• イベントレポート

100年先の未来を描く6プロジェクトが登壇 2023年10月 GARAGE Program実験報告会

100BANCHで毎月開催している、若者たちが試行錯誤を重ねながら取り組んできた“未来に向けた実験”を広くシェアするイベント「実験報告会」。

これからの100年をつくるU35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」を終えたプロジェクトによる100BANCHでの活動報告や、100BANCHでの挑戦を経て、プロジェクトを拡大・成長させた先輩プロジェクトによるナビゲータートークを実施しています。

2023年10月23日に開催した実験報告会では、フェスティバルを中心としたイベント制作やクリエイティブディレクションを通して、人々の想像と創造の機会創出に取り組むGARAGE Program 18期生「KAMING SINGULARITY」の雨宮優(Ozone合同会社 CEO)をナビゲーターとし、GARAGE Programの計6プロジェクトが活動を報告しました。

本レポートでは、GARAGE Programの6プロジェクトの発表内容をお伝えします。

SAFEID

知的障害者のファッションを改革したい

登壇者:加藤海凪

プロジェクト詳細: https://100banch.com/projects/safeid

「SAFEID」は、知的障害者のための服をつくることで、彼らの生活の選択肢を広げることを目指すプロジェクトです。

加藤:この3ヶ月間でやってきたことは3つあります。1つ目はプロダクトの制作です。取り外し可能なポケットで、汚れをキャッチしてそのまま捨てられたり、よだれかけにもなったりする、ベストをデザインしました。汚れが目立たない素材を使ったり、着やすい工夫をしたりしています。また、就労支援の事業所ではツナギが使われることが多いのですが、着脱しづらく、トイレも大変です。そこで、作業着にも普段着にもなるような、おしゃれで着やすい服の制作にも取り組んでいます。2つ目はYODAREN PROJECTです。車のシートの廃材を利用して、YODARENというおしゃれなよだれかけをつくりました。これは私でもつくれたので、知的障害を持っている方でもつくれそうだと考え、作業所と協力してこれから制作していく予定です。3つ目がコーディネートプロジェクトです。知的障害を持ちながらモデルや舞台で活躍している女の子と古着屋を巡り、デザインや素材を相談しながら一緒にコーディネートする企画をしました。自分で選ぶワクワクを提供する企画の中で、彼女は「これ着てディズニー行きたい。」と話してくれました。どこかに行きたい気持ちと自分が服を選んだという事実が繋がった瞬間を目の当たりにでき、引き続きプロジェクトを継続していきたいと思いました。

「まずはプロダクトを完成することが近々の目標ですが、これからは体験や教育、就職というところも含めて福祉をデザインすることをやっていきたいと思います。」と加藤は話しました。

 

tojo

大切な人を想うきっかけをもっと日常の中につくりたい

登壇者:新美早紀

プロジェクト詳細: https://100banch.com/projects/tojo

「tojo」は、オフィスの中で誰でも気軽にお花を購入できる「オフィスフラワー」という取り組みを通じ、大切な人を想うきっかけを日常に増やすことを目指すプロジェクトです。

新美:100BANCHで検証したかった仮説は「大切な人を想う時間が増えれば、日常の幸せも増える」ということです。その実証の手段の1つとして、オフィスの中でお花の贈り物を気軽に買えるオフィスフラワーというサービスを展開したいと思っています。お花は社会課題でもある廃棄予定のお花を活用できたらと考えています。これを形にするため、まずは業界未経験なのでお花についてインプットすることからはじめました。見て学ぶのが早いと思い、お花屋さんでお手伝いをしたり、市場や農家さんへの視察、仕入れを体験させていただいたりしました。次にフラワーロスについても学びました。お花屋さんへのインタビューを実施したり、ロスフラワースクールに入会したりして、現在も学び続けています。この2つを学んだ結果、お花の取り扱いやロスを取り入れることは思っていた以上にハードルが高いことに気が付きました。そのことから、「まずはお花を実際に自分で取り扱おう」と、オフィス以外の場所で実験販売をしてみることにしました。お花に色々なメッセージタグと花瓶をセットで「メッセージフラワー」という名前で商品化し、渋谷の路面スペースで3回ほど実践販売を行いました。様々な方に手に取っていただき、意見を伺えました。花を贈る理由として1番多かったのは日常の感謝を伝えたいというものでしたが「たまたま見かけたから誰々に」と買ってくださる方も多くいました。特別な記念日に買うだけではなく、たまたま贈り物を買える機会があったから大切な人を思い浮かべる、という機会をつくれたことは大きな成果だったと思います。

「今回、学びと検証で3ヶ月の時間を費やしてしまったので、今後はオフィスで実証実験を行うことを目指していけたらと思っています。」と新美は話しました。

 

GlabelJapan

訪日・在日ベジタリアン、ビーガンの食品購入における困難をアプリを通じて解消したい

登壇者:小谷理人

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/glabeljapan

「GlabelJapan」は、開発するアプリを通して、訪日・在日ベジタリアンやビーガンの人々が食品の購入の際に原材料表示に書かれている内容が分からず、購入しにくいという課題を解決するプロジェクトです。

小谷:現在、訪日ベジタリアンやビーガンの方々は年間約190万人にものぼりますが、日本の食品の原材料表示が読めなかったり、分かりにくかったりする課題があります。それを解決するために「GLABELJAPAN」というアプリを開発しています。アプリのスキャン機能では、原材料表示の写真を撮ると食品に何が入っているのかをNLP(自然言語処理)モデルを使って瞬時に判断できます。ただし、パッケージの形状や周囲の暗さでうまく撮れないと正確に判断ができません。そこで生まれたのがバーコード機能で、食品のバーコードをスキャンするとデータベースを通じて、何が入ってるのかを瞬時に判断できるしくみになっています。読み取った食品のデータがない場合には、ユーザーが新しく追加できたり、現在交渉中ですが食品データベース企業のデータから追加できるようにしたり、その正確性をユーザーがレビューできる仕組みになっています。正確性のレビューが低かったものは削除され、修正されるようなサイクルで動いています。100BANCHでの活動を通じ、NPO法人やビーガンレストラン、ハラールショップなどに共感していただき、ポスターを置いていただくことができました。。また、ヴィーガン認証ステッカーを作っているNPO法人の方々と新しい機能を一緒にコラボしていこうという動きもあります。

「今後の方針としては、言語処理モデルをよりうまく活用できるよう開発すること、法的な部分で原材料表示のデータをすぐに手に入れることができないことがあるので、そのあたりをどうにか解決していきたいと考えています。」と小谷は話しました。

 

ONOFF

社会の分断を解消し、ONとOFFの境目をシームレスに

登壇者:安藤智博

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/onoff

「ONOFF」は、地域コミュニティ、伝統と革新、人々の稼働と休息という三つの分断を繋ぎ止め、古ゴザを活用したピクニックシート「GOZA」の開発と、ピクニックカルチャー企画「ONOFF」の二本柱で実施するプロジェクトです。

安藤:100BANCHには4月に入居し、最初に目を付けたのは畳の大量廃棄の話でした。都市の休息のリサーチのために出展したデザインフェスで近くのブースにいた畳屋さんが声をかけてくれました。彼から畳業界では古ゴザが大量に廃棄されていることを聞き、それをうまく活かして都市で休める場所を作れないかと思ったことからはじまっています。畳を路上脇のスペースに敷いてみたところ、意外と人々が座って楽しそうに交流してくれることが見え、畳・ゴザで人々を街に連れ出すしくみをつくれないかと考えてスタートしました。そこから色々つくりながらナナナナ祭にも出展しました。とにかくいろんなプロジェクトにゴザを使ってもらったり、畳・ゴザを敷いて屋外で和室の空間みたいなものを体感してもらったりすることででONからOFFへのシームレスな体験を感じてもらうことに取り組んできました。また、ピクニックカルチャーやアーバニズムに精通しているトップランナーの方々を呼んでトークセッションを行いました。ナナナナ祭で盛り上がったので、初めて価格をつけて販売することもやってみましたが、それはうまくいきませんでした。そもそもブルーシートでいいんじゃないかという話があったり、なかなかニーズが見えずに迷走した時期もありました。チームで長野に集まり、そもそもどういうところにニーズがあるのかといった議論をしたり、色々もがいて苦しんだりした気がします。そこで制作したゴザシートの無料貸し出しをはじめ、使い心地や価格についてのアンケートを取り、細かく何回も実証実験を繰り返すことをやっていきました。そこから得た示唆を元に、プロジェクトメンバーのtatami.boyこと中田が所属する中田畳店と協力して商品開発をしてきました。できあがったプロトタイプを、知り合いの音楽フェスの担当の人が気に入ってくださり、つい2日前にそのフェスとコラボして100枚ほど納品できました。

「6ヶ月かけてゴザシートをつくってきましたが、今後これをもっともっと広めていくために出展などにも取り組んでいきたいです」と安藤は話しました。

 

ARES Project

宇宙を目指して世界の舞台に挑戦し、地球に還元することで新たな可能性を示したい

登壇者:永原陵司

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/ares-project

「ARES Project」は、学生で構成されるメンバーで開発した探査ローバで、日本初の火星探査機の世界大会初出場を実現し、日本の探査機開発に勢いをもたらしていこうとするプロジェクトです。

永原:これまでの1年半の活動で合計5台の探査機を開発してきました。 100BANCHの期間中には、クマ財団から300万円の支援をいただいたり、最新の5号機を6ヶ月間で完成させたりしました。また、鳥取県と鳥取大学が連携し、鳥取砂丘に月面実証フィールドを開設したのですが、そこに招待されてブリジストン様と共同でオープニングセレモニーを行いました。 その結果、様々なメディアに掲載され、ARES Projectの認知が広まったと思います。そして先日、この6ヶ月間で 1番の大イベントだったEuropean Rover Challenge という世界的な学生大会にエントリーしました。予選には落ちてしまったのですが、日本初のエントリーということと、大会側に活動を評価され、スペシャルゲストとしてポーランドに特別招待されました。日本から出場したチームが未だいないため、日本には一切ノウハウがなかったのですが、現地の大会を見学させていただくことができ、色々なノウハウを目の当たりにすることができました。今後、これを活かしていきたいと思います。これからの展望ですが、鳥取砂丘のルナテラスでの走行実験、12月には University Rover Challenge (URC)で毎年1、2位を争っている強豪のMonash大学と共同実験と技術交流会を予定しています。3月にはまた鳥取砂丘での走行実験、URCのエントリーを行い、2024年6月のURC出場を目指します。

「私たちはハードウェアを開発しているのですが、開発に多額な資金が必要です。現在、東北大学のともプロ!を利用してクラウドファンディングを実施しています。支援やシェアもお待ちしております。」と永原は呼びかけました。

 

HIZUMI

ユーザーがAIとリメイクデザインすることで実現するたのしいサーキュラーエコノミー

登壇者:加藤優

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/hizumi

「HIZUMI」は、ユーザーが持っている服を使ってAIがリメイクデザインを生成し、そのリメイクされた服をユーザーが購入できるプラットフォームを開発するプロジェクトです。

加藤:100BANCHに入居したタイミングでは、3Dスキャンをした服を組み合わせてデザインをつくるようなシステムをつくったりしていましたが、自分たちの服をつくりたかったので、リメイクの服をつくって実践しようと「.hzm」というブランドをリリースしました。100BANCHではポップアップを開かせてもらったり、リメイクの服10着を新たにデザインしたり、体験型の展示を行ったりしました。多くの来場者があり、Tシャツが売れて、データが得られたのが良かったです。前半3ヶ月では、実際に世界に実装された時どうなるかという未来を描き、後半はひたすら実装という地味な作業をしていました。 新たに出てきた画像生成モデルを使ったり、生成したものをユーザーが購入する際にランダムに生成されたものに価値を感じにくいという課題に向き合ったりしていました。最終的には、シンプルに画像と画像を組み合わせて服のリメイクデザインを生成できるシステムをつくりました。抽象的な概念も服に落とし込めるのが強みになってます。その他、生成されたものにコンセプトをつけることができるようにもなりました。

「最近の生成AIではきれいな質感のものや現実的ではないデザインも生成していますが、我々が目指すのは実際に縫製して着られるリメイクデザインです。

今後、新しい服の購入の選択肢として、新品や中古を買うことに加え、既存の服を再びデザインして購入するという3つ目の選択肢を提示したいと考えています。」と加藤は話しました。

 

実験報告会の各発表内容はYouTubeでもご覧いただけます。​​

SAFEID https://youtu.be/r5ea2bfk_ME?feature=shared

tojo https://youtu.be/42WaMjl1kak?feature=shared

GlabelJapan https://youtu.be/a6eZ1XxtOx4?feature=shared

ONOFF https://youtu.be/_6YP38c2Eis?feature=shared

ARES Project https://youtu.be/_rBfaN-NPN8?feature=shared

HIZUMI https://youtu.be/9OJdfCvnJ10?feature=shared

次回の実験報告会は11月22日(水)に開催。ぜひご参加ください!

 

(撮影:鈴木 渉)

 

<次回実験報告会>

「アクアリウム文化の発展で、人と自然が共生する世界をつくる。」100BANCH実験報告会

【こんな方にオススメ】

・100BANCHや発表プロジェクトに興味のある方

・GARAGE Programへの応募を検討されている方

【概要】

日程:11/22(水)

時間:19:00 – 21:30 (開場18:45)

会場:100BANCH 3F

参加費:無料(1ドリンク付き)

参加方法:Peatixでチケットをお申し込みの上、当日100BANCHへお越しください

詳細はこちらをご覧ください:https://100banch.com/events/54599/

  1. TOP
  2. MAGAZINE
  3. 100年先の未来を描く6プロジェクトが登壇 2023年10月 GARAGE Program実験報告会

100BANCH
で挑戦したい人へ

次の100年をつくる、百のプロジェクトを募集します。

これからの100年をつくるU35の若きリーダーのプロジェクトとその社会実験を推進するアクセラレーションプログラムが、GARAGE Programです。月に一度の審査会で採択されたチームは、プロジェクトスペースやイベントスペースを無償で利用可能。各分野のトップランナーたちと共に新たな価値の創造に挑戦してみませんか?

GARAGE Program
GARAGE Program エントリー受付中

2月入居の募集期間

11/26 Tue - 12/23 Mon

100BANCHを応援したい人へ

100BANCHでは同時多発的に様々なプロジェクトがうごめき、未来を模索し、実験を行っています。そんな野心的な若者たちとつながり、応援することで、100年先の未来を一緒につくっていきましょう。

応援方法・関わり方