イチからカレーをつくる ── あなたも一緒に。

食をイチからつくる体験を通じて、自然と暮らしとの距離を近づけることを目指すプロジェクト「MUD ABOUT」。自らの手で食材を育て、調理し、食べるまでを一貫して体験できる場づくりに取り組んでいます。
今回ナナナナ祭2026では、種植え体験ができるブース「イチからカレーをつくる ── あなたも一緒に。」を企画しました。その模様を、MUD ABOUTの阿部が振り返ります。
「MUD ABOUT」は「イチからカレーを作る」というプログラムを通して、農と暮らしの距離を近づけ生活を豊かにするプロジェクトです。(通称:イチから)私はとてもカレーが好きなので、個人的なロマンも含まれたプロジェクトでもあります。イチからは、ナナナナ祭2026年では、これまでの活動の報告(展示や動画)と世界観を伝えるために、種植え体験ができるブースを企画しました。
「都会の暮らしの中で、最後に土に触れたのはいつですか?」
ナナナナ祭2026で、私たちはひとつの実験を行いました。テーマは、私たちが大切にしている「農と暮らしを近づける」こと。ブースには「イチからカレーをつくる」という分かりやすい看板を掲げ、これまでの活動展示とともに、実際に土に触れてもらう「種植え体験」を用意しました。「手が汚れるのは嫌かな」と思い、念のために使い捨ての手袋も用意していました。しかし、いざ始まってみると、それは完全に杞憂に終わったのです。「あ、種が植えられるんだ!」と足を止めてくれた来場者のみなさんは、楽しそうに種を選び、素手で土を触り始めました。指先で土の感触を確かめながら、丁寧に種を植えていく。意外にも受け入れてくれるんだと思いました。

今回は、そんなナナナナ祭での実験から得られたリアルな気づきと、私たちが目指すこれからについてレポートします。
私たちが活動している「MUD ABOUT(通称:イチから)」は、一言でいうと「イチからカレーを作る」プロジェクトです。私は、食べることが大好きです。食について人と話すことも、その食材がどんな背景で作られたのかを聞くことも、食について考えることも好きです。毎日美味しいものが食べられる環境には、感謝しかありません。
しかし、現代はあまりにも便利になりすぎました。ボタンひとつで食べ物が家に届き、スーパーに行けばいつでも安定して食材が手に入る。その便利さと引き換えに、私たちは「当たり前すぎて、食への感謝やリスペクトが薄れていってしまう」ことや、「旬の食材が何かも分からない」という人が増えているように感じます。
だからこそ、あえて不便で遠回りなことをやる。「イチから」では、自分たちが食べているものの背景を知り、カレーという一皿の裏側にどれほど人間の営みがあるのかを体感していきます。カレーが完成するまでにかかる期間は、約9ヶ月。 「3日寝かせたカレーが美味しい」なんてレベルではありません。9ヶ月間、心の中で「カレーが食べたい!」という気持ちをじっくり寝かせる、ロングスパンなカレーです。入り口はカレー作りでも、出口に辿り着いたときには、いつのまにかカレーメンバーの心が豊かになっている。そんな壮大な未来を作っていきたいと思っています。
そんな「イチから」の思想を、不特定多数の人が集まるナナナナ祭でどう伝えるか。私たちが企画したのは、これまでの活動報告(展示や動画)と、ブースで実際にできる「種植え体験」でした。

イチからの企画を行う前にいろんな方にヒアリングをした際、都会で暮らす人々から多く聞かれたのが「土に触れたい」という声でした。それなら、ただブースで私たちの話を聞いてもらうだけでなく、実際に土に触れてもらい、自分で植えた種を家に持ち帰ってもらおう。家でその芽が育つのを見守る中で、参加してくれた人の日常に、いつの間にか「農と暮らしのつながり」が入り込み、豊かな心が育まれていくのではないか。そんな仮説とロマンを持って、イベントに臨みました。 木の枝で作った「イチからカレーをつくる」という分かりやすい看板を掲げて。

ブースの目印は、木の枝で作った「イチからカレーをつくる 」の看板です。

通りかかる多くの方が「お、カレーを作っているのか~」と呟きます。そこへすかさず、「9ヶ月かけて、イチからカレーを作っているんです!」と声をかけると、足を止め、展示や活動内容に興味を持って話を聞いていただきました。土を前にして「何植えようかなぁ」と真剣に悩み、笑顔でポットを持って帰っていく。気づけば、みなさん家で野菜を育てる前提になっているのが、見ていて本当に微笑ましく、嬉しい景色でした。
実際、イベント終了後には「芽が出たよ!」という報告が届き、狙い通り、誰かの日常の中に自然を滑り込ませることに成功したのです。

インゲンとオクラが発芽しました。
Instagramのフォロワーは100人増え、カレー作り参加の希望者も数名集まるという一定の成果を得ることができました。それは、「体験」と「深い対話」のバランスです。
種植えという体験がキャッチーだからこそ、そこに人が集まると、今度はプロジェクトの背景をじっくり伝える時間が足りなくなってしまいます。逆に、思想を熱を込めて説明しすぎると、今度は気軽に体験してもらう流れが作れない。多くの人に「企画が面白い」「良い取り組みだね」と反応はしていただけるものの、そこから一歩踏み込んで「自分もメンバーとして参加したい!」という実際の行動に移してもらうには、大きな壁があることを痛感しました。
今回のナナナナ祭での実験と、そこで得たリアルなジレンマを経て、「イチから」は次のフェーズへと進みます。
まずは何よりも、新しく出会った仲間たちと一緒に、残り6ヶ月の旅路を駆け抜け、カレーを「作りきること」です。予定通りにいかないことだってたくさんあるはずです。もしかしたら、最終的に出来上がったものが、世間一般の「カレー」とは少し違う形になっているかもしれません。でも、それでいい。いや、それがいいんです。
もしカレーじゃない何かが出来上がったとしても、私たちは「これはカレーだ!」と言い張って、その不便さとプロセスを全力で楽しむつもりです。入り口はカレー作りですが、私が本当に作りたいのは、その先にある「心の豊かさ」や「手触り感」です。

ここからの活動は、正直に言って、まだ明確な答えや方向性があるわけではありません。
カレー作りに参加するだけでなく、もっと多くの人がそれぞれの生活の中で「手軽にカレーの思想を取り入れられる方法」はないだろうか。日常の動線の中で、もっと気軽に土や自然と接点を持てるような開かれた場所や選択肢を、これからどう作っていけるだろうか――。そんな未来の形を、これから集まる仲間たちと一緒に模索し、作っていきたいと考えています。
・私たちの不便なロマンに、一緒に巻き込まれてみたい方
・答えのないプロセスを、一緒に面白がりながら形にしていきたい方
・そして、人々の暮らしと農を近づける新しい試みに共感してくれる方
ぜひ、私たちの「イチから」の仲間に加わりませんか。Instagramのメッセージから、いつでもご連絡をお待ちしています!
■Instagramアカウント
https://www.instagram.com/mud_about/