iKasa
「傘をシェアする新しい時代を一緒に創りませんか?」
2019年5月30日、U35のリーダーと100年先の未来をつくるプログラム「GARAGE Program」の説明会とその報告会が行われました。
次の100年先の景色を作るのは、どんな人たちだろう?
100BANCHでは「まだ誰も見たこともない景色を作っていくのは、若者たちだ」
そんな理念に基づいて、100年先の未来を共創していくGARAGE Programというプログラムを行っています。
事実、GARAGE Programにはアイデアから出発して、深夜終電まで残って実験を繰り返す若いエネルギーが集まってきています。
各プロジェクト、自分たちの作りたい未来に向けどのような課題の解決を目指し、どんな実験を行ったのか。
GARAGE Programの成果報告について12プロジェクトが発表を致しました。
登壇プロジェクト一覧
・iKasa
・Heal the World
・STEMee
・Emptiness town in a handful of sand
・Cinemally
・EXHIBITION OF HOMEFUL
・Tokyo Re-cycle Projects 2021
・Room con-Anima
・Colonb’s
・VEGETABLE BENTO PROJECT
・Address Hopper Inc.
・ANICAL
報告の詳細は各プロジェクトページへ
URL|https://100banch.com/garage-program/
今回は、100BANCHの原理の1つである「若者が未来をつくる」という観点から特に4つのプロジェクトを取り上げて彼らの活動を掘り下げてご報告いたします。
■iKasa 黒須健
プロジェクト詳細: https://100banch.com/projects/13854/
「急に雨が降ってきて、走ってコンビニで500円の傘を仕方なく購入した」
「せっかくビニール傘を買ったのに、電車やお店に置き忘れてしまった…」
「傘を買って持ち帰ったのはいいけれど、以降は使わず邪魔になってしまった」
みなさんは、そんな経験はありませんか?
それらの悩みを解決するのが傘のシェアリングサービス「iKasa」。傘のシェアリングサービスは、これまでも様々な形で行われてきましたがどれもほとんど、サービスとして続いていません。継続できない理由には、シェア用に貸し出した傘が盗まれてしまったり、持ち帰られてしまうことがありました。
そこでiKasaではシェア用の傘に1本ずつダイヤル式の鍵を設定。スマートフォンでQRコードを読み取ってはじめてダイヤルを開け利用することができる、という仕組みとなっています。
さらに、延滞金を課すことで利用者に「傘を返さないことのデメリット」を発生させました。結果として、傘の返却率は約100パーセントを達成したとのこと。
具体的な実績としても「ユーザー数: 15,000人」「設置箇所: 250箇所」「貸し出し可能な傘の本数: 4,000本」を達成しています。
大手企業様との協賛のお話もいただいているとのことで福岡市では、メルチャリと同規模でiKasaを展開することが決定しています。
「iKasaは、100BANCH入居と一緒に成長してきたサービス」と黒須は語ります。
黒須: 入居前の段階でビジネスモデル構築と傘自体の発注は済んでいたもののユーザー数がほとんどおらず、サービスとして出発したばかりという状況でした。
そして、本GARAGE Programにおいては「どのようにサービスをグロースさせていくか?」という点を、試行錯誤しながら実験してきたとのこと。
黒須: 実験を行ううえで、100BANCHの存在は非常に大きかったです。横の繋がりを作って頂いたり、場所をとる傘をガレージ内に置かせて頂けただけでなくiKasaを、実際に100BANCH建物入口に設置していただけました。ご利用いただいたメンバーからはフィードバックを頂けたので「100BANCHにいるだけで、テストマーケティングが全て完結する」という状況は、非常にありがたかったです。
「GARAGE Programを卒業した後も日本全国に広めていく勢いで、iKasaをどんどん展開していきたい」と抱負を語る黒須。
iKasaのさらなる成長・拡大によって「雨が振りそうな日でも、手ぶらで出かけるのが当たり前」となる社会の到来が楽しみです。
■STEMee 五十嵐美樹
プロジェクト詳細: https://100banch.com/projects/15401/
日本は、工学系を専攻する女性の割合がOECD諸国のなかでもワースト1位と言われています。
五十嵐: 私自身、理系コミュニティでの女性の少なさを実感することも多くエンジニアリングのニーズ自体は社会で高まっているのに女性が工学系に進まないのはなぜ?と問題意識をもっていました。
STEMeeが調査をしたところ、小6の時点で理科に対しての意識や意欲に男女差があることが判明。テストなど学力的には、男女ともに日本は世界トップレベルなのに理科への興味関心という観点では小学生の時点から男女差が生まれているのです。
五十嵐: 私達は、その男女差が生まれる原因の1つに女児向けに科学系や組み立て系の玩具(STEM)が販売されていないことから女児には、幼少期にエンジニアリングに触れる機会がないからではないか?という「環境に対する仮説」を立てました。
事実、日本のおもちゃ売り場では明確に女児玩具と男児玩具とでおもちゃの種類が分かれています。
女児: おままごと、ファッションドールなど、男児: 組み立て系のSTEM、サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、mathematics…、このように「おもちゃ売り場の区別がそのまま日本のステレオタイプを反映しているように思える」と、五十嵐は語ります。
五十嵐: そこで私達は、女の子が手に取りやすいような理系のおもちゃ(stem)を開発し、実際に女の子の手に届くよう販売を行う「STEMee」というプロジェクトを立ち上げたのです。
STEMeeの実験として女児向けSTEM玩具を、ワークショップとのセット販売という形で「女の子の手に届ける」というところまでを実施。
今回は、モーター付属の走る乗り物をSTEM玩具として取り扱いました。実際に組み立てながら、電気回路を学べるようなおもちゃとすることでSTEMおもちゃが女の子の手に届き、楽しく工学を学んでもらうことに成功。また、本活動が認められSTEMeeが内閣府の男女共同参画局の応援団体として選出されました。1つの大きな成果とすることが出来たようです。
五十嵐: ただし、実験の課題として玩具をすべて一つずつ、私達が手作りで作ったためキット製作に時間を割きすぎるという問題点が出てきました。意識朦朧となりながら、100人分のキットを手作りでスプレーしたりなど…。本当に大変でした。
今後は、安く大量に作る方法を模索したうえキットを改善、ワークショップなしでも作れるようにしたいとのこと。さらにプログラムをシリーズ化、横展開もしていく予定。
女の子が小さな頃からエンジニアリングに興味をもち理系学部が女性で溢れる日も、遠くはないかもしれません。
■Cinemally 奥野圭祐
プロジェクト詳細: https://100banch.com/projects/15429/
Cinemallyは共感しあえる仲間が見つかる、好きを分かち合うためのシェアリングサービス。「Cinemallyでは、映画を共通項として興味関心を分かち合える仲間を提供していきたい」と奥野は語ります。
Cinemally アプリでは観たい映画を選ぶと、同じ映画を観たいと思っている人が表示されます。プロフィールやtwitterなどを参考に気が合いそうな人、一緒に観に行く人を選んでマッチング。マッチング後の予定の調整も、かんたんに行うことが可能となっています。
想定ユーザーとしては「仕方なく、一人で趣味を楽しんでいる」という層をイメージしているとのこと。
奥野: 友人が結婚したりして、周囲のライフステージが変わると一緒に行く友達がいなくなり、イベントへ行けなくなってしまう。ニーズが細分化された現代では「ピンポイント」で共感を得たいのに分かち合える仲間がいない。そこで「一人では行かないけれど、人と一緒なら行きたい」という層を狙って、共通の趣味を分かち合える人との繋がりを提供します。
このCinemally、マッチングアプリではあるのですが他のマッチングアプリと異なるところは「自分の目的の範囲から外れる人とは、つながることがない」ということ。なぜならば、Cinemallyはマッチングアプリでありながらマッチングそのものを目的としていないからです。
具体的に、「この映画」を一緒に楽しめる人と出会うことに価値を置いておりある意味、1人遊びをより楽しくするために誰かとマッチングを行っているのです。この観点は、Cinemallyにおける実験にも繋がるもの。
奥野: 通常、マッチングアプリといえば世の中的には「恋愛」でマッチングするのが基本。しかし私は、恋愛マッチングという枠組みを外したうえで1対1のマッチングを通したいと思いました。
その理由は「『恋愛観なく出会うということは、実際にはかなり需要があるのではないか?』という仮説を証明したいから」と、奥野は語ります。
奥野: この仮説を証明したい背景には、自分自身の生い立ちがあります。高校の頃、家も貧乏で建築現場で働き単位制の高校に通いながら、ただ漠然と自分のやりたいこともなく毎日を消費していました。そんな時に父の突然の死を迎え、初めて人生の目的を考え、自分のしたいことに向き合い、動き出すようになりました。
現代は価値観が多様化し、やりたいことが明確にある人にとっては、自由に生きられる時代となってきています。しかし、「やりたい事がわからない」「どうせわかってもらえない」と戸惑っている人も増えてきているはず。「好きな事や自分のしたい事を見つける事」と、「想いを分かち合える仲間がいる事」。この2つが揃って初めて、人は前へ踏み出せるのではないでしょうか。
奥野: 私達は、2人のチームです。100BANCHに入居する前まで当初はメンバー2人で家で開発をしていました。しかし開発が進むにつれ、関係がギクシャクしてくることもしばしば。そんな中、100BANCHに入居をします。100BANCHで他プロジェクトのメンバーと話をしたりすることは刺激になると同時に、大きな精神の安らぎになりました。
100BANCHには、初期段階のまだ上手くいくかどうかもわからない挑戦の難易度が高いプロジェクトに取り組む方々が多数入居しています。今までは、自身と同じ状況の人たちの想いを聞いたり、話しをしたりする機会はあまりなく同じステージの方々と話をしたり、相談しあったりすることが刺激的かつ、大きな精神安定となった、とのこと。
サービスに対しても100BANCHのスタッフやメンターから「こういう展開もできるのでは?」というフィードバックをもらうことでサービスの精度を向上させることができた話しました。
CinemallyはGARAGE Program報告会が始まる直前クラウドファンディングでの募集をスタート。アプリは現在、テスト版を配布中。6月中旬にアプリリリース予定です。
クラウドファンディングURL|https://camp-fire.jp/projects/139556/activities/85281
当面は、映画を通じてのマッチングのみを想定しているが、今後は展覧会、ライブ、スポーツ観戦などカテゴリの幅を広げていく予定。そして、ビジネスモデルとしてもしばらくは「キュレーション × マッチング」の予定だがゆくゆくは「プレイガイド × コミュニティ」へと広げてきたい、と意気込みを語りました。
奥野: Cinemallyによって趣味を通じた繋がりをかんたんに手に入れることができる未来を作っていきたいと思います。
■Tokyo Recycle Projects 2021 江尻 悠介 , 藤本 秦平
プロジェクト詳細: https://100banch.com/projects/14810/
藤本: 私たちは、アキチテクチャというグループ活動をしています。
アキチテクチャとは、「都市にある空き地を見つけてその空き地を有効活用しよう」というコンセプトのもと活動しているグループ。メンバーは全員学生でありその多くは、大学の建築学科に属しています。
江尻:私たちアキチテクチャが集まるときは「空いている場所はないか?」ということを考えつづけています。アキチテクチャにとって「空き地」とは平面的な空き地という、物体的な「空いている場所」だけではありません。パっと見て、そこが空いているということだけでな様々な位相で「そこが空いているかどうか」を考え続けています。
アキチテクチャには「建築設計を1つの道具として、さまざまなことをしたい」という思いがあるとのこと。今回のプロジェクトではアキチテクチャから見て「空いている」と思える場所なのにみんなが利用しようと思っていない場所に対して気づきを与えたり、新しい観点から考えてもらうことをコンセプトに、活動をしてきました。
アキチテクチャは、トライアンドエラーを繰り返しながら3ヶ月のあいだに「3つ」のプロジェクトを行いました。
プロジェクト1: 「シェアサイクルのサドルをテーブルに」
シェアサイクルのサドルをテーブルとして利用してみる実験です。
日々「アキチテクチャとして社会問題などを建築を用いて解決できないか?」と考えるなか最近のトピックとして「軽減税率」が出てきたとのこと。外食などでイートインではなく、テイクアウトとすると消費税が8%へと軽減されるということで「今後、外で食べる動きが増えるのでは」という仮説に基づいたプロジェクトです。
そこでアキチテクチャは、シェアサイクルに注目。
シェアサイクルは、すべての台数が常時使用されているわけではありません。使用されていない時間、空いたシェアサイクルを有効活用できるのではないか?と考えました。
具体的にどんなことをしたのかというとシェアサイクルのサドルを机にし、集まってご飯を食べたりして過ごしたのです。
プロジェクト2: 「看板を机に “Ad-Table” 」
藤本: 私たちはアキチテクチャなので、空き地を探して街へ出かけます。すると、あることに気付きました。
「『看板』も空き地と言えるのでは?」
そこでアキチテクチャが思いついたのが、”Ad-Table”。このAd-Tableは、普段は看板として使われているものを単純な操作によってテーブルにすることができるものです。
江尻: 看板がテーブルになる、いうことを示すことで「渋谷の壁面に、立体的な空き地がある」という気づきを人々に与えたかったのです。
藤本: Ad-Tableを利用して渋谷の街で看板をテーブルとして利用してみると道を行く人々から「アイツら何かやってるな」と、好奇心のある反応を得ることができました。
プロジェクト3: 「T字路で、T字テーブル」
ふたたび、アキチテクチャなので、空き地を求めて街を探検していると……。渋谷、スペイン坂の上のT字路には、白線で「T」のマークが残っていました。この「T」のマークを目にしたとき、 アキチテクチャは閃きます。「白線に沿って『T』の字にかたどられた、分解持ち運び可能なテーブルを作ろう」。
100BANCHで木を切り出して、机を制作。実際に渋谷スペイン坂のT字路までT字テーブルを持っていきその場で組立てて、T字テーブルを囲んで過ごしました。
これら3つのプロジェクトにおいては調査して、設計し、設置するという3段階の実験過程を行ったのですが「設置する」と言う段階の実験が1番面白かった、と江尻は語ります。
江尻: たとえば最初の「シェアサイクルのサドルをテーブルに」では自転車のサドルをテーブルに変えた時にその場所に「良い違和感」が生まれました。自分たちの取り組みを見つめる通行者が怪しんだり、好奇心をもったり「ないよねー」「変だよねー」と言いながらも興味をもって観察してくれたのです。
これら3つのプロジェクトを通じて「良い違和感」を街の中で提示できている実感を持つことができた、とのこと。
江尻: そういった「良い違和感」を街の人々に対して提示することで違和感をきっかけに街の人々に新たな観点を提示したり物事の視点に関して、改めて考え直してもらうという啓蒙をしていきたいと思っています。
100BANCHに入居して良かったこととして「1.街で実験する、前段階としての実験場所を確保できた」「2.最初、見えなかった方向性が見えてきた」と2点を挙げます。
100BANCHのガレージ内にいる人の反応は、まさしく街の人の反応。街に出て実験を行う前に、ガレージの皆がどのように言ってくれるか、フィードバックをもらうことで街に出る前段階の実験を行うことができたとのことでした。
江尻: アキチテクチャ内の共通心情として「自分たちの直感や、その場のノリを十分に活かして、ゲリラ的に都市に介入していく」というものがあり、今回のプロジェクトではその心情が存分に表れたものだと言えます。しかし、その心情の反作用で、プロジェクト実現に至るまでには多くの混乱がありました。そんなとき、自分たちがどのようにすべきかGARAGE Programでは、メンタリングや相談を通じて冷静な観点から、整理する手助けをしてもらえたと思います。
藤本:「東京の街を、空き地という観点をもって、歩いてみよう」私達はアキチテクチャとして、そんな気づきを与える活動を続けていきます。
いかがでしたでしょうか?
未来の社会の景色として「傘がシェアされることを当たり前に」をサービスコンセプトとする、iKasa。女の子に楽しくエンジニアリングを学ぶ機会を提供する、STEMee。趣味を通じて共感できる人を見つけ、若者には仲間を見つけるチャンスを提供する、Cinemally。そして、若者らしくトライアンドエラーで次々にプロジェクトを行っていく、Tokyo Re-cycle Projects 2021。
彼ら若い力がこれから作っていく「まだ見たことのない、新しい景色」に大きく期待をしたいと思います。
GARAGE Programでは、3ヶ月間に及んで
あなたの実験プロジェクトをサポートいたします。
具体的には
あなたのプロジェクトが採択されれば以上のサポートを「無料」で受けることが可能です。
「試したいアイデアはあるんだけど、どうすれば良いのか分からなくて…」
「普段は会社勤めをしているけれど、なにか面白いことをやってみたい」
「今行っている活動を、ブラッシュアップさせていきたい」
そんな方はぜひ、まずはGARAGE Program報告会の様子を見に来てください。
同年代の人たちが、様々な実験に取り組んでいます。実験を楽しむ仲間の姿を見ることは、きっと新しい刺激となるでしょう。
次回GARAGE Program説明会・報告会は6月26日(水)です。
どうぞお気軽に、実験報告会を覗きに来てください。