Plunger
「らしさ」を流せ!トイレボリューション☆
これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」。3カ月目の活動期間終了のタイミングで、どのような実験を行ってきたかを発表する実験報告会とメンタートークを実施しています。
2020年12月23日の実験報告会では、イベントや空間プロデュースなどを通して、体験型エンタテインメントを次々と生み出している小橋賢児さんがリモートでメンタートークを展開。そして、今回は6プロジェクトがそれぞれの活動について成果報告を行いました。
前半は小橋さんのメンタートーク。過去の苦しい経験も赤裸々に紹介しながら自らの手で切り開いてきたこれまでの人生について語りつつ、プロジェクトを進める100BANCHメンバーにメッセージを届けました。
リモートで出演したメンターの小橋賢児さん(画像:100BANCH)
小橋賢児さんプロフィール
The Human Miracle株式会社 代表取締役
1979年東京都生まれ。88年に俳優としてデビュー、NHK朝の連続テレビ小説『ちゅらさん』などの人気ドラマに出演。2007年に芸能活動を休止後、『ULTRA JAPAN』のクリエイティブディレクターや『STAR ISLAND』の総合プロデューサーを歴任。東京2020 NIPPONフェスティバルのクリエイティブディレクター、キッズパークPuChuのプロデュースなど、イベントや都市開発の企画運営に携わる。
小橋:僕は8歳から27歳まで芸能界にいたのですが、家は超がつくほど貧乏でした。親は共働きで家にいなかったので、なにをするにも誰かに確認してから行動するということがあまりなかったんです。その結果として、思い立ったら自分で試してみるという意識が自然に備わっていたんだと思います。
新聞配達のアルバイトをしてみたり、原宿のテント村でアクセサリーづくりを手伝ったり、思い立ったらまず行動をしていたという小橋さん。好きだったテレビ番組の観覧に行きたいと思い、自分でハガキを送ってみたことが、芸能界に入るきっかけになったそうです。
小橋:未来から逆算するのではなくて、素直にやってみたいことをやっていただけなんですね。10代、20代といろいろなテレビに出してもらうようになり、話題のドラマにも出演しました。周りから「すごいね」って言われるようになったけれど、僕自身はまったく嬉しくなかったんです。思い立ったらやるという直感で生きていた僕が、いつの間にか「俳優だからこうしなければならない」と自分で自分の枠を狭めていたんですよね。自分の直感を失うってすごく苦しいこと。このまま行けばどうにかなりそうな人生は見えたけれど、これって本当の自分なんだろうかって思い始めていました。
(画像:100BANCH)
自分のなかにある違和感に気づいた小橋さんは、さまざまな業種の人と会って話をしたり、アメリカに語学留学、大規模なフェスに参加したりと、これまでとは違う世界に触れる機会を自らつくっていきました。
小橋:それで日本に戻ってきたら肝臓の数値がとんでもなく悪くて、お医者さんから「このままだと死ぬ」と言われました。このまま病気を言い訳に、どうでもいい中年になることもできる。だけど「病気だったら、ゼロからやり直せばいいじゃん」って思ったんです。それで、自分の誕生日イベントを自分でプロデュースすることを決めました。そのために身体をつくるなど、目の前にあること、できることにフォーカスしてみたんです。
ロゴやフライヤーづくり、イベントの設えを仲間とともに企画していった小橋さん。大盛況に終わった誕生日イベントをきっかけに、その後も仲間たちとイベントを企画するようになりました。あるとき企業からイベント企画のオファーが舞い込むようになり、イベントや空間づくりが仕事になっていったそうです。後に世界最大級の音楽イベント「ULTRA JAPAN」のクリエイティブディレクターなど、さまざまな体験型エンタテインメントをプロデュースすることが仕事になっていったそうです。
その後、世界最大級の音楽イベント「ULTRA JAPAN」のクリエイティブディレクターを務めるなど、さまざまな体験型エンタテインメントをプロデュースしてきた小橋さん。最近もノンアルコールのバーとして話題となった「0% Non-Alcohol Experience」やテクノロジーでメディテーションができるリトリートラウンジ「UNBORN」など、さまざまな体験ができる空間をつくり続けています。
小橋:30歳のころはお金もなくて、仕事もないし恋人にも三行半を突きつけられるし、本当になにもなかったんです。そんな自分がまさか数年後、こんなにいろんなイベントを企画しているなんて想像もしていませんでした。振り返ると、ただただテレビの収録を観に行きたいと思ってハガキを送った行動と、目の前の病気を治して誕生日プロデュースしたことって僕のなかではなんら変わらないことなんです。ゴールからの逆算ではなくて、ただそこにある繋がりとか、目の前にあることにフォーカスしたことで、縁がつながっていったのだと思います。
(画像:100BANCH)
俳優業を続けていくことに悩んだこと、病気になったこと。うまくいかなかった時期を振り返ると、いい転機になっていたのだと小橋さんは言います。
小橋:これからみなさんがプロジェクトを進めていくなかで、うまくいかないこともあると思うんです。でもそのひとつひとつが、自分が本当にやるべき姿に出会うきっかけになっているかもしれない。むしろ新しいビジョンに向かっていくチャンスだと思って欲しいです。ビジョンが変わってもいい。世界はいろんな奇跡にあふれているから、目の前のことにフォーカスして、セレンディピティを大切に、自分自身の人生を楽しみながらつくってほしいと思います。
後半は100BANCHに入居して3カ月の区切りを迎えたプロジェクトメンバー、そして卒業して活動を続けるメンバーが登壇して、これまでを振り返りました。小橋さんからそれぞれのプロジェクトに向けて寄せられたコメントとともにお伝えします。
■ Plunger
登壇者:原田怜歩
「『らしさ』を流せ!トイレボリューション☆」
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/plunger
Plungerは性自認や障害の有無に関わらず、すべての人が同様に利用できるトイレの普及を目指しています。100BANCHでは、トイレに対するアンケートを実施したり、男女共同のトイレを可視化するステッカーやマップづくりを進めてきました。
原田:3カ月間ここで実験をしながら、ジェンダーに対する日本人の意識の低さを感じました。日本においてSDGsのなかでも、ジェンダーに関することが少ないように思うんです。トイレについてのジェンダーの課題を解決するためには、まずはみんなに知ってもらうことが必要だと考えるようになりました。そこで私たちはジェンダー、そしてSDGsについて気軽に楽しく知ることができる「トイレde SDGs」というトイレットペーパーの開発を決めました。トイレットペーパーにマンガ形式でトイレ教育に関することをプリントすることで、世代を超えたトイレ教育が進められたらと考えています。
現在クラウドファンディングを実施中
「【SDGsを漫画で学べるトイレットペーパー】を全国に届けたい!」
https://readyfor.jp/projects/plunger
小橋さんからのコメント:これからは、ただサービスをつくるだけではなくて、そのコンセプトやストーリーに共感しないと、人は使わなくなっていくと思います。Plungerが取り組むテーマは、根深い問題でもあるから課題を解決するのは大変かもしれないけれど、感じた違和感を大切にしたりいろんな視点でものごとを考えていくうちに解決策が見つかってくることもあると思います。諦めずに取り組んでみてください。
■ REPIPE
登壇者:和久正義
「まちの余白に価値を見出すSHIBUYA POP-UP PLAYGROUND計画」
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/repipe/
自分たちの手を離れて再開発が進んでいく都市のなかで、空間が持つ可能性を再発見し、工事用資材を転用した仮設の遊び場を通して、自分たちでまちを使いこなすための遊び方を提案するREPIPE。ホームセンターで手に入るものを即興的に組み上げ、大人も楽しめる遊具やプロダクトの開発したり、映像や音楽などアートワークを組み合わせる試みを続けてきました。
和久:先日、100BANCH前の渋谷リバーストリートを使って、超短期型イベント「POPUP PLAY PARK」を開催しました。単管ユニットと移動販売車などを組み合わせ、洋服の販売や映像の投影、僕らがつくってきたツールを体験してもらったりしながら、天候や参加者のインタラクションによって空間やコンテンツが変化していくイベントです。100BANCHのほかのプロジェクトを巻き込んだりはできたものの、試してみることで課題もたくさん見えてきました。今回のイベントを通して得た新しいコラボレーションから、空き地や都市を最大限に利用できる新しい形を探求していきたいと思います。
小橋さんからのコメント:海外では工場地帯や空き地など、余白を使った新しい試みから新しいイノベーションが起きている事例がたくさんあります。でも、日本ではそういう場所が使いにくかったり、ルールで使えないっていうことがいっぱいあると思うんです。「REPIPE」の余白に新しい可能性を見出すっていうのはすごくおもしろい試みですよね。このプロジェクトがきっかけになり、新しいアイデアやコミュニティが生まれていったらいいなと思いました。
■ comel
登壇者:沼倉大将
「お米の温もりを通して、忙しい現代人に幸せを届けたい」
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/comel
Comelは「日本のお米文化を伝えていく為、一杯のご飯を通して人々の心に豊さを。」をコンセプトに、プロが炊いたお米を瞬間冷凍して届ける炊飯宅配事業に取り組んでいます。共働きの家庭や一人暮らしの人が毎日のごはんを通じて食生活を改善できるよう、食生活アドバイザーによる監修をしてもらいながら、忙しい現代人に栄養と心のゆとりを届けるサービスです。
沼倉:100BANCHでは、キャッシュがないこと、そしてブランドとして知名度の無さを問題点と捉え、単品商品のリリースをクラウドファンディングで行い、問題点の解消に努めました。炊飯宅配事業は国内のフードテック企業の増加により、栄養食市場がレッドオーシャン化しています。そのなかで、栄養食市場の課題として見えてきたのが、低価格に対応できていないこと、そしてオーガニック需要に対応できていないことです。僕たちは国産の無肥料無農薬のお米を扱っているので、自然派として、これからも差別化していけたらと考えています。
小橋さんからのコメント:持続可能でサスティナブルにプロジェクトを続いていくためには、イノベーションを起こすおもしろいアイデアというだけではなくて、こういった人間の生活に根ざしたものをきっちりつくっていくことも大切だと思います。一人暮らしのときには、なかなかおいしいお米を炊いて食べるっていうことができないので都心の一人暮らしの人にも需要がありそうです。若くしてこういうプロジェクトに取り組もうとしているのがいいなと思いました。
■ open the sesame for open space
登壇者:増田真由
「渋谷の公共広場に個人の縄張りを流し込んでみたい」
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/open-the-sesame
渋谷の公園を自分たちのつくったツールでハックし、自分の居場所をつくっていくopen the sesame for open space。渋谷にある公園の空間性のリサーチを重ねつつ、誰もが無目的で長居できる公園にしていくためのプロダクトを開発しています。100BANCH入居時にはダンボール素材を使ってプロダクトをつくっていましたが、現在は3Dプリンターを活用して、ベンチに取り付けることで座り心地を改良できるツールをつくるなど、より精度が上がってきているようです。
増田:私たちの活動は既存の公園に対するアンチテーゼなので、その公園にもともとあるものと、新しく持ち込んだものの二軸を使って見えてきた課題を解決しながら、既存の公園の良さも再発見できるようにしています。公園を構成するモジュールが共通化していることにつまらなさを感じる部分があるのですが、それを逆手に取り、ひとつのデザインでつくったツールをほかの公園にも応用させていこうと考えています。
小橋さんからのコメント:やらなくてもいいことを、あえてやるっていうのがおもしろいですよね。ここから気づきやアイデアが生まれていくきっかけになっていくんだろうなと思います。プロダクトを作っていく過程で気付きが生まれ、また、それを見たり体験したりした人たちが新たな使い方や空間のあり方に気付くかもしれません。世の中にあるものをそのまま切り取るのではなく、自身の問いからプロジェクトが始まっていることがが素晴らしいですね。
■ YASAI no CANVAS
登壇者:瀬戸山匠
「やさいの色彩や都市型農業の生産プロセスを通して、贈与経済文化の醸成・発信を目指す」
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/yasai-no-canvas
子どもたちのココロとカラダ、創造力を育み、関わる人たちの主観的幸福感を高めることに取り組んでいるのがYASAI no CANVAS。食事を習慣から楽しみに変え、孤食を共食に変容していくという仮説を立て、野菜とはちみつを使った美味しいお絵かきクリーム「やさいのキャンバス」を開発しています。100BANCHでは、ナナナナ祭に合わせてオンラインのお絵かきワークショップを開催するなど、商品化に向けた準備を行ってきました。
瀬戸山:商品に合わせて、絵描き歌など、野菜を食べることを楽しめるような仕組みや、パン屋や幼稚園、保育園にも置いていただく取り組みも計画しています。また、今後は地域と連携して今ある3色以外の色を開発したり、食事が楽しみになることを研究していきたいと思っています。
小橋さんからのコメント:僕も息子がいるので、食の時間を楽しんだり学んだりっていうのは、もっと広がったらいいなと思いました。食べながらクリエイティブになっていくというきっかけを、どんどん広げてもらいたいなと思います。
■ mikke
登壇者:北島聡実
「「落としものネットワーク」で落としものをしても返ってくる社会を創る!」
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/mikke
北島さんは別のGARAGE Programのプロジェクトに関わったことをきっかけに100BANCHを知り、その後、自身で「 mikke」というプロジェクトを立ち上げ100BANCHに入居しました。その後プロジェクトは形を変え、現在は「Mable」というメディアの運営をしています。主にイベントを通して、ロールモデルがなくても自分で考え、自分らしい道を探していくきっかけづくりを行っているそうです。
北島:私は家族が教師だったこともあって、無意識に教師を目指していました。100BANCHに関わるようになり、自分のやりたいことに、常識にとらわれず活動している人たちに出会って考え方が変わりました。大学卒業後はフリーランスとして働きながら、仲間と立ち上げた「Mable」というメディアを通して、多様な色が輝く社会を作るための活動を続けていきたいと思っています。
小橋さんからのコメント:「mikke」がきっかけになって、問いが生まれて形が変わってきたんですね。ゴールや目的に縛られず、行動してみることで出会いが生まれて、新たな形に変容していくのは素晴らしいと思います。プロジェクトがこうやって変わってきているのはすごくワクワクします。これからも失敗を恐れず、いろいろな人たちを巻き込んでいってほしいですね。
イベントの最後には、現在100BANCHを拠点にするメンバーや卒業メンバーが互いに質問や意見を交わし合いました。100BANCHでの出会い、そしてここだからできることを大切にしながら、各プロジェクトのメンバーたちは今後も精力的に活動を続けていきます。
次回の実験報告会は1月28日(木)に開催。GARAGE Programの成果報告と、今回は100BANCHを共同運営するカフェ・カンパニー代表の楠本修二郎さんによるメンタートークを行います。ぜひご参加ください!
(撮影:鈴木 渉)
オンライン開催 1月実験報告会&メンタートーク
日時:2020年1月28日(木) 19:00〜21:00
参加費:無料
/////////////////////////////////
※ZOOMウェビナーでの開催になります。
Peatixの配信観覧チケット(無料)に申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。
https://100banch-202101.peatix.com/
////////////////////////////////
『実験報告会』は100BANCHの3ヶ月間のアクセラレーションプログラムGARAGE Programを終えたプロジェクトの活動ピッチの場です。
また毎回100BANCHメンター陣から1人お呼びし、メンタートークもお送りいたします!
今回のゲストには、100BANCHを共同運営するCafeCompany代表の楠本 修二郎さんにお越しいただき、お話を伺います。
今回のゲストはカフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長の楠本 修二郎さんです!
【こんな方にオススメ】
・100BANCHや発表プロジェクトに興味のある方
・GARAGE Programへの応募を検討されている方
【概要】
日程:1/28(木)
時間:19:00〜21:00
参加費:無料
参加方法:Peatixの配信観覧チケット(無料)に 申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。
【タイムテーブル】
19:00〜19:15:OPENNING/ 100BANCH紹介
19:15〜20:00:メンタートーク
・楠本 修二郎さん(カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長)
20:00〜20:45:成果報告ピッチ&講評
・The_MIX|うっかりアセンション?!スパイスの力で
編纂する現代版「味覚の生理学」
・IMPRO KIDS TOKYO|コミュニケーションの習い事「インプロ(即興演劇)」を子どもたちに広めたい!
・Z-Rakugo|Z世代の視点で落語を楽しむ新しい「寄席」のカタチを渋谷の街を舞台にデザインする!
・Color Fab|消えない「虹」を3Dプリントする。
ー未来の色彩工芸ー
・vegecommu|農産物2Cで、ご近所付き合いを再生する!
・natto pack 2.0|100年後の人類目線で考える、愛し愛される納豆容器の新たなスタンダードを作る。
・Grappa!|世界を揺るがす~~~~
・CGO.com|ギャルが企業の課題解決をアシスト!
・Mirai-no-KATACHI|【65個の命はなぜ失わなければいけなかったのか?】
ー子ども虐待は未然に防げ
20:45〜21:00:質疑応答/CLOSING
【メンター情報】
楠本 修二郎
カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長
1964年、福岡県生まれ。1988年、早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルートコスモスを経て、大前研一事務所入社。平成維新の会事務局長に就任。2001年、カフェ・カンパニーを設立し、代表取締役社長に就任。“コミュニティの創造”をテーマに、およそ70ブランドを展開する他、地域活性化事業、商業施設のプロデュース等多様な事業を手掛けている。2010年よりクールジャパン関係の政府委員を歴任。(一社)東の食の会、(一社)フード&エンターテインメント協会、(一財)NEXT WISDOM FOUNDATIONの代表理事、東京発の収穫祭「東京ハーヴェスト」の実行委員長を務める。