林業イノベーターのためのWEBメディア「ソマノベース」から 林業に革命を。
soma no base
林業イノベーターのためのWEBメディア「ソマノベース」から 林業に革命を。
これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」。3カ月目の活動期間終了のタイミングで、どのような実験を行ってきたかを発表する実験報告会および、卒業生の中からナビゲーターをお迎えしてプロジェクトのその後を伝えてもらう、ナビゲータートークを実施します。
この日のナビゲータートークは「soma no base」プロジェクトの奥川季花(株式会社ソマノベース)が登壇。100BANCHでのプロジェクトでの思い出や現在の状況、展望などを語りました。
株式会社ソマノベースを創業し、和歌山県田辺市で林業に関わる事業を展開する奥川季花。現在の事業や100BANCHでの活動、今後の展望について話してくれました。
奥川:私は和歌山県の那智勝浦町の出身で、県外に出るのに4時間ぐらいかかる全国で一番遠い場所と言われるような場所です。高校時代、私は紀伊半島大水害という被災にあい土砂災害で後輩を亡くした経験があります。それがきっかけで土砂災害による人的被害をゼロにするビジョンを掲げソマノベースという会社を立ち上げました。林業という業界から、土砂災害リスクの低い山林を増やしていこうとしています。
現在、全国1,742市町村のうち、1,606市町村と多くの地域が土砂災害危険区域を有するとされています。災害の発生件数も年々増加していて、この10年で1.3倍になっていたり、直近の令和2年度は6,600億円の水害の被害が出ていたり、災害の多かった令和元年は2兆円を超える被害が出ています。土砂災害対策に関する国家予算は1,028億円ということからも、どれだけ大きい災害が起きているか明らかです。だから、私たちは国の施策として災害対策をやっていくことももちろん大事だと思っているのですが、日々の林業や山に関わる中で災害リスクを抑えていくことも同時に必要なんじゃないかと考えています。林業事業体が山ごとに適切な管理や作業ができるような状態を目指すためにいくつかのフェーズに分けて林業家さんにヒアリングをしたり、どういった課題が土砂災害のリスクを上げているのを明らかにしながら、それぞれの解決策に沿って事業を進めています。
実際に奥川がどういう経緯でソマノベースを立ち上げたのか、100BANCHをどのように利用してどういう成長をしてきたのかを教えてくれました。
奥川:100BANCHには2019年9月に入居しました。それまでは別の会社で働いていたのですが、林業のことをやりたい、災害対策をやりたいとずっと思ってたんですね。そのタイミングで東京に出てきて100BANCHに入り、ソマノベースというプロジェクト名をつけ、仕事終わりとかにここに集まって5人のメンバーとスタートさせました。土砂災害の対策をやりたいと思っていたものの、林業の情報ってなかなか世の中に出ていないんですよね。現場を2、3年ずっと回り回って情報収集をしていたんですけども、やはり林業の情報をキャッチアップするには時間がかかるし、林業家さんたちもそういった情報を欲しがっているということから、林業家のためのメディアを作るプロジェクトからはじめました。
奥川:それと同時に他業界の方と林業界の方を繋ぐ「ソマノベースキャンプ」というイベントも開催しました。他業界の方と林業家さんのパネルディスカッションや展示を行い、全国から約80名の方が参加してくださいました。四国とか中国地方など遠くから来てくださる林業家さんもいらっしゃったり、林業に関わりたかったけど関わる機会がなかったという他業界の方もいらっしゃいました。イベント終了後には、観覧の方とツアーを開催したり、参加者の中にはソマノベースキャンプをきっかけに林業の業界に入って会社を設立したという方や、イベントをきっかけに転職をしたり、インターンとして林業に関わる方もいらっしゃいました。少しであれ挑戦して何かをやるということは、人に大きく影響を与えるんだなというのを実感しました。しかし、100BANCHで6カ月の活動をしてみて、自分の知識不足を感じたり、この活動が本当に土砂災害対策に繋がってるのかという点にすごく疑問を覚えたので、新しい一歩を踏み出したいなとも思った機会でした。
100BANCHで多種多様なプロジェクトのメンバーがそれぞれ一生懸命に夢中になって頑張っている姿に、自分自身もソマノベースのメンバーも刺激を受けて成長した部分が大きい、と奥川はいいます。
奥川:他のプロジェクトに刺激を受けるだけでなく、100BANCHでの繋がりで木材メディアをやる仕事をいただいたり、ナナナナ祭に参加して、別のプロジェクトのメンバーたちと一緒に茶繋木(ちゃつなぎ)という商品を作ったりもしました。それを100BANCHのFacebookでオンライン配信してもらったところ合計で1万回ぐらい再生されました。こういった発信の影響力というのも100BANCHにいるからこそだなと思ってます。
奥川:そこから発展してクラウドファンディングを実施し、和歌山県で実際に商品を販売したり、メディアにも取り上げてもらいました。今年は都会で1年育てた苗木を和歌山に植えに行くというプロジェクトもナナナナ祭でやりました。こういった大きなプロジェクトをやらせてもらう機会が得られるのも100BANCHに所属するからこそ。他にも渋谷でのポップアップに出展させてもらったり、岡山県真庭市でのSDGsプロジェクトの支援プログラムに参加させていただいたりと、100BANCHのみなさんとの繋がりでいろんな機会が提供されることも私たちの成長に繋がったなと思います。
奥川が100BANCHに入居したタイミングで個人ではじめたソマノベース。100BANCHを卒業した後はどう変わっていったかも紹介してくれました。
奥川:100BANCH卒業後はソマノベースのメンバーも引き連れ、和歌山県田辺市に移住しました。同時に林業の会社にも就職したので、実は私は林業の会社2社の正社員をしながら自分の会社もやっているパラレルワーカーなんです。林業の現場作業も経験してみないとやっぱり課題感がわからないのでフォレストワーカーという現場研修もやっています。実は重機を6つぐらい乗れる資格を持っています。
和歌山では「戻り苗」という商品の開発と販売をはじめました。鉢やどんぐり、土が入ったセットが家に届き、どんぐりから2年間かけて育てて苗木にし、それを送り返して山に植えるという、森林保全に手軽に関われる観葉植物です。戻ってきた苗木は伐採された後に木が植えられてない皆伐地に林業事業体さんに委託をして植林を行い、災害リスクを下げる試みをしています。
奥川:「戻り苗」はWOOD CHANGE AWARDという賞を受賞しまして、それがきっかけで商品化を行い、ECサイトで販売しています。また、単に育ててもらうだけではなく、森林に対する関心を持ってもらったり、災害が起きるしくみを深く理解してもらうために、「戻り苗」を育ててもらう2年の間にLINE@というサービスを通してお客様とのコミュニケーションをとっています。育て方に関して樹木医さんに直接質問ができるようになっていて2年間きちんと育てるサポートをしています。カビが生えてきたときどうするのかなど、購入者の声も発信させていただいています。やっぱり2年間も苗木を育てるとかなり愛着が湧くんですね。みなさんがSNSで発信してくださるのもこの「戻り苗」の特徴で、絵を書いてくださったり専用のアカウントを作ってくださる方もいらっしゃるんです。
また、企業からも購入していただいたり、森林教育のカリキュラムを作ってほしいとか、化粧品の原料になる木材製品を探してほしい、みたいな依頼があります。みなさん、林業や山に関わりたいけど、やっぱり関わる機会っていうのがなかなかない業界なんだなあという気づきもあり、今年は企業版「戻り苗」を開発し、オフィスを森を育てる場所にするプロダクトの販売もスタートさせます。
奥川:ソマノベースは現在8人でやっていますが、実は林業をやったことがあるメンバーはいなくて、元銀行員だったりデザイナーだったり、プログラマーだったり本当に違う業種のメンバーでやっています。現場のことは林業家さんに聞かないとわからないので、多くの林業関係者、木材関係者の方々と協働しながら事業を進めています。
私たちは、半分ぐらいは東京にいて残り半分は田辺市にいながら、私生活では農業体験をしたり、お茶を作ったり、キャンプをしたりみたいな生活をしています。100BANCHに入居していろんな挑戦の機会をいただき、少しずつメディアにも載せていただくようになりました。今は「戻り苗」を軸に事業を展開していますが、これからのソマノベースは林業に参入しようと考えています。やっぱり自分たちで山を作ってみないと災害リスクを下げることはできないということで、今年度から来年度にかけて実際に林業の現場に入り、作業班を持って樹を植えるということをやっていく予定です。
他にも、世界遺産の熊野古道の各ハブと連携して、どんぐり拾いを自動化するプロジェクトをやろうとしています。11月にスタートする予定なのですが、すでに多くの方が共感してくださっていて、訪れる観光客の方々がどんぐりを拾ってどんぐりBOXに入れていくという、関係人口を創出するようなことをしていこうと思っています。みなさん普段まわりの木とか山からの恩恵をすごく受けてるんですけど、そういったものを感じる機会や恩返しする機会ってなかなか難しいんですよね。そういった山に関わらない方たちが、関わる機会を手軽に得られるようなことをこれからも増やしていきながら、災害リスクの低い山を作っていきたいと思います。
GARAGE Programの成果報告ピッチレポートはこちら
100年先の未来を描く6プロジェクトがピッチ!10月実験報告会&ナビゲータートーク 15期生 Omoracy 野々村哲弥(株式会社ロジリティ)
日時:2022年10月27日(木) 19:00〜21:00
無料 定員100名
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※ZOOMウェビナーでの開催になります。
Peatixの配信観覧チケット(無料)に申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。
https://100banch2022-10.peatix.com
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【こんな方にオススメ】
・100BANCHや発表プロジェクトに興味のある方
・Garage Programへの応募を検討されている方
【概要】
日程:10/27(木)
時間:19:00〜21:00
参加費:無料
参加方法:https://100banch2022-10.peatix.com
100BANCH会場チケット:100BANCHにお越しください
オンラインチケット: 申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします
【タイムテーブル】
19:00-19:05 はじまりの挨拶
[OBOG]
・University of Universe
・Heal the World
■ナビゲーター情報
野々村哲弥(GARAGE Program15期生)株式会社ロジリティ
1984年、兵庫県川西市出身。 同志社大学卒業後、(株)ジャパンエフエムネットワークに入社しラジオ営業や番組制作や新規事業(中国向け広告)等幅広い業務に携わる。 2018年、独立しomoracyを始動。人間心理の研究をベースとした「面白い」「新しい」体験型アトラクションの開発に着手している。