
一緒に創るミライのタネ

「TOM JAPAN」は支援機器を共創し、誰もが快適に過ごせる世界の実現を目指すプロジェクトです。障害のある当事者(Need-Knower)と、エンジニア、作業療法士(OT)、理学療法士(PT)、デザイナーなど、多分野の学生・専門家がチームを組み、それぞれの困りごとに応じた支援機器をつくっています。
ナナナナ祭2026でTOM JAPANが挑んだのは、体験プログラム「一緒に創るミライのタネ」。これまでTOM JAPANが制作してきたプロダクトや、視覚に障害のあるTOM JAPANのメンバーが見える景色を来場者が体験し、日常の陰に潜む驚きや発見を「ミライのタネ」としてブースに書き残すことで、障害を「解決すべき問題」ではなく、新しい価値を生む「イノベーションの起点」と捉え直す体験をしてもらいました。当日の様子を、TOM JAPANの行田優空が振り返ります。
こんにちは、TOM JAPANです。私たちTOM JAPANは、100BANCHを拠点に「1の困りごと」から共創プロダクト開発やワークショップを開催しています。
そんな私たちがナナナナ祭2026にて出展したのが、「一緒に創るミライのタネ」というプログラムです。ブースでは、私たちが大切にしている「当事者が感じているリアルな世界」を来場者の皆さんに体感してもらい、そこで生まれた気づきを“ミライのタネ”として残してもらう。そんな「共に未来を考える場」を作りました。3日間で、300人以上の方がブースに訪れ、200人以上が体験での気づきを“未来のタネ”としてシェアしてくださいました。

私たちTOM JAPANでは、誰もが快適に過ごせる世界をイノベーションの力で実現するため、日々活動しています。100年先の未来でも、当たり前に誰もが「ちがっていい」と思える世界線をつくりたい。そのために私たちが最も大切にしているのが、「Need-Knower」の存在です。
Need-Knowerとは、障害のある当事者を単なる「支援される側」や「不便さを抱える人」として見るのではなく、「社会に必要なことを知り、その視点から未来へのヒントを与えてくれる人」と捉える考え方です。これこそ、TOM JAPANの根幹の考え方です。1人のNeed-Knowerが持つ「1の困りごと(N1)」にこそ、これまでにない新しい価値やイノベーションのヒントが詰まっています。
今回のナナナナ祭では「N1の視点には価値があり、体験を通して、日頃、福祉に触れにくい人ともその価値を体感・共有し、共に未来を考えられるのではないか」という仮説をもとにブースを企画し、以下のプログラムで検証を行いました。
ナナナナ祭の3日間を通じて、私たちの想いを来場者にどのように届けることができるか、調査・検証することができました。

私たちが検証したかったのは、Need-Knowerの視点をきっかけに、来場者自身が「自分の日常や専門性」に引き寄せて考え、共に新しい価値(ミライのタネ)を見出していけるかという共創の可能性です。
今回TOM JAPANのブースの核となったのは、弱視の見え方を体験できるコンテンツです。実は、TOM JAPANの弱視のメンバーが見ている世界をモデルに、「どうすればこのリアルな見え方が伝わるか」をメンバー全員で対話を重ね、試行錯誤しながら共に開発したものになります。誰でも手軽にその場で体験できるよう、アプリではなく専用ウェブサイトとして形にする工夫もチームで凝らしました。Need-Knowerのリアルな視点と、それを具現化するためのチームの試行錯誤が重なったからこそ、圧倒的なリアリティを持った世界を届けることができました。来場者の方からは、「直感的に理解できた!すごい!」「こんなにリアルに体験できるものは今までなかった」といった驚きの声が続出しました。ブースで「おおー!」という新鮮な驚きの反応をダイレクトにいただけた瞬間は、これまでの準備の苦労が一気に吹き飛ぶほど、大きな手応えと嬉しさを感じる場面となりました。

また、ブースの体験を通して得た気づきをひまわりの“タネ”として来場者に貼ってもらいました。ブーズには、
「誰かの困りごとがみんなにとっても役に立ちそう」
「マイノリティのためは自分のためになる」
といった共感の声がポストイットとして200枚以上集まりました。この200枚は、単なる「共感の数」にとどまらず、来場者一人ひとりの視点がNeed-Knowerの視点と掛け合わさり、共に未来を模索し始めた「ミライのタネ」そのものです。「N1のマイノリティ視点には価値があり、体験を通して共に未来を考えられるのではないか」という私たちの仮説に対し、小さくない確かな共創の輪を広げることができました。


多くの来場者から、Need-Knowerの視点を起点としたモノづくりの可能性に共感をいただき、私たちが大切にしている共創デザインの開発プロセスに、確かな手応えを感じることができました。また、普段は3Dプリンターなどの技術そのものに興味を持つことの多い子どもたちが、今回の弱視体験や、身近な困りごとから生まれたプロダクトに強い関心を示してくれたことも、嬉しい発見でした。
今回の出展を通して、次に取り組みたいことも見えてきました。それは、共創デザインの価値やNeed-Knowerの視点を、活動を初めて知る人にも、より直感的に、ワクワクする形で届けていくことです。Need-Knowerの思いを詰め込んだ「ZINE」も、単に「購入してもらう」だけでなく、そこに込められた一人ひとりの視点や可能性に触れ、共創への一歩につながる届け方をさらに考えていきたいと思います。
これからは、私たちの活動に共感してくれる人を増やすだけでなく、「共に実現したい世界を目指す仲間=共創パートナー」と出会い、ワクワクを共有しながら、一緒に活動を前へ進めていく。そのためのコミュニケーションや仕掛けを磨き、今回得られた手応えを、次の共創へとつなげていきます。

今回のナナナナ祭での気づきを踏まえ、私たちはこれからも「Need-Knowerの『1の困りごと』を起点に、どう一つひとつのNeedを、より大きな活動や社会の変化につなげていくか」という問いに挑み続けます。新しい人や専門性と出会い、Need-Knowerの視点を起点に一緒にアイデアを膨らませる「ワークショップ」。そして、そのアイデアをNeed-Knowerと共に具体的なプロダクトや社会の仕組みへと落とし込んでいく「プロダクト開発」。私たちはこの2つの「共創の場」を軸に、活動をさらに前進させていきます。
今後は、Need-Knowerやエンジニア、デザイナー、リハビリや暮らしの専門家(作業療法士・理学療法士)、企業、大学、地域など多様な視点や専門性を持つ「新しい共創パートナー」との繋がりを、より一層広げていきたいと考えています。TOM JAPANは、障害の有無に関わらず誰もが快適に過ごせる未来を目指し、さまざまな専門性や視点を持つ皆さんと共に、手を携えて活動を推進していきます。
改めて、ナナナナ祭で私たちのブースに足を運んでくださった皆様、素晴らしい場を企画・運営してくださった事務局の皆様、そして共に駆け抜けた100BANCHのメンバーの皆様に、心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました!
