LEADER INTERVIEW

2021.01.29 Fri

なっとう娘 鈴木真由子さん:「臭いものに蓋」はしない。納豆が導く、個性が輝く未来(natto pack2.0)

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1日で食べる納豆の量は平均2〜3パック、多い日で4〜5パック。
ひとたび納豆のおすすめの食べ方を尋ねると、麻婆納豆豆腐、納豆お好み焼き、納豆ポテサラ……と、止まるところを知らない納豆への愛があふれ出します。

「なっとう娘」こと鈴木真由子(すずき・まゆこ)さんは、環境に配慮した納豆パックを世に生み出す「natto pack2.0」プロジェクトの発起人。鈴木さんが納豆会社と開発している納豆容器は、現在商品化に向けて準備中です。
3ヶ月の入居期間に掲げたnatto pack2.0の目標を達成した後も、期間を3ヶ月延長し新たなプロジェクトへピボット。2021年1月末には納豆のECサイト「納豆天国」のローンチも決定しています。

そんな鈴木さんにお話を聞く中で圧倒されたのが、彼女のひたすらまっすぐでポジティブなエネルギー。まるで戦隊モノのヒーローのように輝く彼女には、納豆で社会の課題を解決せんとする、熱く大きな夢がありました。

納豆を食べる なっとう娘 鈴木真由子さんの写真

 

ーなっとう娘さんはメディアへの寄稿やテレビへの出演など、「納豆の専門家」とも言える活動をされていますよね。誰もが馴染みのある納豆ですが、いつ頃から好んで食べていたのでしょう?

納豆は幼少期から好きで、当時は普通に「納豆が好き」だったんです。変化が訪れたのが、キッチハイクでのインターンでした。食にまつわる事業に携わる中で、好きな食べ物を聞かれた時に、ぽろっと「納豆」と言ったんです。そこから、納豆のイベントを開催し、周りの人たちが面白がって納豆に興味を持ってくれることがどんどん楽しくなっていきました。そしてインスタライブで毎日違う納豆を食べて紹介したりするようになったのが発信活動のはじまりです。

 

ーその後会社に所属せず、はじめから新卒フリーランスで活躍されてますよね。

学生時代には社会貢献もしつつ、ビジネスとしても回していけるソーシャルビジネスに興味がありました。しかしソーシャルビジネス界隈はベンチャー企業が多く、新卒採用を行なっていないことや、報酬面での厳しさがあったりなど、自分ではコントロールしきれない環境下での条件に進路を決めきれずにいました。企業の就職も考えたのですが、社会課題に興味を持っていた気持ちを私自身が忘れてしまうのではないかと感じ、その点を全部クリアできるのがフリーランスだと行き着き、自分でその形を模索していこうと決断しました。

 

キッチハイク時代のなっとう娘 鈴木真由子さんの写真ーキッチハイク時代の鈴木さん

 

ー新卒の時点でそこまでの考えに至ったのは、学生の頃の経験が影響しているのでしょうか?

大学生の頃はコミュニケーション学を専攻していました。2年生の授業でシリア難民の方のお話が聞ける機会があって、「もし国に戻れるのであれば何がしたいですか?」「自分がもしお金持ちになったらどうしたいですか」と質問したら、その返答が全部、国のことだったり人のためになるようなことに関する返答が返ってきたんです。自分も大変な境遇の中にいるのに、その上で「国のために、誰かのために何かがしたい」と願望を持って生きている。そのまっすぐさや、愛に直接触れられた気がして、すごく胸を打たれました。授業中にも関わらず号泣した経験が自分にとって大きな転換となりました。

恵まれた環境にいるからこそ、できることがあるんじゃないかと思い始め、休学してソーシャルビジネスのインターンや、そこから派生して自分の求めている「本当やりたいこと 」を探すためのアクションをはじめていきました。

 

100BANCHで取材を受けるなっとう娘 鈴木真由子さんの写真

 

ー難民問題をきっかけに、そのほかの社会問題にも興味を持っていったのですね。

はい。私はどうしてもひとつの問題にフォーカスして取り組むことがしっくりこなくて。どうしてだろうと考えた時に、一部の人だけでなく社会全体の一人ひとりが幸せで豊かな気持ちでいられることが、社会問題が起こらなくなることに繋がるのではないかという結論に至ったんです。

個人のちょっとした妬みとか僻みとか、そのしわ寄せが社会問題になると私は考えています。誰一人残さず、もっと豊かに、日々楽しく生きることのできる社会を作るために、より多くの人に影響を与えられる存在になれたらいいなと、その時に人生の大まかな目標が定まったんです。そこで、どのようにしたら多くの人に届けられるかと考えた時に、「食」というジャンルでハードルを下げつつ、且つ面白みのある自分の好きな食材「納豆」で活動しようと思いました。「なっとう娘」という愛称も、覚えやすく愛着を持ってもらいやすい名前を考えて、みんなの娘のような愛し愛される存在でいたいという想いから名付けています

100BANCH1年目のナナナナ祭2018で大盛況だったイベント「しいたけは飛び、そうめんは流れる。」
ー100BANCH1年目のナナナナ祭2018で大盛況だったイベント「しいたけは飛び、そうめんは流れる。

 

ーそうして「なっとう娘」としての活動をしていく中で、100BANCHのGARAGE Programに応募しようと思ったきっかけを教えてもらえますか?

100BANCHの存在を知ったのが「しいたけは飛び、そうめんは流れる。」というイベントで、「面白いことやってるな〜」と記事で知ったことがはじまりでした。そのあと自分がなっとう娘として活動していく中で100BANCHのスタッフの方と知り合い「GARAGE Programに応募してみたら?」と言われ、「あ、私も応募できるんだ」と具体的に100BANCHへの入居を考えるようになりました。

多方面の方と繋がりたい気持ちもあるし、100BANCHに入ることで「面白いことやってるね!」と周囲にも活動を認識してもらえる機会になると考え、入居を決めました。

 

ー鈴木さんのメンターには、横石さんと西垣さんのふたりがついていますよね。

西垣さんも横石さんも、プロジェクトのことだけじゃなく、なっとう娘の活動全体についてもアドバイスしてくださいました。西垣さんは特許庁の方なので、特許についてご教示いただいたり。 横石さんもなっとう娘を今後どんな方向でスケールさせていけるか、相談にのってくださいました。

 

納豆棒の説明をするなっとう娘 鈴木真由子さん
ー混ぜた時に空気が入りやすく、ふわふわになりやすい「納豆棒」。凹凸があるため「洗うのが大変だけどその一手間がより愛着を湧かせる」とのこと。

 

ーそうして100BANCHではじまったのが、納豆容器のあらたなスタンダードを作る「natto pack2.0」ですね。このプロジェクトの狙いについて、改めて教えてもらえますか?

納豆パックを通して、今までの「当たり前」に疑問を持ってもらうきっかけになったらいいなと思い発案したプロジェクトです。当たり前に使っていた納豆パックだけど、もっと効率的な容器の選択肢が他にもあっていいんじゃないかと、食べ終わった納豆パックをゴミ箱に捨てながら疑問に思ったんです。でも今までの容器を一新するというより、新しい選択肢のひとつとして、100BANCHで「natto pack2.0」のプロジェクトをはじめました。

 

ー「natto pack2.0」の活動をきっかけに、他のものについても考えてもらうきっかけをつくりたい、と。

そうですね。納豆パックもそうですし、例えばスーパーで売れ残った納豆はどうするのかという食料廃棄問題とか、大豆を作ってくださってる農家さんの後継者問題もそうです。納豆ひとつ取っただけでも様々な広がりがあり、自分が食べてる納豆だからこそ自分ごと化しやす、「いつも食べてる納豆だからちょっと気になる」と興味を持ってもらえるきっかけになると思ってます。

 

ーそんな「natto pack2.0」のプロジェクトは、現在すでに商品化に向けて動いているのですよね。納豆会社さんと作っている「natto pack2.0」のパッケージはどんなものなんでしょう?

今作っているものはフィルムタイプの袋状で、容量は変わらないけど体積が薄く、コンパクトな四角形タイプのものです。従来のパックもすごく優秀なんですよ。保温性があるし、大豆に菌を吹きかけて、パックのまま発酵させてそのまま出荷できる。ただ捨てる時に結構かさばってしまったり、発泡スチロールの環境への負荷という課題があり、今回のフィルムタイプを作ることになりました。

 

ーさらに現在では、3ヶ月の期間を延長して、また新たなプロジェクトを走らせていますよね。

納豆会社さんとの「natto pack2.0」の取り組みは商品化までに少し時間がかかるので、一事業として走らせつつ、せっかく100BANCHにいるので、ここだからこそできる面白そうなことをしたいと思い、全国納豆ECサイト「納豆天国」を作ることにしたんです。

 

ーどんなきっかけで生まれたんですか?

「natto pack2.0」のプロジェクトを進める中で、「納豆は意外と既成概念に縛られている」という気づきを得ました。納豆はこの白いパックに入っていて、スーパーで見るのはだいたい3〜4種類。且つ45〜50gくらいと容量も決まっていて、箸で混ぜてご飯にかけて食べるもの。割とピュアな状態の食材なのに、食べ方が決まっているのももったいないので、「納豆開放宣言」を掲げ、全国にある納豆や納豆料理を、なっとう娘として発信していきたいと思いました。

突然ですが、全国に納豆って、何種類あるか知っていますか?私も初めて聞いた時は驚いたのですが、3,000〜3,500種類もあるんです。その地域ごとに愛されてる納豆もたくさんあり、もっと多くの人に知ってほしい。いつも納豆を食べている人たちの選択肢が広がり、そして知ってもらえた作る側の人たちもハッピーになれるのであれば、それをサービスとして作りたい。ハッピーの最大化された世界は天国であると考えたので、「納豆天国」と名付け全国の納豆が購入できるECサイトを作ることにしました。

100BANCHで納豆を頬張るなっとう娘 鈴木真由子さん

 

ー100BANCHの入居者の方との関わりで、印象的だったことはありますか?

「comel」というブレンド米を作っているプロジェクトがあり、納豆ご飯専用のお米を作ろうと考えています。私も「comel」さんが選んだお米に合う最強の組み合わせの納豆を提案できたらいいな思っています。他にも3Dプリンターの方とコラボして納豆鉢を作りたいなと話していたり、いろいろな方とのコラボをしていくことで、100BANCHだからこそできるプロジェクトを行なっていきたいと考えています。

 

ー鈴木さんはいろいろな方と関わりながらプロジェクトを進められている印象があります。納豆という媒介があると、老若男女、様々な方と盛り上がれるかもしれないですね。

私自身、納豆を通じてたくさんの方に出会えて、いろいろな場所に行けたました。青森にもフランスにも一緒に行ったり、この子(納豆を両手で包み込みながら)がいてくれたからたくさんの経験ができた。感謝の気持ちでいっぱいですし、これからもっと一緒にまだ見ぬ景色を見に行きたいと思っています。私の人生のパートナーです。

 

100BANCHで納豆の愛を語るなっとう娘 鈴木真由子さん

 

ー本当に好きなんですね。そもそも、納豆が人生のパートナーになるほど好きになれる、納豆への愛ってどこからきてるんでしょう?

ラム肉とかパクチーとか匂いが強い食べ物が好きだったことと、その中でも納豆は、臭いが強かったりネバネバしてたりその癖の強さに魅せられますね。食べ慣れない海外の方が苦手というのもわかるぐらい、第一印象が強烈じゃないですか。でも、食べてみるとやみつきになってしまう。そんな実力派なところにすごく憧れも抱きますね。

また、その強い個性でまっすぐに生きてることが素敵だと感じます。自分もそうありたいと思いますし、私が人生において目指している「自分の個性に愛を持って、いきいきと生きられる社会」を体現してくれている気がしていて。臭いものには蓋をするんじゃなくて食べてみようよ、と納豆の存在自体が呼びかけてくれているような、そんな姿にすごく惹かれてるのだと思います。

 

ー臭いものに蓋をする。それは納豆だけでなくさきほどの社会課題だったり、今おっしゃったように個性を認め合う多様性のある社会にも繋がっていきますよね。

そうですね。私自身幼い頃からウルトラマンとかヒーロー物が大好きで、カードゲームのムシキングも120枚くらい集めるほど大好きだったんです。おばあちゃんからは「女の子なんだから」と注意を受けたこともあるけれど、親は寛容で「好きならいいじゃない」と言ってくれました。当時は髪の毛も短く、格好も男の子のようだったので、女の人のトイレに入ると「こっちは女の子のトイレよ」と言われたこともありました。

 

ーそれに対して嫌な思いはしなかったんですか?

あまり嫌だった記憶はないんですが、そうやっておばあちゃんに言われたり、たまに女の子なのに珍しいねと言われたりすることに違和感を感じながら生きてきた部分はあるように思います。そんな中で、納豆の生き様に感動したといいますか。

 

ー自分を貫こうと。鈴木さん自身の生き方もそれを体現している気がします。

ただ、強くしなやかに生きることが、今年の抱負です。自分を貫きすぎて、誰かを傷つけてしまったり、自分が正しいと思っていることが、知らぬ間に誰かをすごく窮屈に感じさせてしまったりすることもあると思っていて。そういう意味で、自分の芯はしっかり強く持ってるけど、人の意見もしなやかに受け止められるようになりたいと思っています。

 

100BANCHの活動で未来を語るなっとう娘 鈴木真由子さん

 

ー自分の意見を伝えるときには、特に難しいことですよね。「なっとう娘」の活動でも、発信するときに何か意識されているのでしょうか?

なるべくポップに発信していきたいと思っていて、一時期自分の中での“ポップ”とはなんなのかってすごい考えたんです。きゃりーぱみゅぱみゅさん的なビビットカラーなポップさとか、パステルカラー的なデザイン面でのポップという表現もあるけど、自分の思うPOPはビジュアルだけの表現ではないかもと思っていて。

そんな中で、私は既視感のあるもの同士だけど、今までになかった組み合わせのギャップから生まれる新しいかっこよさをポップだと捉えているんだとたどり着いたんです。「なっとう娘」のイラストでいうと、「”かわいいイラストのキャラクター”が納豆を食べてる」とか「パステルカラーと納豆」ってあまり見ない組み合わせをあえて表現していて。そういった、今までになかった組み合わせも面白い・クールだよねと感じてもらえる発信がしたいと考えています。それこそ、私が幼少期によく言われていた「女の子のなのに男の子っぽい格好」とかもそうですし。「男っぽい」ってそもそも何なのだろう?とも思いますけどね。これからの人生においても多様な自己表現に対して、リスペクトする心を大切にしていきたいと思っています。そんな私の価値観の表現方法のひとつとして、納豆をよりポップに、多様性を持たせて発信していきたい。このメッセージが一人でも多くの人に楽しんでもらいながら、少しでも届けることができたらこの上なく嬉しいですね。

ー100BANCHではふたつのプロジェクトを進めてきましたが、100年後の未来に向けて、今後はどんな計画があるのでしょうか?

自分が人生の目標としている「自分の存在価値を実感しやすい社会づくり」を実現していく中で、その想いに共感してくれる人の輪をより広げていきたいと思っています。その点も踏まえ、現時点ではチームを組み、今後は法人化も視野に入れているところです。

私が就活した時のように、企業に就職するでもないし、NPOでもないし、でもベンチャーだと新卒はとってないし……と迷ってる方々は多いのではないかと感じています。社会課題に貢献しつつ、且つビジネスとして金銭面も安定している企業に就職したいと思っている方が一緒に働きたいと思う会社。近い将来、なっとう娘を法人化した先にそんな会社をつくりたいと考え、日々活動しています。その先には納豆のように、「みんなが自分らしくいられる多様性ある社会」の実現を目指し、これからも「ネバーギブアップ」で頑張っていきたいですね。

 

■関連リンク
(1/31 NEW OPEN!!)納豆天国https://nattomusume.theshop.jp
・なっとう娘 公式サイト:https://lit.link/nattomusume

100BANCHで納豆を美味しそうに食べるなっとう娘 鈴木真由子さん


GARAGE Programの募集ページ

 

WRITER

岩澤春香

ライター

千葉県松戸市出身。学生時代に音楽メディア等での編集・ライターのアルバイト経験を経て、オンライン出版社へ就職。ウェブマガジンで編集者としての経験を積んだのち、フリーランスへ転向。現在は地方創生の取り組みも視野に入れながら、静岡と東京の二拠点で活動している。

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