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文藝と祭礼の力で “そうぞう(想像と創造)”機会を拡張する:雨宮優(Ozone合同会社 CEO)

「自分自身が“まだこの世にない新たな世界観”を作品として作り続けることで、全人類のそうぞう(想像/創造)機会を最大化する媒体として存在する。それが、自分がこの世に生きる理由です。」

そう話すのは、GARAGE Program 18期生「KaMiNG SINGULARITY」の雨宮優(Ozone合同会社 CEO)。2019年1月に100BANCHに入居し、「体験作家」としてAIが神になった世界を体験芸術型のフェスティバルにする実験に挑みました。
その後も“無”音楽イベント「サイレントフェス®」や泥フェス「Mud Land Fest」など全国各地でスペキュラティブデザインとしてのフェスティバルをプロデュースしています。また、今年7月に開催した100BANCHの周年祭である「ナナナナ祭」ではコンセプトデザインを担当するなど、アートやエンターテインメント、教育、と様々な領域を横断して活動を続けています。

そんな雨宮が現在の活動、自身の複数の側面それぞれから見た100BANCHについて語りました。

雨宮優 Ozone合同会社CEO/体験作家

”無”音楽フェス「サイレントフェス®︎」”泥フェス”「Mud Land Fest」”風呂フェス”「ダンス風呂屋」”無音盆踊り”「Neo盆踊り」””などなど全国各地で”問い”としてのフェスティバルをプロデュース。

 

体験作家、クリエイティブディレクター、メディアアーティスト。自身の3つの顔

私は主に「体験作家」として活動をしています。仮想の世界の物語を小説として描き、その世界を現実の世界にフェスティバルという形式で具現化する作品作りをしています。100BANCHでは「KaMiNG SINGULARITY」という、AIが神になった世界をテーマにしたSF小説を書き、渋谷を舞台に現実のフェスティバルや体験にしていくプロジェクトをやっていました。

過去には全国各地で100本ほどフェスティバルをつくってきたので、いくつか紹介します。銭湯をダンスフロアにした「ダンス風呂屋」や、絶滅危惧種の動物たちを祀る「Neo盆踊り」など専用のワイヤレスヘッドフォンをお客さんみんなに配って、そこへDJの音楽を電波で届けて、どんな場所でも無音でイベントができるサイレントフェス®︎という形式でのイベントをはじめ、100BANCHでは「ASTRO PARTY」という七夕のお祭りやうどんを神にする「うどんセレモニー」をやったり、先に紹介した「KaMiNG SINGULARITY」などをやってきました。

それと並行して、Ozoneという会社を2016年に創業し、CEOとクリエイティブディレクターをつとめています。いつでもどこでもだれでもできる「未来型音楽体験」サイレントフェスを実施するための専用機材のレンタルや出張開催を行うSilent it事業や、SDGsそれぞれのゴールが終わった後世界をフェスとして表現する「ソーシャルフェス®︎」事業など、SDGs ×クリエイティブの領域を中心に様々な企業のクリエイティブディレクションを手掛けさせていただいています。 

また、趣味でメディアアートを作っていて、DJもやっています。自分のオフィス兼アトリエとして「逃げBar White Out」という場所を横浜につくって、たまにそこで作品制作をしています。

ということで、私は、体験作家、クリエイティブディレクター、メディアアーティストという3つの側面を持っています。100BANCHという場をどのように捉えているのか、3つの側面それぞれの視点から、お話したいと思います。

 

大抵の願いを叶えてしまう「魔法区」

まず100BANCHで採択していただき活動していたプロジェクト「KaMiNG SINGULARITY」についてお話しします。小説を書いてそれをフェスとして現実体験にし、その体験をもとにまた小説を書く、という一連の流れでできるものを「体験小説」と呼んでいるのですが、「KaMiNG SINGULARITY」はその処女作となった作品です。シンギュラリティというのは、AIが自らの意思でどんどん成長してそれが止まらなくなるような特異点のことで、2045年に来るのではないかと言われています。それが起きた後、どんな世界になっているんだろうか、とAIが神になった世界をSF小説で書きあらわして、それを現実の世界に顕現した3部作が「KaMiNG SINGULARITY」です。

「体験小説」の作品構造について説明します。まず小説として空想の世界を描きます。それを現実の世界にフェスとして顕現します。そしてそのフェスの中で身体的に味わった偶発的な現象を、同じ小説として追記・修正していく、という流れを3年繰り返し、そのフロー全体を1つの作品としていきます。小説という個人的な脳内の営みから、フェスティバルという不特定多数で共犯するランダムな営み、それをまた個人の脳内に反映させていくことを繰り返し、小説とフェスティバルの2つの作品作りを通してつくり上げていきます。小説はだいたい3部作として書いていて、それとフェスティバルを同期させています。小説の第1章を初年度のフェスティバルにし、第2章を翌年のフェスティバルにし、と繰り返しやっていく、この枠組み全てを1つの作品としています。

KaMiNG SINGULARITY」については、2019年には小説で描いた2045年の世界を渋谷ストリームホールで開催し、翌年2020年は2046年の世界を100BANCHで配信という形で開催。、最後は渋谷キャストにて、イマーシブシアター形式で表現しました。そんな感じで小説を書いて、フェスティバルを作って、と繰り返すわけなんですが、「KaMiNG SINGULARITY」は、人とAIと神というもののそれぞれの側面から見た関係性や、それぞれの役割、3つそれぞれ分離してるように見えて実は同じものかもしれない、といったところを描いていて、それぞれ章ごとに表現した作品になっています。

100BANCHでは他のプロジェクトと比べてメンバーの数がとても多かったのですが、そんな中で100BANCH2階を会議に使うことができ、とてもありがたかったです。2年目は会場として100BANCHを使わせていただきました。それ以外にもダイアログやアイデアソンなどのイベント会場としても重宝していました。

ということで、体験作家として見る100BANCHは、「やりたいことを、やりたい時に、やりたいだけ、実験させてくれる、未来のための実験区であり、大抵の願いを叶えてしまう魔法区」だと思っています。100BANCHの年に一度のお祭り「ナナナナ祭」などで「なせばなる」というのがキーワード的に言われていますが、100BANCHは本当になんでも叶う場所なんです。

 

作れないものはない、100BANCH

100BANCHの年に一度のお祭り「ナナナナ祭」では、クリエイティブディレクターとしていろいろと関わらせてもらいました。2019年は「コラボ」がナナナナ祭のテーマで、うどんくんと一緒にうどんを神にする儀式「うどんセレモニー」を作ったり、宇宙を生け花として表現するプロジェクトAstroIkebanaと一緒に「Astro Party」を開催したり、椎茸祭やおむすびなど4つのプロジェクトと一緒に「ねはんごはん」というニルヴァーナ的なご飯の時間をつくる企画をやったりしました。

2020年は「KaMiNG SINGULARITY」の第2章を100BANCHでやらせていただきました。2021年はコロナ禍で100BANCHがキャラバン的に全国をまわっていたのですが、私は名古屋会場でサイレントフェス的な企画をやらせてもらいました。2023年には全体のコンセプトデザインや空間のディレクション、合宿のナビゲーター、「Jungle Rave」 のイベント制作など、さらに色々と関わらせていただきました。

100BANCHは本当に宝の山だと思います。300以上の多くのプロジェクトがあって、しかもみんな100年後の未来を目指した形でチームを組んでいる、この資産たるや、という感じです。クリエイティブディレクターとして見ると、作れないものが本当にない場所だなあ、とすごく感じています。

 

アーティストにいい刺激をくれる場所

最後にメディアアーティストの視点から見た100BANCHについてお話しします。今回DESIGNART TOKYO 2023に参加して、100BANCHの2階で「Touch me」と「Pray me」という作品を展示しています。「Touch me-双生機-」は宙から檸檬を2つ吊るし、両方の檸檬に触れると死者の世界に繋がって死後の住人たちの声が聞こえてくるという作品です。「Pray me-再生墓-」はシークエンスした自分の全ゲノムをブロックチェーン上に保存し、ハードウェアウォレットに格納することで、自分の体の情報を改竄不能再生可能な状態で墓にするという作品です。未来の葬の形や、コード化された個人への祈りについて問いかけます。

過去には、OKTOBERFEST(オクトーバーフェスト)というイベントが100BANCHであり、その時には「KaMiNG SINGULARITY」でプロデュースした「サイバー神社」という作品を展示させていただきました。2礼2拍手1入力の作法で願い事をブロックチェーン上に入力し、その願いがロゴストロンという超音波の機械によって空間全体に発信され、周りの人の脳内にサブリミナル的に染み込んで願いが叶う確度を上げる、という神社です。

メディアアーティスト的には、100BANCHは「未知との遭遇や創発するインスピレーション」みたいなものがある場所だと思います。100BANCHに来ると2階の壁に入居中のプロジェクトが書かれたものが貼ってあって、これまで出会うことのなかった概念がずらっと並んでいて、これはなかなか都会の醍醐味だな、というか、100BANCH以外でこんなこと有り得ないよな、とも思います。アーティスト的にすごくいい刺激をくれる場所です。

 

感謝と祈りを感じる場所。

総括するとアメミヤユウ的に100BANCHっていうのは、こんな感じです。

100BANCHに関わっていると、感謝と祈りみたいなものが出てくるんです。これが無料で利用できるの、100BANCH、やばくないですか。ナナナナ祭までやっていて。本当に100年後の未来にこれだけ投資している環境というのは、すさまじい尊さがあって、今後も永久に続いてほしい、という祈りを100BANCHに対して感じています。

 

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