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100年先の未来を描く7プロジェクトが登壇 2023年5月 GARAGE Program実験報告会

100BANCHで毎月開催している、若者たちが試行錯誤を重ねながら取り組んできた“未来に向けた実験“を広くシェアするイベント「実験報告会」。

これからの100年をつくるU35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」を終えたプロジェクトによる100BANCHでの活動報告や、100BANCHでの挑戦を経て、プロジェクトを拡大・成長させた先輩プロジェクトによるナビゲータートークを実施しています。

2023年5月23日に開催した実験報告会では、昆虫を使ったコース料理やコオロギラーメンを提供するレストランANTCICADAを経営、GARAGE Program 11期生「Cricket ramen」の篠原祐太(ANTCICADA 代表)をナビゲーターとし、GARAGE Programの計7プロジェクトが活動を報告しました。

本レポートでは、GARAGE Programの7プロジェクトの発表内容をお伝えします。

MORINOEBI

次世代の海老、モリノエビで昆虫食のおいしさを再定義する

登壇者:若林 快卓

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/morinoebi

「MORINOEBI」は、「次世代の海老、モリノエビ(森の海老)」というネーミング、概念を通じて、昆虫が苦手な人でも食べられるよう、昆虫食のおいしさを再定義するプロジェクトです。

若林:実はぼく自身は昆虫が苦手ですが、将来のことを考えて必要だと思い、昆虫をおいしく食べるにはどうしたらいいか考えてきました。サステナブルな食べ物がおいしく食べられたらいいのですが、無理をして食べる人の表情がサステナブルではないと課題に感じていました。そこで、昆虫を自分の好きなエビとして捉えられれば、無理なくおいしく食べられるのではないか、と考え「モリノエビ」の絵本とチップスをつくりました。実際に2枚セット50円の商品を1日で120枚を完売することができ、手応えもありました。しかし、メンターの桐村先生と話す中で「サステナブルでは足りない、リジェネラティブを目指そう!」という言葉をいただき、感銘を受けました。プラスマイナスゼロなサステナブルでなく、プラスを生むリジェネラティブを目指したいと思うようになりました。苦手な昆虫食にとらわれず、おいしく食べれば食べるほど地球が再生するものを作りたいと考えました。そこから、大好きなエビの、エビフライで地球が再生する料理をつくろうと方向転換しました。今後は「エビフライから拡張する」という意味の「海老フライオーギュメンテーション」を掲げてプロジェクトを進めていきます。

「本日も(大分県)中津市長とお会いすることがあり、プレゼンをしてきました。まだまだ再生食までは程遠いのですが、海老フライオーギュメンテーションで地球を再生する食を目指して行きたいです。」と若林は意気込みを話しました。

 

DEW

線香花火のような照明DEWを世界に届けたい

登壇者:高橋 良爾

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/dew

「DEW」は、部屋に置くだけで日本庭園を持っているかのように感じられる、線香花火のような照明DEWを設計・製造し、一般販売を行うプロジェクトです。

高橋:ぼくは長崎出身で、上京したときにワンルームマンションでも庭を持っている感覚になれる家電をつくりたいと思っていました。それを実現したのが「DEW」です。「現代のししおどし」として、アロマウォーターを使った水滴が一定リズムで落ちていくLED照明です。

実は「DEW」自体は100BANCH入居以前からつくっていたのですが、量産して売って欲しいという方が現れたことがきっかけで100BANCHに応募しました。一点ものだったらできるのですが、自分の実力では量産が難しく、勉強中です。メンターの小川さんにメンタリングを受けたり、パナソニックさんに訪問して問題の指摘をいただいて設計をやり直したり、要件定義の仕方を教えてもらいました。当初の自分の設計レベルとは違いすぎる状況のものを組んでいて、今後は量産を進めていきたいです。量産にあたり、東京都のコンテストで採択され、1,000万円の獲得が決まりました。1年間で絶対に使い切ろうと思っています。実際に都の支援施設で3Dプリントで出力してみると、樹脂だけでもいいのかなとか、つまみで光量を調整できたらより良いものになるかな、など気づきもありました。直近は、この量産版のプロトタイプをナナナナ祭で発表することを目標にしています。

「今後、DEWだけにとどまらず、自然の現象に関心を寄せて自分に集中する状態をつくっていけるような製品のブランドをつくれたらいいなと思っています。DEWみたいなものを2、3個つくって展開していきたいです。」とこれからの展望について高橋は話しました。

 

A cultured energy drink

培養肉技術から生まれた、身体を育む培養液エナジードリンクをつくる

登壇者:田所 直樹

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/a-cultured-energy-drink

「A cultured energydrink」は、培養肉の技術とエナジードリンクをかけあわせた培養液エナジードリンクをつくり、飲んで健康になるだけでなく、その可能性を広めることでバイオ研究に興味をもってもらうなど、裾野を広げていくプロジェクトです。

田所:培養液は細胞を増やす液体で、広く細胞研究者の間で使われてきました。例えば、牛の血液から細胞をとってきて培養液を与えると細胞が増殖して培養肉ができます。しかし、培養液は高価で、一般の方が研究のために入手するのは難しいのが現状です。そこで私たちはDIY培養液をつくりました。アマゾンで購入できる原料だけでつくれ、安価で飲用可能です。某レシピサイトにつくりかたも掲載しています。しかし、実際に飲んでみると味はあまりおいしくなくて、それでつくった培養肉が果たしておいしいのかと疑問に感じました。もっとおいしく新しい培養液をつくろうと、培養液をエナジードリンクにすることに決め、100BANCHで調合・試飲・改良を重ねました。植物の力も活用し、様々なスパイスからエキスを抽出して加えたり、改良を繰り返しました。先月ついに、ベータ版の赤いエナジードリンクが完成しました。コーラの味がしておいしいです。

田所:現在、「細胞レベルで健康になれる日本初のエナジードリンク」であるという思いを込めたロゴを制作中です。従来のエナジードリンクは、カフェイン、ブドウ糖による覚醒作用や炭酸による爽快感、香料による差別化などが特徴的ですが、私たちの培養液エナジーリンクの魅力はたった一言で表せます。「細胞培養できるぐらい細胞に良い」、そんなエナジードリンクです。このドリンクは飲んで終わりではありません。培養肉をおいしくする研究や、スパイスから細胞に良い成分が新しく見つかる可能性、そして、培養液エナジードリンクを知ることで、新たなプレイヤーや分野の発展につながることを期待しています。

「プロジェクトは延長し、8月にある大きな学会での発表を目指しております。また100BANCHに入ったのをきっかけに、色々なメンバーと実際の製造を目指してみようと声もあるのでそちらもやっていきたいです。」と田所は話しました。

 

Greenjack!

人と緑のつながるランドスケープ:️Foodscapingで都市のグリーンを再創造する

登壇者:Shinozaki Robyn Natsuko

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/greenjack

「Greenjack!」は、Foodscaping(FoodxLandscaping)で五感を刺激する緑の場を生み出し、都市部での緑の可能性を再創造していくプロジェクトです。

Robyn:私はグリーンネイバーズという、自然や人とのつながりを感じられる都市生活の未来へというビジョンを掲げた日本初のフードスケーピング事業者として活動しています。きっかけは、シンガポールで働いているときにフードスケーピングに出会ったことです。日本にはまだないコンセプトだと思い、去年帰国して事業をはじめました。内容としては、フードスケープの施工や導入後のプログラム化・企画のサービスをしています。造園・グリーンというのはトラディショナルで新規参入は厳しい世界です。そのため、去年から愚直に商談を続けて小さく実装しましたが、フードスケーピングで私たちの世界観を自由に表現したいと思い100BANCHに応募しました。100BANCHでやろうとしていることは、1日限定のポップアップ展示で、グリーンを載せたトラックで街角をジャックする「Greenjack!」です。ビルが立ち並ぶ都市の中で五感を使ってグリーンを楽しむことがテーマです。五感で楽しめるグリーンを探索して選んだり、植物・生物のボディーペイント、トラックの上でのミニバージョンのFoodscapingのワークショップなどを考えてきました。場所も色々探し、新虎通りに森ビルさんが新しく企画した「ほこみち」というスペースでご一緒させていただくことになりました。イベントは6月4日に開催します。準備をするにあたり、1日かけて自在に変化する様子をどんな配置で表現するかを考えたり、当日盛り上げてくれるサポーター・仲間を探したりしています。

「Greenjack!のみならず、これからもいろんな街に展開できるようなグリーンを、面白くインタラクティブに作っていきます。ぜひ活動に応援や参画いただけるとうれしいです。」とRobyn は話しました。

 

OHITORI SAMA SMILE PROJECT

おひとりさまでも生きやすい社会をつくりたい

登壇者:山下 愛香

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/ohitori-sama-smile-project

「OHITORI SAMA SMILE PROJECT」は、渋谷区の飲食店に「おひとりさま歓迎」と書いたステッカーを貼ってもらう活動を通じて、もっとひとりでも気軽にご飯や飲みに行ける、おひとりさまでも生きやすい社会をつくるプロジェクトです。

山下:私の活動は、渋谷区の飲食店を回って許可をいただき、お店にステッカーを貼る活動です。以前、某大手旅行サイトのステッカーを、飲食店に貼ってもらう飛び込み営業のアルバイトをした時に、よく貼っていただきました。ですが、お寿司屋さんだけは、景観を損なうからと貼らせていただけませんでした。そこで、今回のプロジェクトでは、和風のステッカーを作って貼ってもらいやすくしようと考えました。また、当初はステッカーを貼るだけでいいと思っていましたが、ステッカーのあるお店に実際に入ってみたらカップルばかりで寂しい思いをしたとか、話しかけられたくない、1人の時間を楽しみたい、という需要もあることに気づきました。そこで、落ち着いた時間を過ごせるお店なのか、気軽に会話が楽しめるお店なのか、ステッカーでわかるように工夫しました。

山下:現状、ステッカーの制作に時間がかかってしまったため、延長した3ヶ月でステッカーをお店に貼る活動をしていきます。

「最初は『おひとりさま歓迎』という言葉をメインにステッカーを作ろうと思いましたが、もっと楽しい印象にしたり、渋谷に多くいらっしゃる海外の方にも伝えられたらいいなと思い、『ソロッと』という造語をつくりました。ソロっと過ごせるお店です、ソロっと会話も楽しめますという意味です。これから、ステッカーにして貼っていこうと思います。」と山下は話しました。

 

Trash Lens

かざして探そう!モノの新たなスタートライン

登壇者:山本 虎太郎

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/trash-lens

「Trash Lens」は、モノを手放そうとしている人が、そのモノをスマホで撮影するだけで処分・活用方法を提示するアプリを提供することで、適切な処分や活用法を調べるハードルを引き下げ、より良いモノのスタートラインを選べるようにするプロジェクトです。

山本:100BANCHの3ヶ月のうち、1ヶ月目の終わりから、100BANCH内で実証実験をはじめました。100BANCHにあるゴミ箱の上に、アプリのインストールを促す動画を流して、実験参加者を募ったところ、何十名かが参加してくれました。この実験では、「子育て世代は重宝しそう!」や「こんなシチュエーションですごく便利そう」など具体例を交えて教えてもらった一方、「何を目的としているかわからない」や「楽しさが足りない」などの意見もいただきました。当初はごみの分別方法の提供のみに機能を制限していたので、今後は手放すモノに価値を創造する流れを作って、受け止め方にどう変化があるのかを引き続き調査していきます。

山本:また、色々と寄り道もしました。ハンズフリーでゴミの分別がわかるようになればすごく便利じゃないかと思い実際に作ったりもしましたが、結果的にプロジェクトが目指す世界観を実現するものではないとボツになりました。しかし、プロジェクトで何を目指すのかを考え直す良い機会となりました。

「生活の中に『Trash Lens』があることによって、誰もがカンタンに、意識することなく、より良い資源活用を行える世界にする、そのような取り組みを続けていきます。」と、山本は今後について話しました。

 

Landaisle

「議論」を再設計。新しい言論のプラットフォームの発明で、社会に新しい議論文化を

登壇者:中村 賢汰

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/landaisle

「Landaisle」は、現代社会に最適化された議論形式の発明・システム設計によって新たな言論のためのオンラインプラットフォームを創出し、大衆の言論をあるべき形へ導こうというプロジェクトです。

中村:100BANCHでは、議論のシステムのデザインと開発、そのための実験をしたいと思い、6ヶ月間の活動をしてきました。具体的には「Bubble」というノーコードツールを使ってプロトタイプを開発し、オンライン上でみんながどう議論をしているかを可視化するという構造の分析を行ってきました。そこでいろいろと面白い発見がありました。最初はSNSでの口論のような議論の多くは、攻撃性みたいなものがモチベーションになっていると思っていました。ですが、議論してヒアリングすると「知らなかったこと」をメタ的に知ることができる楽しさがあってそれがとても驚きでした。しかも、議論にあたって、お題について色々と調べるプロセスも生まれました。例えば、何かの社会課題をみんなに知ってもらいたいと思ったときに議論を投げかけるといった活用ができるのでは?という発想が浮かびました。また、「対立と同調」で議論が白熱するのですが、これは諸刃の剣で、対立が過剰になりすぎたり、同調がすぎると意見が過激化してしまうことがあり、2つをバランスよく折り混ぜる構造が必要だと気づきました。さらに、そもそも議論はやっているうちに意見が変わっていく、という前提で構想することが必要だとも気づきました。

「今後の展望としては、議論の相互理解を深めるという側面を活用して、いろんな人がお互いに理解し合える場所としてつくっていき、そのデータを社会に活用できるようにしたいと思います。もっと円滑に議論できるよう、適切な意思決定ができる社会がつくれるよう、言論・メディアを再設計したいと思います。」と中村は締めくくりました。

 

実験報告会の各発表内容はYouTubeでもご覧いただけます。

MORINOEBI https://www.youtube.com/watch?v=god68Qj10nU

DEW https://www.youtube.com/watch?v=HnDOHMN6txI

A cultured energydrink https://www.youtube.com/watch?v=uiJhI2-H2fI

Greenjack! https://www.youtube.com/watch?v=kSwSdewGQI4

OHITORI SAMA SMILE PROJECT https://www.youtube.com/watch?v=xj4loAadPeQ

Trash Lens https://www.youtube.com/watch?v=u885d0QRqJk

Landaisle https://www.youtube.com/watch?v=B_Xq76IlUGk

次回の実験報告会は6月22日(木)に開催。ぜひご参加ください!

 

(撮影:鈴木 渉)

<次回実験報告会>

「植物の力を給ぶ、得る。」100BANCH実験報告会

【こんな方にオススメ】
・100BANCHや発表プロジェクトに興味のある方
・GARAGE Programへの応募を検討されている方

【概要】

日程:6/22(木)

時間:19:00 – 21:30 (開場18:30)

会場:100BANCH 3F

参加費:無料(1ドリンク付き)

参加方法:Peatixでチケットをお申し込みの上、当日100BANCHへお越しください

詳細はこちらをご覧ください:https://100banch.com/events/46881/

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