• イベントレポート

【ナナナナ祭2019:ピックアップ】熱いディスカッションが繰り広げられた「シェアエコ・スタンダード」

パナソニック、ロフトワーク、カフェ・カンパニーが運営する100年先を豊かにするための実験区「100BANCH(ヒャクバンチ)」が、7月6日から14日まで『100BANCHナナナナ祭2019』を開催。ナナナナ祭8日目となる7月13日(土)、ここ数日の涼しさとは一転、蒸し暑い気候となったこの日。本記事では、8日目に行われたイベント「シェアエコ・スタンダード」と題した熱いシンポジウムの様子をお伝えします。

100BANCHナナナナ祭2019 >> http://100banch.com/nanananasai/2019

シェア+エコノミー or エコロジー=シェアエコ

シェアエコ・スタンダード

「分ける」や「共同で持つ」という意味の『シェア』。最近では自転車やクルマ、傘といった「モノ」、コワーキングスペースや民泊に代表される「空間」、個人の持つ「スキル」など、さまざまなモノやコトがシェアされています。その背景には節約(エコノミー)の意味もあれば、環境保護(エコロジー)という視点もあるでしょう。

そうした「シェアする経済」をシェアエコと称して、それらが普及し、スタンダードになったと仮定した未来と現在とのギャップを、ワークショップやディスカッションを通じて考えてみようというのが、今回のシンポジウムの趣旨です。そう説明したのは本シンポジウムのファシリテーターを務める松井 創さん(100BANCH発起人・運営責任者/株式会社ロフトワーク)。

松井さんの呼びかけで3名のゲストが登壇しました。1人目は内閣官房シェアリングエコノミー伝道師として、シェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルを提案している石山 アンジュさん(一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長/一般社団法人Public Meets Innovation代表理事)。続いて、傘シェアリングサービス『アイカサ(iKasa)』を運営する丸川 照司さん(株式会社Nature Innovation Group / CEO)、電動キックボード『ema』のシェアリングサービスを手がける中根 泰希さん(株式会社マイメリット / 代表取締役CEO)が登壇。丸川さんと中根さんはともに100BANCHの入居メンバーです。

そもそも「シェア」ってなんだろう?――現代におけるシェアの定義

まずはシェアリングエコノミー伝道師である石山さんから「現代におけるシェアの定義」についての説明が行われました。

石山さんいわく「シェアとは何か?」という確固たる定義は世界的に見ても、明確にはなっていないそう。それゆえ「どこまでを“シェア”と呼ぶのか」は非常に難しい概念であり、例えば「レンタル」や「フリーマーケットなどのリセール」も広義の意味ではシェアに含まれるそうです。

石山さんは日本におけるシェアの原風景として、ご近所同士で行われていたしょうゆの貸し借りを挙げました。たしかに昔は近くに住む人たちで生活のあらゆるものを貸し借り=シェアして暮らしていたかもしれません。

しかし現代における「シェア」の姿は、そこから大きく変貌を遂げています。インターネットというテクノロジーの発達により、シェアが可能な対象はご近所のみならず、遠く離れた数百~数千人の規模にまで拡大しました。そして、そこに決済システム、位置情報などさまざまな技術が付随した「シェアのプラットフォーム」が登場。貸し借りの状況や遊休資産を可視化し、つなぐことが可能となったのです。

以上を踏まえて、今回のイベントでの「シェア」という言葉の定義を「インターネットやテクノロジーの媒介を前提とした個人間取引」と、大まかに定義付けました。なお、石山さんいわくこうした現代のシェアエコは「ニューエコノミー(※)」のひとつとして注目されるようになっているそうです。

(※)90年代にアメリカで生まれた経済理論。ITの活用などによる情報技術の進歩により、景気循環が消滅して、経済成長が続くという仮説に基づいた新しい経済環境のこと

現代のシェアエコの課題は「信頼をどうデザインするか」

石山さんは、さらに「今日皆さんと考えていく上で一番重要な要素は、『信頼のデザイン』です」と続けます。シェアリングエコノミーとは、特定のモノやコトを、信頼を媒介として共有したり分け合ったりするもの。そのため、シェアのプラットフォームを考えるとき、信頼をどのようにデザインするかは非常に重要な要素といえます。

石山さんいわく「信頼」はこれまでに三段階の変化を遂げてきたのだそう。
一段階目は「ローカルの信頼」。いわばご近所さんとの信頼関係です。
二段階目は、おもに戦後から始まった、国の基準など「制度に預ける信頼」。今の日本において最も浸透している信頼のデザインです。
そして三段階目が「テクノロジーによる信頼」。例えばインターネットなどに多くの人が「これは大丈夫だよ」と保障するコメントを書き込むことで信頼を得られる。いわばスコアリングのようなものだそうです。

このように、時代によって変化を遂げた「信頼」という目に見えないものをどのように可視化し、日本に合ったかたちにデザインしていくか――これが今後のシェアエコの課題だと石山さんは話してくれました。

ここで石山さんのプレゼンを聞いていたファシリテーターの松井さんから「ここ最近の中で個人的によかったと思うシェアのサービスは?」という質問が。しばし悩んだ後で石山さんが挙げたのは「家事代行サービス」、とくに『東京かあさん』という“東京にもう一人のお母さん”をかなえるユニークな家事支援サービスでした。その理由は「経済の市場では今まで価値を与えられなかったものに価値を見いだせたから」というものでした。

100BANCHから生まれた、傘や電動キックボードのシェアエコ

続いて同じくゲストの丸川 照司さん、中根 泰希さんが自己紹介を兼ねたプレゼンテーションをしてくれました。

丸川さんはアイカサ(iKasa)という傘のシェアエコ・サービスを展開しています。ビニール傘の無駄な消費をなくしたいという思いから、2018年12月にスタートしたアイカサのシェアスポットは現在、都内や福岡県内180カ所に拡大(スタート当時は都内50カ所)。とくに上野エリアでは地下鉄の出入り口のほか、商店街や美術館、博物館などにも置かれており、多く利用されているそうです。将来的には駅やコンビニなど、すべての出入り口に置いておきたいと熱く語ってくれました。

中根さんは『ema』という電動キックボードのシェアエコ・サービスの事業を立ち上げています。

「キックボードには乗り降りしやすい、人との対話を生み出しやすいという特徴があります。北米を中心に電動キックボードシェアは短距離移動の最適解として急速に普及していますが、日本では現状、公道で乗ると道路交通法違反になってしまいます。そのため私有地、公園、大学内、商業施設内でサービスを展開する予定です。とはいえ、できれば公道で乗れるようにしていきたいので、日本で電動キックボードのシェアリングサービスを行っているほかの会社と一緒に業界団体を立ち上げ、ルール設計を行っているところです」

ワークショップ:あったらうれしいシェアエコ・サービス

ゲストのプレゼンテーションから「シェア」について理解を深めたところで、ワークショップがスタート。参加者が個々に「シェアエコ・サービスを使うユーザー目線で『あったらいいな』と思うサービスのアイデア」を考えていきます。アイデアをふせんに書き出し、それを隣合った人たちに「シェア」する。ここまでを約10分間で行いました。

隣同士でのアイデアのシェアがある程度終わったタイミングで、ファシリテーターの松井さんが参加者全員を大きく4つのグループに編成。それぞれのグループに松井さん+ゲストの3名が一人ずつ加わり、さらにアイデアを共有していきます。

皆さん、自分の考えたシェアエコ・サービスをプレゼンしつつ、「そのアイデアはおもしろい」「こうしたらもっといい」とディスカッションを重ねていました。

ディスカッション中の声に耳を傾けると、さまざまなシェアのアイデアが聞こえてきました。
・野菜(農家から丸ごと購入し、複数人で分け合いたい)

・本棚(シェアして、いろいろな人の選んだ本が読みたい)

・ロボット掃除機(マンション内でシェアして所有したい)

・マニキュア(一人では使い切れないからシェアしたい)

・ペット(ペットを飼いたいけれど一人暮らしを理由に飼えない人たちが複数人でペットの世話をするサービスがほしい)

・ウインタースポーツ用品(使いたい期間は限られているので、複数人でシェアして所有したい)

・ボディガード(終電で帰宅するときなど、必要に応じて複数人でシェアしたい)

など、アイデアが次々と出てくる様子。

「一人では持て余しそうなもの」「個人で所有すると高いけれど、ちょっとずつなら負担できるもの」で、スキルや経験・空間よりもモノをシェアするアイデアが多かったように感じられました。

違うテーブルで同じようなアイデアも出ているのも見受けられました。「シェアしたい」と考える対象は案外共通しているのかもしれません。ディスカッションも盛り上がっていました。

多くの興味深いアイデアが出たことを受けて、丸川さんは「シェア出来たら良いなと思うものがまだまだたくさんサービス化されていないことに気づかされた」と感想を述べていました。

ビジネスとしての「シェア」を提案

ディスカッション終了後、ファシリテーターの松井さんから「今度はユーザー目線ではなく、自分がサービスを提供する側になったと仮定して、ビジネスとして提供できそうな『シェア』のアイデアを一人ひとつ、5分間で考えよう」という呼びかけがあり、再び場内はシンキングタイムに突入。

5分間の経過後、会場内で挙手をしてくれた方、数人にアイデアを発表してもらいました。発表されたアイデアは以下の通りです。

【シェアキャンプ】キャンプは初めて行く人にとってハードルが高いもの。そこで初めてキャンプに行く人と熟練のキャンパーとで経験をシェアするサービスがあるとよいのでは。

 

【シェアエコバッグ】昨今、プラスチックが世界的問題になっている中、エコバッグをシェアするというアイデアもありなのでは。

 

【シェアセキュリティ】ディスカッションで出た「シェアボディガード」とも共通するけれど、何かありそうなときに身を守れるようにしておきたい。それに加えて、例えばアプリやメッセージを使ってセキュリティに関する情報をシェアし、そのデータをセキュリティ会社や警察にも提供できるようにしたらどうだろう。

 

【シェアスーツケース】スーツケースは旅行の期間や目的によって使う大きさが異なり、遊休資産のようなもの。だから複数人でシェアして、目的に合ったスーツケースを使えるようにしたい。

 

【シェアプラットフォームのシェア】アイカサのようなシェアプラットフォームそのものをシェアして、みんながいろいろなモノをシェアできるようにしたらよいのでは。

キャンプについては会場内にはもうひとり、シェアキャンプのアイデアを考えた方が。その方からは「単なるレジャーだけでなく、防災としてのキャンプという視点を加えてもよいのでは」という提案があり、アイデアがさらに膨らみました。

また「シェアプラットフォームのシェア」についても、同じナナナナ祭内で行われたイベント「未来のコンビニトーク」において、コンビニを「シェア」のハブとして何かできないかという話題が出たらしく、ゲストの間ではその話題でも盛り上がっていました。

クロージング:なんでシェアできないの? 現在と未来のギャップ

最後に、今回のイベントを通じて感じた、現在と未来のシェアエコ・サービスの課題やギャップをゲストの皆さんに伺いました。

シェアサービスのプラットフォームというのはそもそも参入障壁が比較的低いのが特徴です。しかし、参⼊した後でそのサービスをどう広げていくかが難しく、重要と言えるでしょう。信頼をどうデザインし、安心・安全をどう可視化していくか。購入などの手段との利害調整をどう行うかなど、課題は多い。ですが、ビジネスではなく、10人程度のコミュニティの中であれば、シェアな暮らしはすぐに実現できます。今日を起点に、それらのことをもっと考えていってもらえたらなと思いました。」(石山さん)

「僕にとってはどうやったら今、手がけている電動キックボードのシェアリングが広がっていくのか、それが課題です。みんなに受け入れられないから広がらないのか、それとも広がらないから受け入れられないのか。そこが課題であり、ギャップだと考えています。正直、(丸川さんの運営する)アイカサがうらやましいです(笑)」(中根さん)

いろんなシェアリングサービスが統一のプラットフォームでできたら、シェア事業はもっと広がっていくと思います。プラットフォームにおいて、ソフトウェアやテックが変えられる部分は大きい。信用や決済手段をみんなで統一のものを使うこともできますし。現状はそれがまだできていない(プラットフォームが統一化されていない)ので、そこを統一して、もっと気軽にシェアを進めたいです。そうすれば、ほとんどの物事のシェアエコを実現できる気がします」(丸川さん)

イベントはここで終了。しかし終了後も会場内では、トークが尽きず語り合う人たち、電動キックボードemaの試乗体験をする人たちなど、新しい体験がシェアされる様子が見受けられました。

  1. TOP
  2. MAGAZINE
  3. 【ピックアップ】熱いディスカッションが繰り広げられた「シェアエコ・スタンダード」

100BANCH
で挑戦したい人へ

次の100年をつくる、百のプロジェクトを募集します。

これからの100年をつくるU35の若きリーダーのプロジェクトとその社会実験を推進するアクセラレーションプログラムが、GARAGE Programです。月に一度の審査会で採択されたチームは、プロジェクトスペースやイベントスペースを無償で利用可能。各分野のトップランナーたちと共に新たな価値の創造に挑戦してみませんか?

GARAGE Program
GARAGE Program エントリー受付中

2月入居の募集期間

11/29 Tue - 12/26 Mon

100BANCHを応援したい人へ

100BANCHでは同時多発的に様々なプロジェクトがうごめき、未来を模索し、実験を行っています。そんな野心的な若者たちとつながり、応援することで、100年先の未来を一緒につくっていきましょう。

応援方法・関わり方