
「獅子舞の生息可能性から、未来の地域のあり方を考える」100BANCH実験報告会

100BANCHで毎月開催している、若者たちが試行錯誤を重ねながら取り組んできた“未来に向けた実験”を広くシェアするイベント「実験報告会」。
これからの100年をつくるU35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」を終えたプロジェクトによる100BANCHでの活動報告や、100BANCHでの挑戦を経て、プロジェクトを拡大・成長させた先輩プロジェクトによるナビゲータートークを実施しています。
2026年5月22日に開催した実験報告会では、全国各地の獅子舞文化をリサーチし、獅子舞にとっての暮らしやすさから未来の地域のあり方を研究し続けているGARAGE Program59期生「獅子舞生息可能性都市」の稲村行真(獅子舞研究家)をナビゲーターとし、GARAGE Programを終了した5プロジェクトが活動を報告しました。
本レポートではその発表内容をお伝えします。
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「怒られデータ」から社会に潜む見えないズレを可視化し、障害のない職場をつくる
登壇者:中田歩希
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/formeet

「Formeet」は、日々のモヤモヤや「怒られデータ」を集め、自分自身の取扱説明書を作成するサービスを通じて、誰もが傷つかずに尊重し合える職場のインフラづくりを目指すプロジェクトです。
中田:皆さんは、本当は言いたかったのに飲み込んだ言葉はありませんか?「言ったらめんどくさそうだから言わなくていいや」という小さな「言えない」の積み重ねで、心が壊れていく人が社会にはたくさんいると思っています。私の友人は、バイトのミスで怒られ続けた結果、誰にも相談できず抱え込んで突然辞めてしまい、すっかりネガティブになってしまいました。実は、私自身も過去に「言えない」が積み重なって体を壊し、高校に1年間ほど行けない時期がありました。こうした状態を社会は「障害者」とラベリングし、仕組みで救おうとしますが、実際には救われていない現状があります。現在、企業の現場では、事前の相談なしに突然辞めてしまう「びっくり退職」や、うつ病による退職が非常に増えています。人事の方は「そんなことなら早く言ってよ」と言いますが、当事者からすれば「言ったら評価が下がる」「相談してもどうせ変わらない」という本音があり、両者には大きな壁が存在しています。そこで私たちは、音声などで吐き出したモヤモヤや怒られたデータをAIが言語化し、それを通して自分自身と対話ができ、自分の取扱説明書を育てていけるサービスを開発しています。
この取扱説明書には、どのような環境がストレスになるのか、どんな症状が体に出てしまうのか、そして周囲にどう扱ってほしいのかがまとまっています。MBTIやSPIのように1回つくって終わりではなく、自分でどんどんアップデートしていけるのが特徴です。これをキーホルダーやQRコードにして、会議の前にピッと読み込んで共有し合う世界を目指しています。また、このツールをアジェンダにすることで、社内の1on1を「どうやったら自分が働きやすくなるか」を話し合う作戦会議の場に変えていきます。実際に、障害者雇用を行っている企業様で検証させていただいたところ、「開示できた」「話したいことが話せた」という数値は格段に上がりました。一方で、「相手に理解された」という実感は微増に留まり、周囲の環境調整の設計にはまだまだ課題があることも見えてきました。
「今後は、大手企業様でのワークショップや、ToCへの個別販売を進めていきます。感情的な部分は横に置いて、まずは理性的なコミュニケーションだけでもこのツールで成立させたい。それによって誰もが傷つかずに尊重し合えるインフラをつくり、障害という言葉を人に使わない世界を実現したいです。」と中田は話しました。
旅人から、街の一員へ。その街に、混ざる旅を。
登壇者:Takanao shimakura
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/pechakuchat

「Pechakuchat」は、公共のカフェなどで短時間だけ会話できる友だちづくりサービスを通じ、訪日旅行者と日本人が安心して話せる仕組みをつくるプロジェクトです。
shimakura:「Pechakuchat」は、エンジニアの私と、SNSやマーケティングを担当するメンバーの2名体制で活動しています。海外旅行をするとき、ツアーガイドの方と一緒に回るケースは多いですが、現地の方と友達になれるサービスは意外とありません。旅行客がもっとその土地に詳しくなり、その街の住人に混ざれるような体験ができたらいいなと思い、このサービスをはじめました。約3ヶ月前、100BANCHに入居した頃にサービスをリリースし、そこからすでに5回ほどUXを変更しています。現在はマッチングアプリのようなUIで、会いたい人がいたらスワイプで「いいね」を送り、マッチしたら会話ができる仕組みで、お互いの共通点からカフェや美術館に一緒に行ったりすることができるようなサービスになっています。リリースからの3ヶ月では、基本的にはSNSの力だけで累計約1,600人の登録者を集めることができました。個人でやっているにしては順調に伸びているように見えますが、実は、お金があまり生まれていないのが現状です。
これまでBtoBのサービスを展開してきた私にとって、初のBtoCサービスは非常に難しく、この3ヶ月で3つの大きな壁に直面しました。1つ目は「ユーザーが積み上がらない」ことです。旅行客は日本を楽しんだら自国へ帰ってしまうため、常に新規ユーザーを集め続けなければなりません。2つ目は「キャッシュポイントのずれ」です。現地で友達をつくるというニーズ自体にはお金を払うハードルが高く、どのタイミングで課金してもらうかの再現性をつくるのが困難でした。3つ目は「使われ方のずれ」です。私たちは現地の文化を楽しむために使ってほしかったのですが、実際のアクティビティを見ると、いわゆる出会い目的のマッチングアプリのように使われてしまうケースが多発し、想定と違う使われ方に悩まされました。そこで、この壁を乗り越えるためにサービスを大きく広げようとしています。これまでは旅行中の体験にフォーカスしていましたが、旅行前と旅行後も含めたユーザー体験を向上させるサービスへの拡張です。
「今後、日本に訪れる前に日本の文化や日本語を学び、来日した際に深く体験をし、帰国後も日本を好きでいて日本語を学び続けてもらえるようなオンライン日本語会話サービスをリリースする予定です。」とshimakuraは話しました。
AI で介護のノンコア業務を削ぎ落とし、人が人に向き合えるケアの未来を。
登壇者:祖父江俊介
プロジェクト詳細: https://100banch.com/projects/carepaas

「CarePaaS」は、介護職員のノンコア業務を無くすことで、質の高いケア業務に集中できる現場づくりを目指すプロジェクトです。
祖父江:私と共同創業者の矢野は、新卒で入社した人材会社で出会い、共に介護業界の人材事業に関わってきました。私自身も実際に介護現場で働き、資格を取りながら業界の解像度を高めてきました。現在の介護現場には大きく3つの課題があります。1つ目は、職員が事務作業に追われ本来のケアに向き合えていないこと、2つ目は深刻な人手不足、3つ目は、売上加算のための行政書類が煩雑すぎることです。実際の現場では、例えば、業務の合間に10人分の手書き記録をシステムに一気に書き写す作業が発生しています。しかし、その作業の最中にも居室で高齢者が転倒してしまっていて、さらに事故報告書を作らなければならない、といったような過酷な実態があります。この課題に対し、私たちは現場のフローを変えずに事務作業を丸ごと巻き取る「AI-BPO」サービスを展開しています。手書きの記録を写真に撮るだけで、我々がデータを構造化し、施設側が使っている既存の介護ソフトへ代行入力します。現在は人力も交えながらやっていますが、徐々にAIによる自動化を進めているところです。
100BANCHに入居してからの数ヶ月間は、まさに構想から事業化へと駆け抜けた期間でした。入居直前の2月末に法人を設立し、100BANCHのコミュニティでフィードバックをもらい、事業を磨きながらMVPを開発、PoCを締結して現場での実証実験を開始、資金調達しながら本格展開を進めてきました。現在は、地域に根づいた社会福祉法人を中心に6社への導入が進み、30社以上のリード顧客も獲得することができました。売上につながる書類作業の巻き取りや荷物管理、業務時間の大幅な圧縮など、成果が数字として見えはじめています。
「まずはこの1年間、ひたすら現場のプロセスを巻き取って事業を拡大していきます。将来的には、介護職員が本来の専門性をしっかり発揮できて正当に評価される、100年続く介護の未来をつくっていきたいです。」と祖父江は話しました。
「おばあちゃんの趣味」を、若者の自己表現へ編み直したい
登壇者:pori
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/yulu

「yulu」は、「編み物=おばあちゃんの趣味、器用な人の趣味」という固定概念を越え、初心者が挫折しない編み物キットの開発を通じて、編み物を若者が自分らしさを爆発させる「最も身近な自己表現」へと変えていくプロジェクトです。
pori:私は医療系の大学に在学中、デザイン会社でマーケティングのインターンをし、卒業後は広告代理店でクリエイティブディレクターとして働いていました。現在は独立し、編み物クリエイターとして活動しています。2023年からSNSでの発信を続けており、InstagramとYouTubeでそれぞれ5万人ほどのフォロワーがいます。真っ白なイヤホンケースや帽子、白いTシャツの上にビスチェを編んだり、無機質なものを温かく包み込んで温度が宿る、みたいなところにすごく楽しさを感じていて、それを「一緒に編もうよ」というスタンスで広めたいと思っています。現在、若者の間で編み物が流行ってきているのですが、初心者が成長できずに市場が開拓しきれていないという課題を感じています。例えば、現在使われている編み目の記号は1955年に作られたもので、今のSNS世代の若者からすると、少し理解しづらい記号になってしまっているんです。老舗の毛糸屋さんも若者層を獲得できずに悩んでおり、既存の手芸キットも若者向けとは言えない状況です。
そこで私がつくりたいのは、毛糸を組み合わせる発想、編んでいる時間、そして完成後の未来までをすべてパッケージにした編み物キットです。私はデジタルデトックスをエンタメ化したいと思っているのですが、編み物はスマホを触らない時間を有効活用できるのがすごくいいところで、キットに小冊子のような説明書も同封するなどしてブランディングしていきたいと考えています。100BANCHに入居してからは色々な活動を行ってきました。編み物のワークショップを15人で開催したり、100BANCHのプロジェクトである「ReFamily」さんからいただいたレースを、デニムのズボンを切って編んだバッグに飾り付けたりしました。また、「yulu」のブランドも正式に発表しました。ブックカバーを納得がいくまで9〜10個も編んだり、ご招待いただいた「日本ホビーショー」に参加したり、キットを開発して受注販売を開始したり、3年分の事業計画を立てたりしてきました。

「私は、無機質な日常を温かく包むために、編み物をデジタルデトックスの文化にしていきたいと思っています。」とporiは話しました。
空き家所有者に寄り添った選択肢から、空き家の可能性をひらく
登壇者:竹中弥来
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/refamily

「ReFamily」は、空き家を「眠った資源」ではなく、そこに暮らしてきた人々の思い出や記憶を未来へつなぐことで、所有者に寄り添った選択肢を提示し、空き家の可能性をひらいていくプロジェクトです。
竹中:このプロジェクトをはじめたきっかけは、私の大好きなおばあちゃんが住んでいたお家が2年前に空き家になってしまったことです。当初はそれほど危機感を持っていなかったのですが、日が経つにつれて家族の中で意見がすれ違い、悩みの種になっていく現状を目の当たりにしました。そこからたくさんの空き家所有者の方にヒアリングを続けると、皆さんの葛藤や課題と同時に、空き家に残されたモノが障壁となって、次の1歩を踏み出せずにいるという共通の悩みが想像以上に多いことがわかりました。従来の仕組みで空き家を片付けようとすると、多額の費用がかかるだけでなく、思い出のつまった品々がゴミのように扱われてしまいます。それに抵抗を感じて自分で片付けようとしても、膨大な時間と体力が必要で前に進まない。そこで私たちはこの6ヶ月間、空き家所有者の方からモノとその背景にある想いを丁寧に受け取り、次の人へつなぐ活動をしてきました。
100BANCHでの活動は大きく3つあります。1つ目はモノの整理と回収、2つ目が地域の方を巻き込んだ再流通のイベント開催です。イベントでは、空き家に眠っていたモノが次々と新しい人の手に渡っていきました。それを見た他の空き家所有者の方からも「うちもやってほしい」「空き家について考えるきっかけになった」と前向きな言葉をたくさんいただきました。そして3つ目が、手放すことへの心理的ハードルを下げるためのアプリ開発です。モノに眠る想いや、思い出を所有者が記録し、次の人に渡ってからもそのストーリーがどんどん更新されていくようなアプリをつくりあげました。現在、私たちは新たな課題解決に向けて動いています。空き家に関する情報が複雑でわかりにくいため、シミュレーターを用いて私たちが回収することによるコスト面でのメリットをシミュレーションしたり、モノの行き先を可視化できるようなサービスを展開していきたいと考えています。また、空き家を空っぽにしても、その出口や活用法がなければ意味がないため、拠点を探している人とのマッチングや、大学・企業と連携した活用法の拡大も目指しています。ただ、現在のチームにはテクノロジーやクリエイティブのメンバーはいるものの、建築や不動産の専門家がおらず、限界を感じているため、詳しい方がいらっしゃれば、ぜひ仲間になっていただきたいです。

「私たちは空き家の価値観というものを変えたいと思っています。空き家とそこに眠る品々が放置される社会から、人々の想いが引き継がれ、そこから新たな暮らしや挑戦が生まれ続ける社会をつくっていきたいです。」と竹中は話しました。
実験報告会の各発表内容はYouTubeでもご覧いただけます。
Formeet https://youtu.be/KDtkj5HYUEM?si=77SK6Jy-Vsv-Hc60
Pechakuchat https://youtu.be/iA7CGFS0sHo?si=T5__PxlSti7QI1WN
CarePaaS https://youtu.be/OjYbx0uYPYk?si=rpzQ9fk_mubgtwWH
次回の実験報告会は6月25日(木)に開催。ぜひご参加ください!

(撮影:鈴木 渉)

【こんな方にオススメ】
・100BANCHに興味がある
・GARAGE Programに応募したい
・直接プロジェクトメンバーと話してみたい
・宇宙開発に興味がある
・ハードウェアの開発に興味がある
【概要】
日程:6月25日(木)
時間:19:00 – 21:30 (開場18:45)
会場:100BANCH 3F
参加費:1500円(1ドリンク付き)
参加方法:Peatixでチケットをお申し込みの上、当日100BANCHへお越しください
詳細はこちらをご覧ください:https://100banch.com/events/79809/