- メンバーズボイス
Room con-Animaの最終展示『部屋』
心をほどく家具を通して、人間性の在り処を思索する
人間らしさとは何か。人はどう生きるべきなのか。かつて宗教には、このような問いに対して仮想的な解を提示した側面がありました。しかし現代では科学主義の台頭やマテリアリズムの浸透により、宗教のそのような側面は、解体、形骸化しています。他方、科学主義の立場から人間について紐解いていった際にも、AIや人間らしさをもつロボットの登場などそのアイデンティティは問われ続けるばかりです。
私たちが制作する3つの家具は、それぞれ”人間らしさ”のある一つの側面を抽出し、それらを肯定します。これにより人間性の在り処に対する日常的な思索を促すと共に、人間「である」ことに今より少し安らげるような日常を、起こりうる未来の選択肢として提示します。
メンバーはそれぞれ脳科学、ロボティクス、またファッションの装いという視点から、人間性の在り処について考えてきました。情報や価値観がめまぐるしく更新され、それまで信念としていたことが一瞬で覆るような現代において、人という存在に地続きに向き合い考え続ける姿勢こそ大切だという共通した思いがこのプロジェクトに結びつきました。
人間らしさと今より仔細に向き合うことになる未来。他者としての家具が人を肯定する日常を描くことで、未来の生活に新しい選択肢を生めるのではないか。
100Banchでは人間であることを日常からささやかに肯定するための3つの家具を制作し、現在の予想とは異なる未来について思索します。
1 寄りかかることの肯定
2 刹那的であることの肯定
3 不信の肯定
展示ではそれら3つの異なるテーマを持った家具に対して科学、哲学、ポエトリーなど多角的な視点を参照し、点と点を結びつけるような思考実験の場を作ります。
人間性の在り処を優位性に求めて心を消耗しがちな新しい世代にとって、優しいパラダイムシフトとなるような展示を目標として掲げます。
科学技術が発展すると共に、これまで人間は外界と自分たちを相対化しながら「人とは何か」という問いを更新しようと試みてきました。その相対化の中でも、「DO(何ができるか)」で自己肯定を得ることが特に難しくなってきている今、私たちは人が「BE(どのような存在であるのか)」に着目します。最終的にこのプロジェクトは未来の人の心の中に、自分も他者も受け入れられるような優しい部屋 ( = ROOM con-Anima ) を作ることを目指します。
活動の詳細はこちらでもまとめています。
https://note.mu/room_con_anima01
リーダー増田 麻耶
D-LOCの美術担当。慶應義塾大学SFC3年次より多摩美術大学メディア芸術学科に編入。脳科学/インタラクションデザインを学ぶ過程で、「感情の外部からの制御が可能になりうる今、人間の精神とは何か?」という問いに突き当たる。以降人間の一般化できない部分に興味を持ち、美術という観点から学んでいる。趣味はサーキットベンディング。
デザイン斉 友華
東京生まれ。D-LOCのデザイン担当。International Baccalaureate Diploma取得後、慶應義塾大学環境情報学部に所属。高校時代にデジタルファブリケーションの技術に感銘を受け、その技術を使った新しいものづくりに興味を持つ。現在は慶應大学SFCに通う傍ら、ここのがっこうにてファッションデザインを学びつつ、ファッションとデジタルファブリケーションの融合を模索している。
ハードウェアエンジニア石田 花恋
D-LOCのハードウェアエンジニアリング担当。大学で3Dプリンターやレーザーカッターなどの機材に会い、魅了される。精密なものづくりが可能になる一方で、機械が全てを解決してくれる環境で、人は何を創ることができるかという問いの中でものづくりを続けている。また、Sociable Robots Labに所属し、人とロボットの関係について研究する。
株式会社HEART CATCH 代表取締役、プロデューサー西村 真里子
国際基督教大学卒。日本アイ・ビー・エムでITエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、アドビシステムズでフィールドマーケティングマネージャー、バスキュールでプロデューサーを経て2014年に株式会社HEARTCATCH設立。ビジネス・クリエイティブ・テクノロジーをつなぐ“分野を越境するプロデューサー”として自社、スタートアップ、企業、官公庁プロジェクトを生み出している。2020年には米国ロサンゼルスにHEARTCATCH LAを設立し、米国でのプロジェクトも進めている。