脳波からリアルタイムNFTアートを生成。 唯一無二のものとして主観を永続させる。
- イベントレポート
100年先の未来を描く6プロジェクトが登壇 2022年7月 GARAGE Program実験報告会
これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」。3カ月目の現役活動期間終了のタイミングで、どのような実験を行ってきたかを発表する実験報告会を実施しています。
2022年7月の実験報告会には、6プロジェクトが登壇。活動の報告と今後の方針や展望について発表しました。
GARAGE Program プロジェクト報告ピッチ
■Neurography
登壇者:馬 劭昂
脳波からリアルタイムNFTアートを生成。唯一無二のものとして主観を永続させる。
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/Neurography
Neurography は、脳波を可視化するなど、脳情報から新たな表現・体験を創り出し、Brain Machine Interfaceの新たなユースケースを確立するプロジェクトです。
馬:この3ヶ月では、Science Based な生成モデルの開発を実現しました。慶應義塾大学の牛場潤一先生のご協力のもとPLUGというヘッドホン型脳波計を利用させて頂き、自我を可視化し、それをNFT化して所有できるようにしました。また、100BANCHだけでなくスタンフォード大学の方での実証実験や、東京大学の文化祭でのBMI(Brain Machine Interface)の展示などの啓蒙活動を行ってきました。そして集大成としてVRクリエイターの方やDJの方とコラボし、脳波に反応して動く映像を披露したりして、いろんな方に体験してもらって啓蒙活動を行ってきました。
「今後は、BMIがどんな未来をもたらすのか、アーティストさんとのコラボ等を通じてより多くの方にメッセージを投げかけたり、多くのアーティストさんが活用できるパッケージ開発を行ったり、こういった活動を発信していくことで、より多くの人に知ってもらいたいなと思っています。」と馬は話しました。
■AI based tumor tracking system
登壇者:呉 文翔
呼吸で移動する腫瘍をリアルタイム計測し、AIベース腫瘍追跡システムを開発したい
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/ai-based-tumor-tracking-system
肺がんの放射線治療を受けると、患者さんは呼吸によって腫瘍が動き続けます。AI based tumor tracking system は、肺がんの放射線治療の質を上げるため、正確に腫瘍に放射線を照射するためのリアルタイムの腫瘍監視システムを開発するプロジェクトです。
呉:元々の計画もありましたが、100BANCHに入居してから実験報告会の今日まで3ヶ月間しかないため、計画を変更しました。本来ならば、実際の患者さんのデータを使いたいのですが、コロナ禍で病院にも入れず、また、直接患者さんのデータにアクセスするのはルール違反かもしれないので、新しい計画はファントム(マネキンのようなもの)で進めてきました。私が開発しているシステムでは、腹部の動きをカメラで検知して、X線を使わなくても体の中の腫瘍の位置を知ることができるようになります。CT、カメラとマーカーを使い、体内の腫瘍の位置を取得しAIモデル構築のデータを準備しました。そのデータをもとにAIをトレーニングしていき、開発したファントムの呼吸AIモデルでは精度の高い予測をすることができるようになりました。
「今後、ファントムではなく実際の患者さんを使った呼吸AIモデルを構築していく予定です。そのために医師の方と連携し、実現できるように相談中です」と呉は話しました。
■monster in my mind
登壇者:武田 勇
自分の心と向き合うことが努力ではなく楽しさに根付いた体験であってほしい
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/MYMON
自分の心を表すキャラクター monster in my mind(マイモン)を通じ、内省が得意ではない人、向き合いたくない人へ、感情と向き合うことのハードルを下げ、自分の感情や内面に気づいて自分を大切にできるようになる体験を創出するプロジェクトです。
武田さんは、なぜマイモンなのか、何がマイモンでできるのかという点を想定ユーザーのペルソナ麻衣子さんのストーリーを示して紹介しました。
武田:世の中は変化し続けている中、未来は不確実で、個人それぞれが生き方を問われています。リフレクション(内省)が中心に据えられていて、自分で答えを作ることが求められている時代です。十分に自分と向き合える感覚、自分を受容できるようになるにはどうしたらいいかという問いに対し、自分たちの自信につながっていくストーリーをつくることができました。100BANCHの実験の一番の成果としては、インタビューで知ったみなさんの課題を通じ、自分の考えてるマイモンのプロジェクトに自信がついたのが非常に大きな成果だと思います。
「今後は、実際のアプリのローンチを目指しており、まずは1,000名ほどの規模での利用を想定したβ版のリリースを進めていきます。最終的には、マイモンでみなさんが内省するサポートを通じて、自分も周囲も肯定的に捉えられるような喜びにあふれた共生社会を実現していきたいです」と武田さんは話しました。
■SHINON
登壇者:髙野 洋
“存在する写真”は、未来に何が残せるだろうか
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/SHINON
デジタル化によって写真の一枚一枚の存在は弱まっていると考えるSHINONは、写真を自然のマテリアルに焼き付けて物質として存在させることで、写真一枚一枚の価値を見つめなおしていくプロジェクトです。
髙野:「存在する写真」というのをテーマに掲げて作品というものを、今回、3ヶ月間で制作していきました。今、全国で問題になってる木の伝染病「ナラ枯れ」があるんですが、実際に被害をうけた木にまだ生きている森と死んでしまった木を印刷することでナラ枯れの現状やその森について想いを持ってもらうきっかけになればということで作品を作り、ナナナナ祭りでも展示させてもらいました。作品づくりを通して、自然に対して活動されてる方や、クリエイティブに関わってる方々にたくさんお会いすることができて仲間ができたり、いろんなお話に繋がったりしました。
「今、ロケーション撮影に対応できる木造りの機材車をつくっていて、車の中で編集をしながらお客さんがきたらコーヒーを提供したりするつもりです。今後はそれで旅するスタジオ&カフェというものをやろうと準備しています」と髙野は話しました。
■Audience-based Switching
登壇者:藤井 亮輔
観客の視点をベースにしたスイッチングを実現し、新しい映像配信の体験を作りたい
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/audience-based-switching
舞台から客席に向けられたカメラより検出した観客の視点をベースに、舞台演劇のライブ配信のスイッチング、および編集を行うことで、配信時のスイッチング・編集の手間を軽減し、舞台演劇自体がより広く知られる一助となることを目指すプロジェクトです。
藤井:100BANCHで「GEKI」というプロジェクトの「はまらない就活展」というイベントが開催されたんですが、そこで観客の顔の映像と舞台上の映像を複数台のカメラを使って撮影してテスト映像を作成しました。編集では複数台のカメラの映像をどんどん切り替える必要があるのですが、メンターの岩佐琢磨さんよりオススメいただいたソフトを採用したところ、一切手を触れずに自動編集ができるようになりました。また、お客さんの顔の向きを判定して編集に反映させる必要があるのですが、従来のプログラムではマスクをした顔だとうまくいかない問題が起きました。メンバーに相談したところ、マスクありでも十分に顔の向きが認識できるライブラリを見つけてくれて、観客が向いた方向のカメラに自動で切り替わるようになりました。
「今後は自動編集だけではなくて、生配信に向けた自動スイッチングもできるようにしていきたいと考えています。他のイベントの撮影もこれからやっていきたいと思いますので、ぜひイベントをやるから撮影して欲しい、という方がいたら、ぜひともお声がけいただければ幸いです」と藤井は話しました。
■All-gender Spa&Sauna with Sharehouse
登壇者:楽
性別や外見を気にせず、全ての人が垣根なく楽しめる銭湯を作りたい
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/projects/all-gender-spa-sauna-with-sharehouse
銭湯を中心にその周りにシェアハウスを増やし、民主主義において多数を取れないマイノリティが「銭湯」というコンセプトのもとローカルな場所に「居住」という形で結集することで多数を取り、作りたい社会を実装する仕組みを目指すプロジェクトです。
楽:100BANCHでは銭湯の空間設計に関する意見集約と対外コミュニケーションの最適化の実験をしてきました。実際にサウナに入ってもらって感想を聞いたり、ナナナナ祭でイベントを出したりしてヒアリングを実施してきました。銭湯・サウナでは浴場内では服を着てもらい個別ブースの更衣室にも鍵の発行にアプリを活用しログを管理して盗撮などの不安の声に対処しようと考えています。また、サウナにも出入り口を2箇所設けたり緊急ボタンを設置したりして防犯対策を行います。コミュニケーションに関してはデリケートな問題で、マイノリティという言葉は要注意という意見があったりLGBTQはそこに含まれない方がいるのでLGBTsの方がよいという話が出たりしています。運営に関しても、男女を分けなければいけない「公衆浴場」や水の量的に「プール」では法的に対応できないという課題があり、最初は「旅館業」としてクローズなイベント形式で開始していくつもりです。
「未解決の問題もありますし、これまで防犯やリスクの点ばかり考えていました。今後はどんな空間がより心地よいのかというプラスの部分をどれだけ作っていけるか考えていきたいと思います」と楽は話しました。
報告ピッチ後は、各プロジェクトの登壇者とイベント参加者が輪になり、質疑応答や意見交換、今後のビジョンなどを語り合いました。次回の実験報告会は8月26日(金)に開催。ぜひご参加ください!
※登壇・集合写真の撮影時のみマスクを外しています。
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