100年後の人類目線で考える、愛し愛される 納豆容器の新たなスタンダードを作る。
- イベントレポート
やってみるから、わかることがあるーー 実験報告会&メンタートーク
これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」では、活動期間終了のタイミングで、どのような実験を行ってきたかを発表する実験報告会を実施しています。
2020年10月28日に開催した実験報告会&メンタートークでは、メンターとして100BANCHのさまざまなプロジェクトに関わり続けているShiftallの岩佐琢磨さんのメンタートークと、6プロジェクトの成果報告を行いました。
求められるものか、まずアウトプットしてみる
前半は、メンターの岩佐さんがここで活動するメンバーに向けて、メッセージを兼ねたメンタートークを行いました。
メンターの岩佐琢磨さん
岩佐さんはインターネット×ハードウェアの分野の経験を活かして、100BANCHがスタートした3年前からメンターとして参加。「RGB_Light」プロジェクトが開発した、100BANCHのプロデュース第一号商品「RGB_Light」には、設計・製造支援として携わり、製品化が実現しました。
岩佐琢磨さんプロフィール
1978年生まれ、立命館大学大学院理工学研究科修了。2003年からパナソニックにてネット接続型家電の商品企画に従事。2008年より、ネットワーク接続型家電の開発・販売を行なう株式会社Cerevoを立ち上げ、2018年4月、新たにハードウェアを開発・製造・販売する株式会社Shiftallを設立し、代表取締役CEOに就任。くらしの統合プラットフォーム「HomeX」、集中力を高めるウェアラブル端末「WEAR SPACE」などパナソニックの新規事業に協力。2019年に自社の独自ブランドとして、残量の自動計測機能を備えた専用冷蔵庫によるクラフトビールの自動補充サービス「DrinkShift」を発表した。
岩佐:100BANCHで活動するみなさんは、新しいことをやろうとしていますよね。企業が新しいことを始めるときには、R&D(リサーチアンドディベロップメント)から入ります。鉱山から石を掘って金やレアメタルを見つけ出すように、新しい技術やサービスを磨き上げていく。アイデアを形にしていくのに2、3年はかかり、それがお金のなる木なのかどうかを判断する必要があるので、そこから市場に出して、さらに2年くらいはかかってしまう。「そんなにかかるの?」と思うかもしれませんが、これが一般的な大企業の常識になっています。今ある商品の延長線上にあるものをつくるときには、このスピード感でいいんです。
例えば今の倍以上の電池がもつスマートフォンや、よりきれいに写真が撮れるカメラなど、明らかにニーズがあるものを開発するには、必要な時間があるのだそう。一方で世の中のニーズが多様化している今、そのサイクルだけではない事業のつくり方、ものづくりの進め方が必要になっているといいます。
岩佐:100BANCHのみなさんのなかには、誰が欲しがるかわからない、価値があるかわからない、まったく新しいものをつくっている人がいますよね。売ってみたり届けてみないと、お金になるかどうかわからない。変化はすごく加速化していてトレンドが短命化しているので、売ってみるまでわからないんですよね。ぜひみなさんの若い突破力で、一般企業の半分の時間でやってもらうと、世の中の時間の流れを凌駕していけるんじゃないかと思います。
イノベーションは発想の転換から
岩佐さんはさらに、アイデアを生み出すときのヒントも紹介してくれました。
岩佐:もうひとつお伝えします。ガラスのコップって美しいけれど、落としたらすぐ割れるじゃないですか。プラスチックのコップなら割れないのに、ガラスのコップはなくならない。割れるとわかっていても、美味しそうに見えるガラスのコップで大切に飲みたいんですよね。たとえばiPhoneもそうなんです。iPhoneが出たころは、折りたたみの携帯電話が主流で、落としても壊れないことを品質条件にしていました。そこにAppleが出てきて、割れてもいいじゃない、大事に使おうよって言い出した。今ではそれが主流ですよね。常識を変えたんです。
岩佐さんは、iPhoneは汎用部品の組み合わせで作られているけれど「割れても構わないから、美しくて大きなディスプレイをつけよう」と常識を変えたことで素晴らしいイノベーションが起きたと説明。常識を変える製品をつくったのは、大事に使えばいいという発想の転換をしたことだと語ります。
岩佐:イノベーションは必ずしもすごい技術から始まるわけではなくて、発想の転換から生まれるものだと思います。みなさんのプロジェクトも、ぜひ発想の転換を意識して取り組んでみてください。
やってみたからわかること それぞれの活動報告
後半は、100BANCHに入居して3ヶ月、半年の区切りを迎えたプロジェクトのメンバーが登壇。これまで活動してきたこと、これから取り組んでいきたいことを発表しました。
■Natto pack 2.0
登壇者:鈴木真由子
「環境に配慮した素材で納豆パックによる環境負担の軽減を目指す」
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/natto.pack.2/
納豆を食べることを仕事にしているという鈴木は、納豆の容器を環境に配慮した素材に変えることで、環境への負担を軽減することを目指しています。100BANCHでは容器のプロトタイプ製作を進めるのと並行して、コンセプトを明確にしていく作業をメンターに相談しながら進めました。さまざまな経験を持つメンターと話すことで、次の構想が見えてきたそうです。
鈴木:コンセプトを深堀りしていくなかで、『納豆をもっと自由に楽しむ』を体現する企画を考えることになりました。そこで、全国のローカル納豆ECサイト、納豆天国の運営を計画しています。今考えている納豆の容器の開発も進めつつ、より納豆を楽しんでいただける企画にしたいなと思っています。
■Vegecommu
登壇者:綿引 麻衣
「高齢化が進むと言われる農家にフォーカスし、高齢者を巻き込んだコミュニティをつくる」
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/vegecommu/
生産から消費まで、農業に関わる人を結び、現代のご近所付き合いをつくるプロジェクト。この3ヶ月で茨城の高齢農家グループとコラボレーションし、EC部門を担い運用を開始しました。100BANCHに入居した当時は有償のスタッフが配送役を担う計画をしていたものの、実際に始めてみることで現実的ではないことがわかり、臨機応変に仕組みを変えながら運用を続けています。
綿引:拠点にしている茨城という土地柄、当初考えていた自転車での配達が難しいということがわかりました。そこで予定を変更して、ボランティアの学生さんたちに運送をしてもらうことにしました。結果として、農家さんとその近くに住む学生が関わることになり、コミュニティが生まれつつあることを感じています。今後は生産者・消費者・運送者の間によりオフラインでの接点を増やすイベントをしたり、学生チームの組織をつくっていくことで持続可能なシステムにしていきたいと思います。
■Grappa!
登壇者:Masao Fujii
「いざというときの安心感を日々提供してくれる寝室照明をつくる」
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/grappa/
地震が起きても真っ暗な状態にならないよう、揺れを感じると自動で電気がつく照明を開発しているgrappa。今回メンタートークをしていただいた岩佐さんにメンターとして関わってもらいながら、3ヶ月間、プロトタイプの製作を進めてきました。
Fujii:日本特有の困りごとは日本のデザインで解決しようと、曲げわっぱをモチーフにしたデザインのプロトタイプができました。今後は非常時だけでなく毎日使えるような機能を追加したり、構造や設計面でも検討を続けていきたいと思っています。ビジネスモデルや資金調達の部分も次の3ヶ月でブラッシュアップしていきたいと思います。来年春くらいには商品化できるように進めていきます。
■Mirai-noKatachi
登壇者:岩橋 雪野
「SOSを出せていない子どもたちを見つけ、本質的な福祉環境をアップデートする」
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/mirainokatachi/
児童虐待を未然に防ぐために活動をスタートした岩橋さん。この3ヶ月で、児童養護施設との関係づくりやヒヤリング、特定非営利活動法人格の取得など、さまざまな活動を行ってきました。より多くのSOSをキャッチしようと、SNSを使った伴走型の支援も実施したそうです。
岩橋:実際にLINEで伴走型の支援をしてみてニーズがあることはわかったのですが、時代の流れが早すぎて、有効な手段ではないということを学びました。オンラインの限界を感じたので、オフラインでどう支援をしていくかを考えていきたいと思います。今後は組織の基盤づくりや非常設型の居場所づくりに取り組んでいきます。
■CGO.com
登壇者:バブリー
「ギャルが企業の課題解決をアシスト!ギャル式ブレストなどを企業に展開する」
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/cgo/
バブリーは企業の課題解決を行う方法のひとつとして、ギャルがブレストに参加するプロジェクトをスタート。100BANCH入居期間中に何度もギャル式ブレストを重ねてきました。その中から企業からプロダクトが生まれたり、関わるギャルが増えたりと、やり続けることの手応えも感じ始めているようです。
バブリー:活動していくなかで、ギャル式ブレストはいきなり企業の新規事業領域に入れるのは難しいという声をいただきました。そのため新しい実験として、ギャル式ブレストのパッケージをつくって、研修に導入しやすくしてみたいと思っています。
■inochi gakusei innovator’s
登壇者:中原 楊 木島 優美
「未来のメディカルイノベーターを育て、ヘルスケア課題解決プランを創出する」
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/25693/
中高生がヘルスケアに関わる課題解決に取り組むところに、大学生が伴奏していく3ヶ月間のプログラムを運営しているのが、inochi gakusei innovator’s。100BANCHを拠点に、オンラインで改題解決をするためのヒヤリングや勉強会、ワークショップなどを開催してきました。参加した中高生のチームからは、発達障害のある子どもの特性を伝えるアプリ、文字や色を個別にカスタマイズできるアプリケーションなどが生まれ始めているそうです。
中原:この活動を通して、未来のヘルスケアアントレプレナーを育成につながっていることを感じています。また課題を抱える側と解決する側が同じ中高生だからこそ話せたり、できることがあるということがわかりました。
それぞれの報告が終わった後、最後に岩佐さんが全体の講評を行いました。
岩佐:すごく楽しく聞かせていただきました。どの取り組みも、社会解決を大切にしていることが100BANCHっぽいですよね。みんな次にやりたいことが明確で、この先にも期待を感じます。卒業しても半年後、1年後にいい報告を聞かせてもらうことを楽しみにしています。みなさん、お疲れさまでした!
岩佐さんの「とにかく動いてみないとなにもわからない」という話に続き、100BANCHメンバーそれぞれが、活動を始めてみたこそわかったことを発表してくれた今回の実験報告会。動き出すこと、トライアンドエラーを重ねていくからこそ見える世界があることを、改めて実感する時間となりました。
次回の実験報告会は11月25日(水)に開催します。ぜひご参加ください!
(撮影:鈴木 渉)
<次回実験報告会>
オンライン開催 11月実験報告会&メンタートーク
日時:2020年11月25日(水) 19:00〜21:00
参加費:無料/////////////////////////////////
オンライン配信での開催となります。
Peatixの配信観覧チケット(無料)に申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。
https://peatix.com/event/1709860/
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『実験報告会』は100BANCHに入居したプロジェクトの成果報告の場です。また毎回100BANCHメンター陣から1人お呼びし、メンタートークもお送りいたします!
今回のゲストはマンガナイト/レインボーバード合同会社 代表の山内康裕さんです!
【こんな方にオススメ】
- 100BANCHや発表プロジェクトに興味のある方
- GARAGE Programへの応募を検討されている方
【タイムテーブル】
19:00〜19:15:OPENNING/100BANCH紹介
19:15〜20:00:メンタートーク
・山内康裕さん(マンガナイト/レインボーバード合同会社 代表)
20:00〜20:45:成果報告ピッチ
【登壇プロジェクト】
・Plunger
・Laughter is approval
・ehonbox
・Liquitous
・To you would like to travel to the earth outside.
・SEIJI-KENTEI
20:45〜21:00:講評/CLOSING
【メンター情報】
山内康裕 | Yamauchi Yasuhiro
1979年生まれ。法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科修了後、税理士を経て、マンガを介したコミュ二ケーションを生み出すユニット「マンガナイト」を結成し、マンガ専門の新刊書店×カフェ×ギャラリー「マンガナイトBOOKS」を文京区にオープン。また、マンガ関連の企画会社「レインボーバード合同会社」を設立し、“マンガ”を軸に施設・展示・販促・商品等のコンテンツプロデュース・キュレーション・プランニング業務等を提供している。「さいとう・たかを劇画文化財団」理事、「これも学習マンガだ!」事務局長、「東アジア文化都市2019豊島」マンガ・アニメ部門事業ディレクター、「国際文化都市整備機構」監事も務める。共著に『『ONE PIECE』に学ぶ最強ビジネスチームの作り方(集英社)』、『人生と勉強に効く学べるマンガ100冊(文藝春秋)』等。
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