楽しさの垣根のない場をつくることで、 障害を生み出さない社会を目指したい
Blined Project
楽しさの垣根のない場をつくることで、 障害を生み出さない社会を目指したい
「見える・見えにくい・見えない」といった視覚の状態に関わらずみんなが楽しめるボードゲーム開発などに取り組むビーラインドプロジェクト(Blined Project)。
ナナナナ祭2023では「見ても見なくても見えなくても楽しめるゲーム広場」をつくり、ビーラインドプロジェクトが目指す「見える人も見えない人も見えにくい人も楽しめる世界」の一端を多くの人に感じていただくことができました。そこから得られた学びや当日までの準備過程について、本レポートでお伝えします。
こんにちは、ビーラインドプロジェクト(Blined Project)のリーダーの浅見幸佑(こーすけ)です!
私たちビーラインドプロジェクトは、『「#見ても見なくても見えなくても楽しめる」を増やして、一緒にワクワクする世界へ』を理念に活動をしている団体で、具体的には視覚の状態を問わずに楽しめるボードゲームなどのプロダクト開発やイベント事業、研修事業を行っています。視覚障害のある人もない人も楽しくフラットに関わっていくための物と場と人がもっともっと増えていったらいいな、という思いを掲げて活動しています。
今回のナナナナ祭2023で私たちビーラインドプロジェクトは、昨年開発した『見ても見なくても見えなくても楽しめるボードゲーム「グラマ」』の体験ブースと、今回のナナナナ祭に向けて開発を進めてきた新たなゲーム二つ「スパイグルメ」と「しりとリズム」のプロトタイプの体験ブースを設置しました。
このナナナナ祭では、多くの方々にボードゲームを体験していただく中でいただいたお声による学びだけでなく、このナナナナ祭に至るまでの過程でも沢山の学びがあったので、本レポートではそれぞれの視点からまとめていきたいと思います。
ナナナナ祭でブースを出展したときの写真。来場者の方が入ってきたときにグラマのブースが正面となり、その横に新しく開発したボードゲームの体験ブースとなっています。
おっと失礼しました。ボードゲーム「グラマ」の説明をここでさせてください。
私たちビーラインドプロジェクトは、昨年の4月に初版が完成したボードゲーム「グラマ」を使ったイベント開催をここ1年近く行ってきており、実に60回以上のイベントで1200人以上の方々に体験していただいてきました。
簡単にボードゲーム「グラマ」の遊び方についてもご説明させていただくと、「グラマ」は日頃あまり意識することのない「重さの感覚」と参加者同士の「コミュニケーション」、そして「想像力」を使って遊ぶゲームとなっています。
グラマの画像。十字型の天秤と小さな巾着袋があります。
「グラマ」は4人1組で遊び、全員で「成功」を目指す協力型のゲームとなっています。それぞれ違う重さの巾着袋を配られた4人のプレイヤーが、手持ちの巾着袋の重さを「あるルール」に沿って互いに伝えあいながら、巾着袋の中の重りの数を調整し、全員の巾着袋の重さが同じになるように調整していきます。
最終的に、全員の巾着袋を「天秤」に載せ、「せーのっ!」の掛け声で一斉に天秤から手を離し、天秤が釣り合えば見事成功!巾着袋の重さがばらばらになっており、「ガシャーン!」と天秤が崩れてしまえば失敗です。
もっと詳しくボードゲーム「グラマ」のルールについて知りたい方はこちらの動画をご覧ください!
おもしろそうだな、と思った方はまたイベントを実施するので、是非その際に足を運んでいただけますと幸いです。
今回のナナナナ祭ではグラマの体験ブースをただ設けるだけではなく、新しい「見ても見なくても見えなくても楽しめる」ゲームの開発に着手をすることにしました(汗水はあまり垂らしていないかもしれません)。
私たちビーラインドプロジェクトが望む、今後の未来としては「見ても見なくても見えなくても楽しめる」物と場と人で溢れ、循環する社会です。そのための大切なアプローチの一つとして、見ても見なくても見えなくても楽しめるものを外部の人と一緒に生み出していきたいと考えています。一緒に作っていく人たちを「見見見クリエイター」(見ても見なくても見えなくても楽しめるものを作っていく人たち)と呼び、今回の開発プロジェクトには大学生4名を外部から集めました。そして彼ら4名と代表の私、浅見と開発チームを組んでプロジェクトを5月1日にスタートしました。
実際に100BANCHで集まってミーティングをしていたときの初期の様子。最初の頃はコンセプトをまずは固めるために、インプットを重ねつつ、2人と3人に分かれて企画書を作って壁打ちしまくっていました。
ナナナナ祭を一つのマイルストーンとしてトライし始めた今回の開発プロジェクトは、外部の方々と開発を進めるまさに第一回目の試みでした。隔週でボードゲームカフェに訪れてインプットをしたり、視覚障害関係のイベントに参加しに行ったり、開発ミーティングで毎週オンラインか対面で集まったり、合宿を行って集中的に企画書を作ったり。そういった開発のプロセスを今回新しく加わった「見見見クリエイター」の4名の方々とともに辿っていきました。
そして最終的に今回プロトタイプとして完成したのが、見ても見なくても見えなくても楽しめるボードゲーム「スパイグルメ」と見ても見なくても見えなくても楽しめるパーティーゲーム「しりとリズム」でした。
開発チームで企画合宿を行ったときの写真。プロトタイプで色々と作ったものやインプットのために持参して体験したボードゲームを手に写真を撮っています。めっちゃ楽しかったです!
ここからは、ナナナナ祭での二日間で実際にボードゲームを遊んでいただいた時の様子を紹介したいと思います。
まずは見ても見なくても見えなくても楽しめるボードゲーム「グラマ」。
グラマは昨年からも体験会を通して多くの方に遊んでいただいてきましたが、ナナナナ祭という大規模なイベントで150人以上に体験していただく機会は大変貴重だったと感じております。以前から改良を重ねてきたこともあり、参加者の方からは「洗練されていて、完成度の高いゲームだった」とご感想をいただくことができました。また、中にはグラマを楽しんでいただいただけでなく、ビーラインドプロジェクトの理念にも関心を持ってくださる方がいらっしゃいました。普段はリーチに入りにくい晴眼者の方々にも私たちの活動を知っていただくことができた点でも、大変収穫の多い二日間となりました。
グラマを体験していただき記念撮影をパシャリ。お二人ずつで訪れていただき、初めてお会いしたのにも関わらず、グラマで成功して大変仲良くなられていました!
一方で新しく開発した二つのボードゲームは、プロジェクトメンバー以外の多くの方に初めて遊んでいただく機会となりました。
一つ目の新作ボードゲームは、見ても見なくても見えなくても楽しめるパーティーゲーム「しりとリズム」。これはリズムに乗ってしりとりをするだけのシンプルなゲームではありません。文字数縛りやテンポアップなどの変化球も取り入れることで、頭は常にフル回転です。時にはyeah!とかけ声も出しながら、みんなで盛り上がります。コンセプトの通り、しりとリズムで遊ぶと初対面のプレイヤー同士でもパーティーのようにノリノリになってゲームを楽しむことができました!最初は少し恥ずかしがっていたお客様から「やってみると楽しかった」とご感想をいただいた時は特に嬉しかったです!一方で初めての実践を通して、ルール説明やアイテムの扱いやすさなどの観点から、新たな改善点を見つけることができました。
しりとリズムをしているときの様子。リズムに合わせて手や首を動かしながら高速でしりとりをしていきます!YEAH!
もう一つの新作ゲームは見ても見なくても見えなくても楽しめるボードゲーム「スパイグルメ」。カタカナの暗号を五十音順に1、2文字ずらして解読すると、ある料理名を導き出すことができます。その暗号をより素早く解読できた人に得点が入るという、対戦型のゲームです。ルールは一見単純ですが、いざやってみるとなかなかすぐに答えが出ません。難しさの分だけ、解読できた瞬間に爽快感をが得られるのがこのゲームの魅力です。「シンプルなのに難しい」という特性から、年代問わず、あらゆる方に楽しんでいただくことができました。また、中には圧倒的なスピードで才能を顕にする方もいらっしゃいました。逆転ができるようなルール作りなど、ゲームにもう一捻り入れることでより味わい深いゲームに改良することができそうです。
スパイグルメの説明をしているときの様子。大学生の年代の方々を中心に5名で遊んでいただき、白熱したバトルとなりました!
ナナナナ祭を迎える前は参加者の方々にボードゲームを楽しんでいただけるかドキドキしていましたが、当日は多くの方と盛り上がることができ、達成感でいっぱいになりました。それと同時に多くの方から生のフィードバックをいただくことでボードゲームの新しい改善点も見つけることができ、さらに良いゲームを作っていくための貴重な学びも得ることができました。
いただいたフィードバックを踏まえて改善を加えながら、今後さらに製品化を目指していきます。
普段イベントを頻繁に開催している私たちですが、ここまで多くの方々が訪れた場所で様々な検証をすることができた場として、今回のナナナナ祭は大変貴重な機会となりました!
視覚障害のない方だけでも非常に楽しんでいただけるインクルーシブデザインのボードゲームとしてのグラマの良さを多くの方に知っていただけたのではないかと思います。
また、開発中のボードゲームについても多くの方々からフィードバックをいただくことができました。今後は「見ても見なくても見えなくても楽しめる場」を生み出していくだけでなく、今回のナナナナ祭を機に、一緒に楽しめる「もの」を増やす開発の活動にもより一層力を注いで参りたいと思っています。
『「見ても見なくても見えなくても楽しめる」を増やして、一緒にワクワクする世界へ』という私たちの理念を胸に今後も活動を続けて参ります。
今後ともビーラインドプロジェクトを何卒よろしくお願いいたします!
ビーラインドプロジェクトメンバー8人の集合写真。今後ともよろしくお願いいたします!