未来は不動産ならぬ“可動産”にあり。 「動く家」バスハウスで、新たな未来を創造
- イベントレポート
新たな価値はここから生まれる—— 〜GARAGE Program活動成果報告会〜
2018年9月16日に100BANCHで活動するGARAGE Programの活動成果報告会が開催されました。
あらためて、GARAGE Programとは……
これからの100年先の未来をより豊かでおもしろい方向へと動かすために、常識にとらわれない35歳未満の野心的な若者リーダーのプロジェクトを支援するプログラム。審査基準は、各界のトップランナーである総勢23名のメンター陣が、“これからの100年をおもしろくするプロジェクトとして支援したいと思うか否か”。現在までに80ものプロジェクトが採択されています。
今回のGARAGE Program活動成果報告会は、先日渋谷にオープンした商業施設「渋谷ストリーム」の開業に合わせ実施された「Shibuya River Fes」の一環として、100BANCHに隣接する遊歩道「100BANCH Street」で開催されました。多くの観衆を前におこなわれた、9プロジェクトの発表内容をここにレポートします。
より自由に移動しながら暮らすことのできる未来を
■BUSHOUSE リーダー:青木大和
移動式の住居「BUSHOUSE」を通じて、「不動産」ではなく「可動産」という新しい暮らしを創りだすプロジェクト。
青木は「この先、世界中で多くの人がさまざまな場所を行き来する「超移動社会」を迎えるため、「BUSHOUSE」は、暮らしながら自由に移動できる住居のカタチを提案していきたい」と話します。
固定されたコミュニティから解放され、より自由に生活することができる未来を「BUSHOUSE」が創っていきます。
現在は「BUSHOUSE」の1台目が完成し、9月から宿泊可能になると発表。当日会場には「BUSHOUSE」が展示され、多くの人が見学に訪れ、未来の暮らしに思いを馳せていました。
日本各地のすばらしい食文化を未来に生きる後継者へつないでいく
■Mirai Table Meeting リーダー:福留千晴
Mirai Table Meetingは、「食べる」ことにまつわる対話を重ねることによって、日本各地のすばらしい食文化と、それらを有機的に取り巻く歴史・技・後継者を100年後の日本に生きる後継者へつないでいく提案をおこなっています。
福留は「公式サイトやフェイスブックを活用していろいろな地域の食材や食の歴史などを紹介するほか、『世界から見る未来食材』と題して、これまでにそばや豆腐を学ぶイベントを開催してきた」とコメント。「今後は味噌や山菜、縄文時代の食などをテーマに活動を深めていきたい」と抱負を述べました。
かろやかで息継ぎのようなコーヒーを
■MATERIA リーダー:戸塚佑太
「私たちの仕事のためだけにつくられたコーヒーってないのかな?」。そんな疑問からMATERIAはスタート。仕事の休憩のためだけの、かろやかで息継ぎのようなコーヒーの開発を目指しています。
現在、ベトナム産・エチオピア産・ウガンダ産のコーヒー豆をベースに、リラックスや集中を助けるイチョウやゴツコーラ・ベルボラのハーブを10パーセント配合したティーバッグ式のブレンドコーヒーを開発していると報告。
戸塚は、MATERIAの未来について語りました。
「僕たちは、すてきな創造の土壌にはいつも『想像』『余白』『遊び心』があると考えています。それを念頭に置きながら引き続きコーヒー開発に取り組みつつ、コーヒー豆の生産者に正しい価値を還元できる仕組みを作って行きたいと思っています。」
MATERIAが開発したコーヒーはどのような体験を私たちに与えてくれるのか。今後の活動にも注目です。
未来の外国人留学生の教育を変えていく
■NIHONGO リーダー:永野将司
いま「アルバイトで借金を返済できる」という名目で多額の借金を抱えながら日本で学ぶ外国人留学生が増えているそうです。しかし、実際は劣悪な労働環境下で働かされ、借金は返済できず、不法滞在者となるケースも増えているとのこと。
これに歯止めをかけるために、NIHONGOでは日本に住むすべての外国人に安価で良質な日本語教育を提供しています。
NIHONGO のプログラムを利用することで、通常1年程度の教育期間を必要とするJLPT4級(基本的な日本語を理解することができるレベル)の認定を、3カ月で受けることが可能となりました。
NIHONGOは、これらのエッセンスを最大限に生かしたオリジナルテキストを2019年春に発売。永野は「これをきっかけに外国人留学生の教育を変えていきたい」と意気込みを語りました。
「異言語脱出ゲーム」で新しい価値観や気づきを
■IGENGO lab. リーダー:菊永ふみ
IGENGO lab.は、手話と謎解きを組み合わせた「異言語脱出ゲーム」を考案するなど、異なる言語同士のコミュニケーションのツール開発やワークショップの開催を通して、新しいコミュニケーションの開発をおこなっています。
これまでに2回の「異言語脱出ゲーム」を開催し、2回目の開催には252人を動員するなど、非常に大きな反響がありました。
菊永は「異言語脱出ゲーム」によって新しい価値観や気づきが芽生え、普段の生活で聴者・ろう者・難聴者が交わる一歩になる」と語ります。
最後に、吉本興業と京都国際映画祭とIGENGO lab.がコラボした「異言語脱出ゲーム」を10月13日(土)に開催すると発表。菊永は「より多くの人に参加してほしい」と呼びかけました。
外国人留学生が在学中に働く機会を創出したい
■Lightened リーダー:奥田亮史
Lightenedは、高度外国人材の定着を向上・促進することで、日本における文化的多様性を高めることを目的としたプロジェクトです。
奥田は「外国人留学生が大学卒業後に3割程度しか就職できないなか、日本の中小企業やスタートアップは人材不足に陥いるという、人材のミスマッチが起きている」と説明。 その課題を解消すべく、Lightenedは外国人留学生が在学中に働く機会を創出するウェブサイトを開発しています。
100BANCHでは実際に外国人留学生を採用したい企業があるのかを検証。そこから、企業は「言語力」「バックグランド」「ITスキル」が長けている外国人留学生を求めていることが分かったりました。また、インバウンド・アウトバウンド業界と外国人留学生の親和性が高いことにも気が付きました。
こららの内容を踏まえつつ正式版のウェブサイトをリリースするとのこと。外国人留学生の価値を高め、日本の文化的多様性を深めていきます。
人間の五感をハックし、新たな即興演奏を表現する
■Brain Hack Session リーダー:天野 真
Brain Hack Sessionは、人間の五感を外部からハックすることによって、演奏自体を変化させ、新しい表現や即興演奏に対する構造理解を生みだす取り組みをおこなっています。
天野はBrain Hack Sessionについて以下のように語りました。
「ドラムを叩く時は、脳が「叩きたい」と指令を出したあとに、実際に手がドラムを叩き、その音が聴覚にフィードバックされることによって「ドラムを叩く」という一連の流れが生まれます。Brain Hack Sessionは「聴覚のフィードバックを少し遅らせることによって、演奏自体のグルーブに変化を与えられないか」という仮説のもと実験をおこないました。」
Brain Hack Session
今後は「聴こえない音や脳で鳴っている音を変化させられる作品を作りたい」と意気込みを語りました。
昆虫食を通じて、次世代に虫や自然と親しむ機会をつくる
■Cricket ramen リーダー:篠原祐太
世界初のコオロギラーメン専門店を開業し、昆虫食に対する先入観を打破を目指すプロジェクト「コオロギラーメン」。
4歳で虫を食べ始め、その後も世界各国の昆虫食に挑戦してきた篠原。2013年にFAO(国際連合食糧農業機関)が昆虫食を進める報告書を発表したことをきっかけに、昆虫食を振る舞うようになり、その後、世界初の「コオロギラーメン」を開発しました。
100BANCH の1周年を記念した夏の文化祭「ナナナナ祭」では、新作の「コオロギラーメン」を発表。3日間で350食を販売するほど大人気だったそうです。
篠原は昆虫食の未来について語りました。
「これからも虫料理の魅力を伝えるとともに、次世代に虫や自然と親しむ機会をつくっていきたいと思います。昆虫食を通して常識を揺さぶり、先入観を壊すような体験を提供したい。それによって、多くの人の生き方の幅を広げていきたいです。」
当日のイベントではコオロギラーメンが販売され、多くの人がその美味しさに魅了されていました。この先、食卓に昆虫食が並ぶ日も近いかもしれません。
アートやデザインで紙活字を表現する
■Papertype 和田由里子 守田篤史
古くからある活版印刷の方式を変化させ、紙製で新しい活版印刷用活字「紙活字」を開発・発信するプロジェクト「Papertype」。
6月に紙活字を使ったワークショップを開催し、そこで生まれた素材で風車のオブジェを制作。そのオブジェは7月の「ナナナナ祭」に展示され、非常に多くの反響がありました。また、紙活字用の新色インキの開発や、100BANCHのプロジェクト「MUKU」が立ち上げた会社「ヘラルボニー」のロゴ制作をしたことも報告しました。
守田は「100BANCHがきっかけとなり紙活字が多方面に広がっています。今後は紙活字が本来持っている魅力を、アートやデザインといった舞台で表現していきたいと」語りました。
今後は、高級紙や特殊紙を販売する平和紙業で紙活字の個展や、「ヘラルボニー」とコラボした作品を10月に開催される「Designart 2018」の展示、都内ホテルでクリスマスツリーの制作を予定しています。ぜひ彼らの表現を体感してみてください!
次回の実験報告会
立ち見もでるほど多くの来場者で賑わった、今回の活動成果報告会。各プロジェクトのプレゼンから、多くの学びや発をが得られる時間となりました。
次回は【GARAGE Program応募者向け見学説明会&プロジェクト成果報告会】を10月11日(木)に開催!
各プロジェクトの活動の様子を知りたい方や、GARAGE Programへの応募を考えている方は是非遊びに来てください。
- TOP
MAGAZINE - 新たな価値はここから生まれる—— 〜GARAGE Program活動成果報告会〜