• イベントレポート

シブヤの循環型農園で収穫して食べる!100BANCH farm BIG LUNCH─ナナナナ祭2023を終えて

「Yasai no CANVAS」は、やさいの色彩や都市型農業の生産プロセスを通して 贈与経済文化の醸成や発信を目指すプロジェクトです。

今回、ナナナナ祭2023では、誰でも自由に野菜づくりにかかわることができる移動型の農園「100BANCH farm」という取り組みを昨年に引き続き実施しました。100BANCHの目の前にある渋谷リバーストリートに設置した移動型の野菜プランターには、季節の野菜やハーブを育て、ナナナナ祭の最終日には野菜づくりにかかわってくれた人や見守ってくれた人をあつめて、一緒に野菜を収穫し料理して食べる「BIG LUNCH」を開催しました。「シブヤ系循環型農園」の2年目の挑戦や取り組みのコンセプト、実施して考えたことをレポートします。

こんにちは。Yasai no CANVASプロジェクトリーダーで、100BANCH farm BIG LUNCHを企画した瀬戸山です。

私たちは、農と食を媒介に地域のつながりを育むことをテーマに活動しており、特に地域コミュニティにおける贈与経済のきっかけとして「農」というカルチャーを活用できないかと、日々実験と実装を繰り返しています。

昨年のナナナナ祭2022の企画で、100BANCHとの共同企画として渋谷川沿いに設置した「100BANCH farm」という移動式の農園。

今年、ナナナナ祭2023では、この100BANCH farmで育てた野菜やハーブを収穫して、かかわってくれた人たちや見守ってくれた人たちとともに、ラオス料理の「ラープ」をつくり、みんなで食卓を囲む「BIG LUNCH」を実施しました。

 

シブヤ系循環型農園「100BANCH farm」とは?

「循環」というテーマの原点は、瀬戸山が学生時代に滞在していたラオスの農村にありました。農村では、家族の食事の残飯を飼っている家畜にあげて、その糞を堆肥にして畑に撒き、その畑で育った野菜を家族で食べるという暮らしのリズムがありました。

本企画のコンセプトである「シブヤ系循環型農園」では、「土」に地域の落ち葉を使用しているだけでなく、農園の「素材」はパナソニック社の人造大理石の廃材をアップサイクルして、シブヤの特徴である多様な 「人」が関わりやすい設計にすることで、廃材と人の関わりについても循環することを要素に加えました。なお、100BANCH farmは、移動式農園の中に水を貯めて底面吸水する仕組みになっており、水も循環する構造となっています。

詳しくは昨年のナナナナ祭2022の100BANCH farm 収穫祭のレポートをご覧ください。

※リンク https://100banch.com/magazine/38421/

 

100BANCH farm の BIG LUNCHが映し出す未来

100BANCH farmが渋谷川沿いに出現してから1年が過ぎました。四季を経て、野菜の成長がうまくいった時期やそうでない時期もあり、農作業をしているとさまざまな声をかけていただきました。冬はハーブ類や葉物類を植えてもほぼ全滅でむなしい思いをし、春先はアブラナ系の野菜を中心に栄え、その後きれいな菜の花をつけました。その様子を観ていた地元の方からは、「4月ごろまで枯れていたから心配していたよ」という声や、「この前のバジル、ちゃんと味がして美味しかった」という声もあり、少しずつ認知が広がっている実感を得ています。

失敗や改善を繰り返して、昨年の収穫祭から1年が経ちました。一緒に管理してくれる仲間もわずかながら増え、迎えたナナナナ祭2023当日。

野菜のお世話に参加してくれた方のご家族2組とお友達が参加してくれて、計16人でのBIG LUNCH。今回みんなでつくるのは、瀬戸山の思考の原点でもある東南アジア・ラオスの家庭料理「ラープ」。

この日に向けて育てていたスペアミントと唐辛子、スナップエンドウ、バジル、ミニピーマン、オクラを収穫。見分け方を子どもたちに教えると、まるで宝探しのように、いきいきと収穫してくれました。大人はその様子を優しく見守ります。

ラープは、鶏肉とハーブ類(ミント)と野菜をナンプラーとライムで和えたサラダのようなさわやかな味わいの料理で、その語源には「混ぜる」という意味と「幸せ」という意味の2つがあると言われています。みんなで収穫した野菜やハーブを細かくして、事前に用意しておいた鶏肉と混ぜる。もはやどの家族の子どもなのかも分からないくらいごちゃごちゃになって、「やりたいやりたい」という声が重なる。

そうして、子どもたちとつくった料理「ラープ」を、お母さんお父さんたちの待つ食卓へ。

大人も子どもも初体験のこの料理を囲んだ食卓は、「おいしい!」「みんな頑張ったね!」というポジティブな声にあふれて、まさに幸せな食卓の光景に包まれました。

土をつくることから食べるという行為まで、そのプロセスは古から脈々と続き、機械化によって方法は変わっても、人がかかわるという根本的な部分は変わらない。

食に関して、渋谷は消費の地として認識されていますが、生産と再度つながることで、教育という観点や社会性という観点など、様々な要素が「食卓」に再構成されるのではないでしょうか。それはまさに、旧くて新しい文化。都会で暮らしていても農村的につながれる、都会暮らしか田舎暮らしかの二者択一ではない新しい選択を生み出していけるのではないかと期待し、また野菜を育てていきます。

 

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