小学生と高校生のための寺子屋で、 公教育の充実に双方向からのアプローチを!
- イベントレポート
聞くこと・応援することで、組織の風通しがよくなる 実験報告会&メンタートーク
これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」。3カ月目と活動期間終了のタイミングで、どのような実験を行ってきたかを発表する実験報告会とメンタートークを実施しています。
2021年2月のメンタートークには、NPO法人ETIC.の理事・事務局長を務める鈴木敦子さんが登壇。そして、この日は7プロジェクトがそれぞれの活動について成果報告を行いました。
組織が大きくなると、みんながつらくなってくる
前半はメンターの鈴木さんが、「起業してからその後のチームづくり」をテーマにトークを行いました。
登壇するメンターの鈴木敦子さん
鈴木敦子さん プロフィール
早稲田大学第二文学部卒業。在学中より中国・アメリカなど海外留学・放浪を行う。また各種アルバイトを経験し、ETIC.の前身である「学生アントレプレナー連絡会議」の勉強会などに参加。自らも起業したいと、能力未熟のまま卒業直後に起業する。ルームシェアのコーディネートの事業を2年半経営して廃業。97年のETIC.事業化に伴い、事務局長に就任しインターンシップのコーディネート、若手起業家支援などの各種プログラムを実施。現在は、マネジメントサイクル全般、主に人事、組織作りなど担当。年間約200名の起業家や学生の起業相談、キャリア相談を受け、約100社のベンチャー企業と学生のインターンシップのコーディネートなどの実績がある。
鈴木:私は事務局長というかたちで、これまで組織づくりやマネジメントを担ってきました。ETIC.の事業は起業家を応援したり、挑戦が育まれる社会づくりをすることをコンセプトに、20年ほど活動しています。多くの企業や団体に対して組織づくりや人材づくりのお手伝いをしているので、多くの組織のケースを見てきました。
一緒に働く人数が50名ほどになると、事業部やチームに分かれていくことが多いという鈴木さん。チームのマネージャーを任せられた人は、自分の持つチームを良くしようと思うあまり、他のチームを見る余裕がなくなってしまうと言います。
鈴木:社内の横や上との風通しが悪くなってしまうんです。それで、なんだかうまくいかないことが増えてくる。この流れのなかで多くの起業家がつらい思いをする姿を見てきました。どうしても経営者に判断や責任が求められて、また強いリーダーであることやなんでもできるリーダーであることを求められてしまうんです。社員側は能力や目的を達成しているかどうかが評価されるようになって、言いたいことが言えない構造になってしまいがちです。
プロジェクトリーダーにアドバイスする一幕も
働けば働くほど、幸せになるような社会にしたい
経営者へのプレッシャーが高まる一方で、組織化された会社のなかでは、能力が高かったり目的を達成する人が評価されることが多くなります。その評価制度は効率的ではあるものの、「できない」ということに対する恐れを生み出してしまうことがあるそうです。たくさんの組織が同じようなジレンマを抱えていく様子を見ながら、鈴木さんは自分たちの会社のあり方ついても考えるようになりました。
鈴木:いろいろな組織が苦しむ状況を見ているなかで、自分がミッションにしている「挑戦を応援する」「挑戦が育まれる世の中にする」ということに貢献できているのか考えるようになりました。そこで取り入れたのが「ティール組織」という考え方です。これは生命体的な組織の形と言われるもので、そこに集っている人たちが組織が存在している目的を随時変化させながら自分たちで経営をしている。一人ひとりが経営に携わっているという組織の構造なんですね。
鈴木:ETIC.でもこの考え方を取り入れて3年ほど経ち、組織の風通しがとてもよくなってきました。ポイントとしては「応援をすることが先」ということ。挑戦するから応援するのではなく応援するから挑戦が育まれるのだと感じています。「応援する」って相手の声を“よく聞く”ことなんです。一人ひとりが恐れなく声をあげ、話し合える文化にするためには、話をよく聞くことが重要。それをみんなで意識し始めてから、組織のムードが変わってきました。
起業家も初めは一人の人間なんですけども、徐々にいろいろなものを背負っていくことになってしまいます。みんなのリーダーシップに蓋をしない仕組みをつくることで、みんなが働けば働くほど幸せになるような社会にしたい。そのためにETIC.としても活動していきたいと思っています。
GARAGE Program プロジェクト成果報告
後半は100BANCHに入居して3カ月や半年の区切りを迎えたプロジェクトメンバー、そして卒業して活動を続けるメンバーが登壇し、これまでを振り返りました。鈴木さんからそれぞれのプロジェクトに向けて寄せられたコメントとともにお伝えします。
■ edu×edu
登壇者:龍野実咲
小学生と高校生のための寺子屋で、公教育の充実に双方向からのアプローチを!
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/edu-edu
成果報告の全編動画はこちら
教育を受ける機会の格差に対してアプローチするため、小学生に対して高校生が継続的に教える場となる放課後寺子屋を実施しているedu×edu。100BANCH入居期間中にはオンラインでの寺子屋を開催予定でしたが、緊急事態宣言を受け、思うように活動することができませんでした。
龍野:オンライン寺子屋は、高校生の講師としてのクオリティ、楽しい勉強の時間がつくれるかなどを確認することを目的としていました。実施はかないませんでしたが、これまで活動してきたなかで、勉強嫌いな子どもはそもそも参加しないことや、小学校へのメリットを見出すことなどの課題も見えてきています。私たちのチームメンバーは4月から受験生になってしまうので、この活動はいったん休止する予定です。大学生になったら、また再開することを考えています。
鈴木さんのコメント:学校というとても保守的な環境に入っていくには難しい時期でしたが、それでも行動を止めずにやってきたからこそ生まれた関係性があると思うので、有意義な時間になったのではないかと思います。活動の再開を楽しみにしています。
■GLOBAL MICRO TOUR
登壇者:大塚 誠也
異文化の混ざり合う暮らしのきっかけをつくり、多文化共生をもっと当たり前に!
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/grobal-micro-tour
成果報告の全編動画はこちら
GLOBAL MICRO TOURは、さまざまな国の文化が共生している状態を当たり前にするため活動しているプロジェクトです。日本にある外国人コミュニティを旅する「グローバルマイクロツアー」を5回実施、合わせてオンラインイベントを開催しながら、聞いたり交流する機会をつくってきました。
大塚:活動によって日本在住の外国人がツアーに参加してくれたり、街を開拓してきたパイオニアのような方に出会えたり、つながり作りができてきました。今後は日本の子どもと、日本在住で海外のバックグラウンドを持つ子どもが交換留学する「グローバルマイクロステイ」ができないかと考えているところです。それによって、その国に興味を持ったり、日本に違う文化を持っている人がいるということへの理解につながればと思っています。
鈴木さんのコメント:国内留学っておもしろい取り組みになっていくのではないかなと思います。実際に交換留学する前にオンラインで仲良くなっていくという方法も、今だから試せることだと感じました。
■Period of 100 Athletes Project
登壇者:下山田志保
生理で悩む人たちへ。アスリート100人の声を世の中へ届けたい
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/rebolt
成果報告の全編動画はこちら
現役の女子サッカー選手である下山田さんは、スポーツをする女性にとって生理が身体的・精神的に負担となり挑戦する機会が奪われていると感じ、生理で悩む人とアスリートを繋ぐプロジェクトをスタートしました。100BANCHでは生理で悩む人とアスリート15組20名のインタビューを行い、発表する準備をしてきました。
下山田:たくさんのアスリートに実体験や、それに基づく解決策を話していただきました。なかには問題提起をしてくださる方もいて、この集積は社会を動かす価値になっていく予感がしています。今後はこの声をウェブメディアで発信したり、開発中のアスリート向けパンツのクラウドファンディングに挑戦する予定です。
鈴木さんのコメント:20名のインタビューはすごくインパクトがあると思います。隠されているというか、社会のなかで話題から外されているようなことを見えるようにすることで、社会が動くきっかけになるのではないかなと感じました。
■kakeru
登壇者:永井 凱
こだわりを視覚情報に!
プロジェクト詳細:https://100banch.com/KAKERU
成果報告の全編動画はこちら
伝統文化を担う人たちのこだわりを、言葉を使わずに海外に発信していけるのか。kakeruはその問いを研究しているプロジェクトです。帰国子女の5名が集まり、書道家の手から生み出されるかすれや寿司職人の手元で起きるすし酢とネタの化学反応など、細かなニュアンスを伝える工夫を行いながら動画制作などを行っています。
永井:活動として、単に書道をする様子を動画にするのではなく、筆の流れを映し出すことで書道の流動感を感じられるような動画の制作しました。またオンラインで書道教室を開催するような試みも行っています。これからもこだわりを伝え、いずれは実際に体験できるようなところにつなげていきたいと考えています。
鈴木さんのコメント:動画はずっと残っていく媒体なのでジワジワとインパクトにつながってものではないかと思います。kakeru が制作るする動画からプロジェクトを進めていく情熱を感じました。これからも期待しています!
■ Liquitous 登壇者:栗本 拓幸
液体民主主義の社会実装で「一人ひとりの影響力を発揮することができる社会」を!
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/27992/
成果報告の全編動画はこちら
一人ひとりが影響力を発揮できる社会をつくるため、民主主義のDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいるLiquitous。オンラインでじっくり話して決めるというオンライン上の合意形成プラットフォームを開発しています。現在は実証実験をしながら自治体や教育現場などに導入していけるよう準備を進めています。
栗本:緊急事態宣言などを受けて、足踏みをしていた3ヶ月だったような感覚があります。オンラインでできることが増えてき今、例えば、選挙という形でない新しい行政との関係を生み出していけないか考えているところです。
鈴木さんのコメント:最近急激に流行ったClubhouseでも政治家がタウンミーティング的な活用をしていると聞きました。どんどん人々はデジタルコミュニケーションに慣れていくはずなので、Liquitousにとってはチャンスが多い時期だと思います。今後の活動も楽しみにしています!
■ehonbox 登壇者:杉山裕磨
私たちは絵本のサブスクリプションサービスを通して絵本との出会いを目指す
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/27962/
成果報告の全編動画はこちら
ehonboxは定額で選んだ絵本が届く、絵本のサブスクサービスに取り組んできました。実際に運用してみたものの、多くの課題が見えてきたこともあり、いったんサービスを休止するに至りました。これまでの経験体験を活かし、現在はイラストレーターや小説家などのクリエイターと作品をつくったり、直接つながっていける新事業を開始しています。
杉山:当初は出版社と提携してプロジェクトを進めていこうと思っていたのですが、著作権にまつわることで足踏みをしてしまいました。ただ、それがきっかけとなり実際にクリエイターとつながっていこうと思うようになり、現在はデジタルコンテンツの開発における課題を解決する受発注プラットフォーム「olive」の開発をスタートしました。ehonboxのプロジェクトリーはなかなかうまくいかなかったのですが、やりたいことは形を変えて続けていきたいと思っています。
鈴木さんのコメント:働けば働くほど幸せになったり仲間が増えることが報酬だと感じられる観点もあると思うので、そういう意味でehonboxのチャレンジは失敗ではないのかもしれません。今後は法律などいろいろ調べながら確固たるビジネスモデルをつくっていってほしいですね。
■ Lightful 登壇者:田中あゆみ
未来の「成績表」と「先生」を、子どもたちの元へ。教育更新への一歩を踏み出す!
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/11183/
成果報告の全編動画はこちら
2018年に100BANCHに入居していたLightfulは、当時、アクティブラーニングを評価するための基準をつくるプロジェクトに取り組んでいました。現在は次世代型教員養成プログラム「TEST」を立ち上げ、大学生が長期インターンをしながら授業を手伝う仕組みをつくっています。
田中:大学生である私たち世代が学校現場に入っていくことで感じる違和感が、新たな視点を導入するきっかけになるのではないかと考えながら活動に取り組んでいます。日々挑戦して、失敗して、成功して、を繰り返しつつアップデートし続けていきたいと思っています。
鈴木さんのコメント:学校教育のなかに学生がインターンで入るなんて5年前では考えられなかったので、最初の風穴を開けるのがいちばん大変だったのではないかと感じています。活動の軸が定まってきたようなので、この調子で引き続き頑張ってください。
いつもに増して質問が飛び交った今回の実験報告会。鈴木さんがメンバーの話をよく聞き、温かい応援の言葉をかけてくれることによって、メンバーが勇気づけられているのが印象的でした。
これからチームをつくっていくであろう100BANCHメンバーにとって、鈴木さんのような存在がいること、そして今回の話を聞けたことは、きっと大きな財産になっていくはずです。
(撮影:鈴木 渉)
<次回実験報告会>
オンライン開催 3月実験報告会&メンタートーク
日時:2021年3月30日(火) 19:00〜21:00
参加費:無料
///////////
※ZOOMウェビナーでの開催になります。
Peatixの配信観覧チケット(無料)に申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。
https://100banch033021.peatix.com/
//////////
『実験報告会』は100BANCHの3ヶ月間のアクセラレーションプログラムGARAGE Programを終えたプロジェクトの活動ピッチの場です。
また毎回100BANCHメンター陣から1人お呼びし、メンタートークもお送りいたします!
今回のゲストは&Co.,Ltd.代表取締役、Tokyo Work Design Weekオーガナイザーの横石 崇さんです!
【こんな方にオススメ】
・100BANCHや発表プロジェクトに興味のある方
・GARAGE Programへの応募を検討されている方
【概要】
日程:3/30(水)
時間:19:00〜21:00
参加費:無料
参加方法:Peatixの配信観覧チケット(無料)に 申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。
【タイムテーブル】
19:00〜19:15:OPENNING/ 100BANCH紹介
19:15〜20:00:メンタートーク
・横石 崇(&Co.,Ltd.代表取締役、Tokyo Work Design Weekオーガナイザー)
20:00〜20:45:成果報告ピッチ&講評
kikkake-kichi|「やりたい!」を「できない…」で終わらせない世界の実現を目指します!
blossom, the project|社会運動、芸術、文化を融合する革新的なメディアプラットフォーム
yorishiro|あらゆる衣服に生命感を吹き込むプロダクトで新たな表現の場を生み出す
ALion |閉ざされた交流を僕たちが開く、Z世代感覚のニューツーリズム!
KAGUYA |ライトシェード型バイオリアクター「KAGUYA」-酸素を生み出す未来の照明-
comel|お米の温もりを通して、忙しい現代人に幸せを届けたい
20:45〜21:00:質疑応答/CLOSING
【メンター情報】
横石 崇
&Co.,Ltd.代表取締役/Tokyo Work Design Weekオーガナイザー
<プロフィール>
1978年、大阪市生まれ。多摩美術大学卒業。広告代理店、人材コンサルティング会社を経て、2016年に&Co., Ltd.を設立。ブランド開発や組織開発をはじめ、テレビ局、新聞社、出版社などとメディアサービスを手がけるプロジェクトプロデューサー。また、「六本木未来大学」アフタークラス講師を務めるなど、年間100以上の講演やワークショップを行う。毎年11月に開催している、国内最大規模の働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」では、6年間でのべ3万人を動員に成功。鎌倉のコレクティブオフィス「北条SANCI」支配人。著書に『自己紹介2.0』(KADOKAWA)、『これからの僕らの働き方』(早川書房)がある。100BANCHメンター3期目。
- TOP
MAGAZINE - 聞くこと・応援することで、組織の風通しがよくなる | 実験報告会&メンタートーク