• イベントレポート

ナナナナ祭2020アーカイブ 「こんにちは未来 - Willから未来はつくられる -」

100BANCHが年に一度開催する夏のお祭り「ナナナナ祭」。今年の幕開けを飾った7月7日の基調対談「こんにちは未来 - Willから未来はつくられる -」では、パナソニック株式会社 代表取締役社長の津賀 一宏さんと、株式会社BIOTOPE CEOの佐宗 邦威さんがご自身の経験と照らし合わせ、「Will」や「妄想」の描き方やそれをカタチにしていく方法について、熱く語り合いました。

未来に向けてチャレンジする仲間へのメッセージを、ビデオもしくはテキストレポートにて受け取ってください。

登壇:
津賀 一宏 さん
パナソニック株式会社 代表取締役社長
佐宗 邦威 さん
株式会社BIOTOPE CEO / Chief Strategic Designer

モデレーター
100BANCH 運営事務局 則武里恵(パナソニック株式会社 コーポレート戦略本部)

コロナ禍の間は自分が何を求めているかを「内省」

「こんにちは未来 – Willから未来はつくられる -」全編映像はこちら

オープニングイベントの第一部「Willから未来はつくられる」をテーマに、コロナ禍の過ごし方についてから、お二人のクロストークがはじまりました。

大阪にいる津賀さんとリモートで対談

津賀:出張の予定がほぼすべて飛び、会社にも用事がなければ来なくてもいい。そういう意味では在宅勤務で何ができるのかというのを本当に考えさせられた数ヶ月でしたね。

でもやっぱり集中して時間が取れるんですよ。集中して考えるには非常にいい。少し、人間らしい姿になったかなというのが、正直なところです。

則武:本当に考える時間とか、今まで見過ごしてたことに着目できる時間というのが、すごく多かったなと自分自身の体験では思います。佐宗さんはいかがですか。

佐宗:4歳の娘と1歳の息子の面倒を自宅でみていましたね。仕事に集中しきれないというのは精神的にしんどいものがありましたが、近所を散歩する楽しみとか料理を毎日やることってなんかすごく豊かなことだよなぁと。自分が何を求めているかを「内省」するいい時間になりました。

則武:私もそれをすごく思っていて、「内省」をする時間ってのは本当に増えて…。やっぱり「内省」っWillから未来をつくるときにはとても大事なんじゃないかなって感覚的に思ってるんですが、そのあたりご意見お聞かせいただけませんか。

佐宗:何もないキャンバスが与えられたときに、そこのキャンバスに対して何を描いていくかっていう、問いが生まれるんだと思います。

津賀:キャンバスに描くって話でちょっと近いですが、私自身のバックグラウンドっていうのはR&Dだったんですよ。R&Dというのは芸術性とか独自性とが非常に重要で。でも、大規模なR&Dになると「歯車」になっちゃうんです。私自身はやっぱり自分が「歯車」になるよりは、「歯車全体を回す」 方が向いてたみたいで。自分が「歯車」にはなれないし、なりたくない。個人の尖りをもたないと全体としても人生においても魅力的なものに育っていかない。

 

個人の尖りを持つためには「満点を目指すより自分の興味を追求」

パナソニック株式会社 代表取締役社長の津賀さん

則武:「個人の尖り」っていう話なんですが、それをなかなか表に出せない、出て来にくいのかなということを、社会を見ていて思います。100BANCHのメンバーからも、なかなかそれを表出できるまでには時間がかかったみたいなことを聞くことがありまして。「個人の尖り」を持つためにはどういったことをやればいいか、少しご意見お聞かせいただきたいです。

津賀:私は少し尖って育ちました。でも最初から尖ってたわけじゃないんです。親父は学校の教師でしっかり勉強しなさいよという家庭でしたし。ところが私自身は数学100点、社会5点みたいな生徒に育って。全部100点取ろうとすると、結局、尖らないですよね。すごく優秀かもしれないけど、自分のビジョンをどう持てばいいのかをかえって見失うんじゃないかと。もしくは他の人とコラボする時に、自分はここが得意で、彼は別のところで尖ってるから補完しあえるとか、まわりとの接し方もかわってくると思うんです。

佐宗:おもしろいですね。高校時代、社会を5点で捨てようってなったきっかけってなんですか?

津賀:中学までは、親の目が気になっていたんですが、高校になって周りの人をみて、自分はここがよくできるんだ、というのがわかったんです。社会で暗記するのは、いったい何になるんだ、なんて思ってました。数学はできても、国語は4択問題とかでもわからないし回答する気にならない。できる科目、できない科目が極端になっていきました。できる科目だけでやりきれる自信もあったんじゃないかな。

佐宗:そのときは何に興味があったんですか?

津賀:興味は数学とか物理に偏ってました。数式とかモデルとか、仮設を組み上げて答えを導くのが、人文系にくらべて楽しかったですね。大学も、好きな科目だけで受かればいいと思ってました。

則武:興味のある理数系を追求したところで、今の姿になっていったんですか?

津賀:それもちょっと違って、人間の生態に興味があって選んだだけですね。そこで自分なりに新しい知見を得たかった。星座でいえば形が大事で、絶対値が大事じゃないと思う。

佐宗:星座ってすぐには形にならなくて、経験が増えていって、結果として形になるんです。どうなるかわかんない段階でも、進んでいかなきゃいけない。先が何かわからない状態でも点を打ち続けるのは「Will」なんじゃないかなあ。

 

無理や無駄と思わず「見たことないもの」を見よう

則武:津賀さんは、どんな点を打ったらいいかわからない人にはどう声をかけますか?

津賀:私自身がやっぱり若い頃から悩んできました。最初は好きこそものの上手なれで、自分が一体何が好きなのかを探してきました。でも、そのうち、好きっていうのは、「What」じゃなくて「How」の領域が増えてきて。そうはいいながらユニークな体験をさせてもらってるので、自分の星座は形作られてきてると思います。それを大事にしていけば、いろんな方と初対面でも会話が成り立つし、へこんでいるところもたくさんあるので、素直に話を聞ける、柔軟に動けると思う。大きなビジョンとかを持ち続けられるのは天才だけだと思います。イーロン・マスクとか。

佐宗:(イーロン・マスクのような)本当の天才を目の前にした時の感覚ってどんな感じですか?

津賀:非常識ですね、過度な楽観主義。自分に都合の悪いことは消せる。普通はできません。(試験の)100点と5点の話で、5点を許せる。大きなビジョンからすれば多くのことはもうどうでもいいことになるんで、まっすぐ突き進んでいけるんですね。

佐宗:何を見るかっていう視界の話かなと思ってます。20代の頃は未来のことは見えませんでした。今はビジョンづくり、デザインづくりをしています。何もないキャンバスに対して物を描いていくのは認知のトレーニングにもなるんだけど、先が見えない時代の中で、見通す目を持つことは大事になってくじゃないかと思っています。

津賀:見たことのないものを見ようとすれば、やっぱりそこは非常に大きな刺激も得られますけど、多くの人はそれは「無駄だから」「無理だから」と見ようとしないというのがあると思うんですね。でもやっぱり見るべきだと思います。ちょっとしたことでもだいぶ違うと思うんです。

 

時代を作るのは「妄想家」。100BANCHでそのセンスを養って欲しい

津賀:私が最近思うのは、大都会は高層ビルで上に伸びたじゃないですか。上に伸びたものに対する高速の移動手段としてエレベーターが発達しましたが、横へ向けての移動手段というのはあまり進化してないですよ。でも、イーロンがやろうとしているハイパーなんとかみたいなものとか、トヨタ社長がやろうとしている、町を作って真横に移動のインフラを作るみたいながあって。これって縦のものを横にしてるだけの話で、もちろん技術とか様々なものが必要になりますけど発想的にはすごくシンプルなんです。

でも、みんなそうは言っても「金にならん」とか「すぐにはできない」とかいろんなこと言ってると思うんですよね。頭の中ではそれを考えるプロセスというのはタダなんで、自由にやれるわけです。それを無駄だと思うのか、タダだから絶対やるべきだと思うのか、妄想すべきだと思うのかどうかは私は大きいかなと思いますけどね。

則武:妄想をしている人は多いと思いますか?

津賀:圧倒的に少ないですよ。みんな自分で自分に枠をはめてて。決して能力がないわけじゃないですけど。

則武:大嶋光昭さん(100BANCHのGARAGE Programのメンター)も目をキラキラさせながら、こうだったらいいねみたいな話をずっとされているので、なんかこういう風に生きられたら歳をとらないなーって思います。

佐宗:時代をつくってきた人は、ほぼ妄想家なんですよね。30年とかかかって、ちょうど時代が来たから、世に出てるけど、かつては冷ややかに見られていた時間みたいなのもあったと思う。そういうのを経て、ようやく認められる、みたいな。これから、そういう人を育てたり、活躍できる場を作っていきたい、そういう人を活かすためにできることを考えてみたい。

津賀:そういう人はIQとかじゃなくて感性で選びたい気がしますね。色々なことを自由に妄想したり、それを現実に近づける姿をやっていただいたりという場はものすごく重要な場なので、私的にはお金は惜しみたくないなと思います。やっぱりこの妄想ができてそれを現実に近づけようとする場は、この企業を超えて国を超えて本来は実現するべきですよね。 100BANCHの中でもそういうセンスが養われるっていうのが、できてくるかもしれないですね 。

則武:妄想してそれを着実に実行するサイクルを早く回していくっていうのは、すごくここのムードとしてあります。妄想してそれをやってみる、素直にチャレンジするっていう所は本当にもっともっといろんなところに伝えていきたいなと思って活動しています。

 

コミュニティは「種芋」。食べるのではなく育てていく

株式会社BIOTOPE CEOの佐宗さん

佐宗:これがさらに進化のフェーズに行くためにはどういうことが必要なのかなみたいなことも個人的にはすごい興味があるんですけれど。

則武:進化っていう意味では、ここってコミュニティだと思うんですが、コミュニティとかエコシステムでお金にするっていう考え方を持った途端に崩壊すると私個人として思っています。ある方が「コミュニティは種芋のようなものだ、食べてはいけない」っていう風におっしゃっていてそれって本当にそうだなと思いまして。そこから次、芽吹いて何か食べれるものが出てくるかもしれないけれど、それ自身を食べてしまったらもう何かあった時にその材料がなくなってしまう。

100BANCHで活動してる若者っていうのはまだまだ荒削りですし、すごく大きな社会インパクトを出すっていうところまでは至らない時もあります。以前に津賀さんに言葉を頂いたことがありますが「パナソニックのような会社のチームワークで大きく物事を動かしていくような力と、ここが掛け合わさった時に大きな社会インパクトっていうのが生まれていくと思う。」と。進化の方向性っていう意味ではいつもそういうイメージを持っています。

 

自分で描いたものを形にするのが大事。締切を設けて「やる」を積み重ねよう

イベントの最後は、Willを持って未来を作っていく時の心得をお二人にご紹介いただき、クロストークを終了しました。 

佐宗:最初のタイミングで自分が描いた絵とか、物語の原型みたいなものっていうのは一見意味がないものに見えると思うんですよ。でも、それをやるかやってないかは本当に0と0.1の差がすさまじい差になるんで、ぼく自身は一回描いてみる、目に見える形に落としてみます。これをやるかやらないかだけでもかなり差が出てくるかなと思ってます。 

津賀: 時間軸がけっこう大事です。やっぱりせっかちに自分の気持ちに素直になって、熱い状態のまま、締め切りを設けて「そこまでの間にこれをやる!」ということの積み重ねだ と思います。でも短期的に答えの出ない問題の方が多いし、自分の頭の中が整理されるには時間がかかります。したがって、長期的に粘り強く、物事の本質を見続けるというマインドがあれば、まあそこそこ行くんじゃないかなと思いますね。

 

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