
「褌(ふんどし)を締め直せ!身体をよく保ち、楽しくドラマチックに生きる」100BANCH実験報告会

100BANCHで毎月開催している、若者たちが試行錯誤を重ねながら取り組んできた“未来に向けた実験”を広くシェアするイベント「実験報告会」。
これからの100年をつくるU35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」を終えたプロジェクトによる100BANCHでの活動報告や、100BANCHでの挑戦を経て、プロジェクトを拡大・成長させた先輩プロジェクトによるナビゲータートークを実施しています。
2026年2月18日に開催した実験報告会では、通気性抜群かつ、健康にもいい高機能な肌着である日本の「ふんどし」の新たな魅せ方に挑戦しているGARAGE Program1期生「FHP〜Fundoshi Hack Project〜」の星野雄三(株式会社バディトレ 代表取締役)をナビゲーターとし、GARAGE Programを終了した5プロジェクトが活動を報告しました。
本レポートではその発表内容をお伝えします。
空き家の価値を見直し、役目を終えた家の思いを未来へつなぐ!
登壇者:竹中弥来
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/refamily

「ReFamily」は、空き家を「眠った資源」ではなく、そこに暮らしてきた人々の思い出や記憶を未来へつなぐことを目指すプロジェクトです。
竹中:「ReFamily」は、所有者の想いに寄り添い、空き家の「これから」の選択肢を増やすことを目指して活動しています。はじまりは、私の大好きなおばあちゃんの家がきっかけでした。家族の思い出が詰まった大切な場所が、おばあちゃんが亡くなった後に「悩みの存在」になってしまった。そんな現状を目の当たりにしたんです。実際に100人以上の方にお話を聞くと、皆さん同じように「手放すのは寂しいけれど、持っているのも辛い」という葛藤を抱えていました。「売却や解体といったこれまでの選択肢だけでは、心のモヤモヤは解消できない。」「家のストーリーをそこで終わらせてしまうのはもったいない」という思いで、プロジェクトをスタートしました。
GARAGE Programの3ヶ月間での取り組みは、主に3つあります。1つ目は「さかさマルシェ」への出店です。100BANCHに入居していた「SAKASAMAFUDOSAN」が運営するマルシェで、地元開催ということもあり、地域の方や自治体、企業の方々と直接つながることができました。この「つながり」をつくれたことが、活動の大きな支えになりました。2つ目はSNSを通じた発信です。Instagramだけでなく、noteを使って、私たちが本当にやりたいことをじっくりと言葉にして、多くの人に届けることに注力しました。3つ目はアプリの開発です。空き家の所有者の方々とのお話で「思い出が引っかかって一歩踏み出せない」という言葉をたくさん聞いてきました。建物にある思い出や記憶を次につなげられると良いのかなと考え、その仕組みを試作しました。このアプリでは、所有者の空き家のこれからの選択に寄り添うことができると考えています。一方で、実際につくってみて気づいたことは、「決断していない人たちにどう寄り添うべきなのか」、私たちが向き合うべきなのは「どうしようか決められずにいる時間そのもの」だということです。何からはじめればいいかわからない人や動き出すのにハードルを感じている人たちに、寄り添いながら新しい選択肢を届けていく必要性を強く感じました。

「今後は、『空き家×学生寮』や『空き家×社宅』など、空き家と何かをかけあわせることで、ポジティブな選択肢をどんどん増やしていきたいです。空き家という言葉のネガティブなイメージを変え、想いが引き継がれた場所から、新たな暮らしや挑戦が生まれる社会を目指して活動を続けていきます。」と竹中は話しました。
日本の着物とフランスのルリユール文化を紡ぎ、美術工芸品としての「装釘(そうてい)」を創造する
登壇者:田岡栞菜
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/kimono-edition

「Kimono Edition」は、廃棄・休眠在庫となっている着物の帯地を、フランスのルリユール文化から着想を得たオーダーメイド装釘へと再活用することを通じて、着物の資源循環と高付加価値化を目指すプロジェクトです。
田岡 :3ヶ月前に100BANCHに入居したときは、まだ自作のサンプルを試作している段階でした。この入居期間中に「ブランドをローンチする」という目標を掲げ、今日、ようやくホームページを公開することができたので、後ほどチェックしていただけると嬉しいです。私のブランド「KAKIMONO(カキモノ)」は、書物の「書き物」と「着物」をかけあわせた名前で、オーダーメイドの「着物製本」ブランドとして運営しています。元々はフランスの製本や「装丁」の文化にインスピレーションを得たもので、その文化を日本流にアレンジし、国内、そして海外へと広めていくことをコンセプトにしています。
本日、後ろにサンプルを飾っていますが、これはブックカバーではありません。例えば、背表紙が傷んでしまった古本などを、製本所の職人さんがハードカバーで新たにつくり直し、そこに捨てられてしまうはずだった着物の帯地を施した「手製本」のプロダクトです。皆さんのご自宅にも、着なくなった大切なご家族の着物が眠っていませんか?「リメイクして新しい形にしたい」と思ったときの新しい選択肢として、「手製本」を提案したいと考えています。祖父や祖父母が着た着物をアルバムに仕立て、そこに自分の成人式の写真を綴じる。そんな風に、過去から現在、そして次の物語へと紡いでいく体験を、一冊の本やアルバムを通じて提案していきたいと思っています。サービスは完全フルオーダーメイドで、本やノート、日記、アルバムなど、私たちが用意した素材やお客様が持ち込まれた大切な一冊を、厳選した着物と組み合わせて、職人が一点一点、心を込めて製本してお届けします。昨年の秋から試験販売をはじめていますが、還暦祝いやウェディングギフトといった国内需要だけでなく、訪日観光客の方々からお土産としても選んでいただいています。

「これから目指したいのは、本の内容だけでなく、ビジュアルや装丁そのものに価値を見出す文化を日本に根付かせることです。ヨーロッパには、古典作品に豪華な装丁を施し、コレクションとして楽しむ文化が既にあったり、海外のSNSでは #BookTok や#bookbinding といったハッシュタグが盛り上がっています。日本にはまだないこの新しい市場に切り込んでいきたいと思っています。」と田岡は話しました。
「自炊」に距離を超えた「他者とのつながり」の物語を宿し、新しいモチベーション設計を。
登壇者:前田洋佑
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/jisui

「Jisui」は、自炊の動機づけを目的に、慣れ親しんだ「ノベル」と最新の「クラウド技術」を掛け合わせた新しい体験を提供することを目指すプロジェクトです。
前田:私たちが取り組んでいるのは、多くの人が抱える「自炊」という課題です。自炊に対してなかなかやる気が起きない層にヒアリングを重ねる中で、ある共通点が見えてきました。それは、料理に対する「記憶・使命・他者との関係」が乏しいということです。何を作るかパッと思い浮かばないし、自分一人だけなら「買い弁」でいいやと諦めてしまう。この「半径数メートル」の閉じられた日常を、正反対にひっくり返せば解決できるのではないかと考えました。
レシピの印象を強烈に残し、使命感を極限まで高め、さらに時間も空間も超えて、半径900kmの他者とつながる。そんな仕組みを設計に落とし込んだ結果、たどり着いたのが「物語ゲーム」という形でした。食なのにノベルゲームという意外な切り口で、現在作品を制作しています。このゲームでは、全国から集めた「手料理の実話」に基づいた世界を旅してもらいます。プレイヤーは誰かの人生を追体験しながら、過去にあった実際の選択だけでなく、「もしもこうだったら」という運命をたどり直していきます。物語の結末は調理法に結びついていて、あなたが使命を持って選び直すことになります。自炊をすれば誰かの心を救えるけれど、諦めれば誰かを見捨てることになる。これまでの自炊にはなかった「自分ごと化」の仕組みを組み込んでいます。他者の人生に潜り込むことでレシピが強い記憶として残り、自分が選ぶことで使命感が生まれる。そして、全国の実話とつながることで他者とつながる半径を広げていく。これが、私たちがゲームという形式に落とし込んだ解決策です。今のプロダクトはWebのノベルゲームですが、PDFのプロトタイプからはじまり、現在はバージョン4までアップデートを重ねてきました。100BANCHのスペースでも試遊展を行い、プレイ体験やエピソードの人気投票を通じて、どのような演出が記憶に残るのか、多くのヒアリングを行ってきました。皆さんからいただいた具体的な改善要望を活かし、次のバージョンではさらに設計を進化させていく予定です。

「今後は、ベースとなる神話的なストーリーのプロットを軸に、全国のオムニバスストーリーをさらに集めていきます。協力してくれるライターさんたちと一緒に、この新しい自炊の体験を形にしていきたいと思っています。」と前田は話しました。
都市の第三のみどり「苔(MOSS)」を増殖させ、東京を苔のユートピアに!
登壇者:上野祥太
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/mosstopia

「MOSSTOPIA」は、モノを媒介に苔のユートピアを東京に創造することを目指すプロジェクトです。
上野:僕らのプロジェクトは、偶然立ち寄った公園で、木の樹皮についた苔を見て「なんかおもろいな」と感じたその直感からはじまりました。掲げているビジョンは「苔のユートピア」をつくることで、慶應SFCの3Dプリンタで有名な研究室に籍を置きながら、あえて3Dプリンタをほとんど使わずに研究を続けている、ちょっと変わったプロジェクトです。
100BANCHでの6ヶ月間、僕らが注力してきたのは「苔コーン」というプロダクトの開発です。なぜ苔だったのか。それは、今の都市の街路樹やプランターなどの緑には、多大な管理コストがかかっていると感じたからです。行政の予算や個人の手入れに依存した緑は、異常気象が続く未来では維持できなくなるかもしれない。そんな「if」の未来を見据えて、苔という存在に着目しました。苔と三角コーンは、実は都市の同じような半日陰の隅っこに生息しています。だったらこの2つを合体させて、都市の未利用なスペースから苔を増殖させられないかと考え、100BANCHの1ヶ月目からプロトタイプづくりをはじめました。バージョン2では商業施設での設置実験や大学での展示など、とにかく動いて実験を繰り返してきました。
活動を通じて、僕らのビジョンも進化しました。当初は「都市のあちこちに苔が増えればいい」と考えていましたが、今は「人が水をあげるなどのケアをしなくても、苔が自ら過ごしやすい環境を見つけ、自生していける仕組み」をつくりたいと考えています。

「最終的には、大学の卒業論文としてこの活動をまとめました。今後は『GREEN×EXPO』への出展準備をしたり、来月3月末には表参道のギャラリーで三角コーンをテーマにした『△展(さんかくてん)』の開催を計画しています。100BANCHがなければこれまでの活動はできていなかったなと思うのでとても感謝しています。」と上野は話しました。
47都道府県の手仕事を、文化を継ぐスニーカーで世界の街角へ。
登壇者:藤本彩香
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/47waza-kicks

「47WAZA KICKS」は、日本各地の伝統工芸を「スニーカー」というキャッチーなアイコンを通して、世界の日常に溶け込ませるプロジェクトです。
藤本:私たちの活動の根底にあるのは、「世界はまだ、本当の日本を知らないのではないか」という想いです。きっかけは、渋谷駅前の観光案内所でアルバイトをしていたときの経験でした。1日に1,000人もの外国人観光客が訪れ、「街がきれい」「食がおいしい」と褒めてくれる。それは嬉しいことなのですが、一方で、表面的な清潔さや便利さばかりが注目されていることに、どこか違和感を抱きました。実際、渋谷は日本の玄関口ですが、観光客の動きはハチ公、PARCO、ドン・キホーテといった「ゴールデン三角ルート」に限定されています。とんでもない人数の観光客が来ているのに、消費も体験も限定的で、日本の深い魅力が活かしきれていないのが現状です。一方で、私はクリエイター的なSNSの発信活動をしていて地方の取材もしているのですが、各地にある織物や焼き物といった手仕事の素晴らしさに触れるたび、リスペクトされるべき日本文化に観光客がアクセスできていないもどかしさを感じてきました。
人は知らないものを避ける性質があります。はじめての滞在で地方まで足を伸ばすのはハードルが高い。それならば、伝統工芸を現代に合うキャッチーなアイコンを通じて、世界中の日常に溶け込ませることはできないか。これが私たちの仮説です。プロジェクトの当初はスニーカーをつくろうとしていたのですが、色々あって、プロダクトを変更しました。この3ヶ月の延長期間では、さらに地方へ足を運びました。愛知では日本一の招き猫の産地を訪ね、土の違いによる奥深さを学んだり、雪深い福島では古民家で張り子をつくる職人さんの現場を取材してきました。今、私たちが挑戦しているのは、伝統工芸と渋谷のアイコンであるハチ公を掛け合わせた新しいプロダクトづくりです。ハチ公のだるまや組紐など、誰もが手に取りやすい形を模索しています。進捗として、工房や職人さんのところへお伺いしたのですが、伝統ある工房によそ者として入ることの難しさも実感したので、まずは自分たちでプロトタイプをつくり、想いを形にしようと奮闘中です。
「100BANCHで折り紙をテーマにしたApriori.Art – Origami Projectさんとの交流があり、4月5日に渋谷スクランブルスクエアで展示をさせていただけることになりました。現在は、そこに向けてプロダクトをしっかりとつくり込んでいきたいと思っています。」と藤本は話しました。
実験報告会の各発表内容はYouTubeでもご覧いただけます。
ReFamily https://youtu.be/eanO7xKZTsQ?si=jKSJoh011HQ7My7t
Kimono Edition https://youtu.be/4YaaT0VWM0A?si=SGJXOI0AACwQ9n7M
Jisui https://youtu.be/gq938TU94qI?si=qBw5YJOs-E-c5b3x
MOSSTOPIA https://youtu.be/ocrcr8IeX14?si=it-L-pVLwvKsUw2b
47WAZA KICKS https://youtu.be/rudLV25edFg?si=D-MaAE9kqxKWRqxI
次回の実験報告会は3月24日(火)に開催。ぜひご参加ください!

(撮影:鈴木 渉)

【こんな方にオススメ】
・100BANCHに興味がある
・GARAGE Programに応募したい
・直接プロジェクトメンバーと話してみたい
・バイオに興味がある
・好きなことを起点にしてプロジェクトをつくっていくことに興味がある
【概要】
日程:3月24日(火)
時間:19:00 – 21:30 (開場18:45)
会場:100BANCH 3F
参加費:無料(1ドリンク付き)
参加方法:Peatixでチケットをお申し込みの上、当日100BANCHへお越しください
詳細はこちらをご覧ください:https://100banch.com/events/77574/