• イベントレポート

「自然な悩みのコミュニケーションを求めて」モヤモヤを遊ぼう─ナナナナ祭2023を終えて

悩みを話したいのにうまく話せない、そんなモヤモヤを経験したことがある方も多いのではないでしょうか。

「nayamii」は、悩みを絵にすることで悩みについての認識、表現、対話のサポートをするサービスを開発しているプロジェクトです。ナナナナ祭2023では悩みやモヤモヤを絵にしてコミュニケーションする体験ができるブースを出展しました。企画意図や当日の様子を、nayamiiの堀がお伝えします。

みなさんは、自分が抱えている悩みを相手に話したいのに話せなかった経験はありますか…?

こんにちは。nayamiiという悩みを絵にするプロジェクトに取り組んでいます、堀祐大朗です。このプロジェクトは、悩みを話せるような深いつながりを感じられる人がいる、そんな安らぎある社会を目指しています。理想とする社会に向け、現在は、相手の反応への恐れから話したくても話せない悩みを、自然に話すためのサポート方法を追求しています。詳しいプロジェクト内容に興味を持ってくださった方はぜひこちらの動画をご覧ください。

「モヤモヤを遊ぼう」にこめた思い

さて、nayamiiは、ナナナナ祭2023において、モヤモヤは楽しめるのか…?ということを検証すべく、「モヤモヤを遊ぼう」というプログラムを行いました。

「モヤモヤを遊ぼう」メインビジュアル

普段、悩みをどのように自然に話せるかというセンシティブな内容に取り組んでいることもあり、「モヤモヤを遊ぼう」というプログラム名には違和感もあります。本当にモヤモヤは遊んでも良いものなのか…?という違和感です。もちろん、悩みについて嘲笑するといったことはnayamiiや「モヤモヤを遊ぼう」で目指しているところではなく、違和感の一部になっていると思います。一方で、違和感の他の一部分の背景には、悩みを話す人・ことへの偏見、スティグマもあると考えています。悩みを人に話すことは弱いことだ、悩みは1人で解決するものだ、悩みを話すと必ずシリアスになってしまうので話さない方が良いというような偏見です。こういった偏見を少しでも変えていくことができれば、相手の反応の恐れから悩みを話したくても話せないという状況が減っていくと思うのです。今回のプログラムでは、モヤモヤに関する様々な体験を通して、来場者の方とnayamiiのメンバー、そして来場者の方同士で楽しみながらコミュニケーションをすることにより、普段あまり話さないモヤモヤについて気軽に話すことができるか検証しました。様々な体験を通して、結果的に「モヤモヤを遊ぶ」ことができ、悩みに対する捉え方に変化を感じていただけていたら幸いです。

 

自然なモヤモヤのコミュニケーションのために

さて、プログラムでは、大きく3つの体験と、1つの展示(モヤモヤのフィードバック・モヤモヤAI絵生成・カードゲーム・悩みを話すきっかけについての調査ボード)を作っていました。これらの体験・展示はこれまでのnayamiiの活動の課題点から生まれたものです。前述の通り、nayamiiは相手の反応への恐れから話したくても話せない悩みを自然に話すためのサポート方法を追求しています。これまでは、悩みを自然に伝えるためには、話す時の心理的な余裕を作ることが大事である、話す余裕は、自分の考えを整理することと相手との対話の回数を増やすことによって生まれてくるものであるという仮説のもと、悩みを絵に表現するという活動を行ってきました。悩みを絵にすることにより、これまでうまく言語化できていなかった自身の中のイメージを捉えることができ、思考の整理ができるのではないか、また、絵を用いて相手に悩みを伝えることで、相手から質問を引き出すことができ、会話のキャッチボールの回数が増えるのではないかと考えていたためです。実際に、画像生成AIを用いて悩みの文章を絵にするサービスを作り、イベント等で体験していただくことで、悩みを表現することができるとわかってきました。

しかし、悩みを表現することができても、相手に自然に共有することができるとは限りません。表現と共有の間にはギャップがあり、悩みを絵にするだけでは共有に至らないのではないかと考えるようになりました。

悩みを自然に共有することができていないという課題を前に、悩みを自然に共有するまでにはどのような流れが存在するのか検討しました。その結果、現時点では、大きく3つの段階があると考えました、自身が悩んでいるということ/悩んでいる内容の認識・悩みの表現・悩みの話を含む自然な対話の3段階です(認識・表現・対話)。これらの3段階は、互いに関わっており、順番も一通りではない、いつも3つ必要なわけでもないとは思いますが、今回は認識→表現→対話の順番で考えました。

悩みを共有するまでの3段階

この3段階のうち、これまで取り組んでいた画像生成AIによる悩みの絵生成は「悩みの表現」にあたります。

ナナナナ祭では、悩みの認識のために、モヤモヤのフィードバック、悩みの表現のために、モヤモヤAI絵生成、モヤモヤの話を含む対話のために、カードゲームというサービスを構想し、プロトタイプを来場者の方々に体験いただきました。そして、自然なモヤモヤのコミュニケーション、共有が生まれるか実験しました。

3つの体験と1つの展示の内容

モヤモヤのフィードバックについては、生体指標をセンシングして自身が“モヤモヤ”している時にそれを検知してくれるウェアラブルデバイスを構想しました。自身がモヤモヤしている時に、その自分を客観視することは難しいと思います。皆さんも、振り返ればあの時モヤモヤして落ち込んでいたな、なかなか立ち直れなかったなという経験はありませんか?モヤモヤを検知し教えてくれるデバイスがあることで、自身のモヤモヤを認知し、モヤモヤの表現や対話に繋げられるのではないかという仮説からデバイスのプロトタイプ製作に取り組みました。ナナナナ祭では、擬似的にモヤモヤをフィードバックするプロトタイプを体験いただき、実際にモヤモヤしている時にそれを検知して教えてくれるデバイスがあったら使いたいかということをヒアリングしました。

モヤモヤAI絵生成については、元々製作していたサービスを利用し、モヤモヤを表現することができるか再度検証しました。

カードゲームについては、絵にしたモヤモヤのキャラクターを使いながらペアで協力して敵を倒すゲームを構想しました。自身のモヤモヤを自分の中に留めておくのではなく、キャラクターとして外に表すことによって、自分の考えを客観的に見ることができるのではないか、キャラクターとして表し、ゲーム内でそのキャラクターについて質問していく中で、自然な対話が生まれるのではないかという仮説から、ゲームを製作しました。ナナナナ祭では、実際にカードゲームを一部遊んでいただき、自身のモヤモヤをキャラクターに表すことができるか、そしてゲームを遊ぶ中でモヤモヤについての対話が自然にできるかお聞きしました。

最後に、1つの展示として、悩みを話すきっかけについての調査ボードを設置しました。この調査ボードでは、悩みを話すきっかけについて来場者の方に付箋やシールで回答いただきました。nayamiiの目標である、相手の反応への恐れから話したくても話せない悩みを、自然に話せるようになることに立ち戻り、皆さんに悩みを話せた場面についてお聞きした形になります。調査ボードは2軸に分かれています。普段悩みをよく話すかほとんど話さないか。その場面で悩みを話した際に自分から話したのか相手に聞かれて話したのか。この2つについて考えていただきボード上の合う位置に付箋やシールを貼っていただきました。付箋には悩みを話した場面について記入いただきました。

ブースの様子

 

モヤモヤについて、様々な意見をいただいた

ナナナナ祭では、想定より多くの方にブースに来ていただき、プログラムを体験いただくことができました。また、各プロトタイプについて貴重な意見やアイデアをいただくことができました。

モヤモヤのフィードバックについては、モヤモヤしていることを教えてくれることにより、自分の中でモヤモヤを探し、思い当たるところを見つけることができるので良い、などモヤモヤの認識につながるという声をいただくことができた一方で、ナナナナ祭参加中に“モヤモヤ”している人が少なかったため、使用場面をイメージしてもらうことに苦戦しました。また、自身の体調の変化によってストレスに気づくことが多い、とおっしゃっている方が多く、印象に残りました。

モヤモヤAI絵生成については、ナナナナ祭期間中に約220回体験いただきました。絵には形や色などの特徴があり、言葉では表現できない意味を表現できそう、夫婦関係の悩みを表現したい、など、モヤモヤを表現する可能性について改めて確認することができました。一方で、絵生成の後に会話が発生しないという課題は依然として残っていました。

カードゲームについては、自己開示ができて面白い、カードゲームを通すと話せる、などモヤモヤの話を含む対話を引き出すことが一定程度できました。また、会社の研修で使いたい、宅飲みで使いたい、など活用場面についてもお聞きすることができました。一方で、カードゲームのルールの難しさにより、ギクシャクしてしまうという課題も残りました。

プログラム全体として、モヤモヤをテーマにしていましたが、来場者の方が抱えているモヤモヤの種類は想像以上に多様でした。また普段悩みを話すか話さないか、話したいか話したくないか、話すことに対して感じるメリット・デメリットも人それぞれでした。実際に展示を開催し来場者の方々に意見をいただくことでしか得られない価値を感じることができました。

体験の様子

 

自然に悩みを話すことができる社会に向けて

ナナナナ祭のプログラム出展を通して、多くの方にプロトタイプを体験していただき、モヤモヤを楽しめるのか…?ということを検証することができました。特に、カードゲームについては、楽しみながら気軽にモヤモヤについて話すという体験の可能性を感じることができました。

一方で、現段階ではどの体験も初期プロトタイプの段階で、モヤモヤの認識、表現、対話に繋げるには質的な面で課題が残っています。今後もnayamiiとして、以下に自然に悩みを話せるか、サービスを使って悩みを話せたという経験をどのように提供できるかということを追求していきたいと考えています。

さて、「来場者の方同士で楽しみながらコミュニケーションをすることにより、普段あまり話さないモヤモヤについて気軽に話すことができるか」というのが今回のナナナナ祭での展示のテーマでした。私(堀)が個人的に印象に残っているのは、悩みを話すきっかけについての調査ボードです。このボードは、悩みを自然に話していただくことを主の目的とはしておらず、むしろどのようなきっかけで悩みを話すことができるのか、どのようなきっかけが欲しいかというニーズ探索のために行った側面も大きいものでした。しかし、来場者の方々の多くが真っ先に目を留めてくださったのはこの調査ボードでした。

調査ボード

多くの方にこのボードに悩みを話すきっかけを書いていただくことができました。さらに、来場者の方とnayamiiメンバー、また来場者の方同士で普段あまり話さないモヤモヤについて気軽に話すことが1番できたのもこの調査ボードだったと感じています。悩みを話すきっかけだけではなく、実際の悩みの内容についても対話が生まれたのです。

3つの体験の質を向上させることで、広く自然な悩み開示ができる環境を作るということも追求しつつ、リアルな場で悩みを話しても大丈夫だと思える環境を作ること、匿名で普段話さない悩みを書くことのできるような場所を作ることにも関心が生まれたナナナナ祭の展示でした。

 

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