- イベントレポート
「自然な悩みのコミュニケーションを求めて」モヤモヤを遊ぼう─ナナナナ祭2023を終えて
深いつながりを感じられる安らぎのある社会を作りたい
悩みを絵にするという機会を提供し、悩みの自己理解、言語化、そして共有のサポートをします。アプリで他の方の悩みの絵を見ながら、自分の悩みについて内省することができます。このアプリを使って、自分の身近な人に悩みを話そうとするとき、絵の説明という名目が生まれます。これが重要な役割を果たすと考えます。普段面と向かっては言いづらい悩みも、絵の説明という口実で自然に話すことができます。悩みを話す側、聞く側が自然に信頼関係を築けるようなサポートをしていきます。
nayamiiでiimirai。
私(堀)は高校時代まで自分を飾り、生真面目だが怠惰な自分を隠し、素を出せずにいました。自分にとって、なんでも話せる人、自分の「弱さ」も悩みも話せる人が1人いるだけで、毎日の暮らしは安らかなものになると思うのです。1対1の深い繋がりを感じるためには、自己開示が重要だと考えます。深い繋がりと自己開示は相互作用すると思いますが、まず小さなステップでも良いから相手に踏み込んで話してみる機会が必要になります。私はこの「踏み込む機会」を提供し、自己開示の壁を越えるサポートを人生をかけて追求していこうと考えています。
私たちは今、自分の悩みを出す機会があまりありません。相手から、悩みを話してといってもらえるような受動的な場合はまだしも、自分から積極的に悩みを話す機会はほとんどないと思います。ここでいう悩みとは、自分が”普通”でないと思っている事柄に対する悩みです。こうした悩みを出せない背景に、相手、そして社会の反応が怖いということがあると思います。皆が”普通”に合わせようとして、”普通”でないものを避け、特別視する雰囲気や、強い自分を演じる流れはDE&I社会が叫ばれる今でも残存しています。 私は、この世界をそれぞれが自分らしく生きていける社会にしたいです。自分の悩みも出すことができる、本当の自分をさらけ出せる社会にしたい。 こうした社会で私たちは日々安らかに生活することができます。そして、悩みを共有できた感覚は深い繋がりを生み出します。これは何にも変え難い喜びです。 理想の社会を実現するため、悩みを絵にする nayamiiプロジェクトを行います。悩みを絵にすることで、悩みの自己理解、言語化、共有が促進されるというのが私の仮説です。特に、悩みの共有に大きな手助けとなります。絵の説明が名目となり、悩みを話す側、受け取る側も自然に相手に寄り添えます。このプロジェクトを通じて、一人で悩みを抱え込んでいる方がどうすれば自然に悩みをさらけ出せるか考えていきたいです。
・悩みへの対処法についてのヒアリング
・自己開示を行う場面についてのヒアリング
・悩みを絵にする交流会
・nayamiiネイティブアプリ開発
・悩みのAR・VRによる疑似体験
・自己開示を起点としたコミュニケーションを設計した交流会の実施
・nayamiiネイティブアプリリリース
・悩みのAR・VR体験会の実施
活動を通して実現したい未来は、深い繋がりを感じられる人がある安らぎある世界だ。「弱さ」を共有できた感覚や悩みを分かち合えた感覚により人との繋がりが深まっていくと私は考える。ここで理想とするのは、プライバシーを侵す社会ではなく、それぞれが自分をさらけ出したい時にその願いを叶えることができ、日々安らかに生活できる社会である。 理想の未来では、お互いに自然に、積極的に悩みを共有し、聞き、ケアの関係を築くことができる。1対1からケアの連鎖が広がり、お互いを自然に受容できるようになっていく。 こうした世界の実現のためには、絶妙な調整が必要だと考える。悩みを受け入れてほしいという気持ちは攻撃性を持つことがあるからだ。悩みを抱える方の、理解してほしいという気持ちと周りの方の悩みを理解してあげたいという気持ちが自然とつながるような活動にしていきたい。 課題を乗り越えた先に、人との深い繋がりの喜びを感じられる社会があると信じている。その先には、誰もが自分らしく活動できる社会、DE&I社会がある。これまで、さまざまなバックグラウンドを持つ方にその方の悩みを教えていただいた。その中で、”普通”に合わせよう、”普通”でないと避けられてしまう、という考えが印象に残った。”普通”でないことに対する悪い特別視がなくなり、そして”普通”の幅が広がれば、皆がありのままの自分で暮らせるようになる。恐れを感じずに済む。 皆が自分らしさを自然に愛することができる世界を、100年先に伝えたい。
ディレクター・エンジニア堀祐大朗
2002年 新潟県出身。認知科学と情報科学を専門に学んでいる。昨年夏の大学の授業をきっかけに、自己開示、AR/VR、DE&Iに関心を持つ。自分の悩みや弱みを自然に話せる”深いつながり”を感じることが安らぎある生活につながると考えており、自然な自己開示の方法を模索している。
企画・エンジニア堂畑茉由
2000年 愛知県生まれ。神経科学を学び、脳波や呼吸、歩行などの身体情報から心理状態を推定する技術に興味があり研究中。 事業にも興味があり、プログラミングを独学しメンタルヘルス支援アプリ開発の経験や、イベントの開催、リサーチの業務委託などを行なっている。 言語に頼らない自己開示をテクノロジーで実現することに関心がある。
企画・マーケティング・UX末永紗帆
群馬大学医学部医学科在学。小中高で合計11回の転校を経験。高校時代にドイツとスイスに1年間のホームステイの留学経験あり。卒業後は医者として働くのではなく自身で事業を立ち上げる事を目標にしつつ現在不登校の生徒を対象にしたコミュニティを形成している。
企画・アドバイザー山口莉絵
東京大学教育学部所属。心理学・障害学などを中心に学んでいる。不登校支援や被虐待児、精神的なトラブルに悩む人の支援に公私共に長年関わっており、現在は自分でも当事者研究を行う団体を立ち上げたり、記事を書いたりといった活動をしている。自己開示の手段の多様化に関心を持ち、プロジェクトに関わる。また、小説の執筆や歌唱といった活動も行う。
アドバイザー河合啓太朗
工学系と心理系の大学院修士課程を修了しており、AIや心理学に関心がある。過去に子ども電話相談をした経験がある。現在はIT系のベンチャー企業で就業しながら大学院に通っている。公認心理師と臨床心理士の受験資格を持つ。
企画・エンジニア田中 真衣
1998年 兵庫県出身。IT企業にて2022年からソフトウェアエンジニアとして勤務。東京大学の文学部 心理学専修課程卒。在学中の研究分野は認知/知覚心理学。理想的な世の中は、mind diversity(心の多様性)が広まり、どんな心や認知機能の特性を持つ人であれ「誰ひとり取り残さない」ような世の中。認知症グループホームや知的障がい者のいる施設で働いた経験がある。
企画・マーケティング柴山 駿介
2002年 神奈川県出身 経営学やベンチャービジネスを学んでいる。自身の引きこもり、浪人生活をきっかけに、孤独、不安を感じる人々へのコミュニティに関心を持っており、自身もオンラインコミュニティに所属している。また現在は人と人が繋がるコミュニティ形成を目標に活動している。幼い頃からピアノ、水泳、サッカーやカードゲームの大会優勝などを経験。
エンジニア坂本 洸亮
大阪府出身。幼少期からコンピュータに触れ、大学でも情報学全般を学んでいる。心理的な分野には疎いが、逆にそれを活かして素朴な疑問を呈したり、あるいはそれ以外の技術的な面で積極的に活動する予定である。
CANVAS代表、慶應義塾大学教授、B Lab所長
石戸奈々子
東京大学工学部卒業後、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員研究員を経て、NPO法人CANVAS、株式会社デジタルえほん、一般社団法人超教育協会等を設立、代表に就任。慶應義塾大学教授。総務省情報通信審議会委員など省庁の委員やNHK中央放送番組審議会委員を歴任。デジタルサイネージコンソーシアム理事等を兼任。政策・メディア博士。著書には「子どもの創造力スイッチ!」、「賢い子はスマホで何をしているのか」、「日本のオンライン教育最前線──アフターコロナの学びを考える」、「プログラミング教育ってなに?親が知りたい45のギモン」、「デジタル教育宣言」をはじめ、監修としても「マンガでなるほど! 親子で学ぶ プログラミング教育」など多数。これまでに開催したワークショップは 3000回、約50万人の子どもたちが参加。実行委員長をつとめる子ども創作活動の博覧会「ワークショップコレクション」は、2日間で10万人を動員する。
デジタルえほん作家&一児の母としても奮闘中。
プロジェクトの歩み