- イベントレポート
新たな価値を創る9プロジェクトが登壇 〜GARAGE Program実験報告会〜
2019年1月30日、100BANCH GARAGE Program応募者見学説明会と併せて、活動プロジェクトの実験報告会が開催されました。
あらためて、GARAGE Programとは———
これから100年先の未来をより豊かでおもしろい方向へと動かすために、常識にとらわれない35歳未満の野心的な若者リーダーのプロジェクトを支援するプログラム。
審査基準は、各界のトップランナーである総勢23名のメンター陣が1人でも“これからの100年をおもしろくするプロジェクト“として支援したいと思うか否か”。
毎月公募を行い、審査を通過したプロジェクトは活動スペースやイベントスペースの提供、トップランナーによるメンタリングなど、新たな活動のきっかけにつながる多様なネットワークなどが提供され、未来へ向けた実験を展開していきます。
これまでに100ものプロジェクトが採択されているなか、今回は1月に卒業を迎えた9プロジェクトの実験報告を100BANCH編集部の船寄がレポートします。多種多様なU35の情熱があふれ出す実験の数々をご覧ください。
お茶とIoTで「食のパーソナライゼーションの時代」をリードする
■Personalized tea experience with teplo リーダー:河野辺和典
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/11142/
Personalized tea experience with teploは個人の好みや体調に合わせて材料や温度までもが最適化された食べ物や飲み物を楽しむ時代「食のパーソナライゼーションの時代」に向けて、お茶とIoTでこの時代の変化をリードしたいと考えています。
100BANCHでは、茶葉の美味しさを最大限に引き出すスマートボトルTeploの開発を進めてきました。
Teploはスマートボトルに茶葉をセットし、アプリで茶葉を選択したのち、室温や飲む人の脈拍などをセンサーで計測。お茶の抽出環境を整えることにより個々にカスタマイズしたお茶を提供できます。
100BANCHの活動においてTeploはデザインレビューから開始し、半年をかけて試作品を制作。Panasonicの創業100周年を記念して昨年10月末に開催された「クロスバリューイノベーションフォーラム2018」で試作品を紹介し、そこで得られた意見を踏まえながら改善を図りました。
1月にラスベガスで行われた国際家電見本市「CES 2019」の100BANCHブースにも出展。Teplo は2019Innovation Awards受賞しました。今年はTeploの量産を目指すと報告しました。
「これからは売上を伸ばすことに注力していきたい」と話す河野辺。「3月からはクラウドファンディングを開始し、今年はプロダクトを発表します。ぜひ購入して個々に合ったお茶を楽しんでほしい」と意気込みを語りました。
ヘルスケアに特化したサービスデザインチームへ
■Colonb’s リーダー:波多野裕斗
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/13322/
Colonb’sはデザイン×医療×テクノロジーの融合による、「人」が中心な医療の実現を目指すプロジェクト。「医療・IT・デザインの各専門性を持つ人材をつなげることで、高齢化する日本社会に医療が対応する基盤を作ることができる」というコンセプトで活動を続けてきました。
プロジェクトリーダーの波多野は、映画「Patch Adams」に憧れ医師を志し、大学入学後、医学と並行しデザイン思考を学び、4年次には留学先のロンドンで医工連携の活発さを目の当たりしています。医療課題の解決には表面的でない、相互理解に基づく多職種の連携が必要と考え、その未来を実現するためColonb’sを立ち上げました。
日本は高齢化が進み医療費が増大しています。それに対して国の主な施策は、生活習慣病予防や受診行動の適正化によって医療費を削減することです。つまり、病院の対応だけでは限界があるということ。その状況をふまえColonb’sは、医療は今までより生活の場に浸透するためにITやデザインなどの要素を取り入れ、人の心に届くかたちで意思決定をアシストする必要があると考えました。
昨年10月に医療・IT・デザインが交わるコミュニティーとしてColonb’sを発足。「月次イベントの開催」・「実際のヘルスケア領域における問題解決に取り組む活動」の2軸でコミュニティーの運営を開始しました。
11月に100BANCHに入居し、糖尿病プロジェクト・小児在宅医療プロジェクトを発足。12月にはコンセプトを「デザイン×医療」に変更し、DeNA監修のもと「デザイン×医療ワークショップ」を開催。今年1月には骨髄バンクプロジェクト・JHC社との協業プロジェクトを発足しました。
波多野「Colonb’sの活動を続けるうちに“コミュニティー”から“サービスデザインチーム”にしていくことに決めました。100BANCHでの活動によってColonb’sは医大生の間で知名度があがり、イベントでは毎回30人前後の集客が見込めるようになった一方で、学生だけのコミュニティーには限界があると感じ、この結論に至っています」
これからはヘルスケアに特化したサービスデザインチームとして、医療・デザイン・ビジネスの各専門性を生かし、人に寄り添った医療の発展をデザインしていきたいと波多野。
波多野「今は顧客と一緒に価値を創造するようなサービスデザインビジネスの動きがあり、医療も同様で、患者と一緒に価値を生み出すことが必要だと考えています。その価値を大学生のうちから学べるような取り組みも今後は目指していきたいと思います」
動物園の楽しみ方を発信し、多分野とのコラボレーションを目指す
■zoojo 藤本麻子
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/13320/
zoojoは「動物園の楽しみ方」を動物園・来園者の双方へ提案し、日本の動物園界の活性化を目指すプロジェクト。動物園の想いを届け、動物園の楽しみ方を発信し、多分野とのコラボレーションをしています。
100BANCHでは以下の実験を行いました。
・企業やイベント主催者への取材
「動物のレターセットを制作している」「動物園でビールのイベントを開催した」など動物に関連性がある企業やイベントなどを取材し、ホームページで発信しました。
・動物園旅の企画・取材
地方の動物園に行き、その周辺の楽しい場所を巡る「週末zoojo旅」を秋田県・千葉県・兵庫県で開催。
・動物園にまつわるブレスト会の開催
100BANCHの入居プロジェクトに声をかけ、動物園にまつわるアイデア出しを行いました。
藤本は、今後の活動のテーマは「動物園職員との新たなつながり」であると話しました。
藤本「100BANCHはメンバーはじめ、さまざまな人が交わる場所。その利点を生かし、動物園のあり方や未来を真剣に考えている若手職員と、100BANCHに集まる人たちで、動物園をもっと楽しくするアイデアを創造できたらと思います」
子どもたちが楽しく学べる「税金ボードゲーム」を開発
■Tax education リーダー:さんきゅう倉田
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/13479/
小学生から高校生に、税金教室を通じて税やお金の基礎知識を学んでもらい、適正で有利な税務申告に向かわせることを目標にするTax education。
100BANCHで、小学校や中学校で税金について学べる「税金教室」を開きたいと考えた倉田。しかし「税金教室」に参加できる人数は限られているため、多くの子どもがいつどこでも税金を学ぶことができる「税金ボードゲーム」の開発へシフト。「このゲームを使うことによって、より多くの子どもたちに楽しく税金を学べる仕組みを進めていきたい」と倉田はその意図を語ります。
「税金ボードゲーム」は、「公務員」「会社員」「アルバイト」などの役職カードを引き、それに沿って取引を行いながらお金を増やしていく一方で、その増やしたお金から「国」の役職カードをひいたプレーヤーが少しずつ税金を徴収していくという、税金の流れを楽しく学べるゲーム。こちらは3月の発売に向けて進行しているとのこと。
また、12月に楽しく税金の学べる「税金サークル」を発足。月に1度の例会や100BANCHで「税金ボードゲーム」の体験も行ったと報告。同月は100BANCHの事業家を対象とした特別講座「おとなの税金教室」も開催しました。
第2回目の「おとなの税金教室」を2月13日(水)に100BANCHで開催します。テーマは「こんにちは 確定申告」。個人事業者で確定申告の方がわからない人に向けて倉田さんが、やさしく教えてくれます。興味のある人はぜひご参加ください。
シティーとビレッジと空間のはざまを狙う
■Angya+ リーダー:松本光貴
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/11144/
Angya+はテイクアウトが主とされていた従来のフードトラックを、最大9人収容できる設計にすることで、偶発的なコミュニティーが生まれる場としての価値を提供するプロジェクトです。
8-9月はフードトラックを軽トラックで制作するほか、全国からコーヒーやリンゴなどの食材調達を進め、10-11月にかけては、イベントでのフード販売や、保健所許可取得に向けての準備などを行ったAngya+。
2019年に入り、毎週月曜日の朝に100BANCHの入口でフードトラックを展開。松本さんは「シティーとビレッジと空間のはざまを狙って、Angya+の活動を含め、全国の旅で出会ったモノを紹介や各地で撮りためた写真の展示する倉庫を運営したい」と今後に向けての計画を発表しました。
手軽に模様替えができ、誰でもインテリアを楽しめる社会を
■TSUKUROOM 河野 正幸
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/11144/
TSUKUROOMは「模様替えをする前に役立つ」インテリアコーディネートの実例動画を発信していくプロジェクト。2つの事業を展開しています。
毎日の暮らしを変えていく楽しみ。動画で学ぶDIY住まいづくりを紹介するメディアつくるーむの運営。
つくるーむ:http://tsukuroom.jp
電動工具の買取販売も行う専門店も運営。
電動工具買取専門店 工具UP:http://kougu-up.com/
この2つの事業によって、TSUKUROOMは一室リフォームするだけで100万円ほどかかる費用を、写真に写る範囲だけに限定することで5万〜10万円に抑え、手軽に模様替えができるサービスを開発。
SNSでオシャレな動画を投稿しているインスタグラマーの脳内にありながらもセンスとして片づけられている言葉を、たとえば「緑のある暮らし」「動物のある暮らし」など再現可能な状態に落とし込み、つくるーむのカテゴリーとして提案。現在20名のインフルエンサーとつながり、その人たちの部屋の様子をインスタグラムで紹介しながら、フォロワーを伸ばしています。
100BANCHの活動ではインフルエンサーの部屋を動画化し、その部屋を自社でパッケージ化できるかを検討。結果、予算5万円で利益率も確保できるパッケージを開発することができたと発表しています。
現在はパナソニックと電動工具のタイアップ動画などのコンテンツを制作。また、東証1部上場企業から出資を受け、1年間の活動拠点を得ることができたと報告。今後さらに活動の幅を広げていきたいと語りました。
ダチョウ抗体に注目 花粉症対策のあめ『花粉への挑戦状』を開発
■Ostrich Antibodies Revolution 井上雄介
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/11134/
Ostrich Antibodies Revolutionはダチョウ抗体入りフードを提供することで誰もが気軽・安全・安価に健康管理をできる社会を目指すプロジェクトです。
「食べて病む時代から食べて治す時代へ」というコンセプトを掲げ、真に健康に良いものを人々に届けたいと考えたOstrich Antibodies Revolutionは、300万年もの歳月で培われたダチョウの免疫力が人を救うのではないかと、その抗体に注目。
その考えからOstrich Antibodies Revolutionはダチョウ抗体を使用した、花粉症対策のあめ『花粉への挑戦状』の開発を進めています。
東京都内では48.8パーセントの人花粉症患者と推定されるなど、花粉症はもはや日本の国民病です。これからのシーズンたくさんの人が目のかゆみや鼻水になどの症状に悩まされます。そこで井上は「花粉症に効果が高く、科学的かつ副作用がない製品が必要だ」と考えました。
井上「ダチョウ抗体が喉を中心に粘膜に張り付き、花粉アレルゲンをブロックするダチョウ抗体含有あめが、花粉症を防ぐために効果的だと考えました。現在は製品の試験段階で、3月には販売を開始する予定です」
『花粉への挑戦状』はダチョウ抗体を卵黄抽出物として、食品・菓子として販売。医学的な効果効能をうたえる製品ではないため、その効果効能は記載していないとのこと。そのため、今後はオンラインで口コミからECへの誘導を進め、治療のかわりにソーシャルエビデンスを集めていきたいと言います。
100BANCHの活動を通して、井上は以下のように話しました。
井上「100BANCHは最高の空間でした。多くのつながりの起点を提供して頂き非常に感謝しています。この活動で多くの投資家や会社に応援、協力していただき、なんとか商品開発を行うことができました。これから製品となる『花粉への挑戦状』に注目していただけたらうれしいです」
ヘルシー間食サービスを開始 フードロスの解決の一助にも
■Food Re-Valuation リーダー:金子隆耶
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/11202/
Food Re-Valuationは食品業界の商習慣やサプライチェーンにおける規格やルールによって生まれてしまうフードロス食材の価値を再評価することにより、それらを活用した事例を作り、食に関わるプレイヤーが前向きにこの問題を捉え、積極的に取り組んでいく起点をつくろうと活動を進めています。
フードロスの取り組みをボランティアではなくビジネスとして捉え、フードロスに取り組みたくなるようなクリエイティブなモデルケースの創出を目指しています。
1月に、社員のパフォーマンスとモチベーションを改善し、会社の生産性の向上を目的とする企業向けヘルシー間食サービス『snaccuru(スナックル)』を開始しました。
『snaccuru』は食品メーカーでフードロスが発生したオーガニック菓子・飲料を活用した置き菓子サービス。通常300円〜500円が相場のオーガニック系の菓子を店頭価格の2~4割引程度で提供できるという個人的なメリットがあるほか、ヘルシーな間食環境を導入した企業が結果的にフードロスの解決の一助になるという社会メリットも兼ね備えています。
「今後もさまざまな企業に営業を行い『snaccuru』を紹介、導入していきたい」と金子は意気込みを語りました。
糖尿病をテーマとしたコミュニケーション・デザインの創造を
■180mg/dl 丸山亜由美
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/11175/
180mg/dlは糖尿病をテーマに、さまざまな分野とのコラボレーションによって新しいコミュニケーション・デザインの創造を目指すプロジェクトです。
100BANCHでは月1ペースで実験をしてきた180mg/dl。10月に開催されたイベント「100BANCH street!」では血糖値が測れる簡易診断を実施し、参加者同士で血糖値を共有しながら食事のアドバイスを行いました。また、11月はデザイン&アートのフェスティバル「DESIGNART TOKYO」で血糖値と食事のデータから立体作品とアートブックを展示。Panasonic創業100周年記念フォーラムでは未来の血糖値測定キットのコンセプトデザインを発表しました。
180mg/dlは従来の指先に針を刺し血液をとる必要がある血糖値の測定方法ではなく、唾液でシートの色が変化する様子で血糖値の測定ができるような測定キットの開発を続けてきました。
このキットの開発を進めるなか、丸山はある気付きを得たといいます。
丸山「あるディスカッションで『医療機器のデザインがよければ、それは人前で使えるようにもなるし、病気だと知られたくない人のカモフラージュにもなる』というお話が上がりました。この気付きに非常に感銘を受けたことを覚えています。また、血糖値測定キットの開発に向けて企業の研究者と多くの対話をした結果、唾液を使った測定キットの実現は難いことが分かりました。何よりも多くの方と熱く議論を交わせたことは非常によい経験でした」
180mg/dlは血糖値測定キットの開発の他、八王子にある小学校で「すべての人に健康と福祉を」をテーマにイベントを開催するなど、幅広い取り組みを行いました。
180mg/dl は2018年12月に行われた東京発・世界を変えるスタートアップコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY」で優秀賞を受賞。1月の次世代のヘルスケア産業の担い手を発掘・育成するため、新たなビジネス創造にチャレンジする企業を表彰するビジネスコンテスト「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2019」でアはイデアコンテスト部門で優秀賞を受賞。
丸山は「100BANCHの活動が2つのコンテストで認められたことを大変うれしく思う」とその喜びを語りました。
撮影:秋月良樹
次回の実験報告会
プロジェクトの実験報告が終わると、参加者は登壇者へ質問したり2FのGARAGEの見学したり、事務局メンバーにGARAGE Program応募の質問をしたりと、それぞれが思い思いに100BANCHの取り組みを知る時間となりました。
次回は【GARAGE Program応募者向け見学説明会&プロジェクト成果報告会】を2月27日(水)に開催します。
各プロジェクトの活動の様子を知りたい方や、GARAGE Programへの応募を考えている方は是非ご参加ください!
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