MEMBER COLUMN

2022.08.18 Thu

みんなでつくってみんなで食べる、「100BANCH farm」という社会実験ーナナナナ祭2022を終えて

  • #ナナナナ祭2022

ナナナナ祭2022では、誰でも自由に野菜のお世話ができる移動型の農園「100BANCH farm」という取り組みを行いました。100BANCHの目の前にある渋谷リバーストリートに設置した野菜プランターは、誰でも自由に野菜の世話ができます。ナナナナ祭の2日目には野菜のお世話をしてくれた人を招待して、収穫した野菜を料理して食べる「収穫祭」を開催。「シブヤ系循環型農園」に挑戦しました取り組みのコンセプトや、実施して考えたことをレポートします。

こんにちは。Yasai no CANVASプロジェクトリーダーの瀬戸山です。

私たちは、農と食を媒介に地域のつながりを育くむことをテーマに活動しており、特に地域コミュニティにおける贈与経済のきっかけとして「農」というカルチャーを活用できないかと、日々実験と実装を繰り返しています。

今回のナナナナ祭2022では、100BANCHとの共同企画として「100BANCH farm」という移動式の農園を渋谷川沿いに1ヶ月間設置し、野菜の成長に関わってくれた方々と収穫祭(インクレディブル・エディブル)を開催しました。

5月に渋谷川沿いで開催された「SHIBUYA SLOW STREAM」に出展し、米袋をリメイクした野菜ポットに種をまくことから、この企画は始まりました。6月には廃材をアップサイクル した「シブヤ系循環型農園」を組み立てて、100BANCH前の渋谷川沿いに設置しました。ナナナナ祭当日は、トマトやナス、ピーマン、空芯菜などの夏野菜を一緒に育ててくれた人たちを「収穫祭」に招待し、みんなで収穫したあとに即興で料理をしてカップサラダで乾杯して食べました。

では、なぜ100BANCH farmは「シブヤ系循環型農園」を名乗るのか。

「循環」というテーマの原点は、瀬戸山が学生時代に滞在していたラオスの農村にありました。農村では、家族の食事の残飯を飼っている家畜にあげて、その糞を堆肥にして畑に撒き、その畑で育った野菜を家族で食べるという暮らしのリズムがありました。

本企画のコンセプトである「シブヤ系循環型農園」では、「土」に地域の落ち葉を使用しているだけでなく、農園の「素材」は廃材のアップサイクルにこだわり、シブヤの特徴である多様な 「人」が関わりやすい設計にすることで、廃材と人の関わりについても循環することを要素に加えました。

今回は、農園の容器素材としてパナソニック社の人造大理石の廃材をアップサイクル しています。また、このように、地域の方々もお世話できるように「6つのできること」を看板にイラストで示し、参画を促しました。

なお、100BANCH farmは、移動式農園の中に水を貯めて底面吸水する仕組みになっており、水も循環する構造となっています。

今回の企画は、ナナナナ祭2022のテーマである「地球の上で未来をつくる」を表現しようという思いから、「循環」をキーワードに立ち上げました。「環境に良いことをしましょう」とただ投げかけるのではなく、渋谷で暮らす、働く、学ぶ人たちが循環に加わって「自分たちも未来をつくる一員である」と体感してもらうためにも、「農」という分野は参加ハードルが低く、相性が良いと感じていました。

実際に、私や100BANCHのスタッフが100BANCH farmに水やりをしていると、「これは何を育てているの?」「昔は井の頭線沿いにも小さな畑があったんだよ」など様々な声をかけられることがあって「農」の関わりやすさやコミュニケーションのネタとしての価値は非常に高いなという実感がありました。

なかには、5月のSHIBUYA SLOW STREAMでの種まきイベントから一貫して収穫祭まで参加してくれる家族も複数組いて、子どもたちが「これ僕が植えたんだよ!」「ちゃんと大きくなってる!」と目を丸くしながら喜んでいた姿はとても印象的でした。周りの家族以外の大人からも「そうなんだ、すごいね!」「すごい立派だね!」と褒められて、子どもたちは鼻高々な様子でした。

また、収穫祭の当日に農園の周りでワイワイ収穫していると、女性2人組が「この近くでバイトしていて、ずっと気になって毎日様子を見てました。途中アブラムシがついていたので、ちょっと心配だったんですが、いなくなりましたね。見守っていただけなんですけど、収穫祭参加してもいいですか?」と恥ずかしそうに声をかけてくれました。「見守ってくれていただけでも、大切な役割です。ありがとうございます。」と感謝の気持ちをお伝えして、収穫祭にも参加してもらいました。

まさにこのコミュニケーションが、都市部に農園がある価値だと思っています。きっと、毎日愛情を込めて見守ってくれていたので、同じような感覚で農園に接してくれていた人たちと一緒に食べたくて、勇気を出して声をかけてくれたんだと思います。みんなで料理をしながら、なぜアブラムシがいなくなったのか、という問いかけに対して「テントウムシが、、、」と返答していたら、他の参加者の方が「そういえばバジルの葉っぱにだけテントウムシがいたの見ました!」と嬉しそうに報告してくれて、いつの間にか二者関係が三者関係に拡がっていました。

また、全然別角度の効果として、農園の周りには、日頃から悩んでいた自転車の違法駐輪がなくなったり、ゴミのポイ捨てが少しずつ減っていくなど、まちの困りごとをちょっとだけ解決する側面がありました。この現象も、ただ植物が植っているだけでは起こらず、野菜を植えて、気にしてくれる人が一定数いるからこそ起こったのだと考えています。

今回の企画でもう一つ良かったのは、一つの空間で「野菜を育てる」「収穫する」「料理する」「食べる」という全てのサイクルを体験できたことだと思っています。通常は生産者と消費者という言葉からも分かる通り、両者には隔たりがあり、背景のストーリーは伝わらないので感謝の気持ちを抱きづらい分断構造になっています。

今回のように一つの空間で全てのサイクルが実施されると、みんなの共通のストーリーとしてそれぞれの視点から語ることができます。人によっては、過去の経験に結びついたり、サイクルでの活躍を称賛されたり、対話は様々な方向で拡がり、深まります。地域コミュニティの原点とも言える光景でした。

渋谷という食を「消費する」人が多く集まるまちだからこそ、対話が非常に盛り上がりました。生産と消費が分断されている地域は、日本全国にたくさんあります。100BANCH farmのような「循環」をテーマにした移動式農園を設置して、地域コミュニティの原点を日本各地に育てていきたいので、ぜひお声がけください。

WRITER

YASAI no CANVAS

瀬戸山 匠

リーダー

Share Re Green 代表。大学生の頃からラオスの農村で教育関連の活動を行い「ラオスの農村で暮らす人々の主観的幸福感が高いのはなぜか」について研究している。また、兼業農家として農薬不使用の野菜を育てながら2019年1月に野菜加工品のアイデアソンを開催し、7月より「やさいクリーム」を発売開始。2019年9月より越谷市内にて平屋の庭を畑にした「HIRAYA FARM」をオープン。