ギグエコノミーの実態と私たちが生きる社会に、 美術作品を通じて問いを投げかける
DELIVERY DRAWING PROJECT
ギグエコノミーの実態と私たちが生きる社会に、 美術作品を通じて問いを投げかける
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東京藝術大学大学院 先端芸術表現学科(2022年4月入学)
KDDI総合研究所「Future Gateway」 山口 塁
DELIVERY DRAWING PRJECT 山口塁【15日目】
今年31歳になって、今さら浜崎あゆみにハマっている。この、”あゆ”だ。
正確に言えば、ハマっているのはデビュー初期の浜崎あゆみである。例えば、ここ1週間で「A song for ××」という曲を狂ったように聴いている。
「居場所がなかった 見つからなかった」と嘆くが、浜崎あゆみに限らず90年代中期から後期にかけて台頭しはじめた女性ソロシンガーは共通して分かってもらえないことや、居場所がないことをある種自己陶酔しながら歌う。
なぜそうした曲を貪るように聴いてるのかはわからないが、今この原稿を執筆している台湾を移動しながら思うのは、そうした自己の居場所がないと感じる人たち、自身を含めた「彷徨い漂っているもの」への関心ではないだろうか。
台湾の人たちは本当に優しい。滞在初日で道に迷う私たちに4回も話しかけてくれたし、土砂降りの台北でカッパもくれた。しかし政治上の国交は断絶状態にある。親日で、台湾の風景にどこか懐かしさのようなものを感じるが、それは日本が50年も統治していた上で成り立っている何かなのかもしれない。ワールドカップで盛り上がる中で、”国家”を持たない人たちの気持ちはどこへ向かうのだろうか。私はそうした歴史に対して無知で無頓着なままである。
中華人民共和国と中華民国のダブルアイデンティティの狭間で揺れるこの場所で、日本人が歌う「A song for ××」は全く情景に合わない。そして、もし、あゆが「多様な人々の交差路」である100BANCHに入居していたら「居場所がなかった」などとほざかず、こんな素晴らしい名曲も生まれていないかもしれないと思う。
この記事は100BANCHにまつわる様々なストーリーをメンバーやスタッフが紹介するリレーエッセイ企画です。他の記事はこちらのリンクからご覧下さい。
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