EVENT REPORT

2021.10.30 Sat

自分らしさを明確にして活動を進める——
実験報告会 & メンタートーク(KESIKI 石川俊祐さん)

  • #GARAGE Program

これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「Garage Program」。3カ月目と活動期間終了のタイミングで、どのような実験を行ってきたかを発表する実験報告会とメンタートークを実施しています。

2021年9月の実験報告会には、メンタートークにKESIKI inc. Co-founderの石川俊祐さんが登壇。ビジネス×デザインなど現在の活動についてのトークを展開。続いて5プロジェクトがそれぞれの活動について成果報告を行いました。

前半はメンターの石川さんが、現在取り組む活動をもとにトークを行いました。

 

 
メンターの石川俊祐さん

石川さんのプロフィール

ロンドン芸術大学Central St. Martins卒業後、Azumi Design Studio、Panasonic Design Company、PDD Innovation UKのCreative Leadを経て、IDEO Tokyoの立ち上げメンバーとして参画。Design Directorとして数々のイノベーションプロジェクトをリード。BCG Digital VenturesのHead of Designを経て、2019年にKESIKIを創業。分野を超えたイノベーションプロジェクトやデザイン経営に従事。複数社のアドバイザーも兼務している。グッドデザイン賞やD&ADなど国内外の審査委員を兼務。多摩美術大学TCL特任准教授・プログラムディレクター。Forbes Japan「世界を変えるデザイナー39」選出。著者に「HELLO, DESIGN 日本人とデザイン」幻冬舎がある。

 

もともと工業デザインを専門にしていた石川さん。そこから徐々に人の思考力や創造力を生み出す力に興味が湧いてきたそうで、現在は教育にも力を入れ始めていると言います。

 

石川:教育と言ってもただ教えるだけではなく、みなさんが実際にアクションを起こせるような仕組み作りをさまざまな分野で広げています。ビジネスとデザインを繋げたり、組織にデザインを導入して人の創造性を内側から掘り起こしたり、その創造性やエンゲージメントを高める方法を市民に注入したり。そういったことに力を注いでいます。

 

2019年にKESIKIを設立した石川さんは、そのビジョンについて「人や社会や地球に愛される会社をデザインし、『やさしさ』がめぐる経済の実現を目指すクリエイティブ・コミュニティ」と説明します。

 

石川:正直、“やさしさがめぐる経済”って我々自身もまだ定義できていないんですよね。ただそういったものは定義できそうな気がしているので、そこに到達するための一歩目として現在は「愛される会社をどうデザインするか」についてさらに掘り下げているところです。

 

石川さんは「平たく言うと、社員に愛される、顧客に愛される、地球に愛される会社をデザインしようとしている」と続けます。

 

石川:そのひとつに我々が開発したデザイン経営のメソッドを用いて、ビジネスマン向けのデザインビジネススクール・TCL(多摩美術大学クリエイティブリーダーシッププログラム)があります。ここでは愛される会社のデザインメソッドをデザイン経営に当て込み、それを「美しいビジネス」(我々の言葉だと、「愛される会社」や「やさしさがめぐる経済」)と言っています。これまでに100人以上の卒業生を輩出しました。

 

 

石川さんは「愛される会社のデザイン」の解説として一枚の図を紹介します。

 

石川:図の右側にはエクスペリエンス、そして左側にはカルチャーがあります。右側はプロダクトやサービスなどを創造力を生かしてどう生み出すかという図であり、左側は創造的であり続ける会社のカルチャーや仕組みをどうデザインするかという図です。自分たちらしさを軸とする会社カルチャーを生み出すことによってその会社は自分たちらしく創造的で居続けられることで社員やステークホルダーに真に愛される会社になる。我々はこのメソッドを活用して教育プログラムにしたり、企業の社員育成プログラムとして提供しています。

 

「愛される会社で特に大事になるのは企業の人格やカルチャー」だと石川さんは話し、「ユニークかつ我々が定義する優しさを大切にした企業を実現するために3つの領域から実現に向けて邁進しているところです」と現在の活動を紹介しました。

 

続いて、石川さんはKESIKIの3つの事業領域を紹介しました。

 

 

そのひとつは「CREATE」で、KESIKIはデザインと経営の関係性を新たにした愛される会社を創造しています。その例として事業継承型M&Aを行った「WOOD YOU LIKE COMPANY」を紹介。ここで中小企業のためのデザイン経営の実践をしています。

 

石川:オーナーが御年配で、引退を考えているということで20人くらいの職人とショップ店員の皆様がいる会社を我々が継ぎ、デザインの力を借りて会社をまるごと変革しています。多くの中小企業はオーナーの強烈なリーダーシップで成り立っていて、オーナーが辞めたら社員の半分が辞めてしまう、あるいは後継ぎに変わると社員がそっぽを向くことがあるのですが、それを良い機会と捉えてよい会社に変革するチャレンジをしています。また往々にして本当にやりがいを持って力を発揮し切れているような社員ってあまり多くないなという課題もあるので、その脱却方法のデザインも我々が手掛けています。

 

ふたつ目の事業領域は「TRANSFORM」。個人と集団がパーパスに共感し、創造的であり続ける組織文化を育成しています。

 

その例としてKESIKIが立ち上げに携わったアパレルメーカー・アダストリアの傘下ブランド「O0u」を紹介。サステナブルな社会とアパレルサーキュラーエコノミーを実現するための子会社「ADOORLINK」の設立に際して、新たなライフスタイルブランド「O0u」を生み出しました。

 

石川:大企業ってなかなか新しい意志決定ができにくく、たとえばサステナブルなものをやろうと思っても中途半端な意思決定になりがちです。そこで新会社を立ち上げ、会社の人格をきちんと定めた上で商品を生み出すことによって、新しくて彼ららしく本質的な課題を解決できるようになると考えました。

 

最後の事業領域は「INFLUENCE」。既存の資本主義経済をアップデートし、やさしさが巡る経済を探究しています。その例のひとつに先述したビジネスマン向けのデザインビジネススクール・TCLがあります。

 

石川:愛される会社をどう作るか、優しさが巡る経済とはどう作るか、それをプログラム化して社会人に実装しています。受講した経産省の人たちによって行政がクリエイティブに変革されていくなど、徐々に市民をクリエイティブに変えていくような動きが出ています。

 

石川さんはこれまでの活動を振り返りながら「これからも教育機関や企業、国などの意識を変えられるようKESIKIが背中を押していきたい」と語りました。

 

 

最後に石川さんは「我々の根底にある意識はデザインの民主化であり、想像力と創造性の解放を目指している」と語ります。

 

石川:想像力と創造性は日本人がもともと持っているやさしさとひも付くものだと思っていています。それを繋げることで我々が考えるような「愛される会社」が増えていく。KESIKIはそういった世界を後押ししていきたいと思っています。

後半は100BANCHに入居して3カ月や半年の区切りを迎えたプロジェクトメンバーが登壇し、これまでを振り返りました。

 

■WaQ!!!

登壇者:安田 舜

わがままを身に纏い、人生に前のめりになろう。

https://100banch.com/WaQ

 

WaQ!!!は「人はもっとワガママでもいい」という仮説からスタートしたプロジェクト。人は思うがままに落書きをしてみるとワガママになれるのではないか、という仮説のもとプロジェクトを立ち上げました。

 

社会や他者からの承認が自信を持つための大切な要素であり、承認を届けるためには自己をさらけ出す肯定が欠かせない。その手段としてWaQ!!!は“自己表現としての落書き”を思いついたと言います。

 

安田:100BANCHでは、銭湯や企業の会議室などいろいろな団体や企業を巻き込みながらありとあらゆる場所で落書きをしてきました。それにより、他者からの承認によって人は自己肯定感を高めることができ、また誰かのワガママに触れることで刺激を受けて自分のワガママへのきっかけをつかむことができるとわかりました。今後は自分の思考や表現に自信を持てる子どもを増やしたいと考え、対象を子どもに絞り、ワークショップなど限定的な機会に限らずに幅広く社会に向けて活動をしていきたいと思っています。

 

 

■artics

登壇者:中辻 新

次世代SNS『artics』は感性の共鳴を創出し、あなたをアーティストに変える。

https://100banch.com/artics

 

自己表現と他者貢献の喜びを世界に広めることを目指すartics。ありのままの自分自身や自分が大好きなもの表現してそれが誰かの喜びや救いになったとき、何ごとにも代え難い生きがいが生まれ、また既存の健康的ではない数々の欲求を超越することができる。そして、それにより多くの社会課題を解決できると考えています。

 

articsはアーティストやクリエイターの「自身の魅力」に着目したインタビューのSNS発信と、自分が愛するものをより簡単に見つけ共有できる次世代SNSアプリを開発。アプリは「身近な友人たちと好きを深められる」「オンラインの人から好きを発見する」「自分を再発見する」をテーマにコンテンツを制作しています。

 

中辻:人間は好きを深めると自然に自己を表現したくなる生きものだと考えています。私たちはSNSをローンチしたのち、エンタメ版メルカリのように自分のいろいろな自己表現を簡単に投稿できる機能を提供する予定です。これが追加されることで誰もが当たり前に創作活動をたしなみ共有できし、誰かの創作活動を支援する動きも出てくる。そんな世界をつくっていきたいと思っています。

 

 

■3E POINT MILEAGE APP

登壇者:來海 潤一郎

エシカル・環境・エコの3Eポイントをサスティナブルに獲得!

https://100banch.com/3E_POINT_MILEAGE_APP

 

■3E POINT MILEAGE APPは、エシカル(倫理的)・エンヴァイロメント(環境)・エコロジー(エコ)の「3E」に着目するポイントを蓄積して、それをさまざまなかたちでユーザーに還元するアプリケーションを開発しています。

 

現在、プロジェクトに賛同する企業が3社あり、100BANCHを拠点に活動を進めています。

 

來海:環境問題が大事と認識する人が多いのですが、それはあくまで認知にとどまっているだけであり行動に移すことはなかなか浸透していないと感じています。啓蒙活動よりは、そういった取り組まないことによるデメリットを発信し、それを社会や日常に組み込むことが大事だと思い活動を続けています。

 

 

■polaris

登壇者:塗木拓朗

時代から取り残されたもの」をテーマにしたトラベルマガジン『polaris』

https://100banch.com/polaris

 

未知への冒険を提案するトラベル・カンパニーとして活動を行うpolaris。テクノロジーの発達によって旅がどんどん便利になる時代に。旅のもう一つの意味を提案。何が起こるかわからない「未知への冒険」を人々がカジュアルに楽しむ未来をデザインしています。

 

100BANCHでは「時代から取り残されたもの」をテーマにしたトラベルマガジン『polaris』の出版や、あえて辺境だけをキュレーションする旅メディア「辺境旅行代理店」、アートカルチャーをもっと開放的にするアート展示活動「museumβ」の企画を行いました。

 

塗木:今後、トラベルマガジン『polaris』のポップアップを実施したり、TOKYO ART BOOK FAIRに出店したりする予定です。「辺境旅行代理店」は単なるメディアではなくデジタルの旅行代理店事業として発展していきたいと考えています。また次回の「museumβ」の展示ではお金ではなく感情でアートを落札できる「かけひきのないオークション」を実施する予定です。

 

 

■Langerhans

登壇者:野村怜太郎 佐藤隆世

血糖値にアクセスする未来へ。

https://100banch.com/Langerhans

 

糖尿病の指標である「血糖値」を「生きるためのエネルギー源データ」として日常生活に馴染ませる取り組みを通じて、患者・健常者に囚われず真の意味での「生きる」を本質的に考えるきっかけを投げかけるLangerhans。現在、血糖値の可視化をテーマに活動しています。

 

小児期での発祥がほとんどである1型糖尿病を患う子どもと親にとって、血糖値管理によるQOLの低下は大きな課題であるため、Langerhansは血糖値の状態が光の色で簡単にわかるデバイスを開発。GARAGE Programの延長3か月では開発中のデバイスをブラッシュアップし、どのように社会に向けて発信していけるのかを考え活動してきました。

 

野村:Langerhansはインスリン補充が必須な患者とその家族一人ひとりが希望を持って生きられる社会を実現することを目指す「日本IDDMネットワーク」に全面的に支援していただけることになりました。また11月14日の世界糖尿病デーに、プロジェクトのメッセージやデバイスを紹介する予定で、渋谷から世界に向けて新しい血糖値管理のあり方を提案していきます。

 

 

成果報告が終わり、石川さんは「どれも魅力的なプロジェクトですので、意志を強く持って自分たちらしさやこだわりを明確に言語化したうえで活動を進めていくと、すごく新しいものになっていくはずです」とエールを送りました。参加者から石川さんへの質問も飛び交い、多くの新しい気付きを得られる時間となりました。

 

<次回実験報告会>

100年先の未来を描く6プロジェクトがピッチ!

11実験報告会&メンタートーク:石川善樹(予防医学研究者、医学博士)

 

日時:2021年11月25日(木) 19:00〜21:00

無料 定員100名

 

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※ZOOMウェビナーでの開催になります。
Peatixの配信観覧チケット(無料)に申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。

https://peatix.com/event/3065353
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『実験報告会』は100BANCHの3ヶ月間のアクセラレーションプログラムGARAGE Programを終えたプロジェクトの活動ピッチの場です。
また毎回100BANCHメンター陣から1人お呼びし、メンタートークもお送りいたします!
今回のゲストはの石川善樹さんです!
 
【こんな方にオススメ】
・100BANCHや発表プロジェクトに興味のある方
・Garage Programへの応募を検討されている方
 
【概要】
 日程:11/25(水)
 時間:19:00〜21:00
 参加費:無料
 参加方法:Peatixの配信観覧チケット(無料)に 申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。。
 
【タイムテーブル】
19:00〜19:15:OPENNING/ 100BANCH紹介
19:15〜20:00:メンタートーク
 ・石川善樹:(予防医学研究者、博士(医学))
20:00〜20:45:成果報告ピッチ&講評
 ・Eraflew:生まれつきバンディキャップを患ったことによる「やりたくてもできない」を0にする
 ・COACH FOR HSP:「繊細さん」という才能持つ若者は、これからの日本社会を引っ張るリーダーだ。
 ・creaB:対話により「価値観の違い」を受け止めながら、人と人とで共創できる社会を作りたい
 ・MUJO:渋谷で死と出会う
 ・Be in your shoes -異なるあなたとつながる方法-:Be in your shoesで違う世界を見る!
 ・Urban music fes:ライブでも視聴でもない、都市で行う新たな音楽体験をつくりたい
 ・uni:映画とファンをつなぐ、新しい出会い
 ・University of Universe:#空きコマ月 宇宙はどこも、わたしの大学だ。
20:45〜21:00:質疑応答/CLOSING
 

【メンター情報】

石川善樹
予防医学研究者、博士(医学)

プロフィール
 1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。(株)Campus for H共同創業者 「人がよりよく生きる(Well-being)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。 専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。

WRITER

100BANCH編集部