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数式をアート作品として、「鑑賞」してみませんか?「数式」の美術館 イベントレポート

「数式」をアートして捉えるプロジェクト、Physics As Art が2019年9月28日に、「数式の美術館」というアート展を開催しました。

この企画では、「数式の展示」及び、「数式をアートとして楽しむためのワークショップ」を行いました。

「数式をアートする」ということについて、広く一般の人に知ってもらい、また、来場者の方々の意見を頂き、数式をアートする取り組みの可能性を探った本イベント。

その様子をリーダーの加藤 雅貴が紹介します。

「数式もアートの一つである」

プロジェクトの基本コンセプトは、

    ・「数式もアートの一つである」

    (表現ツールが一般的なアートとは違い、「数学の言葉(数や記号など)」を使っている。)

ということです。

アート(芸術)とは、リアル(アーティストの想像から生まれたものを含む)を、絵の具やカメラなどを使って表現したものであると、私は考えています。鑑賞者は、それを美しいと感じる時もある。また、数式とは、世界を支配する法則を、「数学の言葉(数や記号など)」を使って表現したものであると、考えます。そして、私を含む物理学者や数学者は、それを美しいと感じることがあります。

このプロジェクトは、その数式の美しさを一般の人にもわかるような形で伝えることを目標としています。また、物理学者や数学者といったプロフェッショナルな研究者でなくとも、世界を「数式」を使って、表現できることを確かめるのを目標としています。

 

数式の展示について

展示スペースでは、各時代を代表する天才たちの数式を7種類展示しました。数式は書いてみたり、声に出してみたりすることで理解が深まるため、目でみて鑑賞してもらうほかに、数式を模写してもらったり、音読してもらたりして頂きました。実際の研究の現場でも数式をただ眺めているより、声に出して議論したり、実際に手を動かす(式を変形していく)ことが多いです。この展示では、数式ごとに各々の物理学者たちの表現の個性がでていることを観賞者に気づいてもらうことを意図していました。

個人的には、リチャード・P・ファインマンのファインマンダイアグラムが一番のお気に入りです。あえて、数式という形を取らずに、図に数式の意味を内包させてしまう手法が、説明上手なファインマンらしさが出ているように感じます。

ワークショップについて

ワークショップでは、「鑑賞方法の提案」及び、「オリジナルの数式作り」を行いました。

前半は、展示スペースにおいて、展示行なっていた数式の中から、一つの数式を選び、私なりに鑑賞方法を提案し、解説を行いました。今回は、「宇宙のすべてを一行で表現した」アインシュタイン方程式を取り上げ、

・作者の人柄

・作品の注目ポイント

・作品が時代に与えたインパクト

と言った様々な観点から、参加者の皆さんと作品についての理解を深めました。ここでは、アインシュタイン個人の人間性に触れた上で、その人間性が数式にどのような形で現れてきているのかについて詳しく解説しました。また、その数式がその後の科学者にどのような影響を与えたかという話まで行い、まるで美術史をやるかのように観賞してみました。

後半では、オリジナル数式を使って、身近なことを表現する方法を紹介し、実際に参加者に数式を作って頂きました。

実際の物理学の世界では、宇宙全体や電磁気一般のことなど、極めて普遍的な現象を一般的に記述することがほとんどです。しかし、扱っているものがとても一般的なため、数式が多くの人に馴染みのないようなものになってしまっています。しかし、物事をシンプルに客観的に表現するツールである数式だからこそ、より個人的で特殊な事柄を表現するにはうってつけだと考えています。自分自身の性格や悩み、夢などと言った、自分にとって身近ではあるが、近すぎて見えなくなってしまっているようなことを、「物理学的思考」に基づいて「数式」を用いて表現し直すことを参加者には体験して頂きました。そのような行為を通じて、いつもと違った視点で自分自身のことを見つめ直す機会になることを意図しています。

具体的には、このワークショップでは「足し算」と「微分方程式」の二つの種類の式を組み合わせてもらうことで、参加者の方々の好きなように身近なことを表現してもらいました。

例えば、自分自身の日頃のタスクを足し算で表す人もいれば、自分自身の心の安定性を微分方程式で表す人もいました。また、自分のタピオカドリンクの好みのオーダーを足し算で表す、女子高生もいました。

参加者の多くが、数式を使えば日頃の複雑な仕事や習慣を簡単に整理することができる、とオリジナル数式を楽しんでいました。また、オリジナルの数式作りは自分で文字などを定義するので、自分自身にしかわからない暗号性がある。しかし、自分にとっては言語化するよりも、簡単に意味を取ることができて便利だという声も頂きました。

このプロジェクトについて深く知りたい方へ

Physics As Artの加藤さんも登壇する、イベントを10月20日に100BANCHの3Fで実施します。

百芸論回 〜未来のアートの話をしよう〜と題して、100BANCHの歴代アートプロジェクトから5プロジェクトをお呼びして、彼らの活動を参加者の皆さんと一緒に掘り下げます。

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