楽しさの垣根のない場をつくることで、 障害を生み出さない社会を目指したい
Blined Project
楽しさの垣根のない場をつくることで、 障害を生み出さない社会を目指したい
視覚の状態に関わらず共に楽しめるボードゲームの開発や、「楽しさ」をテーマに社会の障害理解を進めるコンテンツ開発に取り組む「Blined Project」(ビーラインドプロジェクト)。今回彼らが挑んだのは、視覚の状態に関わらずに知らない分野を楽しめるイベントです。体験イベントは通常、視覚情報に頼る部分が多くなりがちですが、どのような形となったのでしょうか。イベントシリーズ第一弾、科学の世界を体験した当日の様子をBlined Projectの浅見がお伝えします。
私たちは今回、「視覚障害のある人とない人が同行援護を使って一緒に遊びにいく、という新しい遊び方によって、より楽しさで溢れるインクルーシブな社会を実現していけるのではないか」と仮説を立てました。それを踏まえて、見える人と見えない、見えにくい人が一緒にブラブラ遊びにいく遊び方「ブラアソビ」(ブラインド × ブラブラ × 遊び)という概念をつくり、シリーズ型イベントを開催するアプローチをとっていくことに!
そのアプローチであるイベント「まだ見ぬマニアの世界へブラアソビ」は、特定の分野のマニアをゲストにお迎えし、これまであまり知らなかったマニアックな世界へ皆さんを誘います!記念すべき第一回目として、今回は同じく100BANCHのプロジェクトの「A cultured energy drink」のプロジェクトリーダーで、培養肉研究者の田所直樹さんをゲストにお迎えし、自分だけのエナジードリンクを調合しながら「科学」のマニアックな世界へブラアソビしました!
【イベントの基本情報】
イベント名:まだ見ぬマニアの世界へブラアソビ vol.1 〜科学の世界〜
日時:2024年9月8日 日曜日 10時30分から13時
場所:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-27-1(移動に不安のある方は駅から会場をご同行できます)
定員:24名(視覚障害のある方とない方それぞれ12名ずつ)
参加費:2000円(2回目以降、視覚障害のある方とない方のペア申し込みで半額になる「ペア割」が適用されます)
ゲスト:田所直樹さん(培養肉研究者、Shojinmeat Projectメンバー)
運営:一般社団法人ビーラインドプロジェクト(主催)、株式会社mitsuki(協力)
イベントのはじまりは、いつも通りボードゲーム「グラマ」の体験からです。四人で協力して成功を目指す、重さがコンセプトの見ても見なくても見えなくても楽しめるボードゲーム「グラマ」で、テーブルごとに仲を深めていきます。
グラマについて詳しくはこちら:https://blinedproject.org/whatwedo/development/gramma
グラマは、一人一人が異なる重さの袋を持って、相手のものに触らずにコミュニケーションをとり、同じ重さに合わせるゲームです。このグラマでは、深いコミュニケーションをすることがクリアに近づくため、それぞれの価値観や経験が様々な側面で表出します。今回は、基本ルールと発展ルールの二部構成で実施し、基本ルールでは「コンビニにあるもの」、発展ルールでは「やらかしの度合い」で実施しました。
基本ルールで印象的だったチームが、「コンビニにあるもの」というテーマで「稲荷寿司の重さ」と表現した女性でした。よくよく話を聞いてみると、いつもその方が食べている稲荷寿司は、おじいちゃんの稲荷寿司だそうです。そしてそれは、お豆腐やで買った油揚げに、パンパンにお米をつめるということで、だいぶ重かったようです。ですが、チームでしっかりと質問し合いながらコミュニケーションをとった結果、無事同じ重さになりグラマも成功していました!
発展ルールの「やらかしの度合い」では、「コーヒーだと思って飲んだら赤酢だったときのやらかしの度合い」と表現された女性の方がいらっしゃいました。結果、4人中2人は同じくらいの重さで、残りのもう2人も同じくらいでしたが、それぞれのペアでは全く別々の重さとなっていました。インタビューで話を伺うと、周りが想像していたよりもあまりやらかしていたとは感じておらず、「あっ、間違えて黒酢飲んじゃってた。まぁいいか」くらいのやらかしの度合いとして受け止めていたようです(笑)
ボードゲーム「グラマ」を通してアイスブレイクした後は、いよいよエナジードリンクの調合の時間です。今回のマニアゲストの田所さんは、培養肉研究者であり、A cultured energy drinkのプロジェクトリーダーとして活動されています。近年、漢方の効果がより科学的に証明されたこともあり、エナジードリンクを通じて、様々なスパイスや科学的体験をさらに日常生活に浸透させていくことを目指しています。今回のイベントでは10種類のスパイスから自分好みのスパイスを調合して、自分の悩みを解決するものや、自分の味や香りの好みに合わせたものなど、自分だけのオリジナルエナジードリンクを作ります。
調合体験のはじめには、田所さんからの10種類のスパイスのレクチャーがありました。スターアニスやクローブ、オールスパイスなど、それぞれのスパイスの効能や味、香りについて詳しく説明していただきました。例えば、シナモンは「リラックスしたい夜にぴったりな「癒し型」のシナモン」として、甘く、温かみのある風味があり、抗酸化作用、消化促進、血糖値安定の効能があるそうです。こうした説明を10種類全てのスパイスでしていただき、この後自分好みの調合を行いました。いただいた説明をもとに、それぞれで調合リストをつくります。「最近ピラティスにハマっているから、「活力アップ型」のジンジャーをメインにしよう」といった、それぞれの好みに合わせて調合する分量を考えていきます。
そして、自分好みの調合リストを作ったら、いよいよ調合体験です!
二つの列になって、スパイスを濃縮した液体をスポイトを使ってご自分で入れていただきます。多く使いたいスパイスは2本から3本分のスポイトの量の抽出液を入れ、サブのものは1本分を入れるなど、それぞれの調合リストにそってコップに入れていきます。黄色っぽいものや茶色っぽいもの、香りが強いものから比較的弱いものまで、それぞれの抽出液を入れていきます。
そして液体を自分のカップに入れたら、最後にシロップと炭酸を入れて準備完了!全員準備ができたら、全員で乾杯をします。
できたエナジードリンクは一つも同じもののない、異なる風味と味のするものとなりました。中にはお互いのものを飲み比べてみたり、香りの違いを楽しんでいる方々もいらっしゃいました。「朝飲んだらすごい元気になりそうな味」「ジンジャーエールにバニラの味をつけたような味」「たくさんスパイスを入れすぎて刺激の強い味」など、それぞれのエナジードリンクの美味しさや香りなどのご感想をいただくとともに、オリジナルの名前もつけていただきました。
テーブルごとに年齢層が固まりやすいように組ませていただいた今回のグループ分けですが、若い年齢層のグループの方がより様々なスパイスの種類と量を入れ、逆により大人の方々では、堅実にクラフトジンジャーエールやレモンサワーのようなエナジードリンクを作られていました。しっかり年齢層の違いが出ていてとても面白かったです(笑)
今回のイベントでいただいたご感想では、「とても楽しかった、次の抹茶の回も是非参加したい」「今度は陶芸の会もやってほしい」といったご好評のお声をいただきました。いくつかの晴眼者と視覚障害者のテーブルでは、初めて会ったのにも関わらず一緒に駅まで帰ったり、連絡先を交換している様子もあり、私たちとしても大変嬉しかったです。また、個人的に田所さんとはずっとコラボしたいと思っていたので、このような形で一緒に開催することができて嬉しく思います!
今回のイベントの結果から、視覚障害のある人とない人が同行援護を使って一緒に遊びにいく、という新しい遊び方によって、より楽しさで溢れるインクルーシブな社会を実現していける可能性を感じることができました。今回ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!とても楽しかったです!