EVENT REPORT

2021.05.12 Wed

開拓者の背中と心強さ——
実験報告会&メンタートーク

  • #GARAGE Program

これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「Garage Program」。3カ月目と活動期間終了のタイミングで、どのような実験を行ってきたかを発表する実験報告会とメンタートークを実施しています。

2021年4月の実験報告会には、メンタートークにVUILD株式会社の秋吉浩気さんが登壇。続いて、5プロジェクトがそれぞれの活動について成果報告を行いました。


(会場撮影:鈴木 渉)

建築家として仕事をしながら、スタートアップの経営者でもある秋吉さん。メンタートークでは、これまでの活動経緯や活動内容、そして今考えていることを話しました。

 

リモートで登壇したメンターの秋吉浩気さん

 

秋吉浩気さん  プロフィール
VUILD株式会社 CEO
アーキテクト/メタアーキテクト。1988年大阪府生まれ。芝浦工業大学工学部建築学科にて建築設計を専攻。慶應義塾大学ソーシャルファブリケーションラボにてデジタルファブリケーションを専攻。

 

秋吉:大学で建築設計、大学院で3Dプリンティングをやっている研究室に入りました。学科を変えて専門性を2つ獲得して、そのままふらふらと一人で仕事をしていた人間です。建築家をやりながら、出資してくれる人と出会い2017年にスタートアップの経営を始めて、今に至っています。

 

秋吉さんの会社では、木工用の加工機「ShopBot」の販売しながら、誰でも家具や空間をつくるパーツを製造できるシステム「EMARF」の開発。欲しい部材のデータを送ることで、自動的に木材を切り出し、誰でもパーツをつくることができる仕組みをつくっています。

 

秋吉:昔はスマートフォンやコンピューターは高価なものだったのが、今の時代はそれらが使いやすくなって広がってきました。そんな感覚で、建築や家具の領域をスマートフォンやインターネットのように、開いていけないかと思っています。誰しもが自分の地域の木材を使って、自分が考えた空間や家具、建築を自分自身でつくれる社会をつくる「建築の民主化」をビジョンに掲げています。

 

 

今、木工用の加工機「ShopBot」は全国各地に設置されています。ハードウェアを設置することで、地域の高校生が地元の木材を使い家具をつくるデジタルデザイン教育が行われているなど、ものづくりを核に、地域課題を解決する循環共生圏を生み出すことができ始めているといいます。

 

秋吉さんは建築家としてその仕組みを建築にも応用するため、設計から施工までを自分たちで手掛けています。事例として、昨年グッドデザイン賞金賞を受賞した「まれびとの家」プロジェクトについて、紹介してくれました。

 

秋吉:富山県南砺市利賀村という人口500人くらいの村にShopBotを入れてもらいました。自分たちで木材を切り出して、村の人たちと組み立てて、自分たちの家だと思って来てくれる人を受け入れようというプロジェクトです。初期コストがそこまでかからないので、スモールスタートで自分たちが欲しい場所をつくることができます。これは、僕らが提供しているインフラを使って場づくりができるということを実証したプロジェクトでもあるんです。

 

 

「まれびとの家」から派生して、現在秋吉さんのもとには、さまざまな相談が寄せられているそう。進んでいるプロジェクトのひとつに、誰でも自分が欲しい空間の平面図を描けば、空間のイメージや必要な費用が算出されるというアプリの開発があるそうです。 

 

秋吉:購入するものだった家を、自分たちでつくることができるようになっていく。消費よりも生産、主体的なところを育む存在に変わっていく。環境破壊の象徴のような存在だった家づくりが、地域の木材を使って維持管理することで環境負荷を下げることもできます。こんなふうに、建築家でありながら、みんなを建築家にするためのシステムを提供しているのが僕の今の仕事です。

後半は100BANCHに入居して3カ月や半年の区切りを迎えたプロジェクトメンバーが登壇し、これまでを振り返りました。秋吉さんのコメントともに、成果報告の内容をご紹介します。

 

  Assassin from India

登壇者:高野一樹

三軒茶屋のシェアハウスで育んだ文化とヒューマンリソースをインストール

プロジェクト詳細:https://100banch.com/AssassinfromIndia


「三軒茶屋のインド」と呼ばれるシェアハウスを運営しているAssassin from Indiaのメンバーが、「100BANCHにインドをインストールする」ことを掲げるプロジェクト。カレーを食べたり絨毯でミーティングしたり、インドに行きたくなるウェブサービスを立ち上げるなど、さまざまな角度から100BANCHにインドの風を吹かせるべく活動してきました。


高野:
みなさん、悩みますよね。果てしなく長い時間悩む期間があって、スティーブ・ジョブズになっていくんだと思いますが、悩んだらインドに行くのが近道なんです。スティーブ・ジョブズもインドに行ったことで、事業がうまく行ったと言われています。だけど今、インドに行けないんですよね。だったら100BANCHをインドにしようというのが僕らのやりたいことです。いろいろ活動してきて、今、東京はインドなんじゃないかという仮設を立て、インドっぽい場所を見つけていくプロジェクトを始めています。今後も、インドからの求人を開発したり、ECサイトを開設したりと活動を続けていく予定です。


秋吉さんのコメント:
インドに行くとどうしてスッキリすると言われているけれど、それって言語化できていますか。仮説でもいいから言語化すると「インドっぽさ」が誰にでもわかるかたちになって、より広く届きやすくなるんじゃないかと思いました。

 

 

  white squat

登壇者:翁長宏多

空家白占拠集団white squat 渋谷白塗開始ナリ

プロジェクト詳細:https://100banch.com/white_squat

 

廃棄予定の白いペンキを使用し、空き家や空き地を白くすることで、町をキャンバスにする活動を行うwhite squat。白く塗る過程を楽しみながら、できた空間で人が集うイベントを開催してきました。イベントをする度に「うちの空き家も使ってほしい」という声がかかり、今後もいくつかの場所で活動することが決まっています。

 

翁長:白に「再出発」という意味を込めて活動しています。空き家、空き地を白くして、イベントを開催して、オーナーとつながってというループができてきました。今後はこのループを洗練させながら、ウェブサイトをつくったり、ブランディングを深めていきたいと思っています。

 

秋吉さんのコメント:コンセプトもおもしろいし、どんどん実践しているのが素晴らしいと思います。「再出発」をコンセプトにしていくなら、白くした後にどうするかっていうことも、もっと考えてみてもいいかもしれません。白い空間になにか置くことだけが出発のあり方ではないと思うので、いろいろ平行して試してみてもいいんじゃないかと思いました。

 

 

  Z-Rakugo

登壇者:桂枝之進

Z世代の視点で落語を楽しむ新しい「寄席」のカタチを渋谷の街を舞台にデザインする!

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/zrakugo

 

入居して6ヶ月を迎えたZ-Rakugoは、Z世代に落語が日常的なものになることを目指すチームです。落語の寄せにクラブカルチャーをミックスしたイベント「YOSE」が大好評に終わった後も、ネット上のコンテンツ制作やアパレルブランド「ZuZuZuit!」をスタートするなど、精力的に活動を続けてきました。

 

桂枝之進:思ったようにイベントができない時期ではありますが、YOSEの全国展開やポップアップを検討しています。いろいろなクリエイターが集まるコミュニティになってきたので、並行して、クリエイティブの制作も事業にしていこうと考えています。「Everyone wants a classy laugh みんな、洒落。」を合言葉に、Z世代の視点で落語を再定義して発信し続けていきたいと思います。

 

秋吉さんのコメント:見せ方がおもしろいですね。Z世代に絞っているけれど、その世代にとって響くことはなんだったのか、どういうところに反応しているのかに興味があります。そこがより明確に見えてくると、活動が洗練されてくるのかなと思いました。

 

 

  The_MIX

登壇者:塚原怜

社会運動、うっかりアセンション?!スパイスの力で編纂する現代版「味覚の生理学」

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/themix

 

The MIXは、新しい味覚を発見する機会をつくるために活動しているスパイスブランド。100BANCHでは若い世代に向けた新商品の試食会と平行して、嗅覚を使ったゲームの開発や魔女占い師とコラボしたコラボしたスパイスキッドなど、さまざまな商品を発表してきました。

 

塚原:変わり種のコラボ商品が多かったんですが、今後は一層味覚にフォーカスして、試食会を増やしていきながら、商品の開発を進めていきたいと思っています。ブランドを知ってもらうこと、集客はまだまだ課題としているので、秋吉さんのお話もとても参考になりました。

 

秋吉さんのコメント:ブランドの世界観を深めていくということと、スパイスについて、自分にしか出せないオリジナリティがどこにあるのかが大切な気がします。僕らもまずはプロに向けてサービスを展開していったんです。プロがうなる仕組みをうまくつくっていくのがポイントになりそうな気がしました。

 

 

  GLOBAL MICRO TOUR

登壇者:大塚誠也

異文化の混ざり合う暮らしのきっかけをつくり、多文化共生をもっと当たり前に!

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/grobalmicrotour

 

日本に住む海外をバックグランドにした人たちとの接点をつくるため、活動をしている大塚さん。日本国内にある外国人コミュニティを旅する「グローバルマイクロツアー」の開催に加え、日本国内での交換留学プログラムの構築、ナナナナ祭での企画準備などさまざまな挑戦を続けています。

 

大塚:そもそも人間のルーツは一緒なんだということから始まっているプロジェクトでもあるので、今のナナナナ祭では、人類のルーツに関する展示をしたいと思っています。合わせて、個々人が親しみのある国を持つ「My Country」という概念をつくることにも取り組んでいきたいと思っています。

※大塚さんは動画での成果報告となったため、秋吉さんからのコメントはありません。

 

 

当日はスタートアップ、そしてプロジェクトを立ち上げ進めている先輩である秋吉さんに、さまざまな質問も飛び交いました。また、成果報告をしたメンバーがつまずいていることに対して、自身の経験から、率直な意見を伝えてくれる秋吉さんの姿も印象的でした。

身近に、先を行く人たちの背中が見える100BANCH。ここでプロジェクトに取り組むことの心強さを改めて感じる時間になりました。

 

<次回実験報告会>

100年先の未来を描く6プロジェクトがピッチ!

5月実験報告会&メンタートーク 林 千晶(株式会社ロフトワーク)

 

日時:2021年5月27日(木) 19:00〜21:00

無料 定員100名

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※ZOOMウェビナーでの開催になります。

Peatixの配信観覧チケット(無料)に申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。 

https://100banch2021-05.peatix.com/

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『実験報告会』は100BANCHの3ヶ月間のアクセラレーションプログラムGARAGE Programを終えたプロジェクトの活動ピッチの場です。

また毎回100BANCHメンター陣から1人お呼びし、メンタートークもお送りいたします!

今回のゲストは株式会社ロフトワーク創業者の林 千晶さんです! 

【こんな方にオススメ】

・100BANCHや発表プロジェクトに興味のある方

・Garage Programへの応募を検討されている方 

【概要】

 日程:5/27(木)

 時間:19:00〜21:00

 参加費:無料

 参加方法:Peatixの配信観覧チケット(無料)に 申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。

【タイムテーブル】
19:00〜19:15:OPENNING/ 100BANCH紹介
 
19:15〜20:00:メンタートーク
 ・林 千晶(株式会社ロフトワーク 創業者)
 
20:00〜20:45:成果報告ピッチ&講評
 
Up:身体の内側を守る下着「スマートパンツ」
serendipity:「敏感すぎて生きづらい」その苦しみ、活かして生きよう。
Sparkle Ways Project:こどもたちの興味・意欲を引き出し、闘病生活に新たな「あそび」の創出を目指す
Color Fab|消えない「虹」を3Dプリントする。−未来の色彩工芸−
Period of 100 Athletes Project:生理で悩む人たちへ。アスリート100人の声を世の中へ届けたい
GoSWAB:都市に生息する微生物を調査し、日常との関わりを解明する 

【メンター情報】 

林 千晶
株式会社ロフトワーク 創業者

<プロフィール>
早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒。花王を経て、2000年にロフトワークを起業。Webデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティデザイン、空間デザインなど、手がけるプロジェクトは年間200件を超える。グローバルに展開するデジタルものづくりカフェ「FabCafe」、素材に向き合うクリエイティブ・ラウンジ「MTRL」、クリエイターとの共創を促進するプラットフォーム「AWRD」などを運営。MITメディアラボ 所長補佐、グッドデザイン賞審査委員、経済産業省 産業構造審議会製造産業分科会委員も務める。森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す官民共同事業体「株式会社飛騨の森でクマは踊る」を岐阜県飛騨市に設立、代表取締役社長に就任。

WRITER

中嶋 希実

編集・チャイ屋

東京と茨城を行ったり来たり。話を聞いたり、書いたり、動かしたりしながらいくつかのプロジェクトに関わっています。ときどきチャイ屋「きみちゃい」をひらきます。