LEADER INTERVIEW

2018.12.03 Mon

危機感を持つことが前進への第一歩——移民が引き起こす問題と日本社会の未来:NIHONGO・永野将司 × LIGHTENED・奥田亮史

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10年後、20年後を想像したとき、あなたの隣には外国人がいますか?
遠くない未来、日本人と外国人が分け隔てなく生活する社会が日本に訪れるかもしれません。

現在、国会では外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」)改正案の審議をめぐり、「内容が不透明だ」「治安が悪化するのではないか」「移民を受け入れるのか」などの懸念事項について、連日のように与野党で論戦が繰り広げられています。
そんななか、11月27日の衆議院の法務委員会において、この法案が与党の賛成多数により強行採決されました。なんでも政府は、入管法施行後、2019年4月から5年間で34万人もの外国人労働者を受け入れようとしています(2018年11月29日現在)。

この報道を目にするも「なぜこれほど入管法に注目が集まるのか」と疑問を持った100BANCH編集部は、日本で生活する外国人にフォーカスを当てた2つのプロジェクトに注目。この問題についてそれぞれの見解を聞きたいと考えました。

今回、対談をお願いしたのは、日本語が理解できない「言語難民」に新しい日本語教育を提供するプロジェクト「NIHONGO」のリーダー・永野将司さんと、国内大学に通う外国人留学生にインターンシップ機会を提供するプロジェクト「LIGHTENED」のリーダー・奥田亮史さんのおふたりです。

外国人労働者の未来を見つめるU35世代のおふたりに、日々、入管法の審議で情報が変化する状況や、それにより引き起こる問題、さらには外国人との共存が加速する未来に向けて、私たち個人や企業がすべきことまでお話しいただきました。


左からLIGHTENED・奥田亮史、NIHONGO・永野将司 

 

——永野さんは留学生や技能実習生などの単純労働を担う外国人労働者にフォーカスされる一方で、奥田さんは高度外国人材にフォーカスされています。一見すると対象が相反するように感じるおふたりは、それぞれ外国人労働者における問題点についてどのように感じていますか。

永野:私も奥田くんも根底で抱える問題は同じように思います。日本では、外国人が日本で生活することを想定している仕組みがほとんどなく、彼らの受け入れ体制が全く整っていません。

 

奥田:そうですね。市役所でのやりとりや携帯電話の契約など、まだまだ外国人のサポートは薄い。

 

永野:はじめは銀行口座も作れません。今、日本では外国人に対して包括的に介入できる省庁もありません。ビザ関係は法務省、教育関係は文科省、労働関係は経産省や国土交通省、農林水産省など技術によって異なります。
そのような複雑な状況だから、外国人に何か問題が起こっても明確に相談できる場所や解決できる場所がすぐには分からず対応が遅れる。連日、ニュースで移民問題が話題になっていてもなお、その状況は何も変わっていません。

 

奥田:国は外国人労働力が必要だと政策を進めても、基本的に彼らの定住や永住を認めない方針です。その本音と建前で食い違いが生じ、その歪みが少しずつ広がっているように感じます。

 

——ここ数年で外国人観光客だけではなく、コンビニエンスストアや飲食店など、各所で働く外国人が増えたように思います。そのような状況でも、国は外国人労働者に対しての体制づくりが追いついていないのですね。

永野:統計では現時点で260万人以上、つまり名古屋市民とほぼ同じ人数の外国人が日本にはいるはずなのに、その人たちのほとんどは、私たちの見えないところで働いています。おそらくコンビニや居酒屋で普段目にする外国人は、日本に住む外国人の10パーセント以下ではないでしょうか。彼らのほとんどは、運送業の仕分けや、工場で弁当の盛り付けなど、日本人がやりたがらないような場所で仕事をしています。

 

 

——そういう人たちは日本語を話せますか?

永野:ほとんど話せない人ばかりです。彼らは困った場合にその内容を伝えることさえできない。法律からすると労働基準監督署が守ってくれるはずですが、彼らはその機関があることすら知りません。

 

奥田:彼らの生活における権利が守られていないことは大きな問題だと思います。生活面だけではなく、労働に関しても契約書が交わされていないことで、不法な労働環境のもとで働かされても訴えることもできません。勤務中にケガをしても保険も使えず泣き寝入りをしてしまう話もよく耳にします。

 

永野:極端な話をすると、日本語が分からずコミュニケーションが取れない外国人は、「人として扱わなくてもいい」という考え方につながっている気がします。移民を受け入れる大半の国では、公費を使い専門家が語学教育をおこなっています。
でも、日本はその教育の多くを素人のボランティアにゆだねている。それでは時間を費やしても日本語は上達しません。あまり知られていないけど、カタカナすら書けない留学生でも入学を受け入れている大学もざらにあります。それでは単に日本社会に適合できない外国人を増やすだけです。

 

奥田:東京大学や早稲田大学、慶應大学を含め、日本政府は留学生を増やす目的で、英語のみで大学を卒業できるコースを増やしています。そういった学生は日本での就職率が低く、彼らに対してのサポートは限定的です。

 

永野:私の経験上、200〜300時間の日本語学習をすればCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠ヨーロッパ言語共通参照枠)のA1レベル、つまり外国人が生活するための基礎的な日本語力は十分に習得できます。ただ、それだけの日本語力がある外国人は現状では非常に少ない。このような体制のなか、さらに外国人労働者が増加する流れに大きな危機感を感じています。

 

——外国人労働者の受け入れを拡大する入管法が移民問題として連日ニュースを賑わしています。この問題についておふたりはどのように捉えていますか。

永野:正直、“外国人労働者”という言葉だけでは幅が広すぎて捉えにくい。私がプロジェクトでフォーカスする単純労働者層と、奥田くんがフォーカスする高度外国人材層では、フィールドが違いすぎます。

 

奥田:ひとくくりに語ることって、難しいですよね。

 

永野:私がフォーカスする層で言えば、入管法で非常に多くの不法滞在者が増えると思います。多くの日本人は「外国人労働者は安い」と勘違いしていますが、そうではありません。外国人技能実習制度※で訪れる技能実習生を雇うには、1人当たり月20万円以上の費用がかかります。企業が技能実習生を雇用した後にこの事実を知り、彼らの給料から大幅な控除をするなど不法な扱いをしてしまう。
さらに、日本語が通じないからと殴る、蹴るなど暴力を受けることもあり、その環境に耐えきれずその場から逃げ出し、その結果、彼らの多くは不法滞在者になってしまう。入管法によって外国人労働者が拡大されると、予想以上の不法滞在者が生まれる気がします。その対応策の一歩として、彼らが日本語でコミュニケーションを取れるだけの語学教育が必要になると考えています。

※外国人の労働者を一定期間日本国内で技能実習生として雇用し、さまざまな分野の技能を修得してもらおうとする制度。

 

奥田:私が取り組む高度外国人材層で言えば、世界中の労働力が注目するほど、現在の日本は魅力的な国ではないと考えています。彼らが日本で働く主な目的はある程度の金銭面と日本独特の文化面、そして安心して暮らせる治安面の3要素だと考えています。ただ、理想的な労働環境を考えると、バリバリ働きたい優秀な外国人材は日本ではなくアメリカなどの諸外国を目指しますよね。

 

 

永野:そうそう。日本はもはや魅力的な国ではないよね。たとえば、ベトナム人学生のトップ層が最も働きたい国は欧米圏で、次いで中国。その次は自国のベトナムで、その次にようやく日本を選択することが多いようです。ベトナム国内で仕事に就けない層が、出稼ぎ先として日本を選ぶ。それくらいの立ち位置です。でも、彼らが多額の借金を抱えながら日本に留学しても、その多くが借金を返せず不法滞在者になってしまう。そんな負のループが今も続いています。

 

奥田:まだ日本は先進国を除けば比較的給与水準が高いという利点があるので、今後も彼らがやってくることは想定できる。ただ、受け入れ体制が整備されないまま入管法を施行すると、その不法滞在者予備軍が拡大し、制度と現実のギャップが拡大していってしまいます。

 

永野:この流れを早く食い止めないと、日本は思わぬ危険に直面してしまう。でも、それを想定できる人はまだまだ少ない。

 

奥田:そもそも、人口が減りつつ高齢化が進む日本の未来を、多くの人が想定していないのではないでしょうか。日本の人口は2050年に8000万人台に減り、2100年台には4000万人台になると予想されています。同時に高齢化が進んで生産年齢人口が減るので、国を進める以上は足りない労働力を海外から補おうとする動きは当然だと思います。
入管法の施行によって多方面から問題が表面化することになるでしょう。そのタイミングではじめて移民問題も含めて様々問題が議論され、徐々に外国人の包括的な受け入れ体制が進んでいく気がします。
この問題は短期的に見れば非常に大きな問題だけど、10年、100年と長期的なスパンで見ると、やむを得ない犠牲だと思います。基本的にどんな問題もニーズが先行して、実際に問題が生じ、法治国家としての整合性を保つために遅れて法整備が進んでいきます。移民問題は長期に及ぶ日本の課題であり、入管法はそれを解決するひとつのステップだと捉えています。

 

——この先、日本はさらに多様な人種で構築される社会になることが予想されます。そのような社会が訪れることについて、どう考えていますか。

奥田:日本は「違いが当たり前だ」と思える社会が必ずやってくると思います。日本でもLGBTが当たり前になってきているように、国や肌の色、宗教や言語が違うことが当たり前な社会となっていく。

 

永野:以前、日本語を教えていた学校に「私は父がフランス人で母がイタリア人で、中国で育ったけどアメリカ系の学校に通っていたから英語も話せます」という生徒がいました。そういう人たちに「あなたの国はどこ?」なんて絶対に聞かないじゃないですか。これからは複合的なアイデンティティを持つことが当たり前の社会になり、「日本人の親で、日本に住み、日本語を話すから日本人だ」という感覚が通用しなくなる。未来は出身国の概念が、出身県と同じくらいになる気がします。そのような枠組みにしてしまえばいいんじゃないかな。

 

 

奥田:何年先かは分からないけど、それくらい外国人が身近な存在になっていると思います。その「違いが当たり前」となる社会を、私たちのプロジェクト・LIGHTENEDは少しでも早く到来させたいと考え、活動を続けています。

 

——その「違いが当たり前」となる社会が実現するまで、日本はどのような未来が待っていると思いますか。

奥田:正直、暗い未来がやってくると思います。

 

永野:そもそも、ヨーロッパやアメリカには古くからの移民の前例があるのに、なぜ日本はそこに学ばないのかと疑問に思います。トランプ大統領はずっと「移民は受け入れない」と話しているし、ヨーロッパの各地も移民問題で衝突が起こっている。世界的に見れば移民の受け入れを反対する流れのなか、移民とも取れる外国人を解放する方針に踏み切った日本の未来は正直想像がつきません。

 

奥田:日本人だけで国を動かせた時代は終わりを告げ、さらなる人口減でその体力はどんどん衰えていき、移民問題によって多くの混乱が引き起こることは明白です。その社会の下降状況は5年、10年と短期間ではなく、もしかすると100年、200年と続くかもしれません。その下降期間を少しでも短くして「違いが当たり前」となる社会を早く到来させたいです。

 

 

——暗い未来を予想するおふたりは、この先に私たち1人ひとりが何をすべきだと思いますか?

永野:目にしない外国人を意識することだと思います。なぜアマゾンで注文した商品は時間通りに届くのか。なぜコンビニエンスストアの弁当はいつも豊富な種類がそろうのか。その理由は、倉庫で商品の仕分けをしたり、工場で弁当の盛り付けをしたりする多くの外国人労働者がいるからです。まずは彼らの存在に意識を向け、さらに流入が予想される外国人と私たちとの未来に目を向けることが重要だと思います。

 

奥田:ほとんどの日本人は、日本の未来を全く考えられていない気がします。日本で外国人が増えると、何が起こり、社会はどうなるのか。それを理解すれば、多くの人が自分ごととして危機感を持つと思います。たとえば私と同世代の20代だと、「人口が3分の2ほどになる20年、30年後に、外国人と働いたこともないままだと、どういったキャリアが作れるのか」「そのキャリアが自分の求めるものなのか」「自分はそれで満足できるのか」と、いま一度考える必要がある。それを考えるだけで、今後の日々の意識や行動が変わってくると思います。

 

 

——おふたりのプロジェクトは外国人雇用と密接に関わっています。外国人と共に働くことが当たり前をなる社会に向け、企業の採用担当は何を考えるべきかの見解をそれぞれ教えていただけますか。

永野:たとえば、技能実習生を必要とする企業は、もっと日本語教育にお金をかけることが重要だと考えます。現状では彼らが日本語を勉強する期間は非常に短く、教育の質も決して高くはありません。そのため日本語は全く上達しない。単純労働だからと彼らにお金をかける感覚のない経営者が多い状況です。しかし、日本語教育にコストをかけることは、外国人を雇用するうえでの責任だと思います。その教育をしっかりおこなうことによって、企業の価値や生産性は確実に上がると思います。

 

奥田:個人の問題と同じように、多くの企業は長期的な採用戦略を立てづらいために、未来への危機感を持てず、行動が変わらないのではないでしょうか。「果たして、この会社は20年後、30年後に続いているのか」「続いているとして、このまま高い採用力を保つことができているのか」と考えていくと、日本人の労働力はだけでは難しいと気付くはずです。そのため、今から毎年1人でも外国人を採用していくことが本当に大切になる。その長期的な視点を持つことが大事だと思います。

 

 

《編集後記&イベント紹介》

取材後、日本における外国人の現状とこれからを聞いた100BANCH編集部は、「この問題について理解が不足していた」と実感すると同時に、未来に向けての焦りや危機感を抱きました。この対談を読み、私たちと同じような不安を抱いている人も多いのではないでしょうか。
そんなジタバタする私たちを横目に、永野さんと奥田さんは「まだ大枠しか話せていない」「この取材だけで外国人労働者と日本の未来を伝えることは難しい」と口にしました。

 

「この先、外国人労働者が及ぼす日本の未来を、もっと自分ごととして知る機会が必要ではないのか」

 

そう考えた、永野さんと奥田さんは、移民問題を考えるイベント「今さら聞けない移民問題 〜外国人雇用のリアルな現状+α〜」を12月13日(木)に開催することにしました。

移民問題の現状を知るとともに、日本のあるべき姿を見つめ、そのなかで私たちはどう生きていくべきか——。まずは私たちに忍び寄るこの大きな問題に気付くことが、本当の未来を知るうえでの大切な一歩ではないでしょうか。

 

みなさんのご参加、そしてご意見をお待ちしています。

《イベント情報》

・タイトル:今さら聞けない移民問題 〜外国人雇用のリアルな現状+α〜
・日時:12/13(木) 19:00〜21:00
・登壇:NIHONGO・永野将司 / LIGHTENED・奥田亮史
・場所:100BANCH
・費用:無料(donation)
・チケット:https://nihongo-lightened-1.peatix.com/

 

WRITER

100BANCH編集部

船寄 洋之

writer / gallery / coffee

鳥取県生まれ。アパレルメーカー、出版社を経て、横浜・反町にH.Funayose galleryをオープン。ギャラリー運営のほか、ライター業や出張コーヒースタンドもおこなう。

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