楽しさの垣根のない場をつくることで、
障害を生み出さない社会を目指したい
Blined Project
楽しさの垣根のない場をつくることで、
障害を生み出さない社会を目指したい
視覚の状態に関わらず共に楽しめるボードゲームの開発などをおこなう「Blined Project」(ビーラインドプロジェクト)。「見ても見なくても見えなくても楽しめる」ボードゲーム「グラマ」はこれまで1100人以上の方に体験していただいています。今回はそんな「グラマ」をくらがりの中で体験し語り合うイベント「くらがりグラマ」を2023年6月24日に100BANCHで開催しました。
イベント開催の背景や当日の様子を、「Blined Project」の三浦輝がレポートします。
私たちビーラインドプロジェクトは、「『#見ても見なくても見えなくても楽しめる』を増やして、一緒にワクワクする世界へ」を掲げて活動をしている団体です。「#見ても見なくても見えなくても楽しめる」ような「モノ」や「場」やそれらを作り出す「人」で溢れる社会を作り出していくことを目指し、活動を続けています。
そんな私たちは、視覚の状態に関わらずに楽しめるオリジナルボードゲームの第一弾として、昨年「グラマ」というボードゲームを開発しました。子どもたちが「視覚の状態に関わらずに一緒に楽しさを共有できるなにか」を作ろうという思いからはじまった私たちの制作活動から生まれた「グラマ」には、同じボードゲームを囲んで「楽しい」体験を共有することでお互いへの自然な理解が深まっていってほしいという願いが込められています。
私たちビーラインドプロジェクトは、これまでにグラマを使ったイベントや体験会を60回以上開催しており、視覚の状態を問わずに1100人以上の方々にゲームを体験していただきました。
「グラマ」の遊び方を簡単に紹介しましょう。
4人で遊ぶ協力型のボードゲームであるグラマは、「コミュニケーション力」や「重さの感覚」「表現力」などを使って楽しむゲームです。
それぞれ違う重さの巾着袋を配られた4人のプレイヤーが、話し合いながら袋の中の重りの数を調整し、全員の巾着袋の重さが全く同じになることを目指します。最終的に全員の巾着袋を4つのお皿のついた「天秤」に載せ、「せーのっ!」の掛け声で一斉に天秤から手を離し、天秤が釣り合えば見事成功!「ガシャーン!」と天秤が崩れてしまえば失敗です。
グラマについてのルールは、以前のイベントの記事でも詳しく紹介しておりますので、ぜひご覧ください。(https://100banch.com/magazine/46147/)
さて、今回開催したイベント「くらがりグラマ」は、そんなボードゲーム「グラマ」を使って行ったイベントです。普段私たちが開催している明るい雰囲気のわいわいとしたボードゲーム体験イベントとは異なり、今回の「くらがりグラマ」では参加者の皆さんが、ゲームを通じてお互いや自分との対話をじっくり楽しむことができるような雰囲気作りをすることを目指しました。
今回のイベントには、多様な方々が参加されていました。グラマを過去に体験したことがある人もない人も、様々な視覚の状態を持つ方も、様々な年齢の方も、全ての参加者の皆さんにグラマの生み出す「対話」を楽しんでいただくため、企画の中で様々な工夫を行いました。
イベントの前半ではいつも通り明るい雰囲気の中グラマの基本的な遊び方でゲーム体験を行い、グラマで遊んだことのない人には、まずグラマそのものの魅力に触れていただきました。
イベントの後半ではがらっと雰囲気を転換し、ちょっぴり大人な、落ち着いた雰囲気の中でグラマ体験を行っていただきました。前半で流れていた明るいケルト音楽は、後半では落ち着いたピアノのジャズに。明るい雰囲気を象徴していた天井いっぱいの照明は全て暗転し、代わりに参加者の皆さんと共に、各卓にキャンドルの火をともしました。優しい香りも漂う中、「バーのマスター」のような落ち着いた声色に変化した司会の誘導に従って、「くらがりグラマ」の後半がはじまっていきました 。
「グラマバーを開店します。」
音も、匂いも、そしてそれら全体が生み出す会場の落ち着いた雰囲気も。「見ても見なくても見えなくても楽しめる」くらがりグラマの雰囲気作りは、今回のイベントの企画で最も工夫をした点でした。
様々な工夫をして臨んだ、今回の「くらがりグラマ」。当日を迎えるまで、成功するかどうか不安な気持ちもありました。しかし、「くらがり」の中で参加者の皆さんとの対話を楽しみ、今回のイベントを開催することができて本当に良かったと感じています。
ここで、当日のイベントの中で特に印象に残った場面を2つご紹介します。ボードゲーム「グラマ」では、ゲームの中で「自分の袋の重さを、感情の程度を用いて表す」場面があります。例えば、「緊張の度合い」というテーマで自分の袋の重さを表現する際は、重い袋を持っていた場合は「100人の聴衆がいるピアノの発表会の出番前の緊張感の重さくらい」や、軽い袋を持っていた場合は「小学校の時に、算数の小テストを受けるときくらい」などというエピソードを用いて重さを伝えます。
さて、ここでご紹介をする2つの印象に残った場面は、どちらもこの「袋の重さを感情の程度で表した」ときのことです。
まず1つ目は、「幸福感の度合い」というテーマでグラマのゲームを行った際の話です。イベントの後半、「くらがり」の落ち着いた雰囲気の中、参加者の皆さんにじっくりとした会話を楽しんでもらいたいと思い設定したお題です。ある机では、「週に何度か一緒にご飯を食べるような仲の良い友達と、いつも通り居酒屋でご飯を済ませた後、何となく皆でふざけ合いながら散歩をしている時くらいの幸福感の度合い」という重さの表現が出ていました。この重さの表現を聞いた周りの参加者の方からは、一斉に「ああ~」という共感の声が上がりました。
なんだか、グラマというボードゲームを通じて、幸せを分かち合えたような気がして、とても嬉しく思いました。
次に2つ目は、「悩みの度合い」というテーマでゲームを行ったときのことです。あるグループでは、「学校が休みの日にリビングでお母さんと会話をしていたら、同じくリビングでリモートワークを行っていたお父さんから嫌な顔をされた時の悩みの度合い」という重さの表現をしている方がいました。誰が悪いわけでもなく、悩ましい状況です。この表現をされた方は大学生の参加者の方だったのですが、同じグループには同じくらいの年の子どもを持つ方もいらっしゃいました。その方は、むしろ「自分がリモートワークをしているときに子どもが歌い出してしまって困ったことがある」などのエピソードを話してくださり、グループの中で様々な視点から悩みの度合いの議論が行われていました。
ゲームの成功には直接は関係しないところでも話が拡がったり、ゲームの中でお互いの人柄や生活について想像が膨らんでいく場面が見られたことは、今回のイベント「くらがりグラマ」の大きな収穫だったように感じます。
今回のイベントは、私たちにとってある意味「再出発」とも言えるイベントでした。前回のイベントを経て、最終目標としての「『#見ても見なくても見えなくても楽しめる』を増やして、一緒にワクワクする世界へ」という理念がメンバー内ではっきりと共有でき、私たちが実施をするイベントの価値も再定義した上で臨むことができました。これまでは、ボードゲーム「グラマ」という「モノ」の体験を楽しんでもらうことに主眼をおいている面があったものの、今回のイベントでは私たちが作るイベント空間での「体験」を最大限楽しんでもらうことができるよう、様々な工夫を行いました。
「くらがり」によって対話を促進するという私たちの狙いは、ある程度成功したのではないかと考えています。実際に、参加者の方々からは以下のような感想をいただきました。
・グラマというゲームを介して、初対面の方とこんなにも会話が弾み、多様な価値観に触れることができるのは驚きでした。
・自身のエピソードを話すことで、初対面の方でも短い時間で距離が近くなった気がしました。
一方で、ゲームの企画や、メンバーのファシリテーションの仕方などにいくつかの改善点を見つけることもできました。
今後、「#見ても見なくても見えなくても楽しめる」モノや場で溢れる社会の実現に向けて、今回得られた様々な気づきを活かし、更なる「モノ」の開発と「場」の創出を続けていきます。
「モノ」の開発や「場」の創出へのご協力に興味を持ってくださる方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。ぜひ一緒に「#見ても見なくても見えなくても楽しめる」社会を作っていきましょう!
ビーラインドプロジェクト
メールアドレス:blinedproject@gmail.com
Twitter:@BlinedProject
Instagram:@blinedproject
Linktree:https://linktr.ee/blinedproject