竹専用の接合部「OKINA」で、あり余る地域資源を「宝の山」にする
OKINA
竹専用の接合部「OKINA」で、あり余る地域資源を「宝の山」にする
100BANCHで毎月開催している、若者たちが試行錯誤を重ねながら取り組んできた“未来に向けた実験”を広くシェアするイベント「実験報告会」。
これからの100年をつくるU35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」を終えたプロジェクトによる100BANCHでの活動報告や、100BANCHでの挑戦を経て、プロジェクトを拡大・成長させた先輩プロジェクトによるナビゲータートークを実施しています。
2024年5月23日に開催した実験報告会では、人や地域、寺や神社、組織や会社など様々な物事の「終わり」に光を当て、変化に優しい社会を目指すGARAGE Program 50期生「MUJO」の前田陽汰をナビゲーターとし、GARAGE Programの計3プロジェクトが活動を報告しました。
本レポートでは、GARAGE Programの3プロジェクトの発表内容をお伝えします。
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竹専用の接合部「OKINA」で、あり余る地域資源を「宝の山」にする
登壇者:大野宏
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/okina
「OKINA」は、あらゆる地域にある竹と竹専用の接合部「OKINA」を利用して、地域の人と地域の資源で、地域に必要な空間と資源の循環を生み出すことに挑戦するプロジェクトです。
大野:普段、建築の設計の仕事をしているのですがその中で、その場にあるものでつくることをやっているのですべてのものが宝の山、資源に見えてくるんですね。全国から「放置竹林をどうにかしてほしい」という依頼があるので、いつも建築で竹を使っています。この依頼があまりにも多すぎるため、竹を自分たちで組んでもらえるジョイント「OKINA」をつくりました。ローテーブルや椅子のような小さなものから、パビリオンと呼ばれる東屋(あずまや)のようなものもつくれます。放置竹林の竹を使ってつくるのですが、イベントスペースをつくった後は現地の竹仲間の人たちに竹炭にしてもらって、それを農地として利用するのが通常の流れです。この「OKINA」、想像していたよりもなんでもつくれることが分かってきました。最近100BANCHで開催したイベントではテントをつくりました。16本の竹が組み合わさっているんですが、1つも部材を離さず幕をつけたまま畳むことができます。イベントスペースのゲートのようなものや、人が下に入れるようなものまでつくれるようになりました。
竹を使いはじめたのは、3.11の時に建築を学び始め、現地に資材がなかったため竹で建築をつくろうと思ったのがきっかけです。なので、災害時に現地の竹でシェルターをつくるのがぼくの裏テーマだったりします。体育館の間仕切りをつくったり、その上に仮設テントをつくったり、そういうところを目指して設計したり、行政とやり取りしながら実際にどのように活動できるか考えながらOKINAを広めています。先日、能登に行ってきたのですが、現地に動ける人がいないと進まないとわかったので、各地に「竹取のOKINA」というチームをつくり、災害時には彼らの竹林にジョイント OKINAを持っていって一緒に被災支援を行える仕組みをつくろうと考えています。また、小中学生と運動会のテントを竹切りからつくる教育活動や、OKINAを使って組み立てられる家具の説明書のようなものをホームページで公開する活動もしています。
「関西出身で関東に伝手がないため、現在、関東でどうやって広めていくか検討しています。ナナナナ祭では外にイベントスペースをつくろうとしているのでぜひ見てください。」と大野は話しました。
世の中にあふれている素材を見つめ直し、素材が持つ可能性を示していく
登壇者:五月女健翔
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/lifehackmaterial
「LifehackMaterial」は、身の回りに存在するすべてのモノを素材として捉え、その使い方、使われ方を見つめ直し、ポテンシャルを引き出すデザインを行うプロジェクトです。
五月女:現代社会におけるデザインやものづくりは、先端素材や先端技術に注目が集まりやすい傾向があり、今後も同じことが続いていくと予想されます。そういった未来において、既存の素材や技術、概念をどう使うのか、どう扱っていくのかが重要になってくると考えています。そこで自分たちは、世の中に存在する全ての素材に可能性を見出し、デザインという手法でアプローチするプロジェクトを行っています。
100BANCHの3ヶ月間では、アルミフレームという素材に注目しました。フィールドワークで町工場に見学に行った際、倉庫の裏に大量のアルミフレームを見つけたことがきっかけです。工場の方に話を聞いたところ「捨てるわけでも使うわけでもなくただ眠っていた」とのことだったので、こういったものが使われないのはちょっと寂しいと思い、研究してみようという話になりました。アルミフレームは、テーブルの裏やパーテーションの裏など、あまり表に出てこない部分に使われてるので馴染みがない素材だと思います。このアルミフレームを使った椅子を制作したり、アルミフレームと3Dプリンターなど、技術を組み合わせた「AL_Lamp」というタイトルの照明をつくったりしています。これらの成果物は、KOCA クラフトマルシェ(2023)と白水社のオフィスで展示させてもらいました。
「成果物の展示をするたび、その椅子ほしい、販売しないの?といった声もいただくので、現在、プロジェクトの延長申請をしています。今後、どうやったら販売できるのか相談しながら、製品化に向けた活動を行っていきたいと思います。」と五月女は話しました。
かざして探そう!モノの新たなスタートライン
登壇者:山本虎太郎
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/trash-lens
「Trash Lens」は、モノを手放そうとしている人が、そのモノをスマホで撮影するだけで処分・活用方法を提示するアプリを提供することで、適切な処分や活用法を調べるハードルを引き下げ、より良いモノのスタートラインを選べるようにするプロジェクトです。
山本:手放そうとしているゴミをスマホにかざすだけで捨て方や活用法がわかる「Trash Lens」というアプリケーションを開発、公開しています。アプリを開いて、捨てたいものをカメラで撮影すると、AIが画像から種類や特徴を検出して、捨て方や活用法を提示してくれます。4月10日にアプリを公開して10日間で1,000人近くの方に利用していただいたほか、ウェブメディアや業界誌などで取り上げていただき高い注目を集めています。最近では、共同で何かしようとお声がけいただくことも多くなってきました。アプリの公開までのいきさつですが、去年の夏に100BANCHが借りている田んぼの草むしりをしに徳島県に行きました。隣町の上勝町では45種類ものごみの分別が行われていると聞いて、朝から様子を眺めていたんです。すると、ゴミを捨てようとしている人に駆け寄って「こういうものはここに捨てるんですよ」「これは必要な人に渡せるお店があるからそこに持って行きましょう」など、案内している人がいました。「これこそTrash Lensの果たしたかったことだ」と再確認しました。その後、 MOGURA という100BANCHのプロジェクトと一緒に、シンガポール、インドネシアに行きました。インドネシアのゴミ山にアポ無しで行ったとき、現地の方にアプリケーションを見せたら「すごくいいね」と言っていただいたことがきっかけで、環境局の方にゴミ山を案内してもらったり、現地の集落にも馴染むことができました。その経験から、実は自分が得意な言語は、日本語でも英語でもなく、プログラミング言語なのかなと感じたので、まずはプロダクトを作ろうと考えるようになりました。また、最近は子供向けのTrash Lensも制作しており、YOMY! というプロジェクトのイベントに相乗りで出展させてもらいました。
「今後は、特定地域で自治体さんや事業者さんの協力をもとに価値検証を実施し、それをもとに10月からTrash Lensの生み出す価値を全国に広げていきたいと考えています。」と山本は話しました。
実験報告会の各発表内容はYouTubeでもご覧いただけます。
OKINA https://youtu.be/fyVP3jiymAY?si=9R9sV7ab3Nar3wpt
LifehackMaterial https://youtu.be/z2S5yd70zVs?si=GqPhcXRH7cknIqZa
次回の実験報告会は6月20日(木)に開催。ぜひご参加ください!
(撮影:鈴木 渉)
【こんな方にオススメ】
・100BANCHに興味がある
・GARAGE Programに応募したい
・直接プロジェクトメンバーと話してみたい
・微生物やバイオ研究に興味関心がある
【概要】
日程:6/20(木)
時間:19:00 – 21:30 (開場18:45)
会場:100BANCH 3F
参加費:無料(1ドリンク付き)
参加方法:Peatixでチケットをお申し込みの上、当日100BANCHへお越しください
詳細はこちらをご覧ください:https://100banch.com/events/61371/