• イベントレポート

100BANCHだからこそ生まれた「マインド・ミーツ・マガジン」という挑戦──ナナナナ祭2026を終えて

さまざまな人が同時に楽しめる物語の創作方法の確立を目指すプロジェクト「Novel Colony」。これまで、参加者が共同で物語を創作するリレー小説形式と、公開オーディションのような選抜システムを組み合わせ、新たな小説の共創に取り組んできました。

今回のナナナナ祭2026では、同じく100BANCHで活動する「Next Serendipity」プロジェクトとコラボレーションし、パーソナライズ雑誌「マインド・ミーツ・マガジン」を企画しました。参加者が「今、話たいこと」を入力すると、そのテーマに合った記事が選ばれ、自分だけの雑誌としてその場で印刷される体験を届けました。多くの来場者が自分だけの一冊との出会いを楽しんだ、その模様をNovel Colonyの佐々木竜太郎がレポートします。

本企画は、AIによるスライド自動生成技術の開発に取り組む Next Serendipityプロジェクトとのコラボレーションで実施をしました。Next Serendipity視点でのレポートは下記からご覧いただけます。

<『2026.2. 構想』>

「マインド・ミーツ・マガジン」 の構想を思いついたのは、実験報告会(100BANCH GARAGE Programの活動報告会)を控えた2月はじめのことだった。

その日の100BANCH恒例のMEET UPでは、Next Serendipity というプロジェクトが中間発表をしていて、「人間がレイアウトを決め、それに沿ってAIがスライドを自動生成する」仕組みが実現しつつあることを僕は知った。率直に、今までにない、新しくて魅力的な技術だと思った。

それだけでその日が終わっていたら、ただ新しい技術を知って満足してそれきりだっただろう。だけどその回は、中間報告のあとに、「ナナナナ祭でやりたいこと」を発表する時間があったのだ。考えたときに頭に浮かんだのは、先ほど知ったAIの技術だった。

「決められたレイアウトに沿って動くAIがあるなら、人に合わせてAIが中身を変えることで、自分だけの雑誌を受け取れる体験が作れるんじゃないのか」

SNSで個人発信できる時代に雑誌と聞くと、時代遅れに感じるかもしれない。

ただ自分は学生の時に雑誌をよく読んでいて、ファッションやアート、音楽等々、自分の世界が広げてくれた雑誌というものの魅力を現代でも体現したい、という気持ちがあった。雑多なコンテンツが、一度に読めるサイズに収まっていることで、つい自分の知らない分野の記事も読んで新たな魅力に気づく⋯

その価値は、情報が増えすぎて何の記事を読んでいいのか分からなくなった時代にこそ輝くはずだ。AIが読者が読むべき記事をガイドする、だけどその記事には必ず新しい発見が入っている⋯そんな雑誌を作りたい。

そう思い、その場で構想を発表をしたのだった。

そして3月に「マイミージーン」と題した企画書を書き上げる。ここから3カ月にわたるプロジェクトの日々が幕を明けた。

▼実際に筆者が出力した「マインド・ミーツ・マガジン」の中身。インタビューの人や四コマ漫画、表紙のカラーや形に至るまで、様々な要素が読み手の入力した情報に合わせて選定され、パーソナライズされる。

 

<『2026.3-6 制作』>

今回の企画は、①雑誌のシステムを作る②ユーザーが雑誌生成を行うための筐体を作る③雑誌のデザインを作る④雑誌のコンテンツを作る、という4つのことをナナナナ祭までに完了させる必要があり、とてもじゃないが自分だけでは作り切ることは難しかっただろう。

①のシステム設計はこの企画を考えるきっかけとなる技術を作り出した Next Serendipity の髙松君が担当してくれた。彼なくして、このプロジェクトが形になることはなかっただろう。彼は今は AI 開発系の会社を友人とやっているが、元々ロボット工学を大学で専攻していたこともあり、②の紙の雑誌を受け取るための筐体の構造のデザイン・制作まで行ってくれ、時間がない中でも、当初思い浮かべていた「機械と対話して雑誌を受け取る」というユーザーの体験を実現させることができた。(実際は完全自動化とはいかず、マシンの背後に人を配置して、印刷された紙を折って冊子にしていたけれど)

当初のイメージ。これに近いものを当日実現することができた。

③のデザインは、会社の友人のつながりでデザイナーの砂田肇君に担当してもらった。ロゴから紙面のデザイン、4コマ漫画15種類の提供まで、忙しい中幅広い部分を協力してくれた。表紙が人によって色や形が変わる、というのも砂田君のアイデア。表紙のパターンが違う「マインドミーツマガジン」をブースに並べて置いておくことで、「人によって中身が変わる」ということを直感的に伝えることが出来たと思う。

そして自分が主に担当したのは④コンテンツの部分になるが、ここも読む人に「新しい発見」を感じてもらうために、自分なりにこだわった部分である。メインの企画として持ってきたものは「Mind Meets Interview」。様々な年齢、職業の人に、「今、あなたが人と話したいこと」という共通のテーマでインタビューを行った。読者が入力した「今話したいこと」と最も近い内容を話したゲストがマインド・ミーツ・マガジンに取り上げられるため、ある種話したい話題をきっかけに、人と人が雑誌を通じて出会うことになる。であるならば、普段なかなか話すきっかけのない人のインタビューをたくさん入れよう、と思った。そして雑誌「ビッグイシュー」を路上で販売している方、小笠原諸島に住む少年、100BANCH 近くのケバブ屋のオーナー、などなど、様々な方のご協力を得て、出演者の幅を広げることができた。雑誌のインタビューは普通、俳優などの有名人のインタビューを載せて多くの人が読みたくなるような工夫をするけれど、「自分に合う雑誌記事が出てくる」今回は、有名な人ではなく、あえて知らない人をゲストにする方が「自分とこの人にどのような共通点があるのだろう」という興味や発見が出て、むしろふさわしいと思ったのだ。実際に「身近にこんな活動をされている人がいるのを初めて知った」という声や、「自分以外の人の雑誌に出てきたゲストも見てみたい」という声などをいただき、多くの人に興味を持ってコンテンツを読んだもらうことができた。

 

<『2026.7 展示』>

そして迎えたナナナナ祭本番。最初は出力が不完全な部分もあったが、2日目後半から完全な体験を提供することができ、最終的には150名くらいの人に「マインド・ミーツ・マガジン」の出力を体験してもらうことができた。印象的だったのは、老若男女様々な方に楽しんでもらえたこと。お孫さんと一緒に体験してくださった方もいれば、友達同士で楽しんでくれた学生の人もいたり、仕事帰りのサラリーマンの人にも楽しんでもらえた。自分の頭の中に描いていた体験がどのように受けとめられるか、というところが今回のメインの検証だったが、思った以上に好評でほっとしている。改善点は、AI の出力から雑誌提供まで、5分以上時間がかかってしまったこと。今後他の場所での展示も検討しているので、その際はこの部分の改善も行いたいと思う。

また、来場者との交流を通じて、この企画のさらなる発展の方向性も見えてきた。まず一つが、どこかの企業と手を組み、人の希望に合わせたライフスタイルを具現化し、そこに必要なアイテムを提案する「パーソナライズカタログ」を作る可能性。そしてもう一つが、出版社などのたくさんのコンテンツを持っているところと手を組んで、大量の雑誌の記事のアーカイブを、改めてマインドミーツマガジンで編集しなおして提供する、「パーソナライズドのアーカイブ雑誌」を作る可能性。いろいろと可能性は広がる。

今回のナナナナ祭ではまずできるか試す、というところを行ったが、このイベントを通してシステムから筐体、デザイン、コンテンツといった一連の資産が生まれたので、今後メンバーと話して、この資産を有効活用する方向を探っていきたいと思う。

 

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