EVENT REPORT

2020.12.08 Tue

EVENT REPORT
自分らしく分岐点を進んでいく
実験報告会&メンタートーク

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これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「Garage Program」では、3カ月目の活動期間終了のタイミングで、どのような実験を行ってきたかを発表する実験報告会とメンタートークを実施しています。

2020年11月25日に開催したメンタートークには、マンガを介したコミュニケーションを生み出す「一般社団法人マンガナイト」代表理事の山内康裕さんが登壇。また、5つのプロジェクトが成果報告を行いました。

(撮影:鈴木 渉)


メンターの山内康裕さん

 

前半はメンターでもある山内さんより、100BANCHで活動するメンバーに向けて、ご自身のこれまでの活動や転機についてお話いただきました。

 

山内康裕さんプロフィール

1979年生まれ。法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科修了後、税理士を経て、マンガを介したコミュ二ケーションを生み出すユニット「マンガナイト」を結成、2020年に法人化し「これも学習マンガだ!」事業(日本財団助成)を推進。また、マンガ関連の企画会社「レインボーバード合同会社」を設立し、“マンガ”を軸に施設・展示・販促・商品等のコンテンツプロデュース・キュレーション・プランニング業務等を提供している。「さいとう・たかを劇画文化財団」理事、「これも学習マンガだ!」事務局長、「東アジア文化都市2019豊島」マンガ・アニメ部門事業ディレクター、「国際文化都市整備機構」監事も務める。共著に『『ONE PIECE』に学ぶ最強ビジネスチームの作り方(集英社)』、『人生と勉強に効く学べるマンガ100冊(文藝春秋)』等。

 

マンガを通してさまざまなコミュニケーションを生み出してきた山内さん。活動を始めた当初は税理士として仕事をしながら、マンガについて話すイベントを開くなど、マンガに関わる活動を少しずつ始めていきました。

 

山内:活動していくうちに仲間が増えて、面白がってくれる人が出てきました。僕は起業家を目指していたわけではなくて、活動を続けていった結果として事業になってきた。自分の役割を少しずつシフトチェンジしてきたんです。起業を目指してスタートするよりも時間はかかったかもしれないけれど、僕にはこのやり方が合っていたんだと思います。

 

地道に活動を続ける山内さんの元には、徐々に「立川まんがぱーく」や「東京ワンピースタワー」などマンガに関わる施設の企画、イベントや展示など、マンガに関わるさまざまな相談が集まるようになっていきます。

 

山内:今でもそうなんですけど、僕って肩書きを名乗っていないんです。例えばデザイナーとかライターとか職能を示す人が多いかもしれませんが、僕の場合はマンガという領域だけわかるようにしたんですね。職能で言うとプランナーになるわけなんですけど、マンガ以外のプランニングで声がかかっても、そこまで気持ちが上がらないんです(笑)それは自分はどの領域で貢献したいという思いが自分の中で明確だったからです。なので「何をします」というよりも「どこでやります」という領域を示した。マンガに関わることなら声をかけてみようと思う相手になれたのは、分野やスタンスを示してきたからだと思います。

 

 

その後もマンガを通して課題解決をしていくプロジェクトの事務局長や芸術祭のマンガ・アニメ部門のディレクターを務めるなど、マンガに関わるプロジェクトを始めるときにはまず相談したい相手として、独自のポジションを開拓してきました。

 

山内:新しい事業をやるときに、市場のなかで勝っていきたいという人もいれば、マーケットは小さいかもしれないけれど可能性があることをやっていきたいという人がいると思っていて。僕は後者なんですよね。マンガの中では伸びていてライバルが多い電子書籍に参入するよりも、地道に新しい価値を提案していくようなプロジェクトに関わっていきたいと思いました。どちらがいい悪いというわけではないんですけどね。

多忙になっていくなか、山内の活動の大きな転機となったのは、2017年から2018年に森アーツセンターギャラリーで開催した「創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展」。企画協力として展示の演出などを担当しながら、組織としてのその後の方針について迷うこともあったといいます。

 

山内:その頃、他の展示の企画も重なるようになってきました。今後、経営者としてやっていくなら、マンガに限らずアニメやゲームなど、周辺領域の展示や企画全般にやっていくような組織をつくるという選択肢もあったかもしれません。だけどそのとき、僕は経営者になりたいのではなく、自分なりの思いを持って、自らでやりたいという部分が強かった。だから組織化したり、自分が現場にいなくてもできるような状況はつくらなかったんです。

 

組織化して自分の手離れをさせる状況をつくったほうが活動のリーチは広がるし、効率的な事業になるかもしれない。けれど、僕はそっちではないなと判断したんですよね。みなさんも活動をしていくうちに、どうするか考えていくタイミングがやってくるんじゃないかと思います。経営者になりたいのか、起業家・活動家であり続けるのか。自分に合った方向性を考えておくといいと思います。

 


現在「第2回国際マンガ・アニメ祭Reiwa Toshima(IMART2021)」開催支援プロジェクトのクラウドファンディングを実施中

 

さまざまな活動に関わりながら、山内さんは新しい価値をつくり続けてきました。がむしゃらに楽しいことをし続けるというよりは、冷静に、そして客観的に、自分たちのプロジェクトが社会のなかでどんな立ち位置にあるのかを見極めながら、プロジェクトがより良く続いていく方法を模索していると語ります。

 

山内:多くの社会起業家のように不便を解消していくことや世の中に必要なものをインストールすることって広く応援されやすいんですね。ただ僕がやっているマンガの分野は、なければなくてもいいものだとされることもある。ただ、なくてもいいんだけれど、あったらちょっと世の中が面白くなること、広くはないけど一部の人にとっては望まれていることをやっています。その違いによって、応援してくれる人が大きく変わってくる。自分のプロジェクトがどっちなのかも意識しているといいと思います。

 

マンガのアワードをつくったり、マンガを題材にしたビジネス書をつくったりと、今も活動の幅が広がり続ける山内さん。自分に求められる役割についても、客観的に捉えながら仕事を開拓しています。

 

山内:僕って特異性はあると思うんですけど、すごく優れたものが1つあるわけではなくて。マンガという領域のなかで企画もするし、お金のこともできるし、編集、クリエイティブディレクションもやります。その道のプロほど極めてはいないけれど、この領域のことであればある程度のクオリティでできる。専門家を大勢集めるプロジェクトって、それなりにお金がかかるからなかなかすぐには実行できないんです。そういうとき、僕のように1つのことを突き詰めるんじゃなくて、領域を絞ってどれもそこそこできるような人のほうが、まずは声がかかりやすかったりする場合もあります。そんな生き方もありだっていうことが参考になればいいなと思います。

後半は100BANCHに入居して3カ月の区切りを迎えたプロジェクトメンバーが登壇して、これまでの活動を振り返りました。山内さんから、それぞれのプロジェクトに向けて寄せられたコメントとともにお伝えします。

 

■Laughter is approval 登壇者:小幡七海

「どんなことも笑いに換えられる力を養う落語ワークショップを全国へ」

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/28033/

 

落語を通して人を笑わせるという経験が自信になって、いろいろなことに挑戦する力を身に着けてほしいという小幡さん。100BANCHの入居期間中には、小中学校に出向いて落語の授業を行うなど、子どもたちが人前で落語をする機会をつくってきました。

 

小幡:いつも子どもたちが輝くんですよね。落語を通して、自分らしさや個性がすごく出るんです。ただ、人前に出るのが難しい子もいて。今後はそんな子どもも輝けるようにするにはどうするか、中長期的に関わっていけるようなプログラムも考えていきたいと思っています。

 

山内さんのコメント:僕もマンガのワークショップをやっているのですが、例えば、マンガの描き方のワークショップにはマンガ家になりたい子どもたちが参加する一方で、マンガで他者理解を促すようなワークショップでは、そうではない子どもたちも参加します。そういった意味では、落語は楽しいということだけじゃなくて、落語を通してこういうことが学べる、こういう力が身につくというのがわかりやすく見えることも大切だと思います。落語の良さも伝えながら、落語を使った課題解決についてわかりやすく伝えていけると、活動に厚みが出て、より持続可能な形になっていくと思います。

 

 

■ehonbox 登壇者:杉山裕磨

「絵本との出会いを増やすことを目指す」

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/27962/

 

杉本さんは、毎月定額で5冊の絵本が家に届くという絵本のサブスクリプションサービスを立ち上げようと準備を進めてきました。この3カ月はテストユーザーからのコメントを集め、実際に有料サービスをスタートする準備を進めてきたそうです。

 

杉本:テストができたことで、すごく実現が近づいてきました。ただ、活動当初から動いてた出版社との契約や絵本の納品が大幅に遅れてしまい、リリースやイベント、ほかのプロジェクトとのコラボレーションなど、やりたかったことがほとんどできませんでした。GARAGE Programの延長申請して、残りの3カ月では出版社との話を前に進めて、事業として成り立たせる準備をしていきたいです。

 

山内さんのコメント:江戸時代の本屋さんって、出版も卸も、作家の育成も全部自分たちでやっていたそうです。今は効率化を求めて役割が分かれているけれど、インターネットの世界になると全部できちゃうわけです。例えばSNSで作品を発表している作家たちに声をかけて、絵本をつくるところから関わっていくこともできる。今の活動と、その絵本のプロデュースのどちらもハイブリッドな形でやっていけば、よりスピーディーにまわっていくと思います。 

 

 

■Liquitous 登壇者:栗本拓幸

「液体民主主義の社会実装で『一人ひとりの影響力を発揮することができる社会』を!」

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/27992/

 

一人ひとりが意見を表明する機会が担保される社会を実現するために、「液体民主主義」を実装する仕組みづくりをしているのがLiquitousの面々。コミュニケーションのとり方を変えるアプリケーションの開発やビジョンの再定義、自分たちが考える世界観や事業の発信などに力を注いできました。

 

栗本:少しずつですが、自分たちが進んでいく道が見えてきたような感覚があります。その過程で、実は「液体民主主義」という言葉を使うのをやめようという話になってきました。この言葉だけでは自分たちがやりたいことをすべて表現できない。そんなふうに議論を重ね、マインド・アイデンディディーを確立しながら、資金調達やパートナーの発掘も進めています。今後は、オンライン上の合意形成のプラットフォーム“Liqlid”を活用して、新しいガバナンスを具現化することで、社会と個人の関係性をより能動的なものへと再構築していきたいと考えています。

 

山内さんのコメント:「液体」と「民主主義」ってみんな知っている言葉だけど、「液体民主主義」と混ざると意味が分からない部分を若干感じたので、その言葉を変えていく選択は、柔軟でいいですね。やっていること全てを表現する言葉を探し始めると、どんどん抽象的になってしまうと思います。すべてを表す言葉をつくるというよりも、相手に合わせて分かりやすい見せ方や言葉をつくって活動を進めていくのもいいかと思いました。 

 

 

■To you would like to travel to the earth outside. 登壇者:石田悠

「地球外へ旅に出たいアナタへ」

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/26082/

 

洋服好きが講じて、100年先、宇宙へ旅行に行くときにも気軽に持っていける服のあり方を考えるところから活動をスタートした石田さん。持ち運びのしやすさを追求し、家庭用の衣類圧縮機の開発を進めています。

 

石田:油圧器を購入してみたり、町工場で圧縮する型をつくってもらったりしながら、衣類の圧縮の実験を繰り返しています。衣類圧縮機を販売までこぎつけて、人類が地球を飛び出すときにも、身軽に、自由にファッションを楽しめる環境をつくっていきたいと思っています。

 

山内さんのコメント:持っているビジョンと、具現化している衣類圧縮というところに距離があるように感じます。圧縮服が普及していくとどうなるかをもう少し伝えられると、より広がる気がしました。おもしろい活動なので、期待しています。

 

 

■SEIJI-KENTEI 登壇者:野田みどり

「『政治検定』でシティズンシップ教育をアップデートする」

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/26100/

 

SEIJI-KENTEIは、誰もが政治についての知識を備え、生きるために必要な判断力を身につけることで主権者教育のアップデートを目指しています。活動期間中、富山県の公立高校の生徒や大使館とのコラボ、大学のオンライン授業で政治検定を取り入れてもらったことで、さまざまな気づきがあったといいます。

 

野田:例えば、僕らが問題をつくっていくよりも、同世代がつくった問題のほうが学びが大きいことに気づきました。授業で検定を受けてもらうことと平行して、政治検定の受検者に問題をつくってもらいながらアップデートを続けています。今後は講義を繰り返して認知を広めつつ、講義で集めた問題を更新ながらが検証を続けていき、年内には、有料バージョンをリリースしたいと思っています。

 

山内さんのコメント:検定試験って、趣味の延長線上で持っているとうれしいものと、専門的な知識が得られてスキルになるもの、最近はゲーム性が強いものもあります。今の政治検定は、そのどれに当たるのかが、少し弱いような印象があります。しかし、ゲーム性が強いものだと課金がしづらくなります。極端な例かもしれませんが、政治検定に合格すれば、大学の政治経済学部に入学できるなど権威持たせると、課金の可能性も出てくる。もしくは個人の課金より、政治検定や政治教育で生まれる楽しさやコミュニケーションに共感してくれるスポンサーについてもらうのも事業化への近道だと思いました。

 

 

サービスのリリースやコンセプトの見直しなど、プロジェクトを立ち上げ、続けていくなかではさまざまな分岐点が訪れます。自分らしい選択を続けてきた山内さんのお話やアドバイスは、プロジェクトメンバーにとって心強い指標になりました。

 

 

次回の実験報告会は12月23日(水)に開催。GARAGE Programの成果報告と、今回はクリエイティブディレクターの小橋賢児さんによるメンタートークを行います。ぜひご参加ください!

<次回実験報告会>

オンライン開催 12月実験報告会&メンタートーク 

日時:2020年12月23日(水) 19:00〜21:00
参加費:無料

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オンライン配信での開催となります。
Peatixの配信観覧チケット(無料)に申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。
https://peatix.com/event/1734770
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『実験報告会』は100BANCHに入居したプロジェクトの成果報告の場です。また毎回100BANCHメンター陣から1人お呼びし、メンタートークもお送りいたします!

今回のゲストはThe Human Miracle株式会社 代表取締役の小橋賢児さんです!

【こんな方にオススメ】
・100BANCHや発表プロジェクトに興味のある方
・Garage Programへの応募を検討されている方

【概要】

 時間:19:00〜21:00
 参加費:無料
 参加方法:Peatixの配信観覧チケット(無料)に 申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。

 

【タイムテーブル】
 19:00〜19:15:OPENNING/ 100BANCH紹介
 19:15〜20:00:メンタートーク
 ・小橋賢児さん(The Human Miracle株式会社 代表取締役)
 20:00〜20:45:成果報告ピッチ&講評
Plunger
REPIPE
comel
open the sesame for open space
20:45〜21:00:質疑応答/CLOSING

【メンター情報】

小橋 賢児 | Kenji Kohashi

The Human Miracle株式会社 代表取締役

1979年東京都生まれ。88年に俳優としてデビュー、NHK朝の連続テレビ小説『ちゅらさん』などの人気ドラマに出演。2007年に芸能活動を休止後、『ULTRA JAPAN』のクリエイティブディレクターや『STAR ISLAND』の総合プロデューサーを歴任。東京2020 NIPPONフェスティバルのクリエイティブディレクター、キッズパークPuChuのプロデュースなど、イベントや都市開発の企画運営に携わる。

WRITER

中嶋 希実

編集・チャイ屋

東京と茨城を行ったり来たり。話を聞いたり、書いたり、動かしたりしながらいくつかのプロジェクトに関わっています。ときどきチャイ屋「きみちゃい」をひらきます。

#GARAGE Program