• 100BANCHストーリー

EXPO2025 大阪・関西万博で活躍した100BANCHのクリエイターたち——未来をつくる実験区から、夢洲の大舞台へ

2025年の大きなトピックスといえば、なんと言っても万博!「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに2025年4月から10月にかけて開催された「EXPO2025 大阪・関西万博」。この世界的イベントに、100BANCH出身の多くのクリエイターたちが参画しました。建築、空間演出、イベントなど、若きクリエイターたちはそれぞれの分野で未来をつくる実験を社会実装し、夢洲の地にその軌跡を刻みました。この記事では、100BANCH独自の観点でEXPO2025のハイライトを振り返ります。

若きクリエイターたちが夢洲へ

前回大阪で万博が開催されたのは1970年。その際、黒川紀章、磯崎新、コシノジュンコ、横尾忠則といった、当時30代の若き才能たちが世界に名を刻んだそうです。大阪・関西万博の開催が決定したのは2018年11月。100BANCHがオープンして1年ほど経った頃でした。メンバーの間では「自分たちも万博で何かをつくれたらいいな」と会話が交わされていたものの、どこか遠い夢のような舞台。今でこそ100BANCHは、8周年を迎えてGARAGE Programは100期生に到達、社会に羽ばたいて活躍するメンバーもたくさんいますが、当時の100BANCHにはなんの糸口もなく、実力もまだまだでした。次の世代を担う若者たちが未来社会のデザインに挑戦する。100BANCHで活動する若者たちにもそんなチャンスがめぐってきてほしい!

そして2025年。その「夢」がなんと、現実になりました。夢洲の会場では、多様な分野で100BANCH出身のクリエイターが活躍。会場を歩くと、いたるところに100BANCH出身クリエイターの実験が散りばめられていました。ナナナナ祭2025準備のジャンプアップ合宿では総勢30人で万博を訪れ、先輩たちの挑戦の軌跡をこの目で確かめることもできました。

 

多様なプロジェクトが描いた未来のかたち

建築や素材の領域では、ナノメートルアーキテクチャー(GARAGE Program1期生)の《時木の積層》や大野宏(GARAGE Program78期生)の《Traces of the Earth》が、自然と人の共生を建築として示しました。

《時木の積層》

生命科学・環境の領域では、イノカ(GARAGE Program12期生)の《ブルーフォレストプロジェクト》《サンゴの好きを探し出せ!EXPO EDITION》やソマノベースの《戻り苗》が、森と海の循環を可視化し、自然とのつながりを感じさせていました。田所直樹(GARAGE Program68期生)・川又龍人(GARAGE Program72期生)が関わる《バイオプロジェクトの展示》は、未来の産業や文化の新たな可能性を表現。

《サンゴの好きを探し出せ!EXPO EDITION》

アートや映像表現の領域では、SHINME(GARAGE Program55期生)によるプロジェクションマッピング《kaleidoscope》や、河野未彩(GARAGE Program2期生)の開会式オープニングムービーが、人と自然、歴史と未来を結び直す物語を表現していました。

開会式オープニングムービー

また、菅本香菜(GARAGE Program 2期生)が象印マホービン株式会社と共創した「ONIGIRI WOW!」や、日本かくれんぼ協会(GARAGE Program 21期生)の《万博かくれんぼ》は、文化や遊びを通して「人と人をつなぐ未来」の姿を提示していたり、その他、数えきれないほどの100BANCH出身メンバーたちの活躍が見られました。

《万博かくれんぼ》

こうして会場を見渡すと、100BANCHで地道に続けられてきた実験の数々が、万博という社会にひらかれた舞台で一つひとつかたちを持ち、「未来の当たり前」として立ち現れていることに気づかされます。100BANCHで育まれた実験精神が、夢洲という大きなフィールドで確かに息づいていました。

 

Traces of the Earth

《Traces of the Earth》大阪城再建の際に切り出されたが使われず「残念石」と呼ばれてきた花こう岩を建築に取り込み、石を人と同じように「いのちある存在」として再生

戻り苗

《戻り苗》どんぐりを育て、成長した苗を森へ戻すことで地域の森づくりに参加できるプロダクト

バイオプロジェクトの展示

《バイオプロジェクトの展示》宇宙人のDNA入りフィギュアや、伝説の龍肉を食体験に変える試みなど、テクノロジーと想像力を交差させた実験

kaleidoscope

《kaleidoscope》美しい動物たちの姿や自然の風景が浮かび上がり、これまで人間が自然や生き物を当然視してきた姿勢を問い直す映像

ONIGIRI WOW!

《ONIGIRI WOW!》各地の食材や郷土料理を具材に用い、地域の物語を一粒に込めることで、食文化の多様性と豊かさを伝えた

「ノモの国」に広がる共創の森

100BANCH視点で大阪・関西万博を語るなら、パナソニックグループパビリオン「ノモの国」における共創エピソードは外せません。積彩(GARAGE Program40期生)、BIOTA(GARAGE Program8期生)、ヘラルボニー(GARAGE Program7期生)——100BANCH出身の3つのチームが共創パートナーとして参加したことは、まさにビッグニュース!「ノモの国」は「解き放て。こころと からだと じぶんと せかい。(Unlock your nature)」をコンセプトに、人と自然が循環する世界の中で自分自身の可能性を体験的に探る空間が広がるパビリオンです。その世界観の中で、3チームがそれぞれの領域から「未来社会のデザイン」に挑みました。

 

積彩:サステナブル素材で森を立ち上げる

3Dプリンティングに特化したデザイン事務所である積彩は、パナソニックのサステナブル素材「kinari」を用いた大型リーフオブジェを3Dプリントし、制作。光や人の動きと呼応して表情を変えるその造形は、空間全体を「揺らぎのある森」にしていました。循環可能な素材と先端技術を用いたこの挑戦は、未来の建築やデザインの可能性を示しています。積彩とkinariのコラボレーションは2022年末頃にはじまり、100BANCHでも幾度となくプロトタイプを目にしていたため、この森のように広がる空間を見たときはメンバー一同、感動と興奮に包まれていたのは言うまでもありません。

kinariチームと積彩の共創ストーリーは下記からご覧いただけます。

BIOTA:菌糸が建材になる未来

5つのユニークな技術展示で構成された「ノモの国」の大地エリアでは、BIOTAの菌糸パネルでつくったセンサリードームが存在感を放っていました。微生物多様性による健康で持続可能な都市デザインを目指すBIOTA。積彩と同じく、BIOTAの菌糸の作品も「DESIGNART2024」をはじめ、100BANCHで目にする機会がありました。これまでオブジェ制作などアート領域にとどまっていた菌糸の利用を、人の営みの中に菌糸が紛れ込むような、より社会実装に近い状態にできないか。そんな考えから菌糸を用いた三角形のパネルを開発し、それをドームの壁として組み上げました。ドーム内部に入ると、菌糸ならではの質感や匂いがふわりと立ちのぼり、自然のエネルギーや人間本来の感覚が静かに呼び覚まされます。100BANCHでは手に取って見られるほどのサイズの菌糸作品を多く見ていたため、大型の建築スケールに変身した光景は未来の建材への可能性を感じられ、強いワクワクを覚えました。

BIOTAの共創ストーリーは下記からご覧いただけます。

ヘラルボニー:太陽電池とアートが出会う瞬間

同じく大地エリアではもう一つ、世界初となる「ペロブスカイト太陽電池×アート」のプロトタイプの展示で、ヘラルボニーのアート作品が彩りを添えていました。パナソニックグループが開発したガラス建材一体型の太陽電池に、ヘラルボニー契約作家・輪島楓さんの作品「かえでのチョキチョキ」が組み込まれたのです。太陽電池といえば無機質な四角いパネルがイメージされアートとの関係は遠いようにも思いますが、アートが宿ることで技術と表現が新しい関係性を結び、未来の都市景観の可能性が一気に広がっていくのを感じました。100BANCHでも馴染み深い絵が万博のパビリオン内で光を放つ様子は、ヘラルボニーのミッション「異彩を、放て。」とノモの国のコンセプト「解き放て。こころと からだと じぶんと せかい。」が共鳴しているようで、未来のかけらはこうしてつくられていくのか、と胸が熱くなる瞬間でもありました。

ペロブスカイト太陽電池とヘラルボニーの共創プロジェクトの過程は下記からご覧いただけます。

その場に立つだけで、人間と自然、テクノロジーと感性の関係が静かに問いかけられるような空間が広がっていた「ノモの国」。ここで見られた共創は、100BANCHで育まれた実験精神が社会に開かれていく姿そのものであり、未来社会のデザインが若い世代と共につくられていくことを証明する、象徴的な風景だったと言えます。

 

万博という実験場で見えた可能性

夢洲には、未来をつくる実験が無数に広がっていました。そこに100BANCH出身のクリエイターたちが多数携わっていたという事実は、「未来は誰かがつくるものではなく、自らの手でつくれる」という確信を与えてくれます。100BANCHにはジャンルもフェーズも問わないプロジェクトが共存していて、まだまだ発展途上の状態のメンバーも多くいますが、日々未来にむけた実験を繰り返している彼らの中から、いつか万博のパビリオンを丸ごと任せられるような存在が生まれてくるかもしれません。

2025年、夢洲で見た景色は、100BANCHにとって一つの大きな到達点であるとともに、次の実験へと向かうための通過点でもありました。かつて「いつか万博で」と語られていた夢が現実となり、今度はその光景を目にした若い世代が、新たな夢を思い描いていく。そんな連なりの中に100BANCHという場所があり続けていることを、改めて実感しています。あの日、万博の会場で確かに感じた未来の手触りを胸に、100BANCHは次の「いつか叶えたい夢」に向けて、これからも実験を続けていきます。

 

  1. TOP
  2. MAGAZINE
  3. EXPO2025 大阪・関西万博で活躍した100BANCHのクリエイターたち——未来をつくる実験区から、夢洲の大舞台へ

100BANCH
で挑戦したい人へ

次の100年をつくる、百のプロジェクトを募集します。

これからの100年をつくるU35の若きリーダーのプロジェクトとその社会実験を推進するアクセラレーションプログラムが、GARAGE Programです。月に一度の審査会で採択されたチームは、プロジェクトスペースやイベントスペースを無償で利用可能。各分野のトップランナーたちと共に新たな価値の創造に挑戦してみませんか?

GARAGE Program
GARAGE Program エントリー受付中

3月入居の募集期間

12/23 Tue - 1/26 Mon

100BANCHを応援したい人へ

100BANCHでは同時多発的に様々なプロジェクトがうごめき、未来を模索し、実験を行っています。そんな野心的な若者たちとつながり、応援することで、100年先の未来を一緒につくっていきましょう。

応援方法・関わり方