• イベントレポート

100年先の未来を描く6プロジェクトが登壇 2023年3月 GARAGE Program実験報告会

100BANCHで毎月開催している、若者たちが試行錯誤を重ねながら取り組んできた“未来に向けた実験“を広くシェアするイベント「実験報告会」。

これからの100年をつくるU35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」を終えたプロジェクトによる100BANCHでの活動報告や、100BANCHでの挑戦を経て、プロジェクトを拡大・成長させた先輩プロジェクトによるナビゲータートークを実施しています。

2023年3月23日に開催した実験報告会では、言語の壁を超えて様々な人と繋がり、通じ合い、笑いあえる社会の実現を目指して活動するGARAGE Program 8期生「IGENGO Lab.」の菊永ふみ(一般社団法人異言語Lab. 代表)をナビゲーターとし、GARAGE Programの計6プロジェクトが活動を報告。菊永の第一言語である手話の同時通訳付きで発表を行いました。

本レポートでは、GARAGE Programの6プロジェクトの発表内容をお伝えします。

KOTONI LABO

ロボットのいる日常をデザインする

登壇者:菅原 真実

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/kotoni-labo

「KOTONI LABO」は、人の生活空間に適した見た目と機能をあわせ持った卓上コミュニケーションロボット、KOTONI(コトニ-)の開発を通じて、ただ効率的で生産性の高い未来ではなく、アトムの漫画のような、人とテクノロジーが共存するやさしい未来を実現していくプロジェクトです。

菅原:100BANCHでの活動で、まずはプロトタイプ1号機を完成させることができました。入居した当初は1つもできていない状態でしたが、みんなで協力して完成させました。簡易的な動作やコミュニケーション、 顔、表情の読み取りなどができます。

菅原:さらに、100BANCHの2階・GARAGEでKOTONIの展示もさせていただきました。みなさんにお話をしてもらったり触れ合ったりしてもらい様々なフィードバックや感想もいただきました。会話に混ざってきて微笑ましい雰囲気になる、かわいいデザインで日常生活にフィットする、机に置いて話しかけたいなどうれしいお声をいただきましたが、一方で聞き取り性能が良くないとか、会話内容がちぐはぐ、環境音に反応してしまうといった問題点も浮き彫りになりました。また、私たちのプロジェクトが「Tokyo ものづくり Movement」のファイナリストに選ばれました。そのため、もともと3月はクラウドファンディングを予定していましたが、急遽予定を変更して、動画や写真、資料などの準備に費やしました。

「3カ月の延長を決め、次なるステップに進んでいく予定です。 4月にはみなさまからのフィードバックを元に、かわいく洗練された見た目で話しやすくユーザビリティの高い2号機の完成を目指します。5月には開発キットのクラウドファンディングを予定。6月には「ロボットのいる日常」をテーマにした展示会を開催し、私たちの世界観や考えている未来をみなさんに知っていただくイベントを開催したいです」と菅原は話しました。

 

RINGO PAY

電子マネー時代の財布ファッションブランドをつくりたい

登壇者:高橋 良爾

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/ringo-pay

「RINGO PAY」は電子マネー時代の財布を、非接触ICカードをつかって、ファッショナブルで100年先まで続く電子財布のスタンダードデザインを作るプロジェクトです。

高橋:100BANCHでは3つの目標を立て、この6カ月間でなんとか実現することができました。まず、いろいろな工場に検討していただいて、自作チップを発行させてもらい、オリジナルの決済リングをつくることができました。2回のクラウドファンディングを実施したのですが、100BANCHの中で自分で一生懸命梱包や発送作業をし、支援くださった方に製品を無事お届けすることができました。ほぼ1人メーカーという肩書きで活動しているものの、いろいろな団体の方に応援していただいてなんとか販売までできました。

高橋:また、投資家の方にお話をいただいたりすることも新たに経験させてもらいました。販売についてはクラウドファンディングを実施するとともに蔦屋家電さんで接客ログ等をとっていただいていろいろな意見をいただいたのですが、少しサイズが大きいとか色が絆創膏みたいだというデザインの課題が見えてきたので、今後はブラックのモデルも販売していこうと思っています。販売に関してはECサイトも制作し、SNSの投稿から誘導してきました。Amazonの販売ページも無事オープンすることができて実際にいくつか売れました。

「現時点でRINGO PAYの製品は世の中に200個くらいしかありませんが、今後は表参道で展示をしたりしながら、さらに商品を作り広げていくことで、身の回りでRINGO PAYを使っている人を自分の目で目撃できたら最高だなと思っています」と高橋は話しました。

 

CACTUS TOKYO

ファッションブランドを媒体に人と自然や社会が繋がり、 共生する文化を育てていく

登壇者:熊谷 渓司

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/cactus-tokyo

「CACTUS TOKYO」は、サボテンレザーの革小物ブランドをたたき台に採用し、「サーキュラーエコノミーを実現する事業の構想」と「それを社会に実装するための、顧客目線で価値あるサービス設計」を探求するプロジェクトです。

熊谷:100BANCHでは「植物由来のレザーブランドを使って、もっとユニークで、環境問題に対して活動してるからこそできることをしたい」と考えて色々な企画をしました。しかし、それはとても難しいことが分かりました。企画をひとつずつプロトタイプ検証していったのですが、ダメだったなってことで全部つぶしていきました。そこに共通する原因は、そもそもファッション市場においては、サステナビリティ等、いかに共感できるビジョンがあっても、まずはデザインと機能性が絶対に必要だということです。購買判断をする時に最初の足切り条件として、デザインと機能性が明確にユーザーの中にある、ということをインタビュー等を通じて痛感しました。そこで、今後はプロダクトデザインに力を入れようと考え、チームに正式に本業のデザイナーを加え、クリエイションを本格始動しています。また、素材も自分たちで納得できるものを使いたいので、素材も共同開発や自分たちで開発するという動きをはじめました。資金に関しても、これまでは自己資本だけだったのですが、100BANCHの活動期間中に融資を受けることができたので、プロジェクトをスピードアップしていきたいと思っています。

「これまでの100BANCHでの学びを活かしたプロダクトや、リブランディングしたブランドを6月に、ローンチする予定です」と熊谷は話しました。

 

Online Yomikikase YOMY!

いつでもどこでも最高のコミュニケーションを 対話型オンライン読み聞かせYOMY!

登壇者:安田 莉子

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/online-yomikikase-yomy

「Online Yomikikase YOMY!」は、オンラインでインタラクティブな絵本の読み聞かせ体験の提供を通じて、子どもたちの考える力、伝える力などを伸ばし、その可能性を広げていこうとするプロジェクトです。

安田:100BANCHに参加した当初はまだサービスもできていませんでしたが、3カ月前にプレサービスを開始し、コンテンツの質の向上だったり、忙しい子育て世代に優しいUIを目指して進んできました。最初は時間の設定もなかったのですが、限られた25分間でどういう内容を届けたいか、あいさつタイムはどうやったら盛り上がるか、などの議論から始め、いまでは絵本クイズやワークを行うようになりました。アプリの提供も開始し、実際の保護者の方の声を聞いて、どうしたらもっと便利に簡単に使えるかというのを試行錯誤し、メンターとして参加してくださっている石戸先生にも監修いただきながら、より高い質の読み聞かせを届けられるようにブラッシュアップしてきました。オンラインイベントも開催し、たくさんの保護者の方が参加してくださいました。4月には100BANCHで、東京学芸大学の正木賢一先生とコラボレーションして、子供たちに絵本の読み聞かせ+芸術に触れてもらえるイベントを開催します。また、絵本のクリエイター向けのアプリを開発したり、新しい絵本とコラボレーションしたりすることもできました。読み手に関しても、本格的にカリキュラムを終えた読み手の人たちに4月から参加していただきます。

「先日『大学SDGsACTION! AWARD』にも参加させていただき、これから自治体とも一緒に絵本を作っていくことが決まりました。SDGsとYOMY!のかけあわせも相性がいいなと感じ、新しい教育やジェンダーなどにも配慮した絵本をいろいろな子どもたちに届けたい。そんな思いも持ちながら、どんどん活躍の場を広げていきたい」と安田は話しました。

 

Blined Project

楽しさの垣根のない場をつくることで、 障害を生み出さない社会を目指したい

登壇者:浅見 幸佑

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/blined-project

「Blined Project」は晴眼者(見える人)と視覚障害者(見えない人・見えにくい人)の間にある「分断」に対する問題意識から、視覚の状態に関わらずみんなが楽しめるボードゲームの開発と、「楽しさ」をテーマに社会の障害理解を進めるコンテンツ開発に取り組むプロジェクトです。

浅見:昨年の4月頃に、見ても見なくても見えなくても楽しめるボードゲーム「グラマ」を作りました。100BANCHでは、グラマをどうやって広めていくか、次にどう進んでいくかと考えて動いていく期間で、組織拡大、グラマの無償配布、商品化、企業研修の事業化、法人登記という5つに取り組んできました。

浅見:組織は5人から8人に増え、活動を広めていこうという段階です。グラマ無償配布は、クラウドファンディングで得た資金を元に、視覚障害関連の団体・学校等に配布先が決まり発送の準備中です。グラマの商品化は進めてはいますが、未完成です。企業研修の事業化は、先日、三井化学さんと一緒にワークショップをさせていただきましたが、今後はさらに営業などで広めていこうという段階です。法人化に関してはミスが発覚し、やり直しをしながら進めています。活動中の受賞実績としては「GOOD DESIGN NEW HOPE AWARD」と「Boardgame Japan カップ」に入賞できました。グラマの体験会も100BANCHやブラインドサッカー協会、盲学校などいろいろな場所で開催し、100BANCHでの6か月の活動期間で750人くらいの方々に体験していただくことができました。

「今後の展望は今回お話した5つの取り組みを進めつつ、一番の野望である『見ても見なくても見えなくても楽しめるもの』というのをブランドにしていくことを進めたいと思っています」と浅見は話しました。

 

Rulie

クリーン×カワイイ化粧品 人も環境も社会も美しい未来を創造する

登壇者:時田 聖菜

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/rulie

「Rulie」は地球や社会に対する罪悪感を解決しつつ、カワイイ商品がほしいというワガママも叶える”クリーン”と”カワイイ”を両立する化粧品ブランド​​を開発しています。

時田:100BANCHでは、延長期間前にクラウドファンディングを実施し425万円ほど集めることができ、この費用でプロダクトの製造をすることができました。延長期間ではマルイのアクセラレーター・プログラムに参加させていただき、実際にマルイの店舗でポップアップストアを開催しました。このプログラムの中で優秀賞を受賞することができ、現在、法人化に動き出しています。私たちの強みはメンバー、モデル、協力者のすべてが友だちであるところです。RulieはInstaramをプラットフォームとしているのですが、前回行ったイベントでは、友だちにメンションをしてもらって友だちの友だちに繋げることによって、フォロワーを1.4倍に増やすことができました。このコミュニティに対し、オンライン会議イベントなどを開催して商品についての意見を聞き、それらを取り入れながらみんなで作り上げる参加型のコスメブランドを作っています。今後も商品をいろいろと展開し、すべてのメイクをRulieで完成できるようにして、5年後にはZ世代の10人に1人が Rulie を持っているような事業規模にしていきます。

「私たちは『美人』とは外見はもちろん、内面のあり方を含めた本質的な美しさを持つ人であると考えています。 化粧品も同じで、パッケージや色がかわいいだけじゃなく、製造過程もクリーンで本質的な美しさをもつものであるべきだと考えています。みなさん、次世代の美人の当たり前を、一緒に作りませんか」と時田は呼びかけました。

 

実験報告会の各発表内容はYouTubeでもご覧いただけます。

KOTONI LABO https://youtu.be/JNAXi8Q9g2o

RINGO PAY https://youtu.be/bTfKsx6HFKc

CACTUS TOKYO https://youtu.be/zZNBTbx9FCs

Online Yomikikase YOMY! https://youtu.be/QiwMe12Q9A4

Blined Project https://youtu.be/VpL9dKxMEjc

Rulie https://youtu.be/AwM2C2nvdNw

報告ピッチ後は、各プロジェクトの登壇者とイベント参加者が輪になり、質疑応答や意見交換、今後のビジョンなどを語り合いました。今回は、ナビゲーターの菊永を中心に、手話を介して話す姿も見られました。

 

次回の実験報告会は4月25日(火)に開催。ぜひご参加ください!

 

(撮影:鈴木渉)

<次回実験報告会>

「映画をつくり、伝え、これからのスクリーンを耕す」100BANCH実験報告会

【こんな方にオススメ】

  • 100BANCHや発表プロジェクトに興味のある方
  • GARAGE Programへの応募を検討されている方

【概要】

日程:4/25(火)

時間:19:00 – 22:00 (開場18:30)

会場:100BANCH 3F

参加費:無料(1ドリンク付き)

参加方法:Peatixでチケットをお申し込みの上、当日100BANCHへお越しください

詳細はこちらをご覧ください:https://100banch.com/events/45387/

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