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コオロギで地球と生命を健やかに 実験報告会ナビゲータートーク:ECOLOGGIE 葦苅 晟矢さん(株式会社エコロギー)

これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」。3カ月目の現役活動期間終了のタイミングで、どのような実験を行ってきたかを発表する実験報告会。今回より卒業生の中からナビゲーターをお迎えしてプロジェクトのその後を伝えてもらう、ナビゲータートークも合わせて実施します。

この日のナビゲータートークは1期生 ECOLOGGIEの葦苅晟矢さん(株式会社エコロギー) が登壇。100BANCHでのプロジェクトでの思い出や現在の状況、展望などを語りました。

(撮影:鈴木渉)

1,000匹を超えるコオロギを飼育・実験する場所がほしい

現在は株式会社エコロギーで代表取締役CEOを務める葦苅さん。100BANCHでのプロジェクトを経て、その後どうなったか、100BANCHでの思い出なども交え、話してくれました。

 

葦苅晟矢さんのプロフィール

1993年生まれ。早稲田大学商学部卒業、大学院先進理工学研究科一貫博士課程在学中の2017年に株式会社エコロギーを創業。創業期の2017-2018年に1期生として100BANCHに入居。現在はカンボジア在住。カンボジアを拠点に、現地でのコオロギ生産・加工からコオロギを活用した食品や飼料の開発・販売を一気通貫で手掛けている。2016年文部科学大臣賞受賞、2019年「Forbes 30 Under 30 Japan」選出。

 

 

葦苅:大学在学中の2017年にエコロギーを創業し、ちょうど100BANCHができた年に一期生として入居させていただきました。現在、年の3分の2はカンボジアに在住してるんですが、そこで食用コオロギの生産の量産体制を構築するなど昆虫食の事業を行っています。

 

昆虫食・コオロギに目をつけたのは、その活用で未来の食に貢献ができる、と大学生の当時、意気込んだからだと葦苅さんは話します。

 

葦苅:コオロギはすごく有望な食料資源で、大きく三つのメリットがあります。すごく栄養価が高く、わたしたちの開発しているコオロギのパウダーも約65%がタンパク質と豊富な栄養源となっています。また、すごく環境に優しくて、既存の家畜に比べても環境負荷が低いのがメリットです。さらに、雑食性で生産効率が良く、とても量産化しやすいんです。私は学生時代にこれらの点でコオロギの可能性に注目して研究をしてきました。

 

 

 

葦苅:当時、私が最初にとったアクションは、まずは自宅のアパートでコオロギを育ててみることでした。最初は数匹からはじめたんですが、あっという間に増えて半年で約1,000匹まで増やすことができたんですね。しかし、1,000匹となると、なかなか自宅の環境も危うくなってきます。もっともっと大きな実験をする場所がほしい。そう思っていた時に100BANCHの存在を知って応募しました。

対話が生まれる、仲間が見つかる100BANCH

自宅でも大学でもなかなか1,000匹を超えるコオロギの飼育、量産は難しい。1万匹はどうやって飼育すればよいんだろう? そんな悩みの中、募集を見つけて入居した100BANCHの当時について、葦苅さんは振り返ります。

 

葦苅:100BANCHに入居させてもらった時に「コオロギ飼っていいんですか?」と最初に聞きました。100BANCHのみなさんは即答で「飼っていいですよ」と、すごく後押ししてくれたんですね。そこで、2階・GARAGEのスペースにビニールハウスを置かせてもらい、その中でコオロギの量産化にいたる実験をしていました。自分のアイデアを実行するためのフィールド、これを提供してもらえるっていうのは、すごくプロジェクトを前進させることになります。まさに100BANCHのメリットだと思っています。

 

 

葦苅さんはまた、魅力的な「人」が集まっていることやメンターさんからのアドバイス、広報支援のサポートがうけられることなども100BANCHのメリットとして話を続けます。

 

葦苅 :100BANCHの理念にもあるように「100年先の未来」を志向する仲間がたくさんいますし、いい意味で変な人がたくさんいて、当時、対話の場にもなっていたんですよ。私たち以外にも生き物や昆虫食を志向する他のプロジェクトのみなさんがいて、彼らと夜な夜な議論したのはすごく覚えています。それが本当にプロジェクトの前進に繋がったんですよね。昆虫食についての熱い思いを語り合える同志とのネットワークが得られたのも100BANCHのすごく良かった点ですね。その中で後の共同創業者も見つけることができました。

 

2018年には大阪に遠征してパナソニックさんに発表したり、その成果を発表する多くの機会もいただきました。アイデアを出し、実験をして、その成果や想いを発表することでいろんなフィードバックをいただく。そういったところがプロジェクトの前進に活きた、という点ですごくありがたかったです。

 

ほかに思い出深いのが100BANCHのメンターやスタッフのみなさんのサポートが本当に素晴らしかったし、ありがたかったです。100BANCHの周年祭であるナナナナ祭でコオロギを活用した食品を展示・販売しようとしたんですが、食品衛生等の手続きで企画がボツになってしまい大量のコオロギ粉末が余ってしまいました。そのコオロギ粉末をみんなでたこ焼きにして食べたのはすごく良い思い出です。自分が考えてる通りに進まないこともたくさんありましたが、とにかく100BANCHのみなさんが本当に優しく活動をサポートをしてくださいました。

 

フードロスを起点にエコにタンパク質を作っていく

100BANCHでの経験、成果を活かし、2018年にカンボジアに進出。約1億匹のコオロギの安定生産ができるようになり、生産供給体制はおそらくアジアでも最大級になっていると自負する葦苅さん。現在のカンボジアでの事業について話してくれました。

 

葦苅:東南アジアでは日本以上にいろんな社会課題があるんですが、その一つがフードロスの問題です。たとえば、食品工場から出されるフードロスなど全く有効活用されず、すべて燃やされています。私達はそれらを回収してコオロギの餌として活用しています。人間の食料にならないものからコオロギというタンパク質を量産する、そういったことを今カンボジアで行っています。

 

もう一つは事業の創出です。大きな工場で一括して生産するのでなく、現地の農家さんと一緒に生産しています。100BANCHでの実験成果がノウハウとして蓄積されたので、それを現地の農家さんに教え、彼らが育てたコオロギを買い取る。それをパウダー等に加工して世界各国の食品会社に輸出する。現地の農家さんの新しい副業のようなしくみも事業として生み出しているんです。最初は自分1人ではじめたことですが、コオロギを生産するって言ってもなかなか理解されなかったんです。でも、100BANCHに入ってようやく他の人からも応援していただき、カンボジアに移り住み、コオロギを生産する仲間がカンボジアに約50件、53人の仲間と一緒にコオロギを生産しています。

 

 

葦苅:加えて、「エコ」に「コオロギ」を作っていきたい想いもあって、社名も「エコロギー」なんです。カンボジアの食品工場の不良品であったり、農業の残渣(ざんさ)を泥臭く回収してコオロギの餌として有効活用する、フードロスを起点にタンパク質を作っていく、そういった活動をしています。この活動の原点も実は100BANCHなんです。100BANCHにいたとき、1階のカフェのフードロスをいただいて、コオロギの飼育実験をしていました。ある意味そこでの成果が、現在のカンボジアでの活動に繋がっています。

 

昆虫食ってまだイメージがよくないと思うんですが、私たちはパウダーやエキスに加工して食品の原料とすることに成功しています。実際に食べてみるとエビやカニのような強い旨味の食品原料になっていて、これらをもとにいろんな商品を展開しています。例えば、春日井製菓さんと一緒にコオロギパウダーを活用したお菓子の共同開発等も行っていたり、ドギーマンさんと一緒にコオロギを活用したペットフードの販売も行っています。お菓子だとエビのパウダーを使うことって多いんですが、代わりにコオロギパウダーを活用することで旨味のあるお菓子の開発をしたりしています。エビってどうしても環境負荷が大きい生物資源だったりするので、コオロギの活用でCO2の削減にも繋がる、そういった点がアピールできるような商品開発をいろんなメーカーさんとも行っています。

 

葦苅さんは、最終的にはSDGsの中でもいろんなインパクトを拡大していきたいと思っている、といいます。

 

葦苅:今後は、カンボジアのコオロギ農家さんの数もどんどん増やしていきたいと思っていて、同時にフードロスの回収量も増やしていき、環境負荷の低いコオロギを生産することによって、結果的にCO2の削減貢献もきちんと定量化して訴求できるようなソーシャルインパクトを拡大していきたいと思っています。

 

会社のパーパスとして「地球と生命(いのち)を健やかに」と掲げているんですが、地球環境はもちろん、人間社会にとってもすごくサステイナブルな社会を作っていきたいと思っています。駆け出しのスタートアップではありますが、ようやく量産化の体制ができ、それを元にいろんな商品を世の中に出せる段階になりました。今後は人の口に入る食品だけでなく、ペットフードや養鶏など動物の飼料にも幅広く活用用途を広げ、「インテル、入ってる」みたいに、「エコロギー、入ってる」、そういった世界観をつくっていきたいなと思っています。

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