社会の“当たり前”を壊し、自分の意思で決断できる未来を創造する。
Scrap and Build
社会の“当たり前”を壊し、自分の意思で決断できる未来を創造する。
これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」では、活動期間終了のタイミングで、どんな実験を行ってきたか発表する実験報告会を実施しています。
2019年9月25日に開催された実験報告会では、下記のプログラムが実験を振り返りました。
登壇プロジェクト一覧
・Physics As Art:「数式」をアートし、数式だけの美術館を作る
・Natural Mystery Toolism:自然物が持つ感性的な価値を活かした、「これからの道具のデザイン」を探求する
・PAIN PAIN GO AWAY:「アート」によって、病院に「ワクワク」を取り入れる
・Grubin:アメリカミズアブを使った食品リサイクルでフードロス問題を解決へ
・WAKAMONO SAKE Project:未来の日本酒ファンのために、日本酒の多面的な価値創造を目指す
・And Build:社会の“当たり前”を壊し、自分の意思で決断できる未来を創造する
・AEDi:救えるはずの命が救われる社会を目指す
・Cinemally:ドラマチックな出逢いを通して、全ての人の隣に仲間がいる社会を作る。
・VEGETABLE BENTO PROJECT:渋谷から始まる世界対応シェフによる、ワンテーブル料理を囲もう
・bugology:昆虫食はニュースタンダードな食文化になるのか!?
この記事では、紆余曲折を経てリニューアルを果たしたAnd Build、思わぬ気付きが活動の自信へと繋がったPhysics As Artを紹介します。
And Build 日髙 成樹
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/16352/
And Buildは映像型メディアを通じて、若者が抱えるモヤモヤの解決を目指すプロジェクト。理想や未来像を描き活躍するプロジェクトメンバーと同じ20代の若者のインタビュー動画を配信することで、若者が抱えている迷いや不安を解消させていくことを試みています。
日髙:21世紀は多様性の時代と言われ、昔と比べると人生の選択肢が増えました。しかし、多くの若者は以前と同じように一歩踏み出すことができず、「なんだかモヤモヤする」「今の自分のままでいいのか」と悩んでいる。そんな若者を僕は大学から社会人になるまでの期間に多く目にしてきました。
「一体、若者のモヤモヤの正体は何だろう」、「人が一番ワクワクする瞬間はいつだろう」。その疑問から、このプロジェクトは始まったと日髙さんは言います。
日髙:今の若者は理想像や未来像を描くことができないから、モヤモヤしているのではないか。そこを深掘るうちに「若者のモヤモヤを解消する方法は、夢や何かを追いかけているときなのでは」という考えにたどり着きました。そこで、And Buildは、理想を持って行動する若者へのインタビュー映像をメディアとして配信することで、若者が抱えている迷いや不安を解消させたいと考えました。
しかし、予想に反して実際には、一貫して目標に突き進む若者はほとんどいませんでした。一見、明確な理想像があり、そこへまっすぐ向かっているような人でも、悩んだり、やむなく路線変更しているケースも多く、それを知り非常に驚きました。
当初、And Buildのプロジェクト名は「Scrap and Build」でした。
日髙:はじめは人生・生き方をテーマに「自分の当たり前をぶっ壊して、新しい自分を作れ!」というコンセプトで動画を制作するつもりでした。でも実際は、少しずつ変化しながら実績を積み上げて、理想と現実を近づけている人が多く、その変化のプロセスによってモヤモヤとした気持ちが変化していた。その壊すのではなく、積み上げながら変化する様子から、プロジェクト名にある「Scrap」を外し、現在の「And Build」として活動を続けることにしました。
プロジェクト名を刷新したAnd Buildは、メディアの発信内容のリニューアルも行いました。
日髙:当初は「輝いている人からのメッセージ」のようなインタビュー動画を制作する予定でした。しかし、僕を含め、And Buildのメンバーは社会人1年目であり、多くの若者と同様に僕たちも不安や悩みを抱えていたので、僕たち自身が変化していく様子も描き出す映像を制作することにしました。僕たちが不安や悩みをぶつけ、変わっていく様子を同世代の視聴者へ届けたい。And Buildは、そんな等身大のメディアを目指していきたいと思っています。
若者が抱える悩みを真正面から受けとめ、新たなチャレンジを続けるAnd Build。今後も動画を配信する予定ですので、彼らの活躍にご期待ください。
Physics As Art 加藤 雅貴
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/19228/
「数式には、芸術的な価値がある」
Physics As Artは、数式の美しさや芸術性を広く一般に伝えるプロジェクト。数式を科学者や研究者など専門家だけでなく、万人が鑑賞や制作して楽しむことができるものへとイメージを転換させていくことを目指しています。
加藤:私は大学院で素粒子宇宙物理学専門とする研究を行っています。研究者の間では古くから「数式は美しい」と表現される反面、一般の人からすると数式は難しい概念であり、そのままでは美しいと解釈できません。そこで私は「数式を『アート』として捉えることによって、一般の人でも数式の美しさに触れることができるのではないか』と仮説を立てました。
私は、アートは「アーティストの心情やアーティスト自身からみた世界を、絵の具やカメラなどのツールを用いて表現したものだ」と考えています。その意味では、数式もアートと同じ。それは、数式は世界を支配する法則を物理学者や数学者が、数学の言葉や数、文字を使って表現したものと言えるからです。
数式をアートと捉え、その美しさを伝える方法は2つあると加藤さん。それは「シンプルに数式を鑑賞して楽しむこと」、そして「数式を制作し、アートのツールとして数式を楽しむこと」だと話します。
加藤:まず、数式を鑑賞して楽しむために、一般の方でも読むことができる方法を模索しました。結果、カタカナを使い数式を作ることで、鑑賞しやすくなることに気付き、加えて、数式の背景を知ることも鑑賞が楽しむことに繋がるのではないかと考えました。
ゴッホの絵画は絵そのものから感銘を受けることはもちろんですが、ゴッホの背景にあった壮絶な人生が、彼をさらに魅力的に映し出す部分も多分にあります。同様に、数式を生みだした作者の人間性や人生、例えば、アインシュタインの性格や人生を知ることで、彼がつくり出した数式を見たときの印象が変わってくるはすだと。
また、「数式を制作し、アートのツールとして数式を楽しむこと」についても解説。その方法は「数式を個人的な自己表現ツールにすることで実現する」と述べ、「自分自身の幸福度を解とするオリジナルの方程式を作る」という実験を行いました。
加藤:天気予報などの予測に用いられる「ナビエ–ストークス方程式」を利用し、自分の過去データから未来の幸福度を予測する方程式を制作しました。この方程式をさらに改善して、今後は芸術祭などに出展を図り、多くの人に数式のもつ芸術性を伝えていきたいと思います。
Physics As Artは、9月に数式をアート作品として「鑑賞」するイベント「『数式』の美術館」を開催。ニュートンやアインシュタインなど有名な物理学者が作った数式や、数式をモチーフにした作品を鑑賞。さらに「鑑賞」と「制作」の二つの軸で、「数式」というアートの世界に触れるワークショップも行いました。
加藤:数式は見るだけではダメだと思うんです。手を動かし、自ら制作を体験してみることが重要。アインシュタインは数式で宇宙を表現したけれど、そうではなく、もっと身近なものを数式で表現する。それにより数式の理解が深まり、よりその芸術性を感じてもらえると思います。
最後に、加藤さんは100BANCHに入居し、大きな気付きがあったと、その活動を振り返りました。
加藤:物理の世界において、特に理論物理の世界は「研究者は研究だけしていればいい」という風潮が強い環境でした。そのような閉鎖的な環境で生きてきた私は「自分のアイデアが面白いのか、面白くないのか」も分からないまま、100BANCHに入居しました。でも、予想に反して、100BANCHには僕のアイデアを「面白い」と言ってくれる多くの人たちがいました。それには本当に驚きました。その反応から、少しずつ物理関係の友達にも話すようになり、彼らのなかにも「それ、面白そうだね」と反応してくれる人も出てきました。そういった意味では、「Physics As Artのアイデアを人に話す」ということ自体が私にとってのひとつの実験だったと思います。
数式を鑑賞し、自らも作成する。その体験が広がることで、数式の持つ芸術性が世の中に浸透していくはずです。Physics As Artがもたらす、新しい提案に今後も注目です。
試行錯誤の量は、決して裏切りません。仮説を立て実験を繰り返し、時には方向転換をしたり、アイデアに自信がなくなってきたり。しかしそれでも、自分の信念をもって動き続けることで、自分たちの描く未来へ前進していく。荒削りでも、実験を重ねていくことの大切さを感じさせてくれた実験報告会となりました。
試行錯誤の量は、決して裏切らない。仮説を立て実験を繰り返すうちに、時には自信がなくなったり、方向転換を余儀なくされたり。でも、信念を持ち動き続けることで、自分たちの描く未来へ前進していく。例え荒削りであっても、実験を重ねていくことの大切さを感じさせてくれた、今回の実験報告会となりました。
100BANCHでは毎月1回、実験報告会を開催しています。10月の実験報告会では「〜テクノロジーから新しい体験を生みだす方法を考える〜」をテーマに、3つのプロジェクトをお呼びして、参加者の皆さんとディスカッション形式で実施をします。
【ゲスト】
雨宮優|KaMiNG SINGULARITY
Ozone合同会社CEO/体験作家
”無”音楽フェス「サイレントフェス®︎」”泥フェス”「Mud Land Fest」”風呂フェス”「ダンス風呂屋」”無音盆踊り”「Neo盆踊り」””などなど全国各地で”問い”としてのフェスティバルをプロデュース。
野々村哲弥|Omoracy
兵庫県川西市出身。 同志社大学卒業後、(株)ジャパンエフエムネットワークに入社しラジオ営業や番組制作や新規事業(中国向け広告)等幅広い業務に携わる。 2018年、独立しOmoracyを始動。人間心理の研究をベースとした「面白い」「新しい」体験型アトラクションの開発に着手している。
木村亮仁|Yspace
千葉県流山市出身。合同会社Yspaceにて教育事業を担当。教育はもっと面白くあるべきだと信じ、「遊びが学びの原点」をモットーに様々な可能性を模索中。1つの可能性として、VRは遊びの拡大と学びの動機付けに有効なのではないかと考えている。これまでにVRを使った小学生向け理科教室を複数回主催。専門は制御工学で、複数台ロボットの協調制御に関する研究をしている。東京工業大学在学中。合同会社Yspace