EVENT REPORT

2019.05.17 Fri

飼育員とファンが一緒に考える「動物園の未来」~zoojo『なんでもアリの動物園ブレストDAY!』開催レポート~

  • #ワークショップ

人生で動物園を訪れる回数は、約3回といわれています。
1回目は幼い頃に親と一緒に。2回目は恋人とのデートで。3回目は親になってから自分の子どもと。

――しかし、それだけでは勿体ない!動物園は、オフラインのエンターテイメントコンテンツとして、まだまだ活用される魅力があるはず。
もはや「動物園の虜」となっている20代女性3人による・zoojoが「知れば知るほどおもしろい動物園の魅力を、発掘して、世の中に広めていきたい」と意気込み、新たなムーブメントを画策しています。http://100banch.com/projects/13320/

その先駆けとして、2019年4月21日には主催イベント『なんでもアリの動物園ブレストDAY!』を実施。本レポートでは、その様子をダイジェストでお届けします。

執筆:梶川奈津子
撮影:谷口千尋

現在、日本の動物園は厳しい経済状況にあります。大半が公的機関であるためボランティア前提での取り組みも多く、金銭的にもできることが限られています。
zoojoは2016年12月に、その点に課題感を持った3名(有賀菜津美氏、藤本麻子氏、渡邊桜氏)によって誕生。より多くの企画の提案や持続的な活動をするために、動物園との新しい取り組み方を模索しています。リーダー・有賀氏は、その課題感について「動物園をめぐる課題は数多く、解決するには一筋縄ではいかないものばかりです。多様な娯楽が増える中での来園者の減少や、飼育動物の減少・老化だけでなく、動物園自体の閉園も珍しい話ではありません」と語ります。

そんな彼女たちが、今回企画したのは「ブレスト大会」。参加したのは、動物園関係者―運営者、飼育員といった当事者だけでなく、同じ課題感を持って活動する同志から動物園に足繁く通う動物ファンまで、71名の多岐にわたるバックグラウンドを持つ方々です。

今回のzoojoのこだわりは「制約をなくした議論」。ユニークなアイデア発想法で有名な「面白法人カヤック」の担当者から、事前にブレストやファリシテーションのポイントも学んだうえで進行に臨みます。他にも、様々な立場の参加者を混ぜたグルーピングや、アイデアを引き出す為のツール(面白法人カヤックの「ブレストカード」)を用意するなど、趣向を凝らしています。
様々な観点から「どうしたらもっと動物園のおもしろさが世の中に伝わるだろうか?」「動物園という場所を楽しんでもらえるだろうか?」というテーマについて、ブレストを重ねることができました。

 

ブレスト大会は、リーダー・有賀氏のユニークなイントロダクションから始まります。

 

この場のルールは、「懇親会まで素性を明かさないこと」。そこには、立場・役割に捉われず、初対面の参加者同士で心を開き合って新しい発想をしてほしい、とのzoojoの意図が込められています。アイスブレイクでは、各チームの「一番遠くから来場した人」をチームリーダーに決めました。

 

また、今回ムーブメントを考える手法として「ブレスト」を選んだ理由は3つ。

1つ目は、一人では出ないような「突飛なアイデアが出るから」。2つ目は、多様なメンバーが「チームワークを築けるから」。3つ目は、悩んだり、愚痴を言うのではなく「お互いのアイデアを面白がることで、さらによいアイデアを出せるから」。

 

さらに、より良いブレストの場にするためのレクチャーは続きます。

有賀氏から「ブレストがダメになる3つの典型例」も事前に共有。1つ目は「証人喚問スタイル」といって、1人1人の主張の是非を問い正すこと。2つ目は「居酒屋スタイル」。何でもアリとはいえ、話が脱線し過ぎること。3つ目は「経営者スタイル」。普段の仕事で気にするような、リスクや実現可能性を前提に考えてしまうこと。

多様な価値観を持ったメンバーから最大限の意見を聞きたい、とのzoojoの想いが込められた設計であることが伝わってくるレクチャーです。

そして、zoojoがこの場にかける期待が会場に伝わったところで、早速ブレストタイムに移りました。今回のブレスト大会、ユニークなのは「単なる意見の出し合い」ではないこと。進め方も、zoojoの設計が凝っています。

 

たとえば「動物園に来た理由」がテーマの場合、自分に順番が回ってきた10秒以内に、「今日動物園に来た理由は~、」と話し始める。「良いブレストにする秘訣は、”質よりも量””良いアイデアに乗っかる(上乗せする)”」ということで、思いつかない場合は、他人の前提に乗っかるのもOKです。

他にも、テーマは「動物が目的ではない、動物園のツアー企画」「テレビに出演して、動物園の魅力を3つ伝える」など、実際に動物園の運営側が課題を持っていたり、来園者に聞いてみたいことばかり。

たとえば、「動物が目的ではない、動物園のツアー企画」では「人気アーテイストのコンサート会場として使って、来場ハードルを下げるのがよいのでは」「テーマパークのように、隠れ動物のモニュメントを作って、探してもらうのも面白そう」「動物と激闘するサバイバル企画で、リアルな食物連鎖を感じてもらう…」など。

 

参加者の中には、動物園運営の関係者が多く、自分の番で楽しそうに意見を出す一方で、他人の番ではユニークな意見に対して熱心に耳を傾けていました。

――懇親会をお楽しみ中の参加者の方に、お話を伺いました。

 

ご自身も「動物園を活性化させる活動」に取り組んでいらっしゃる20代・NPO勤務の男性は、本ブレスト大会が非常に学びが多い時間だったと語ります。

「こうしたワークショップを開きたいと思っていたところだったんです。その点で、学びが多かった。私の拠点は名古屋ですが、やはり東京の方が情報が集まりやすいですね。動物園の飼育員の方や、趣味で動物園を楽しむファンの方など、様々な立場だからこそ知っている『動物園』の面白さを聞くことができました。たとえば、飼育員の方は、もはや動物の声を聞く(鳴き声や様子から感情のニーズを把握する)ことができるらしいんです。『心を通わせている飼育員が、ツアーガイドをやるのも面白そうだね』なんて盛り上がりながら、皆胸をときめかせていました」

また、この7年は動物園に月2~3回も通うほどファンだという20代・会社員の女性は、同じ趣味を持つ仲間と語り合える数少ない経験だったと話します。

「もともとzoojoの活動に共感していて、今回参加しました。動物園が大好きで、趣味で飼育体験のイベントに参加したりします。特に好きな動物(カワウソ)については、写真を撮りに行く仲間までいるんですが、それ以外の動物が好きな方と出会える機会は多くありません。今日は『動物好き』というテーマで様々な方がいらっしゃったので、動物のマニアックな話を分かち合い盛り上がれる、貴重な時間でした。とても居心地が良かったです」

――懇親会でも熱心に参加者との意見交換を楽しむ、運営の3人にもお話を伺いました。

 

zoojoリーダーの有賀氏は、溌溂とした表情で達成感を話してくれました。

 

「動物園は『命』を扱う場所なので、業界の方々と運営について議論をすると、必要以上に畏まったり暗い雰囲気になることも。また『動物ファースト』というか、運営上の既存の制約をベースに議論が進みがちです。一方、一般の方にとって、動物園は本来的に楽しい場所であるはず。今回は、運営側・来場側と様々な立場の人が混ざって議論をすることで、業界に良い風を吹かせたいと思っていました。結果は、個人的には大成功でしたね。先ほど、動物園の方からも、この場で生まれたアイデアやブレスト大会自体を取り入れたい、というお声まで頂いたんです。こうした活動を継続して、世界にも伝わる『日本の動物園ならではの面白さ』を見出していきたいですね」

 

続いて、同メンバーの渡邊氏に、今後のzoojoの方向性について聞きました。

 

「今回は、動物園関係者の方も多く、ワークショップでもリスク観点を気にされることが多いのでは?と気になってましたが、想像以上に盛り上がる場となりました。殻を破って、自由な発言をしていただける場として機能したようです。私たちにとっても、ビジョンを実現する上で、こうしたイベントが有効なんだと学びになりました。次の取り組みのヒントを沢山もらったので、実現できそうな動物園ツアー企画などは、早速実行したいですね」

 

さらに、同メンバーの藤本氏が、このように付け加えます。

「動物園を取り巻くニュースって、ポジティブかネガティブの両極端なんですよね。たとえば、動物の赤ちゃん誕生!というような微笑ましいニュースか、飼育員の事故や閉園にまつわるような悲しいニュース。世間一般で取り上げられている動物園のニュースって、このどちらかだけではないかと感じていて。。こうした一過性の報道だけでなく、そもそもの動物園の魅力を継続的に発掘・発信ができたら、と思っています」

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WRITER

梶川 奈津子

ライター・編集者

1992年生、早稲田文学部卒。事業会社で新卒採用に従事する傍ら、フリーランスのライター・編集者として活動中。
執筆業の目的は、「誰もが自分らしい生き方・働き方を肯定できる」機会を創ること。
日本語フェチ。文学の情景に思いを馳せては、胸がときめく。語彙を増やすことも趣味。
Twitter:@natsukok89

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