• イベントレポート

今、大きく変わる社会をポジティブにとらえる 実験報告会&メンタートーク

これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「Garage Program」。3カ月目の活動期間終了のタイミングで、どのような実験を行ってきたかを発表する実験報告会とメンタートークを実施しています。

2021年最初のメンタートークには、100BANCH・1Fの「WIRED SHIBUYA」も運営するカフェ・カンパニー株式会社の代表・楠本修二郎さんが登壇。そして、今回は8プロジェクトがそれぞれの活動について成果報告を行いました。

10年かけて考えようとしていたことを、3カ月で実行する

前半は楠本さんによるメンタートーク。コロナ禍の今、楠本さんが取り組んでいるプロジェクトについてトークを展開しました。

メンターの楠本修二郎さん

楠本修二郎さんプロフィール

カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長
1964年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルートコスモスを経て、大前研一事務所入社。平成維新の会事務局長に就任。2001年、カフェ・カンパニーを設立し、代表取締役社長に就任。“コミュニティの創造”をテーマに、およそ80店舗を展開する他、地域活性化事業、商業施設のプロデュース等多様な事業を手掛けている。2010年よりクールジャパン関係の政府委員を歴任。(一社)東の食の会、(一社)フード&エンターテインメント協会、(一財)NEXT WISDOM FOUNDATIONの代表理事、東京発の収穫祭「東京ハーヴェスト」の実行委員長を務める。2021年、「GOOD EATをつなぐ」をビジョンにかかげ、日本の食を愛する、すべての人の思い・体験・技術を未来につなぎ、世界中へ拡げることを目指す株式会社グッドイートカンパニーが始動。代表取締役CEOに就任。

 

楠本:以前、2100年には日本の人口が約7400万人になるということを知ったんです。人口がおよそ半分になるってどういう社会なんだろうと考えたとき、一人あたりが使える国土が倍になるわけですよね。そういう意味で、遊ぶ場所や農地が増えて、食料自給率を上げることができる。日本はどんどん豊かになるわけです。

「人口が半分になる」と聞くとネガティブに考えがちです。けれど楠本さんは現実をポジティブに受け止め、新しいプロジェクトの計画を立ててきました。

楠本:楽しい国にしていこうってプランを練っていたところで、新型コロナウィルスが発生しました。10年くらいかけて考えようとしていたものを、3カ月で実行しなければならないことになったんですね。今は社会が大きく変わるタイミングだと思います。僕はずっと「食」に育てられ、「食」に携わる仕事をしてきたので、「食」を通じてどうコミュニティをつくっていくかという準備を急遽進め、「グッドイートカンパニー」という会社をつくりました。

株式会社グッドイートカンパニー

https://goodeatcompany.com/

 楠本:農業から飲食店まで含めると、日本の食産業は117兆円、観光での食も含めると約145兆円くらいはあります(2019年時点)。日本全体のGDPの約20%は食なんです。日本は食の国なんですよね。今まで日本はあらゆることを海外に頼ってきましたが、今後は日本全体でビジネスモデルを変える必要があり、一番変えなきゃいけないのは食産業です。食産業全体をさらに育てて発展させいてくために、グッドイートカンパニーで新たなエコシステムをつくりたいと考えています。

 

「愛すべき食」を未来につなぐ

グッドイートカンパニーは、ちょうど新型コロナウィルスの感染が拡大し始めた頃に立ち上がりました。世界が急激に変化していくなか、具体的なプロジェクトのひとつとして「GOOD EAT CLUB」という食の「マーケット&ファンクラブ」がスタートしました。

楠本:単純に買う場所ということだけではなくて、応援したり、参加したり、ともに食をつくるという参加型のECサイトです。

GOOD EAT CLUB

https://goodeatclub.com/

ネット上で食のエモーショナルな部分が感じられ、食べることで、それがリアルでも体感できる。目指しているのは、みんなの「愛すべき食」が集まる、買える、応援できる、食の「マーケット&ファンクラブ」。生産者やお店が強みを活かしつつ、生活者が共感したときにそこで買うという行為ができるよう、“エモーション・コマース(EC)”と名付けた方法を試し始めています。

楠本:100BANCHにも「納豆のことなら私に聞け!」という人がいるように、世の中には食の賢者がいるんです。本当にすばらしい生産者やお店を知っている賢者たちが、ユーザーに推薦をする。そうすることで生産者や料理人、そしてユーザーが「思い」という共感でつながるコミュニティをつくっていくというプラットフォームにしていきたいと考えています。人にはそれぞれ、多種多様な価値観がありますよね。「オーガニックじゃなきゃ」という人もいれば、お母さんがつくる焼きそばを愛している人もいる。人それぞれにあるその価値観をうまくつなげていくことで、大事な「愛すべき食」を未来につなげていこうという活動なんです。

 

未来につなぐ仕組みを、みんなで

グッドイートカンパニーが取り組むことは、ECサイトの運営だけにとどまりません。食産業が育つエコシステムを生み出すために、さまざまなプロジェクトが始まっていくそうです。

楠本:カフェ・カンパニーと連携してオフラインのコミュニティづくり、そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)支援の強化も行っていきます。食業界は生産者、加工業者、物流、小売、飲食と業界を分断する高い壁があります。今までの仕組み上、各業界が一本足打法にならざるを得なかったためにあったその壁をとりはらって、つないで、食業界全体を“ハーモナイズ”していく。そうすることで、技術はピカイチだけど、これまで下請けの仕事をしていた生産者と生活者と対峙をしているシェフがつながることにより、いろいろなブランドができていくようなことが、どんどん起こるはずなんです。

楠本:このコロナ禍だと、これから、地方のお店はどんどん閉まってしまう。でも、そのノウハウや味を引き継ぎ知財化して、味の再現をしていくことはできます。食に関するさまざまなことをデータベース化していくことで、良き人材をつなげる仕組みをつくっていきたいと考えています。そのためにはグッドイートカンパニーだけではなくて、100BANCHにいるみなさんはもちろん、いろいろな人たちと協力していきたいと思っています。未来に引き継ぐべきノウハウや知恵や伝統をちゃんと引き継げる日本にしたい。まだまだβ版がオープンしたばかりなので、ぜひみなさん参加していただいて、一緒に未来をつくっていけたらと思っています。

 

GARAGE Program プロジェクト成果報告

後半は100BANCHに入居して3カ月の区切りを迎えたプロジェクトメンバー、そして卒業して活動を続けるメンバーが登壇し、これまでの活動を振り返りました。

The_MIX 登壇者:塚原怜

うっかりアセンション?! スパイスの力で編纂する現代版「味覚の生理学」

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/the-mix

人々の味覚を進化させ、本当に自分に合った食事を発見できるようにするため、世界のあらゆる味覚が詰まった100種類のスパイスセレクションをつくるプロジェクト。100BANCHで活動してきた3カ月の間、食について語るポッドキャストを配信してきました。

塚原:ゼロからアカウントを立ち上げ、フォロワーを伸ばしていくことの大変さを感じました。続けるなかで見えてきたのは、食にうるさい「サブカルおじさん」と、精神的価値を豊かにしていこうという人たちをターゲットに絞っていくこと。正直、3カ月では思った通りの活動ができていないので、これらの課題をもとに、今後の活動を進めていきたいと思っています。

 

IMPRO KIDS TOKYO TEAM SUPPORT PROJECT 登壇者:下村理愛、松島 和音

コミュニケーションの習い事「インプロ(即興演劇)」を子どもたちに広めたい!

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/impro-kids-tokyo

 台本のない即興芝居「インプロ」を習い事にすることで、自分らしく生きられる人を増やすために活動しているIMPRO KIDS TOKYO。インプロを広げるためにカードゲームの開発を進めていましたが、本当に今必要なことなのか、立ち止まる時間があったそうです。

 下村:インプロ自体を広げるという活動をいったん休止して、その先にどんな未来を実現したいのかを考えることにしました。インプロはあくまでも1つのツールであり、保護者や子どもたちのコミュニケーション広げていきたいんだということを確認し、ミッションとビジョンを再策定しました。これからは他の手法も取り入れながら、保護者と子どもが共に学べるプロジェクトにしていきたいと考えています。

 

Color Fab 登壇者:大日方伸

消えない「虹」を3Dプリントする。 ー未来の色彩工芸ー

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/color-fab

 3Dプリンターに着色ツールとして用いることで、未来の色彩工芸をつくるColor Fab。100BANCHでは見る角度によって色が変わる「遊色効果」を持つ花瓶を制作、プロダクトデザインのコンペティションでグランプリを受賞しました。

 大日方:メンターの林千晶さんから「新しい表現には新しいアプリケーションの可能性がある、花瓶以外のものをつくるのはどうか」というアドバイスいただきました。そこで僕たちは、遊色人種」というアート作品の制作に取り組み始めています。僕は男性が青とか、女性が赤とか、人を色で定義することに違和感を感じていて。僕自身、青のときもあれば赤のときもある。シチュエーションやタイミングで、色は揺れ動くんですよね。色で定義することに対して、見る角度で色が変わっていくことを表現できる作品にしたいと思っています。

 

natto pack2.0 登壇者:鈴木真由子

100年後の人類目線で考える、愛し愛される納豆容器の新たなスタンダードを作る。

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/natto.pack.2/

 100年後も愛し愛される納豆容器を求め、環境に配慮した商品開発を進めてきたプロジェクト。プロダクトの開発と平行して、新たにECサイトが立ち上がりました。

 鈴木:活動をしながら、納豆がいろいろな条件に縛られていることに気づきました。もっと自由な形で、いろんな地域の納豆を楽しめてもいいんじゃないかと考えて、全国の納豆が買えるECサイトの企画をしています。100BANCHでの食べ比べやレビュー調査を経て、1月31日7時10分、納豆の時間にβ版をリリースします(予定通り、Webサイトがリリースされています。納豆天国:https://nattomusume.theshop.jp/ )。

 

Z-Rakugo 登壇者:桂枝之進

Z世代の視点で落語を楽しむ新しい「寄席」のカタチを渋谷の街を舞台にデザインする!

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/z-rakugo

1995年から2000年代生まれのZ世代にとって、落語が日常的なものになることを目指すクリエイティブチーム。落語家とデザイナー、カメラマンが集まって、100BANCHでは寄席を再定義したイベントを開催しました。 

桂枝之進:Z世代の寄席ってなんだろうと考えていったとき、それはクラブなんじゃないかと考えDJがいたりバーカウンターがあったりと、クラブの要素を取り入れた寄席イベント「”YOSE”#01 by Z落語-東京」を100BANCHで開催しました。今後もZ世代に向けてアプローチしていくため、SNSコンテンツの量産やアパレルラインのリニューアル、メディアアートの制作など、落語を軸にさまざまな企画を行っていきたいと思っています。

 

Vegecommu 登壇者:綿引麻衣

農産物2Cで、ご近所付き合いを再生する!

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/vegecommu/

 Vegecommuは高齢者を孤立させないために、現代のご近所付き合いを作ることを目標に活動しています。これまで高齢者の農家グループが開催している市場の商品をオンラインでも購入できるよう、学生が配達員となり食べる人との関係をつなぐ流通システムを開発してきました。

 綿引:プロジェクトを進めるなかで、生産者と食べる人たちの関係が薄いことを感じるようになりました。そのきっかけから農家さんによるマーケットや、伝統料理を学ぶワークショップがあるイベントを開催しました。またプロジェクトを続けるなかで、より福祉的な側面の見守り体制を強化する必要性も感じるようになりました。配達員の学生が高齢農家さんの孫のように、家事や買い物のお手伝いをできるようなシステムの運用を始めるところです。

 

CGO.com 登壇者:バブリー

ギャルが企業の課題解決をアシスト!

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/cgo/

企業のブレストにギャルが参加することで、イノベーション創出をはかるという体験型プログラム。100BANCH入居期間中、何度もギャル式ブレストを開催しながら、企業に取り入れてもらいやすいような仕組みづくり、認知度の広げるための活動を行ってきました。

 バブリー:ギャル式ブレストは直感的なアイデアの出し方を体感できたり、アイデアのアウトプット、発言が出やすい環境をつくることができます。先日はギャル式ブレストをイベント型で、オープンな場で開催しました。SGDsをテーマにギャルと著名人が話すというイベントだったんですが、実際に開催してみて、すごく訴求力が高まったことを感じました。まだまだ一般層に広がって行きにくいコンテンツに対しても、ギャルをかけ合わせる可能性を感じています。

 

Mirai-no-KATACHI 登壇者:岩橋雪野

【65個の命はなぜ失わなければいけなかったのか?】 ー子ども虐待は未然に防げ

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/mirai-no-katachi/

Mirai-no-KATACHIは児童虐待を未然に防ぐために活動をスタートし、100BANCH入居期間中にNPO法人化を果たしました。入居当時は高校生だった岩橋さんは、ここで半年間の活動で、気づいたことを正直に話してくれました。

 岩橋:入居した当初、100BANCHメンバーには結果を出している人たちが周りにたくさんいて、私は焦りと怖さを感じていました。そのため100BANCHの活動では、結果を追い求めて空回りをし続けてきたのが正直なところです。本当にやりたいことが見えなくなって、プロジェクトがあまり進められなかった時期もありますが、自分や組織にとってはとても成長できた半年間になりました。どうもありがとうございました。

今回の実験報告会では、GARAGE Programに入居して3カ月の活動を経たプロジェクトも延長申請を採択され半年の活動を経て卒業していくメンバーも、社会の変化に合わせ試行錯誤を重ねてきたことが感じられました。

 目指す場所は同じでも、より柔軟に進んでいくことが求められる時代。会社を始めて20年が経った楠本さんが新たなプロジェクトに挑む姿は、100BANCHのプロジェクトメンバーにとって、心強い指標になりました。

 

(撮影:鈴木 渉)

 

<次回実験報告会>

オンライン開催 2月実験報告会&メンタートーク 

日時:2021年2月22日(月) 19:00〜21:00
参加費:無料

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※ZOOMウェビナーでの開催になります。

Peatixの配信観覧チケット(無料)に申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。

https://100banch022021.peatix.com/
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『実験報告会』は100BANCHの3ヶ月間のアクセラレーションプログラムGARAGE Programを終えたプロジェクトの活動ピッチの場です。また毎回100BANCHメンター陣から1人お呼びし、メンタートークもお送りいたします!

今回のゲストはNPO法人ETIC. 理事、事務局長の鈴木 敦子さんです!

 

【こんな方にオススメ】

・100BANCHや発表プロジェクトに興味のある方
・Garage Programへの応募を検討されている方

【概要】

日程:2/22(月)
時間:19:00〜21:00
参加費:無料
参加方法:Peatixの配信観覧チケット(無料)に 申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。

 

【タイムテーブル】

19:00〜19:15:OPENNING/ 100BANCH紹介
19:15〜20:00:メンタートーク 鈴木 敦子(NPO法人ETIC. 理事、事務局長)
20:00〜20:45:成果報告ピッチ&講評

edu×edu|小学生と高校生のための寺子屋で、公教育の充実に双方向からのアプローチを!
Period of 100 Athletes Project |生理で悩む人たちへ。アスリート100人の声を世の中へ届けたい
kakeru |こだわりを視覚情報に!
GLOBAL MICRO TOUR |異文化の混ざり合う暮らしのきっかけをつくり、多文化共生をもっと当たり前に!
Liquitous |液体民主主義の社会実装で「一人ひとりの影響力を発揮することができる社会」を!
ehonbox |私たちは絵本のサブスクリプションサービスを通して絵本との出会いを目指すPJです。

20:45〜21:00:質疑応答/CLOSING

 
【メンター情報】

鈴木 敦子
NPO法人ETIC. 理事、事務局長

早稲田大学第二文学部卒業。在学中より中国・アメリカなど海外留学・放浪を行う。また各種アルバイトを経験し、ETIC.の前身である「学生アントレプレナー連絡会議」の勉強会などに参加。自らも起業したいと、能力未熟のまま卒業直後に起業する。ルームシェアのコーディネートの事業を2年半経営して廃業。97年のETIC.事業化に伴い、事務局長に就任しインターンシップのコーディネート、若手起業家支援などの各種プログラムを実施。現在は、マネジメントサイクル全般、主に人事、組織作りなど担当。年間約200名の起業家や学生の起業相談、キャリア相談を受け、約100社のベンチャー企業と学生のインターンシップのコーディネートなどの実績がある。

 

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