• イベントレポート

見ても見なくても見えなくても楽しめるイベント「グラマ王国」で、年齢や視覚の状態が異なる人が一緒に遊ぶ体験

視覚の状態を問わずに一緒に遊べるボードゲーム「グラマ」の体験に過去最大規模の人数が参加

視覚の状態に関わらず共に楽しめるボードゲームの開発などをおこなう「Blined Project」(ビーラインドプロジェクト)は、「見ても見なくても見えなくても楽しめる」ボードゲーム「グラマ」を用いて、イベント「グラマ王国」を2023年4月1日に100BANCHにて開催しました。「グラマ王国」には、年齢や視覚の状態、福祉への関心も様々な40人もの方々に参加していただきました。

イベント開催の背景や当日の様子を、「Blined Project」リーダーの浅見幸佑がお伝えします。

 

「『#見ても見なくても見えなくても楽しめる』を増やして、一緒にワクワクする世界へ」

私たちビーラインドプロジェクトは学生8名で構成されている団体で、「『#見ても見なくても見えなくても楽しめる』を増やして、一緒にワクワクする世界へ」を理念に掲げ、視覚の状態に関わらずに楽しめるものの創出とその普及活動を行っています。

ビーラインドプロジェクトのロゴ

ビーラインドプロジェクトのロゴ

 

見ても見なくても見えなくても楽しめるボードゲーム「グラマ」とは?

私たちの取り組みの第一弾として「見ても見なくても見えなくても楽しめるボードゲーム グラマ」を2022年3月に開発し、4月にはクラウドファンディングを実施しました。「グラマ」は日頃あまり意識することのない「重さの感覚」と参加者同士の「コミュニケーション」、そして「想像力」を使って遊ぶゲームとなっています。

「グラマ」は4人1組で遊び、全員で「成功」を目指す協力型のゲームとなっています。それぞれ違う重さの巾着袋を配られた4人のプレイヤーが、手持ちの巾着袋の重さを「あるルール」に沿って互いに伝えあいながら、巾着袋の中の重りの数を調整し、全員の巾着袋の重さが同じになるように調整していきます。

最終的に、全員の巾着袋を「天秤」に載せ、「せーのっ!」の掛け声で一斉に天秤から手を離し、天秤が釣り合えば見事成功!巾着袋の重さがばらばらになっており、「ガシャーン!」と天秤が崩れてしまえば失敗です。

ボードゲーム「グラマ」のルールについて、詳しくはこちらの動画をご覧ください。

https://youtu.be/EQwLVZiCnDg

これまでに全国各地の視覚障害関連の団体様や盲学校、企業様でイベントを開催しました。2023年3月時点で、これまでに約1000人の方々にイベントでグラマを体験していただきました。

参考① グラマ クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/view/571309

参考② 視覚障害関連事業を行なっている株式会社mitsuki様と共催したイベントの記事

https://spot-lite.jp/blinedproject/

グラマのキャッチ画像。グラマに使う天秤と巾着袋の写真で、写真左上にはグラマのロゴもあります。

グラマのキャッチ画像。グラマに使う天秤と巾着袋の写真で、写真左上にはグラマのロゴもあります。

 

「グラマ王国」開催の背景

私たちが開発した「見ても見なくても見えなくても楽しめるボードゲーム グラマ」は、視覚の状態を問わずに誰もが同じように楽しめます。

また、参加者の視覚の状態を問わないこと以外にも、視覚障害のある子供とない子供が一緒に遊んで友達になることを背景に作られたこのボードゲームには、誰もが友達になれるように参加者が遊びの中から自然と多角的に自己開示をし、相互理解ができるように設計されています。

そのため、今回のイベント開催の目的は2つあります。1つは「見ても見なくても見えなくても楽しめる」体験をより多くの方々にも体験していただき、その喜びをさらに文化として広めていけるようにアプローチすることです。

そしてもう一つは、その相互理解による関係性の構築に強みのあるこのボードゲームを、視覚も年齢も性別も問わないだけでなく、どのようなイベント設計ができれば、大規模でも同時多発的に相互理解ができるのか、また友達になれるのかを検証したく、イベントの実施を決めました。

グラマ王国のチラシ

グラマ王国のチラシ

 

当日の様子

ここからは、「グラマ王国」の当日の様子をお伝えします!

当日は、まずルール説明を兼ねて基本的な遊び方でグラマをプレイをして頂いた後、徐々に「感情の度合いで巾着袋の重さを表す」ような難しいルールへと移行していきました。

イベントの後半では、グループに分かれてゲームの成功数を競う「トレードグランプリ」を開催し、グランプリの順位に応じて参加者の方々には商品としてお菓子を贈呈いたしました。

参加者の方々の属性も様々で、人数も過去最大規模となった今回のイベント。企画内容もしっかりと練って臨んだ私達でしたが、当日を迎えるまで皆さんにイベントを楽しんで頂くことができるかどうか、不安な気持ちでいっぱいでした。しかし実際にイベントが始まると、参加された皆さんのご協力も得つつ、これまでの体験会の中でも「最高傑作」と言えるような出来に仕上がったのではないかと感じています!

グラマの天秤から手を4人で離すときの様子。ドキドキです!

グラマの天秤から手を4人で離すときの様子。ドキドキです!

当日、印象に残った場面を2つ紹介いたします。

1つ目は、「やらかしの度合い」というテーマでグラマをプレイしたときのお話です。私が様子を見ていたあるグループでは、晴眼者の方と視覚障害のある当事者の方が混ざり合ってゲームをプレイしていました。

当事者の方が、自分の巾着袋の重さを「やらかしの度合い」というテーマに沿って、「白杖をついてバス移動をしている時、優先席に人が座っていることに気付けず、知らない人の膝の上に座ってしまった」というエピソードをお話されていました。

他の参加者の方が「これは相当な『やらかし』だ!」と考え、重さを調整するために巾着袋にたくさんの重りを詰めていましたが……、なんと結果は「失敗」。天秤は「がしゃーん!」と音をたてて崩れてしまいました!

このエピソードをお話されたご本人は、「日常の中のささいな失敗」と捉えており、実際にはあまり重くない巾着袋を持っていたのです!グラマのプレイを通して、「価値観の違い」の面白さを体験できた瞬間でした。

グラマの天秤が崩れて失敗してしまった後にチーム内で振り返りをしているときの様子

グラマの天秤が崩れて失敗してしまった後にチーム内で振り返りをしているときの様子

2つ目は、イベントの後半で開催した「トレードグランプリ」です。「トレードグランプリ」では、3グループに分かれて、それぞれのチームのグラマの成功数の合計を競いましたが、参加者の方々の「ノリの良さ」も相まって非常に盛り上がりました。

私たちビーラインドプロジェクトの普段の体験会では、「『勝ち』『負け』が存在しない協力型のボードゲーム」として「グラマ」を様々なルールでとにかく楽しんでもらうことを主眼において企画をすることが多いのですが、今回のように競争を盛り込むことも、全体的な「楽しさ」の向上につながることを実感しました。

「トレードグランプリ」での優勝が決まった瞬間には、ガッツポーズやハイタッチで喜びを表現する参加者の方々の様子を見ることができ、大変嬉しく思ったことを覚えております!

お互いの袋の重さを共有していただいているときの様子

お互いの袋の重さを共有していただいているときの様子

参加後にいただいたお声として、「TwitterやLINEの交換をして、今後も何かの機会に交流したいとお話ししました。」など、初対面でも連絡先を交換するまでに仲良くなられたという方が既にアンケートにご回答いただいた方の3分の1程度いらっしゃいました。まだまだ改善の余地はありますが、まずまずの結果だったのではないかと思っています。

また、中には「ポケットに映画のチケット入れたまま洗濯してしまったエピソード」を晴眼者の方が視覚障害のある当事者の方にゲームの中で共有した中で、その方が視覚情報をあたりまえにしていることに気がついて、はっとしたというご感想もいただきました。

最後の振り返りの時間で男性の方にマイクを持っていただき、全体に向けてご感想を共有していただいているときの様子

実際のお声をいただいて、相互理解による関係性の構築と視覚の状態の多様性に関する気づきを2時間のイベントの中でみなさんと生み出せたことを実感して嬉しかったです。

グラマが成功して参加者の方が喜んでいるときの様子

グラマが成功して参加者の方が喜んでいるときの様子

 

今後の展望

私たちの理念は「『#見ても見なくても見えなくても楽しめる』を増やして、一緒にワクワクする世界へ」です。

これまでは、視覚障害関連の団体様や教育関係の団体様にボードゲーム「グラマ」の体験会を開催してきました。60回以上の体験会をこれまで開催し、視覚障害のある人とない人の交流、ある人同士、もしくはない人同士の交流を生み出してきました。

そして今回、その「見ても見なくても見えなくても楽しめる体験」が広まっていく一つの切り口として、当事者の方に新しい形のエンターテインメントを提供できることを再認識できたイベントとなりました。

今後も「見ても見なくても見えなくても楽しめる」をより多くの場で生み出していけたらと思います!

改めまして、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

参加者のみなさんとビーラインドプロジェクトメンバーの集合写真。それぞれがグラマに使用する天秤や巾着袋などを持ち、会場のスクリーンの前で写真を撮りました。

参加者のみなさんとビーラインドプロジェクトメンバーの集合写真。それぞれがグラマに使用する天秤や巾着袋などを持ち、会場のスクリーンの前で写真を撮りました。

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メール:blinedproject@gmail.com

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