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【速報レポート】未来は明るい?カオスを整理せず、思いの発露をカタチにする渋谷の実験区がイノベーションの震源地に■ナナナナ祭2019閉幕

100年先の未来をつくる実験区『100BANCH(ヒャクバンチ)』で行われた、採択プロジェクト成果発表の場「ナナナナ祭2019」が閉幕しました。

最終日のイベントは移動のこれからを考える「『移動』の未来」、食と癒やしの関係について実験する「ねはんごはん 〜なにが私を癒やすのか〜」、バスを改造した移動空間の中で坐禅を体験する「​BUSHOSE×ZEN〜静→動〜」、そしてナナナナ祭クロージングイベント「こんにちは未来」が行われました。イベントの様子を速報でお届けします。

大企業とスタートアップ、新しい「モビリティ」のプレイヤー対談

イベント詳細:https://100banch.com/events/18354/

移動距離は1歩。一瞬で望む場所に行くことのできる「どこでもドア」は、究極の移動手段と言えます。しかし、私たちの社会が目指す未来の移動手段は「どこでもドア」なのでしょうか?

「『移動』の未来」と名付けられた本イベントは、100BANCHでモビリティをテーマに据える2つのプロジェクト「BUSHOUSE」から青木大和と「e-kickboard sharing」から中根泰希が参加。連休の中日、雨の日曜日にもかかわらず、多数の人が集まったイベントとなりました。

登壇者は次の4名の方々です。ヤマハ発動機株式会社に入社以来、ずっとバイク事業に携わってきたという木下拓也さん(ヤマハ発動機株式会社 執行役員・MC事業本部長)。家電からB2Bまで手掛けるパナソニックがこれまで培ってきた技術を生かした新たなモビリティで、人を中心とした社会をつくっていきたいと語る村瀬恭通さん(パナソニック株式会社 執行役員 モビリティソリューションズ担当)。現在の農耕定住型から、狩猟移動型へ移行する選択肢もあっていい、豊かさについて提案する青木大和(BUSHOUSE・株式会社DADA 代表取締役CEO)、電動キックボードビジネスの開発とシェアリングサービスを企画し、新しいモビリティに関する法整備を行うための「マイクロモビリティ推進協議会」にも参画している中根泰希(e-kickboard sharing・株式会社マイメリット 代表取締役CEO)。

「どこでもドアを使いたいか?」という問いかけで始まったイベントは、会場を巻き込みながら、街や人のあり方、移動の価値とは何かを、さまざまな視座で議論する会となりました。どのような議論が行われたのかは、別途レポート記事で詳細にお伝えします。

 

食と癒やしの関係を解き明かす実証実験イベント「ねはんごはん 〜なにが私を癒やすのか〜」

イベント詳細:https://100banch.com/events/17899/

何かを食べたり飲んだりしたときに、ほっとする。そういった経験は誰もが持っています。

しかし、「食と癒やしの関係」について調査した研究はありません。そこで、食べ物・飲み物だけでなく、食に関する一連の流れにヒントがあると仮説を立て、参加者を含めて考証しようという、野心的なイベントが行われました。

このプロジェクトは、しいたけ出汁を研究し、世界中に広めたいと考える竹村賢人(SHIITAKE MATSURI・株式会社椎茸祭)、全国を旅するおむすび屋さんを展開する菅本香菜(MUSUNDE HIRAITE)、「日本のお茶で優しい革命を起こそう。」をミッションに、お茶のさらなる普及に努める岩本涼(Tearoom)は、食べ物・飲み物を口にしたお客さんから「ほっとする」「癒やされる」という感想を頂くことに注目し、雨宮優(KaMiNG SINGURARITY)がタッグを組んで実現しました。「ねはんごはん 〜なにが私を癒やすのか〜」と題した本イベントの詳細については、別途レポートを配信します。

 

渋谷駅徒歩1分のバス内での坐禅体験。「​BUSHOUSE×ZEN〜静→動〜」

イベント詳細:https://100banch.com/events/17963/

キャンピングカーより大きなバスを改装し、自由に移動しながら暮らす住空間として製作されたBUSHOUSE。渋谷駅南口から徒歩1分の街中という場所にもかかわらず、ドアを締め切ると、外の喧騒から隔てられた静かな空間になります。和室のようにデザインされた3号車では、坐禅イベントが行われました。デザイナーによる和をイメージしたこのしつらえは、一般の方はもちろん、不動産関係者や施工業者内見からの評価も非常によかったそうです。行われたBUSHOUSEでの坐禅イベントは、お坊さんによる坐禅についての講義を聞いてから準備運動を行い、坐禅に取り組みます。そして、最後にお坊さんの読経を聞いて終わる、という流れで行われました。

今回の読経はなんと、ボイスパーカッションを組み合わせた、これまでに経験したことのないものだったそう。バスのなかで坐禅を組む機会も貴重ですが、ボイスパーカッション読経を聞くことも、なかなか体験できません。

また、以前お寺で坐禅をしたことがあるという参加者は、お寺まで行き、境内から坐禅堂にいくことで徐々に心の準備ができたと言いますが、「BUSHOUSEは街中にあって、心の準備ができていない状態で座禅に入ったが、普段より集中して瞑想ができた」という感想を話していました。

 

ナナナナ祭2019閉幕。2年間でイノベーションの震源地になった100BANCH

イベント詳細:https://100banch.com/events/18007/

2周年を迎えた100BANCH『ナナナナ祭2019』の閉会式として「クロージングイベント こんにちは未来」が行われました。まずは、この9日間のイベントやエキシビションについて、それぞれ1分ずつのピッチトークで紹介されました。

なかには100BANCH 運営責任者の松井創が期間中に「流しそうめんをしたい」と思いつきFacebookグループで提案したところ、それぞれ自分のプロジェクトがあるにもかかわらず、急遽メンバーが次々と協力を申し出て、たった3日間で実現。結果として大成功したという「晴れたら流しそうめん 時々うどん」。

https://www.facebook.com/events/489668125118677/)についても語られました。それぞれ、まったく異なる分野や専門性をもったメンバーが、自主的に協力し合う、100BANCHらしさを象徴するエピソードでした。

振り返りの後は、1年間の成果発表の場でもあるナナナナ祭を終えた100BANCHをテーマに、運営3社の代表によるクロストークが行われました。

<登壇者>
只信一生さん(パナソニック株式会社 コーポレート戦略本部経営企画部 部長)

林千晶(株式会社ロフトワーク 代表取締役)

楠本修二郎さん(カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長)

1年前と比べて、どう感じたのかという質問に対しては、次のような回答がありました。
楠本さん:どんどん進化して、コラボが増えました。『ダイバーシティ・インクルージョン』という言葉が使われるようになっていますが、「そういうキーワードで何かを語るより、ここに来い」と言える、未来を実感できる場所になりました。

楠本修二郎さん カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長

本修二郎さん カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長

林:若い人たちが未来を担っているということは、頭ではわかっているんですが、ビジネスとして回すのは40代50代だと思っていました。でも若い人にとってはそれが邪魔になっているんですよね。そのかわり、社会の仕組みのなかで40代50代が若い人をサポートしなければいけない。未来を考える必要はない。なぜなら未来はここにあるから。2年経って、それは夢じゃなかったって思えるようになりました。

林千晶さん 株式会社ロフトワーク 代表取締役

林千晶 株式会社ロフトワーク 代表取締役

只信さん:100年前はちょうど大正一桁の時代で、自分世代にとっては祖父母が生きている時代でした。そういう観点から、皆さんは100年前にも100年後にも関係があるんですよね。大正時代と100年後の未来では、変わるものも、変わらないものもある。僕らが日本人として大切にしている価値観や心であるとか。今日、思ったのが「みんなつながりたいんだ」っていうことです。来年以降も新たな色が加わっていく100BANCHを盛り上げていきたいですね。

只信一生さん パナソニック株式会社 コーポレート戦略本部 経営企画部 部長

只信一生さん パナソニック株式会社 コーポレート戦略本部 経営企画部 部長

この1年間での100BANCH発の成果としては、世界一の展示会であるCESにブースを出し、世界中の人たちから評価を受けたこと、RGB_Lightの製品化、株式会社未来言語の設立、BUSHOUSEとパナソニックの共同研究事業のスタートなどがありました。登壇者それぞれの感想をピックアップします。

楠本さん:100BANCHでは宇宙に関する話題になることも多いんですが、経営者同士で話す宇宙事業の話と全く同じなんです。100BANCHではビジネスの最先端と同じことを考えていて、ビジネスのネタになる話がここにあるんですよ。2年前は「昆虫食?えー!」って思っていたけど、今なんとなく「ああ、ありだよね」ってオトナが多くなりましたよね。

林:最初は顔をしかめるようなプロジェクトがほとんどで、ひとりが面白いと言って採用された結果、二年経つと「まあ、ありだよね」と多くが思えるようになっています。それが5年後くらいには当たり前になっているのではないでしょうか。イノベーションはこうして起こるんだと、改めて勉強させてもらいました。

只信さん:ちょっとだけ真面目な話をすると、アメリカではイノベーションがたくさん起きていて、イノベーション論がたくさんの大学で研究されています。イノベーションが起こりやすいのは「情熱をもった人がいること」「形にすること」「多様なチームでディスカッションを行う」「期限がある」という条件が揃ったとき。まさに100BANCHの運用がそうで、ここは必然的にイノベーションが起きる場所だと、学術的にも語ることができるんです。

さまざまに繋がり展開していくクロストークのなかで、林から印象的な言葉が。「株式会社未来言語がいい例で、それぞれ違う目標をもって集まりました。自分で夢をもっていない人が集まっても、共通の目標は何も見つからない。夢を持っている人が集まるからこそ、こういうコラボレーションが生まれました。計画していない分、本物のベンチャーが生まれています

また只信さんは「発想も面白いが、100BANCHメンバーからいろいろな話を聞いていると、表現している奥にある本質的なことを考えている。その本質が素晴らしいと思います。それが共感を呼び、仲間を集めています」とお話されました。「そして、こういった状況が生まれたのは、100BANCHの空間設計が素晴らしいのでは?」と登壇者に意見を求めたところ、100BANCHの空間設計を担当した建築家、長坂常さんも来場者席から急遽登壇することに。

長坂常さん スキーマ建築計画 代表取締役

坂常さん スキーマ建築計画 代表取締役

長坂さんからは、次のようにコメントが。

「正直なところ、この空気に最初はなかなかついていけなかったです。一見すると文化祭のように見えた。僕のモノの作り方は、非常に孤独に物事を考えてやっているんです。だから、この楽しそうな感じってなんだろうと、理解がなかなかできなかった。しかし話を聞いているうちに、こういう場所じゃないとできないイノベーションがあることや、今の子たちはこうやってみんなと楽しみながらコラボレーションしてものごとを考えていく世代なんだなということを感じました」

[中央]則武里恵さん(パナソニック株式会社 コーポレート戦略本部 経営企画部 未来戦略室)

[中央]則武里恵(パナソニック株式会社 コーポレート戦略本部 経営企画部 未来戦略室)

この話を受け、100BANCH事務局の則武は「カオスはカオスなんですよね。そこからエネルギーが生まれてきて、新しいものに昇華されていく様をここにいて感じます。カオスを整理しすぎてはいけないと普段から思っていて、あらゆる方向性にのびのびやってもらうことを大事にしています」と語りました。

こうして、さまざまな成功を収め、周知されてきた100BANCHはこれからどこへ向かうのでしょうか? 登壇者それぞれに語っていただきました。

楠本さん

「100BANCH」から「100番長」へ。横に繋がったことで結果が出始めています。スマートなリーダーシップ論ではなく、やんちゃなリーダーシップをもった番長が出てくると面白いかと思いました。また、メンターとして関わるだけではなく、ビジネスとしてコラボレーションの提案をしていきたいと思います。

これまでのマーケティングは、市場があり、マーケティングがあり、コンセプトを出し、デザインで色をつけて消費者に届けるという流れでした。デザイン経営は、人や価値観があり、それに対してデザイナーがコンセプトを創り、マーケティングがどの市場にどう価格をつけて出すのかを考えて市場に届けるという逆向きの流れが「デザイン経営」。市場があって、いくらで売れるかという差別化ではなく、この人にこの思いを届けたいという気持ちからはじまっていく活動が益々増えていくと思います。100BANCHはまさにデザイン経営をしている。だからこそ、100BANCHのメンバーが経営を意識して、自分たちで「この思いをどう届けるのか」を実現すること、どれだけ事業としてやっていけるかを考えていく必要があります。

只信さん

事業戦略・計画ということを、あまり考えてこなかったと思うんですが、いよいよ「経営」という起業家のスタートに立てるところに近づいているのが、2年間の成果。会社が生まれてから会社がなくなるまでの企業寿命は、日本では14年ほどです。しかし、これは悲しい話ではなくて、なくなった2倍以上の企業も生まれているんです。世の中では、デストラクションしながら大きく新陳代謝が起こっていて、そこから逃れることはできないのが現実です。「デストラクションを起こすようなイノベーション」がキーとなっているなかで、100BANCHは日本の企業、日本の国を救う方法を生み出すんじゃないかと期待しています。創業100年を過ぎて、伝統産業的な電子系企業になってしまったパナソニックに、100BANCHは新しい風を送ってくれます。逆に、パナソニックができることは、100年間のノウハウがあるため、どうやって事業を創っていくのか、動かしていくのかということを伝えることができます。だから、パナソニックを使ってください。皆さんが未来をつくることを期待しています。

予定されていた質疑応答や会場とのディスカッションの時間がなくなってしまうほど、白熱したクロストーク。それぞれのお話や考え、感想に対して、新しい意見やアイデアが次々と飛び出し、登壇者4名も100BANCH事務局松井と則武も、心から100BANCHの発展を願っていることを感じた2時間でした。

 

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