人も、ファッションに関わっていけるかもしれないと言う可能性を感じた。
HERALBONY(MUKU)の知的障害のある作家が描くアートが、それらを彩ることも何もおかしくないという動機のもと、カメラマン、パフォーマーたちとチームを組んでバーチャルファッションショーに臨んだ。
(Tap Dancer : Masaki Murata)
(Contemporary Dancer : Chiaki Ishigami)
パフォーマーが身に纏ったのは、緑の紙で製作したシンプルなドレスやファッション小物。同時に、緑の紙の上に知的障害のある作家が描くアート作品を投影することで、パフォーマーがアートな衣装を纏っている姿を演出。
ファッションショー中、まるで別の世界にいるかのような感覚に陥った。観たことのない世界観。繊細なタップダンスのタッチ。髪の毛の先から、足の爪先まで優雅に舞うコンテンポラリーダンス。ダンスとアートと合わさることにより、より一層、観るものを釘付けにした。
イベントを購入していただいた人への返礼品であるインビテーションカードは、プロジェクトメンバーに縁が深い110年続く銀座の活版屋「中村活字」で印刷したもの。また、このカードに使用した蛍光色の眩しいグリーンの紙で、衣装や舞台装置、小道具を作り上げた。蛍光グリーンの紙はバーチャル背景を綺麗に映し出すために選定し、バーチャルとアナログをつなぐアイコンにもなっている。
インビテーションや衣装などのこういった演出は、コロナ禍において、売り上げに影響が出ている活版屋さんや紙業界にも明るい話題になればと考え、紙加工や活版印刷、普段ではあまり使われない蛍光グリーンの紙を積極的に取り入れた。
ファッションショーの後半では、100BANCHを彩った懸垂幕をアップサイクルしたオリジナルトートバッグの発表、先行販売会を実施。
役目を終えた懸垂幕が、廃棄されるのはもったいないという点に着目し、「街を彩ったアートが、街を循環するアートになる。」というテーマのもと、懸垂幕をアップサイクルしたオリジナルトートバッグとポーチを製作をスタート。
(100BANCHを彩った懸垂幕)
(オリジナルアップサイクルトートバッグ)
(オリジナルアップサイクルポーチ)
(作者:嶌岡史絵|タイトル:「宇宙」)
今回のファッションショーを通して、懸垂幕を飾るアート作品を描いた嶌岡史絵(しまおか・ふみえ)さん本人から「嬉しい。」という言葉をいただいた。嶌岡さんの親御さんからは、「本人はイキイキとして、生活の質まで向上して参りました。人は認められると、こんなに変われるんだと再認識しました。」とコメントをいただき、私たちの活動が、知的障害のある作家の方に関わる方々にも喜んでいただけたことを強く実感した。
また、ありがたいことにPapertype x HERALBONY(MUKU)の懸垂幕コラボレーション第二弾も製作中に決まった。今回の製作を通してバッグの型紙、規格が定まったことにより、量産や事業化に向けてのたたき台ができた。財産になるような知識や経験を得られたこともチームにとって大きな成長を感じた。
さらに、アップサイクルしたバッグをただ買うのではなく、まるで月の土地を買うように、トートバッグになる部分(懸垂幕の生地)を吟味して選べる新しい購入体験をECサイト上で演出することにも成功した。
(ウェブサイト:https://upcyclebag.theshop.jp/)
今回のファッションショーを通じて、未来に向けた2つの気づきがあった。
1つ目は、ファッションショーの仕組みを様々なイベントに転用できる可能性があること。
例えば、HERALBONYのポップアップショップで、お客様が緑の服を着用し、アートを投影するセルフファッションショーと記念撮影などのイベントを開催することができる。
2つ目は、懸垂幕のアップサイクルグッズ事業化の構想が見えたこと。
懸垂幕のデザイナーは「知的障害のある作家」、アップサイクルする縫製工程は「福祉作業所」を想定している。今回、製作時にこだわった点として、あえて直線縫いで簡単なパターンをデザインすることが挙げられる。縫製の際に、無理なく「福祉作業所」と一緒に製作できる仕組みを作りたかったためである。知的障害のある作家が描くアートが落とし込まれた懸垂幕は街を彩る。役目を終えた懸垂幕は、福祉作業所の利用者たちが縫製する、そして工賃も高まる。街と人を彩るアップサイクルグッズは、社会に新しい価値を循環するようになるだろう。
今回のファッションショーは良い意味で想像以上の仕上がりになった。ぜひ、アーカイブをより多くの方にお届けできると嬉しい。
今後の展望として、今回のファッションショーを通じて浮かんだ実験アイデアが多くあるため、同じチームでブラッシュアップしたパフォーマンスをお披露目できる場を増やしていきたいと考えている。また、オンラインでのパフォーマンスのため、日本国内のみならず、海外に向けて活動の幅を広げていける可能性も十分に秘めていると実感している。
アップサイクルグッズに関しては、協力いただける企業様を募集したいと思っており、廃棄が必要な展示物にお困りの企業様、知的障害のある作家の作品を印刷する企業様etc…などいらっしゃいましたらぜひお声がけください。そして、このアップサイクルという循環、新しいものづくりのスタイルは、私たちだけでなく、皆で、社会一丸でつくりあげていくムーブメントを起こしたい。
私たちのレポートをご覧いただき、ありがとうございました。今後とも、Papertype x MUKU(HERALBONY)は、互いの強みを掛け合わせた実験に取り組んで参りますので、今後とも応援、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
◉CREDIT
Creative Director|守田篤史(Paper Parade)
Designer|和田由里子(Paper Parade)
Tap Dancer|村田正樹
Contemporary Dancer|石神ちあき
Photographer・Cinematographer|土田祐介
Art provided|松田崇弥(株式会社ヘラルボニー)
Project Management|大田雄之介(株式会社ヘラルボニー)
Project Management|西野彩紀(株式会社ヘラルボニー)
Special Thanks|小仲やすえ(100BANCH)、JO Studio
■関連リンク
・ご購入はこちらから:https://upcyclebag.theshop.jp
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