• イベントレポート

100年先の未来を描く3プロジェクトが登壇 2024年6月 GARAGE Program実験報告会

100BANCHで毎月開催している、若者たちが試行錯誤を重ねながら取り組んできた“未来に向けた実験”を広くシェアするイベント「実験報告会」。

これからの100年をつくるU35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」を終えたプロジェクトによる100BANCHでの活動報告や、100BANCHでの挑戦を経て、プロジェクトを拡大・成長させた先輩プロジェクトによるナビゲータートークを実施しています。

2024年6月20日に開催した実験報告会では、都市環境において謎に包まれている微生物コミュニティを明らかにし、微生物とサステナブルな関係を築くことで、健康で持続的な暮らしづくりに取り組む株式会社BIOTA代表取締役の伊藤光平(GARAGE Program 8期生 GoSWAB)をナビゲーターとし、GARAGE Programの計3プロジェクトが活動を報告しました。

本レポートでは、GARAGE Programの3プロジェクトの発表内容をお伝えします。

ICHIGIKU

社会に一つ、新たな軸を。

登壇者:松広航

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/ichigiku

「ICHIGIKU」は、ファッションのジャンルに新しく「宇宙(Universe)」を追加することを目標に、その第一歩として宇宙服をテーマにしたファッションショーの開催を目指すプロジェクトです。

松広:私たちICHIGIKUは俳優、エンジニア、研究者、デザイナーといった様々な分野のメンバーが集結した「個の意義と社会をつなぐスタイリスト集団」 です。「不易流行」を大切にし、人間社会の中に新しいものを見出して新しい軸(GIKU)を提案していくことを目指しています。 100BANCHでは、宇宙服だけをテーマにしたファッションショーの開催を目指しています。未知の世界である宇宙時代、宇宙空間を基盤に創造する服は既成概念を壊し、社会に新たなインパクトを与えることができるんじゃないか、 それにともなって解決できる課題があるんじゃないか、と考えています。

100BANCHの3ヶ月でケーススタディとして行ってきたものがヘルメットです。 ヘルメットは衝撃から守るためのものというのが一般的な認識だと思いますが、宇宙時代では当たり前のようにヘルメットが着用されているんじゃないかという仮説のもと、視覚デザインやコンセプトを考えていく思考実験を行ってきました。その中で、2つほど具体化できた取り組みがあります。1つは、ナナナナ祭に向けての取り組みです。宇宙時代のファッションってどうなるんだろう、と考えるきっかけを作りたいと思い、「【宇宙服の場合】Vision1/ヘルメット」 という体験型のイベントを開催します。宇宙時代のヘルメットを考えた時に機能を要素分解し、それに特化したコンセプトデザインをつくりました。例えば、空気のない宇宙空間で会話をするために聴覚や集音の機能があるのではないか。衝撃だけではなく、火や放射線などへの防災機能、帯電対策が出てくるのではないか、などです。これらに取り組んだ結果、新しいデザインを考えることによって、いま起こっている課題や見過ごされているような問題に新しい提案ができる兆しのようなものが見えてきました。また、こういったモノをつくって触ってみることは非常に面白いと感じる一方、捨てることや、ないものに目を向けることにも興味が湧いてきました。今まで形あるものが形ないものになった時に、それに何か形を見出すような取り組みも進めています。小平にある「照恩寺」というお寺がアートプロジェクトを行っているんですが、そこで個展をさせていただくことが決まりました。お面を主題とし、形なきものに形をみる“おもかげ”をテーマにした個展を開催予定です。

「今後の展望しては、これまでやってきたことをしっかり作りながら、実際にファッションショーを開催し、ファッションに当たり前のように“宇宙”というジャンルが入ることを目指して活動を続けたいと思っています。」  と松広は話しました。

 

Tateru

「点てる」という行為の浸透から、第三の時間を街なかに。

登壇者:副田優喜

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/tateru

「Tateru」は、お茶を「点(た)てる」行為を浸透させ、人々に安らぎの時間と場所を提供することで、街なかで第三の時間の開放を目指すプロジェクトです。

副田:100BANCHではGARAGE Program期間を延長して6ヶ月間活動してきました。後半の3ヶ月は、同じ場所でポップアップを開催し続けることを目指した結果、現在浅草のkikakiというお店でポップアップをやらせてもらっています。正直、浅草という抹茶があまり珍しくはない場所でいかにお店に来てもらうか、すごく難しいです。梅雨に入り、雨の日にはお客さんがなかなか来てくれません。しかし浅草に住む方々に「第三の時間ってすごく大事なんですよ」と話をしたところ、4人の方が毎週来てくれるようになりました。「毎週のルーティンになった」「日本人として知りたかったものを知れた」「お茶教室よりも通いやすい」などと言ってもらえ、自分が伝えたかったことが伝わってうれしいです。これを再現性と汎用性をもって広げていくにはどうしたらよいだろうと考えることがこれからの3ヶ月だと思っています。 

これまでの活動を通して見つけたことがあります。抹茶は味のカテゴリーの1つとして捉えられがちですが、本来は行動様式を楽しむものです。行動様式として一定のマナーの上で飲んで主客一体のグルーヴ感を味わうことこそが抹茶の本質なんですが、一般的なカフェだとプラスチックボトルで砂糖やミルクと合わせて飲んだり、抹茶の本来の味を味わっていません。抹茶の本質を味わえるお茶室が10だとすると、僕は8ぐらいのものをつくりたいと思って試行錯誤してきましたが、正解が見つかっていない段階で100BANCHの入居期間が終わりました。日本でサードプレイスとしてトップシェアを誇ってるのは、スターバックスやタリーズやドトールなどですが、そのしつらえはどうしても西洋的なものです。僕はお茶の文化を持ったカフェがトップシェアを誇ることで、なくなりかけている伝統産業を守る1つの手段になれる、と強く思っています。守るにしてもやっぱり楽しむ場がないといけない。お茶室はなかなか敷居が高いのが現状なんですが、敷居をちょっと低くした「Tateru」に来てもらうことでお茶文化に携わる人たちを守れるのではないかと思っています。

「今後の予定として、来月はハワイでポップアップをやります。また浅草でやっていることを吉祥寺、渋谷でもやりたいと思っています。来年、世界一周する予定があるので、世界中のレストランでもポップアップをやろうと思っています。」と副田は話しました。

 

PxCell

ヒトの細胞を売り買いする世界をつくる

登壇者:川又 龍人

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/cybor-ichiba

「PxCell」は、大切な誰かの細胞を結婚指輪・お守り・形見・ファングッズ等に加工することで人の想いに寄り添うプロジェクトです。 

川又:「PxCell」では同意書に記入していただき、口の中から細胞を採取、それを培養または分離し、ブロックチェーンを使ったデジタル証明書を発行し、お守り、香水、アクセサリーなどに加工を行っています。どうして細胞をテーマにしているかというと、美大の卒業制作で将来的に細胞が売り買いされるんじゃないか、というスペキュラティブデザインのような展示ブースを作品として作ったことがきっかけです。そこから大学院、AIの会社を経て、去年の7月に100BANCHに入居し、「PxCell」を創業しました。今年の1月には DIG SHIBUYA で展示を行うことができました。また、友人の同性カップルに「同性同士で子供を授かることはなかなか難しいので二人の絆を結び付けられるようなアイテムを作れないか」と相談を受け「PxCell Marriage」というマリッジリングを制作しました。指輪の裏側にお互いの細胞が入っています。アイドルの細胞の入ったリングも制作し、4月から予約販売を行っていて実際に売れています。

最近の活動としては、A cultured energy drink の田所さんと一緒にバイオラーメンを作ったり、ナナナナ祭に向けての展示物を考えたりしています。推しのDNAの入った香水、蚕にヒトのDNAを混ぜた糸でつくったリング、細胞採取キットを展示したり、イカの表面の発光細菌を用いた光るネイルを BioCraft さんと一緒に作ろうと考えています。

「8月には Transeedsというアーティスト集団と一緒に国立新美術館の講堂で展示を行う予定です。イカの表面の発光細菌を用いた光る服だったり、あなたの身体はあなただけのものじゃないということをテーマに、両親のDNAの入った紐パンなどを作ろうとしています。」と川又は話しました。 

 

実験報告会の各発表内容はYouTubeでもご覧いただけます。​​

ICHIGIKU https://youtu.be/xAc7e2SS340?si=VbCDcgBK_aJZp27H

Tateru https://youtu.be/Vv_-B5m6wmE?si=vgGgB91vrpVYSEVs

PxCell https://youtu.be/KvlAWDcJZSQ?si=OVUg7YF_NqvIzHQZ

次回の実験報告会は7月25日(木)に開催。ぜひご参加ください!

(撮影:鈴木 渉)

 

<次回実験報告会>

「紙と印刷の可能性を探りながら、領域を超えたデザインを追求する」100BANCH実験報告会

 

 

【こんな方にオススメ】
・100BANCHに興味がある
・GARAGE Programに応募したい
・直接プロジェクトメンバーと話してみたい
・デザインやアートに興味がある
・紙や活版印刷の技術に興味がある

【概要】

日程:7/25(木)

時間:19:00 – 21:30 (開場18:45)

会場:100BANCH 3F

参加費:無料(1ドリンク付き)

参加方法:Peatixでチケットをお申し込みの上、当日100BANCHへお越しください

 

詳細はこちらをご覧ください:https://100banch.com/events/62390/

 

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