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逆境が未来へのステップに(VOL.1) コミュニケーションを欲する気持ちが隔たりを壊す Braille Neue / 未来言語:高橋鴻介

新型コロナウイルスの影響で、これまで築き上げた社会システムに大きな変化が求められる今、さまざまな仕組みやサービス、人との関係が見直されています。

100BANCHで活動するGARAGE Programのプロジェクトメンバーにおいても、この状況がプロジェクトのあり方や方向性を見つめ直す機会となり、視点を変化させながら、自分たちが目指す未来に向かって日々活動を続けています。

今回、100BANCH編集部は100BANCHのGARAGE Programで活動する3プロジェクトのリーダーに取材を実施。それぞれが今、何を感じ、未来をどう見ているのかについて伺いました。

1人目は、目が見える人も見えない人も読めるフォントを開発したプロジェクト「Braille Neue(ブレイル・ノイエ)」と、全ての人がコミュニケーション可能な未来をつくるプロジェクト「未来言語」に携わる高橋鴻介さん。

取材を進めていくと、苦難とも言える状況がプロジェクトに思いもよらない気付きを与え、新たな希望をもたらすきっかけとなったようです。

制限されたからこそ、浮かび上がった課題と可能性

——新型コロナウイルスの影響により、これまで当たり前だと感じていた価値が日を追うごとに変化しているように思いますが、高橋さんが携わられているプロジェクトに何か変化や気付きをもたらすことはありましたか?

 高橋:オンラインでコミュニケーションを取らざるを得ない状況になったことで、「Braille Neue」も「未来言語」もリアルに“触れる”ことが重要な情報伝達手段であり、その手段に大きく依存していたんだなと痛感しました。今は触れなくても情報伝達ができる、新たな発想を模索している段階ですね。

目が見える人も見えない人も読めるフォント「Braille Neue」

正直、「Braille Neue」はそもそも触れることが大前提のプロジェクトなので、現時点で活動は止まってしまっているけど、「未来言語」は“触れられない”ことをポジティブに捉えられているように思います。先日、新たなコミュニケーション方法を生み出そうと、「未来言語」のプロジェクトメンバーとオンラインウェブ会議システム「ZOOM」を活用して「未来言語」ワークショップをやってみたんです。そうしたら予想外に盛り上がって。

——「未来言語」ワークショップは、参加者が実際に「みえない」「きこえない」「はなせない」状態となり、普段とは異なるコミュニケーションにチャレンジしてもらう企画ですね。

以前開催された「未来言語」ワークショップの様子

高橋:オンラインでワークショップを終えると、メンバーでろう者の菊永ふみさんが「ZOOMは話している人が画面の中心に出る設計になっているから、実際に対面で交わす会話より誰が話しているのかが、わかりやすかった」と感想を話していて、オンラインだからこそわかり合えるコミュニケーションがあるんだと実感しました。

一方で、リアルな場だからこそ可能になっていた表現がたくさんあったとも気付かされました。例えば、オンライン上でAさんは理解してBさんが理解していない時に、僕が画面を通して「(Bさんに向けて)そうじゃないんだよね」って話すと、理解していたAさんが「自分が間違っているのかも…」と焦りだしてしまった。これまでは身体の向きで誰に話しているのかを表現していたんだって思って、会話ってすごくフィジカル的な要素が多いことを思い知らされましたね。

——制限されたことで、課題や可能性が見えてきたと。

他にも、画面上で参加者をテーブル分けできるWeb会議システム「Remo」を活用すると、映像を映さない「みえないテーブル」や、ミュート機能を使った「きこえないテーブル」、「はなせないテーブル」を簡単に作れるので、今までよりスムーズに「未来言語」のワークショップができるね、と盛り上がりました。その会話から「このテーブルをクリアしたら、隣のテーブルへ」みたいなダンジョンゲームを作ってみても面白いよねとアイデアがどんどん膨らんでいったので、「未来言語」は今の状況だからこそ楽しめる方向へとシフトできているように感じています。

 

これまでの壁が、壁じゃなくなる瞬間が訪れる

——今、世界中で「ウィズコロナ」や「アフターコロナ」という言葉が行き交い、これからの社会や価値観がどのように変化するのかと多方面で日々議論が繰り返されていますが、高橋さんの携わるプロジェクトはこの状況下において、今後どのように変化すると思いますか?

高橋:今までの社会はみえる、みえない、きこえる、きこえないといったコミュニティに別れていたけど、ウィズコロナと呼ばれる今はこれまでよりコミュニケーションがオープン化されて、それぞれのコミュニティの壁が壊れやすくなるんじゃないかと思います。

——壁が壊れる、ですか?

高橋:おそらく、これからもっと外で誰かと会いたいとか過ごしたいという欲求が高まり、その意識が今までより積極的にコミュニケーションを取りたいというモチベーションに繋がっていくと思います。リアルに会えない状況が続き、オンラインでみんながツールを介して会っている今だからこそ、これまでとは違った人と気軽にコミュニケーションができる方法を生み出せたら、今までとは異なる壁の壊し方が生まれるのかもしれない。

仮にアフターコロナになったとしてもウイルスに対する恐怖心は残っている可能性があります。その場合は積極的に対面で人と交流を持つことに抵抗感を持つだろうから、リモートでコミュニケーションを図ろうとする状態は続くかもしれない。そんな時だからこそ「Braille Neue」や「未来言語」が試みるさまざまなコミュニティの横断によって、今まで壁だったものが壁じゃなくなる瞬間が訪れるんじゃないかと期待しています。今はそんなコミュニケーションの壁を壊す仕掛けを、今から準備しておくべきだと考えています。

——この状況下での気付きが、プロジェクトを新たな一歩へと導くきっかけになるかもしれませんね。

高橋:新型コロナウイルスの影響によって厳しい状況ですが、これを乗り越えた時に、今までとはちょっと違ったコミュニケーションが生まれてきたらいいなと期待しています。みんな繋がりたい欲求があるけど、すぐには思うように繋がれない。そういう瞬間にこそ「Braille Neue」や「未来言語」は活きるプロジェクトなのだと思っています。

 

illustration:Risa Niwano

 

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