世界中で愛される日本のさつまいもをつくり、
IMOVATIONを起こす!

IMOCO
世界中で愛される日本のさつまいもをつくり、
IMOVATIONを起こす!
100BANCHで毎月開催している、若者たちが試行錯誤を重ねながら取り組んできた“未来に向けた実験”を広くシェアするイベント「実験報告会」。
これからの100年をつくるU35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」を終えたプロジェクトによる100BANCHでの活動報告や、100BANCHでの挑戦を経て、プロジェクトを拡大・成長させた先輩プロジェクトによるナビゲータートークを実施しています。
2025年2月19日に開催した実験報告会では、日本全国の各地域の文化や魅力をおむすびに込めて、ワークショップや商品開発を通して食の大切さや楽しさを届け続けているGARAGE Program2期生「MUSUNDE HIRAITE」の菅本香菜(旅するおむすび屋)をナビゲーターとし、GARAGE Programを終了した5プロジェクトが活動を報告しました。
本レポートではGARAGE Programの5プロジェクトの発表内容をお伝えします。
世界中で愛される日本のさつまいもをつくり、IMOVATIONを起こす!
登壇者:中村真緒
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/imoco
「IMOCO」は、世界の中で日本のさつまいもの価値が最大化されることを目指すプロジェクトです。日本の紅はるかを使用したアメリカ向けさつまいもD2Cブランドを構築し、栄養価満点のいもで「IMOVATION」を起こします!
中村:私はさつまいもの生産量が多い茨城県で生まれ、現在は宇都宮大学農学部の3年生です。私の夢は世界で「IMOVATION」を起こすことです。私は中学から6年間、棒高跳の選手として活動しましたが、その時にコーチから体重管理のために「砂糖を食べるな」と厳しく言われていました。しかし、食いしん坊な私はどうしても甘いものが食べたくて、たどり着いたのがさつまいもでした。特に紅はるかは、ねっとりしていて、砂糖が入ってるんじゃないかと思うほど美味しいです。この経験から芋にとても興味を持ち、畑や小さな干し芋場をつくって運営したりしていました。
さつまいもは日本のイメージが強いですが、実は生産量だと世界13位で、生産量の上位はアフリカの国々やインドです。そのため、私はおいしい芋を探しにアフリカの芋農家を巡ったのですが、世界には思ったよりおいしい芋がないということに気づきました。世界的には、芋は主に豚の餌等の家畜飼料として使われています。甘くておいしい芋があったり、焼き芋やお芋のスイーツがある日本の文化は、もっと世界に誇るべきものだと感じました。しかし、日本の芋農家はまだまだ世界に進出していません。そこで、私はさつまいものグローバルブランドをつくるために、100BANCHに入居しました。渋谷で外国人に焼き芋を配ったところ、1番ウケがいいのはアメリカ人だと気付き、最初にアメリカ向けのさつまいもブランドを作ることになりました。現在、干しいものエナジーバーと焼き芋の卸事業をやっています。同時に、アメリカではTikTokで食べ物を売るのがトレンドとなっていたので、100BANCHでは、アメリカの帰国子女のメンバーを中心に、英語でTikToktを撮影する活動も続けています。
「さつまいもをもっと多くの人に、世界に届けるために、これからも活動していきたいと思います。」と中村は話しました。
アパレル産業に新しい流通を!「商品を守る」機能と環境配慮を両立させる梱包の方法を生み出す!
登壇者:野崎絵未里
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/new-konpou
「new “Konpou”」は、商品を守る機能と環境配慮を両立させる新しい梱包方法を生み出し、アパレル産業の流通を変えることを目指すプロジェクトです。
野崎:私は昔、大手スポーツブランドでアルバイトをしていました。店舗にたくさんの服が入った状態の段ボールが届き、裏で開封作業を行っていたのですが、個包装のプラスチックの袋を開封して服を店頭へ並べると、その大量の袋は捨ててしまうんです。一方で、店頭のお客さんには「袋に入れますか?」と尋ねていて、この矛盾と悲しみを感じたことが、「new “Konpou”」プロジェクトをはじめたきっかけです。
これは100BANCHに入居する前のことですが、私が働いていた会社だけではなく、色々なアパレルの友人たちに話を聞いて調査したところ、どのブランドも個包装しており、“商品を守るため”や“安全管理の目的のため”に梱包が行われていることがわかりました。これらを踏まえ、梱包の目的である「商品を守る」ことを達成する方法を生み出そうと考え、100BANCHに入居しました。環境に良い仕組みだけでは、企業としてビジネスを進める上で、導入してもらうのはまだまだ難しい現状があるので、アパレルで働いてる人の悩みなどを集めて、その人たちにとって作業効率が上がり、在庫管理が楽になる仕組みを作りたいと思いました。100BANCHの3ヶ月間では、流通の実態調査を行ったり、実際にプロダクトをつくってみたり、10人の方と壁打ちをさせていただいたりしました。いろんな方と壁打ちをする中で、梱包にはどういうものがあるのか、国内外のどこで服を作って、どのような形で店舗まで届くのか、がわかってきました。実際のプロダクトの箱をつくるにあたっては、どのような条件で箱をつくっていくか書き出し、試行錯誤しながら試作を進めています。
「今後は、より精度を高めてプロダクトをつくること、会社としてやっていくための資金調達やビジネスモデルを固めることをやっていこうと思っています。」と野崎は話しました。
当事者が自らの感覚や言葉を取り戻す。文化から医療を、そして社会を変えていく。
登壇者:Kanata Blue
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/ill-party
「ILL PARTY」は心や体の病を抱える人々、そしてその治療やケアに関わる人々を「当事者」と捉え、彼らが自身の経験や哲学を表現するための企画を提供することで「全ての当事者のためのクリエイティブな実験場」を目指すプロジェクトです。
Kanata Blue:ここ3ヶ月で取り組んだこととして、短歌企画と出版企画を行いました。まず短歌プロジェクトについてですが、前回の報告会で「短歌やさん」として発表したものを「詠まない歌人プロジェクト」という名前に変え、少しリニューアルしました。プロジェクトのメンバーの歌人であるぐみ沢がお相手の相談や愚痴を聞きながら、その相談者に合わせた短歌をつくり上げていくというもので、短歌をセルフケアやコミュニケーションのツールとして活用するサービスです。自分ではなく相手に詠ませることから「詠まない歌人プロジェクト」という名前にリニューアルして、実験を重ねました。今回は特に事業化に向けたコラボレーションに主眼を置き、外部の詩人の方とのワークショップを実施しました。また今後、対談企画のアイスブレイクを担当する予定もあります。「詠まない歌人プロジェクト」には自分たちも可能性を感じており、現在はぐみ沢が誰かの相談を聞いて短歌をつくっているのですが、これをAIのAPIを使ってできないかと考えており、短歌を使ったSNSのようなものを構想中です。
同時に、出版企画も2つ進めています。1つ目が「向き合っちゃう馬鹿たちへ」というタイトルの本です。「自分と他人、あるいは物事に対して、時に苦しみを伴う“向き合う”という行為をどうしてもやってしまう人たち」を「向き合っちゃう馬鹿」たちと定義し、彼らの向き合い方の哲学を集めて1冊の本にしてみようと考えています。現在、各所に原稿を書いてもらっているところです。もう1つは僕が書いている本です。精神科医療と当事者の間に大きな空白地帯があるのではないかという仮説を持っているんですが、医療と当事者の距離こそ、当事者がなんとかしたいと思っているインサイトなんじゃないかと考えています。研修医という、医療者と当事者の間で中途半端な立場の人間である僕だからこそ出せるメッセージを本にしたいと考えています。進捗としては、精神科の専門医の先生に監修と協力の許諾を得ることができました。今後、出版企画書をつくって提案に行きたいと考えています。
6ヶ月間の活動で、最初は「当事者性を文化に」という曖昧かつ大きな風呂敷を広げたのですが、最終的に真の課題を見つけられた気がしています。それは、当事者性と医療や介護の専門性の間の溝を埋めたいということです。これが当事者の持っているインサイトなのではないかと思っていて、今進めている出版企画にも繋がっています。
「これからも我々はチームとして、当事者と専門性の間にある溝を埋める企画や出版物を通して、形を変えた希望を作っていきたいと思っています。」と Kanata Blue は話しました。
複数のカルチャーが入り混じる景観の、新たな見方を確立したい。
登壇者:張伊琳
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/third-culture-scape-project
「Third Culture Scape Project」は複数文化を越境した、新しい風景の見方の確立を目指すプロジェクトです。
張:私も当事者ですが、複数の文化の中で育ってきた子どものことを「サードカルチャーキッズ(TKC)」と呼びます。自分自身のルーツのアイデンティティが曖昧で、悩むことがとても多いです。100BANCHでは、自分と同じようなサードカルチャーキッズの方々にインタビューをしたり、リサーチを行ったりしてきました。このサードカルチャーキッズの感覚は当事者以外にはすごく伝わりにくいものですが、手に取りやすい形で多くの人に伝えられるものをつくりたいと思って、今回は自分の考えをまとめたZINEをつくりました。私は中国と日本にルーツがあるんですが、海外に行って出身を聞かれた時に、すぐに答えが出てこなかったということがありました。それで、自分が答えを出せないルーツの形がどんなものなのかを探したくて、考えたりつくったりしていました。幼い頃は自分の中国のルーツがすごく嫌で、隠していた時もありましたが、成長の過程で捉え方が変わってきて、今では中国のルーツも日本のルーツもすごく大好きで、出身を聞かれると、どちらのルーツも答えるようにしています。自分のルーツでもある中国は、自分は住んだことのない場所で、知らない場所ですが、そんな中国の中で「なんだか愛おしいな」と感じた景観や事象をまとめてみたり、自分の曖昧なルーツをグラフィックにしてみたりしました。
100BANCHでは、いろんなサードカルチャーキッズの人たちにインタビューをして、お互いに打ち明けあった中の言葉をまとめました。主に、みんながどのようにアイデンティティと向き合ってきたかをたくさん聞きましたが、それは聞いている私自身の救いにもなりました。これまでは自分のルーツの悩みを自分の中だけで考えたり、悩んだり、受け入れたりと、自己完結していたのですが、100BANCHの期間で出会った人に「実は自分もそうなんだよ」とか「私の友達にこういう子がいてね」と教えてもらい、打ち明けられる相手や機会ができたことで、自分の人生がすごく変わったと感じています。
「100BANCHに来て、色々な頑張ってる人に囲まれて、自分でもちゃんと手を動かせたということが、自分にとってすごくいい経験になりました。半年間ありがとうございました!」と張は話しました。
書道を通して遊び心を解放したい!!
登壇者:増田海音
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/new-shodo-development-committee
「new shodo development committee」は書道と他の分野とを掛け合わせることによって、新しい書道の遊び方を開発するプロジェクトです。
増田:私たちは「書道と他分野を掛け合わせ、伝統と現代をつなぐ新たな門戸を開きたい!」というモットーで活動しています。100BANCHでの6ヶ月間、何をしていたかというと大きく3つあります。
1つ目はカードゲームの開発です。「<◯◯なひらがな>を筆でしたためるゲーム」というものをつくりました。カードの裏にいろんなお題、例えば「強そうなひらがな」「機嫌が悪そうなひらがな」などが書かれていて、それを1文字のひらがなで表現し、なぜそう思ったのかをシェアするコミュニケーションゲームです。また、このひらがなを使ったゲームにちなんで、ひらがなができる前の万葉仮名やひらがなになったことで省かれてしまった変体仮名をもっと知ってもらうため、クイズ形式の書道講座も開催しました。2つ目は、後半の3ヶ月で取り組んだ「筆圧さがし」です。食器用のスポンジなど、日用品を筆にして、それぞれが持っている筆圧や筆としての特徴を調べる遊びです。これが意外と面白くて、例えばホウキを筆だと思い込んでやってみると、書いているのか掃いているのか分からなくなるような感覚になります。3つ目は、BioCraftさんとの共同制作で、イカの発光細菌の培養液をいただいて「バイオラブレター」をつくりました。3日間ほどしか光らないのですが、暗闇の中でじわじわと光って、じわじわと減光していくところが、思いが伝わらなかったラブレターと重なるなと思い制作しました。
これらのプロダクトや講演を行ってみて、「難しそう」とか「私字汚いんだよね」と言っていた参加者の方々が、イベント後に「日常と繋がっていて面白かった」とか「線に情報を込めることってやっぱ文字を打つのと違うよね」といったことを実感してもらえたのが嬉しかったです。
「今後は、鑑賞へのアプローチや歴史へのアプローチを行ったり、助成金を獲得して100BANCH以外の場所、地元などでの活動にも繋げられるようなことをできたら良いなと思っています。」と増田は話しました。
次回の実験報告会は3月25日(火)に開催。ぜひご参加ください!
(撮影:鈴木 渉)
【こんな方にオススメ】
・100BANCHに興味がある
・GARAGE Programに応募したい
・直接プロジェクトメンバーと話してみたい
・ハードウェア開発に興味がある
・都市の交通システムの課題に興味がある
・次世代の交通システムに興味がある
【概要】
日程:3/25(火)
時間:19:00 – 21:30 (開場18:45)
会場:100BANCH 3F
参加費:無料(1ドリンク付き)
参加方法:Peatixでチケットをお申し込みの上、当日100BANCHへお越しください
詳細はこちらをご覧ください:https://100banch.com/events/68341/