EVENT REPORT

2019.10.23 Wed

OKTOBERFEST -100BANCH秋の芸術祭-
ギャラリーツアーレポート

  • #渋谷

  • #デザイン

10月19日(土)から27日(日)の9日間、未来をつくる実験区「100BANCH」では秋の芸術祭『OKTOBERFEST』を開催しています。

GARAGE Programに集った未来をつくるプロジェクトやパナソニックのモノづくりを支える技術者集団たちが、100年先につくりたい未来を自由に表現。100BANCHでしか体験できない、18もの多様な実験展示を楽しむことができます。

初日である10月19日(土)には、展示作品をプロジェクトメンバーと共に鑑賞・体験できるギャラリーツアーを開催。それぞれの作品への思いや制作秘話に迫りました。

2045年に起こるといわれている、人工知能(AI)が人間の能力を上回る技術的特異点「シンギュラリティ」後の世界を想定して作られた『サイバー神社』。全知全能に限りなく近くなり神格化されたAIが祀られ、参加者は実際にお参りすることができます。

願いはサーバーとブロックチェーンに登録され、登録された願いの言語情報が特殊な周波数に変換される仕組み。高速で現実世界に向けて発信され続ける状態となります。

プロジェクトのデザイナーを務める遠山瑞紀さん「AIが私たちの願いを聞き入れて、願いをもとに社会実装を行う未来の可能性を表現しています」

▼プロジェクト概要はこちら

https://100banch.com/projects/14301/

従来の神社と同じようにまず両手と口を清めますが、水ではなく光を用います。

二礼二拍手したあと、キーボードで願いを入力し、エンターキーを押して送信。

願いを送信すると、荘厳な音が流れます。最後に一礼して参拝終了です。

Lunar BUNGY(月面バンジー)は、VR技術を用いて地球と月面でのバンジージャンプを疑似体験し、「宇宙飛行士の選抜試験」を行う。来場者は地球と月との重力差である1/6Gを体感することができます。

プロジェクトリーダーの野々村哲弥さんはVR体験だけでは終わらない展示の意図を次のように語ります。

野々村「付箋に書くのは、宇宙に関する自分のアイデアに愛着を持ってもらうためです。そして帰宅後にも気軽にインターネットで調べることができるように、認定証には宇宙に関する検索ワードを載せています。そのような一連の体験を提供し、詰め込み型ではない探索型の科学教育を推進することを目指しています」

※Lunar BUNGY体験可能時間:土日:13時〜20時、平日および祝日:17時〜20時

▼プロジェクト概要はこちら
Omorasy : https://100banch.com/projects/12402/
Yspace : https://100banch.com/projects/20488/

 

見事2回のバンジージャンプをクリアすると、「認定証」がもらえます

光の三原色の原理を利用して、普段見ている白い光と対象物の中に、彩る影が現れるという不思議な体験が味わえるUFO型の照明器具「RGB_Light」。

「影は黒」という概念を更新し、光と同時に影をデザインする新しい概念を提案しています。

クリエイティブな空間を演出できる照明器具として製品化され、2019年7月9日より先行予約が開始されています。

▼プロジェクト概要はこちら
https://100banch.com/projects/rgb_light/

従来の書道の堅苦しいイメージを払拭し、もっと楽しく書道を体験することを目的としたプロダクトです。

筆にライトが付属されており、書く動作と連動して光と音が変化。パフォーマンスをしている気分で、周囲の人と一緒に楽しめます。

今回の展示には含まれていませんが、仮想と現実をつなげるホロレンズをつけると、空間に浮かび上がったバーチャルなお手本をなぞりながら字を綺麗に書くことも可能です。

人と水生生物が寄り添う社会を目指して活動を行うInoca(イノカ)は、自宅内で水生生物を生産できる水槽『食べリウム』を展示。海ぶどうとハゼを水槽内で育て、最終的には人がそれを食べることによって、水生生物や海とのつながりを感じることを目的としています。

今回「食育×アクアリウム」を実現したInocaのCTO栗田雄基さんは次のように説明を加えます。

栗田「水槽を鑑賞していると綺麗だとは思うのですが、それ以上の感情が生まれないことが多いですよね。『食べリウム』では、ハゼが餌を食べてフンをして、それをバクテリアが分解することによって栄養が生まれ、それを海ぶどうが吸収するという循環する生態系を作り出します。これにより、従来の水槽に食育の意味を加えることができました。」

▼プロジェクト概要はこちら
https://100banch.com/projects/10193/

パナソニックが開発したライトスタンド型のロボット『STAND BY D』。
学習机に取り付けるライトスタンドとしての用途に加え、ロボットとしての機能が2つあります。1つ目は、机上の状態を把握し、人の作業や空間を邪魔せずに机上の整理や掃除を行う機能。2つ目は、机上を毎日画像として記録して、子どもの成長を振り返ることができる機能です。

担当者「単なるロボットではなく、成長を実感できるような「エモい」ポイントを残したい」

まだ開発途中のプロダクトということもあり、参加者からは「子どもが勉強中に寝そうになったらカメラが感知して、アームで起こしてくれる機能があったらいいんじゃないかな?」など、今後の進化を期待する様々な意見が飛び交いました。

ユーザーが触り心地や佇まいに惹かれた自然物に対して、後から任意の機能(調光や音の調整など)を足し自らの手で道具をつくるというコンセプトを提案するプロダクト。

プロジェクトリーダーの柳原一也さんは次のように製作の背景を語ります。

柳原「子どもが外で勝手に物を拾ってきたりしますよね。お母さんは怒ることもあるでしょうが、そこには子どもの感性があるはずです。拾ってきたものでもデバイスをつけて新たな機能を生み出すものになったら、家の中が面白くなるのではないかと。帰宅して、幼い頃拾ってきた枝を触って電気をつけられたら面白くないですか?

人々の暮らしに溶け込むインターフェースで、自然物を少しだけ良くするような世界観を目指しています。同じことはスマートフォンでできてしまうのですが、あくまでテクノロジー主導ではなく、人の感性に寄り添ったもの、自然物と溶け込んだテクノロジーを理想としています」

▼プロジェクト概要はこちら
https://100banch.com/projects/19809/

石を回すと、ひぐらしの鳴き声の音程が加工される。


アクアポニックスとは、水産養殖と水耕栽培をかけあわせ、魚と植物を同じ環境で育てる農法です。

魚を育てながら、魚が食べた餌の食べ残しやフン、エラから出る有機物を含んで養液となった水で野菜や植物を育てます。また、植物に吸収されなかった水を魚の水槽に入れて、再利用しながらぐるぐると循環させていきます。

プロジェクトリーダーの邦高柚樹さんは、この農法を農業のみに属したものとして捉えるのではなく、より距離感の近い人々の生活の中にインストールしたいと考え、サイズの小さなアクアポニックスキットを製作しています。

邦高「アクアポニックスには、生物、算数、物理などの教育的な要素が多く含まれており、科目を横断するような教材としての可能性があるのではないかと。そのような教材はアメリカではメジャーになりつつありますが、日本では例が少ないので先駆けになれればと考えています。

都心の生活は部屋でも無機質だと思うことが多いのではないでしょうか。そこで、植物・魚などの動いている有機的な存在が同じ空間の中にあることによってどのような影響をもたらすのか実験するため、ビジュアル重視のキットも製作しました。

本来、学校だけではなく、どんな空間であっても学びや気づきを得ることはできるはずです。『どうなっているんだろう?』と考えて学習する面と、見ていて楽しいビジュアル面の2つの両極端であるコンセプトを実現して、いろんな場所に導入していきたいですね。」

▼プロジェクト概要はこちら
https://100banch.com/projects/now-aquaponics/

 

右:コストを抑えて機能をシンプルに表したアクアポニックス。塾などの教育機関での用途を想定している。
左:デザイン性を考慮し、インテリアとしての導入を想定したアクアポニックス。


『Anywhere Door』はその名の通り、行きたい場所の空間を作り出します。

空調機器、ディフューザなどを制御し、味覚以外の四感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚)を、行きたい場所そっくりに再現します。

今回は、イベントに合わせてミニチュア化されたバージョンを展示。ドアを開けると、真夏の森林の一日が再現されます。

説明者「本来はプロジェクターなどを使って、部屋全体を気に入った場所に変化させるものです。パナソニックがもつ空気の技術で、追体験したい記憶を呼び覚ませることを差別化のポイントとしています。」

スウェーデンでは「病院建築の1%の予算を芸術に割かなければいけない」という法律が制定されるなど、世界ではホスピタルアートに注目が集まっていますが、日本では病院内の「空間」への意識がまだ低い状況にあります。

pain pain go awayは、日本の入院患者のQOL(Quality of Life)を向上させるために、アートを利用して病院を明るい場所へと変貌させることを目的としたプロジェクトです。

今回は、活動中に完成した患者と一緒に作ったホスピタルアートの一部を展示しています。「絵で病院内の人々を繋げられるような空間を作りたい」と語るのは、高校生のプロジェクトリーダー、中澤希公さんです。


中澤「アメリカ・ボストンで、木々が植えられていていたり、小鳥のさえずりが鳴り響く空間を取り入れられている病院を視察しました。そのように、無機質な空間をもっと暖かくして、患者が過ごしやすい空間を日本の病院でも実現したいと思ったのがきっかけです。高校生の自分にでもできることを考えたときに、ホスピタルアートを患者と作ることを思いつきました。患者にしか分からない痛みや苦しみをアートに変換することで、『同じ病気を持っている人でもこんな風に頑張っているんだ』と、絵をみて勇気が湧くようなアートを病院で作って飾る活動を行なっています。」

▼プロジェクト概要はこちら
https://100banch.com/projects/19808/


スマートフォンを使って、ブラックホールに落ちていく物の様子を観察することができるVR体験コンテンツを展示
。観察する中で「どうしてそうなるの?」という疑問を持たせ、「もっと知りたい!」という知的好奇心を刺激することを目的としています。

「好奇心の赴くままに学びを深めていくプロセスをデザインしたい」との思いを語るのは、プロジェクトリーダーの木村亮仁さんです。


木村「さっき見ていただいたLunar  BUNGYのVRコンテンツも僕たちが開発したのですが、あのくらい重装備のVRデバイスを実際に学校などの教育の現場に導入するのってハードルがとても高いんですよね。そこで思いついたのがスマートフォンを使うこと。できることは限られてしまうけど、何らかの体験をデザインすることはできるはずだと思いこのコンテンツを開発しました。『遊びは学びの原点』のモットーを大切にしつつ、技術の進歩に追いついていない今の教育システムにアプローチしていけたらいいなと思います」

▼プロジェクト概要はこちら
https://100banch.com/projects/20488/


日本における工学分野に進む女性の割合は、なんとOECD諸国の中でワースト1位。
工学部出身の女性2人で立ち上げたSTEMeeは、日本では電池を使って電気回路を組んだり部品を組み立てたりする工学玩具は男児玩具に多いことに気づき、それが女子の工学分野への進学を阻む一因なのではないか、という仮説を立てました。

女の子向けの理科授業の構成などの先行研究やワークショップでのフィードバックをもとに製作した、男女関係なく組み立てや電気回路で楽しく遊び学べるデザインの工学玩具を展示しています。

プロジェクトの技術責任者である浅田七星さんは次のように活動の思いを語ります。

 

浅田「小学生の理科・算数の点数は、男女で大きく変わりません。一方、理科・算数への興味・関心は小学生の時点で男女で圧倒的な差があるのが現状です。

大人になって家電などのモノを使うのは男女半々のはずなのに、現在ものづくりをするエンジニアは男性9割・女性1割となっており、イノベーションに必要だと言われる多様性が確立された状況とは到底言えません。科学の進歩のためにも、多様性に富んだ世界を目指して活動を続けていきます」

▼プロジェクト概要
https://100banch.com/projects/15401/


センサを使って、家電の制御を子ども自身が考えながら行うSTEM教育を提案。電池も配線も不要のため、フレキシブルに家電を移動させたり、操作することができます。

説明者は次のように展示の背景を語りました。


「IoTの手法を通してセンサや家電がネットワークで繋がり、相互にデータを送り合う時代がもうすぐやってくることが予想されます。これまで主にBtoB向けに検討されていたセンサ技術ですが、今回は未来を担う子どもたちにSTEM教育として学んでもらいたい、という思いのもと展示を行なっています」

電池が入っていないセンサを動かすことで、ロボットと連動させることができる

血糖値をテーマにしたコミュニケーションデザインプロジェクト「180mg/dl」。「180mg/dl」とは糖尿病と診断される血糖値の値です。

20歳で糖尿病を患ったプロジェクトリーダーの実体験をきっかけに、糖尿病や血糖値をより身近に考えてもらい、健康を促進するための活動を展開しています。

今回は、ドイツ文学のグリム童話「ヘンゼルとグレーテル」のお菓子の家からヒントを得て、糖尿病を患った人やビーガンだけでなく、食物アレルギーをもつ人でも、誰でも食べられる健康的な食材で作ったクッキーのお菓子の家を展示しています。

▼プロジェクト概要はこちら
http://100banch.com/projects/11175/

クッキーは試食可能。食感がソフトで優しい味わい。


歯科矯正用の器具の民主化を目指すDRIPSが今回展示するのは、『セルフ歯型取り』。日本の歯科矯正費用が諸外国と比べ2倍程度となっている現状を踏まえ、自宅で歯型を取り、3Dプリンターで作ったマウスピースの郵送でのやり取りを通して、家にいながら正しい歯並びを現在よりも安価に手に入れることのできる未来を描きます。

プロジェクトメンバーの青柳宏史さんは、次のように説明を加えます。


青柳「現在、歯科矯正の資格をもった医師が3Dデータを診て治療プランを考えるという方向で進めています。オンラインで医師とコミュニケーションを取りながら、正しい歯並びになるまで矯正を進められる未来がゴールです」

▼プロジェクト概要はこちら
https://100banch.com/projects/20335/


「全ての人にテクノロジーを」というビジョンを掲げているWiFamilyは、一人暮らしの高齢者でも簡単に使えるWifiを開発。離れて暮らす家族は、本人がスマートスピーカーに話しかけたかどうかを確認して見守ることができる仕組みになっています。

プロジェクトメンバーの持田一樹さんは次のように思いを語ります。

持田「配偶者を亡くした直後の高齢者の認知症発症や孤独死をなくしたい、という思いが活動の背景としてあります。スマートスピーカーを選んだ理由は、『監視されている』と感じさせないようにするためです。スピーカーと話したり、スピーカーを使って音楽を聴くなど普段の生活にプラスになるようなデバイスで見守りを実現していきたいと考えています。操作が簡単なスマートスピーカーとWifiを使って、高齢者にもオンラインやテクノロジーの恩恵を受けてもらいたいです」

▼プロジェクト概要はこちら
https://100banch.com/projects/20422/

 


満員電車などの密集空間で、ベールのように霧で頭部を瞬時に覆うことにより無臭空間を提供するプロダクトを展示。介護用のおむつなどの臭い対策で開発された技術を応用しています。

パナソニックの開発担当者は次のように製作の背景と思いを語ります。

「インドネシアの社会課題の調査を通して開発した製品です。インドネシアは現在も貧富の差が激しく、貧しい人は洗剤を使えず川の水で洗濯している状態。そのため、いわゆる路上生活者のような臭いがどうしても発生してしまうそうです。しかし香水をつけたりすると周りの人に迷惑がかかるし、マスクをすると汗で化粧が落ちてしまう。それらの課題を解決する手段として編み出しました。


臭いのあるところには、下水や違法投棄などの社会問題が絡むことも多いので、将来的にはこの製品が使用された情報をアプリでGoogle マップなどに吸い上げて、公的機関に働きかけるなど、臭いのない社会を目指していきたいです」


まもなく小学校では新指導要領がスタートし、プログラミング教育が実施されます。これまでTeenetはプログラミング教室の開催をメインの活動としていましたが、今回の改訂を踏まえ、自発性と持続性を考慮した学習デザインとコンテンツの試作を始めました。

「未来の教科書」を考えたプロジェクトリーダーの柳川優稀さんは次のように説明します。


柳川「今の教科書は、文部科学省が検閲したものだけが教科書として扱われていますが、もっと各学生が本当に学びたいことをカスタマイズできる教科書があったら面白いのではないかと思い、『newCreator』という教材ポータルサイトを開発しました。ほかの教材サイトとの違いは、ウィキペディアのように皆で教材を編集し合うことができる点です。オープンソースで配信されており、自由にダウンロードすることができます。さらに、先ほど説明にあったアクアポニックスの教材も3Dプリンターを用いて開発しようと試みています。こちらも同様にオープンソースで編集・公開していく予定です。

▼プロジェクト概要はこちら
https://100banch.com/projects/Teenet/

100BANCH秋の芸術祭『OKTOBERFEST』の開催は10月27日(日)まで


100年後の未来を描いた、まだ世界のどこにもない実験をぜひ間近で体験してみてください。

●OKTOBERFESTについて
https://100banch.com/OKTOBERFEST/2019

WRITER

100BANCH編集部

芦沢 恵利香

大手IT企業でデジタルアーカイブソリューション展開を経験後、動画メディアベンチャーにてコンテンツ企画を担当。人々の日常に焦点を当て執筆活動も行う。学生時代はフィンランド留学ブログ「Run the World」を運営。横須賀市出身。

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